蒼月君ととらの元気に登校する後ろ姿を見送りつつ、そろそろ私も光覇明宗の総本山に向かおうかなと思う。もう少しだけ蒼月君達と話していたかったけど。
しとりお婆様も来ているそうなので、私は断ることも出来ない。元々断るつもりはなかったけれど。やはりしとりお婆様に会うのは緊張する。
「お世話になりました」
「何、私も良い話し相手だった」
蒼月紫暮と修行僧の方にお辞儀をして正門を潜り抜けると黒服を身に纏った集団の出迎えを受けつつ、黒塗りのリムジンに乗る。
酔うから余り乗りたくないのよね。
「お久しゅう御座います。妙様」
「久し振りではあるけど。ずっと私を監視していたのは君達でしょう、四乃森」
「我らは御母堂様のお言葉をお守りしているだけ。決して邪な想いはありません。尤も独り言になりますが、奈落に与している者がいるようです」
その言葉に溜め息を吐く。
ウチの家系は変なヤツを惹き付けやすいのは知っているけど。その中でも群を抜いて奈落の糸色に向ける執着は凄すぎるのよね。
全く、戦国時代の糸色は何をしたのかしら?
「あと仕来たりを行えと分家の者が」
「いやよ、あんな目があった人を旦那にする仕来たりなんて。そもそもアレは男児限定の仕来たりだったのに、私に押し付けるのは止めてほしいわ」
「でしょうね。ああ、あと類様がご結婚しました」
「ブフッ!?ゴホッ、はあ!?」
類って、あの子よね?
いや、えぇ?
「その類って、糸色類の方で合ってるわよね?」
「その類様でございます。お怪我をしていた殿方を助けた際、お互いに一目惚れをしてしまったらしく、現在は新婚旅行中です」
「頭が痛くなってきたわね」
治癒の力を宿すしとりお婆様の妹の血を受け継ぎ、私と同い年の従姉妹がいつの間にか結婚していた。いや、あの子なら簡単に靡く子じゃないし、相手はいい人ね。
「相手は何処の人なの?」
「才賀グループの才賀善治様です」
「よりにもよって才賀なのか」
才賀グループ。
類なら怪しい相手なら関わろうとしないはずだし、ヒーリング能力を目当てに向かっていれば直ぐに気付ける。つまり、本気で相手も類に恋している、いや、愛しているということになるわね。
「……ご祝儀は1億だっけ?」
「妙様、酔っていますか?」
「酔ってるわよ、知っているでしょう」
私は従姉妹の結婚に驚きながらも祝福の手紙を書くべきかと思いつつ、しとりお婆様や御角お婆様に呼ばれたのもこれかと考えてしまう。
あのお婆様達なら普通にあり得るのよね。