「妙、また少し背が伸びましたね」
「会う度に言ってますけど。それ」
「あら、そうだったかしら?御角」
「えぇ、いつも言っているわねえ」
何処か気の抜けた風に話す二人の会話に和羅を見ると自然体のまま正座し、私達の会話を静かに聴いているだけで自分は存在していないように振る舞っている。
まあ、白面の者を封じ込めるお役目様たる御角お婆様、その盟友でありながら妖怪の信頼を一身に受けるしとりお婆様の二人が揃った場所で自分の意思を押し通すものは早々いないでしょうね。
私だって二人に怒られるのは嫌だ。
「さて、世間話はここまでにしましょう。妙、貴女の旅路は逐次報告を受けていたわ、獣の槍と蛮竜の二つが同時期に揃った事、奈落の出現、それらを踏まえて考えて分かった事は白面の者の復活は近い」
御角お婆様の予言とも思える言葉に控えていた和羅は驚愕の表情を浮かべている。しとりお婆様に視線を向けながら「本当の事なの?」と問う。
「妙の心配する気持ちは分かるわ。それでも真実だと知り、受け入れてしまいなさい。糸色の現当主としての立ち振舞いは昔も今も求めていない、貴女の在りたいように在るだけで良いのです」
そう言って穏やかに笑うしとりお婆様の笑顔に蛮竜が鈴のように鳴り響き、しとりお婆様と御角お婆様の目が少しだけ開いたように見えた。
「少しの間だけ、蛮竜を貸して貰える?」
「二人の頼みなら幾らでも良いわよ」
鞘袋を外して二人の目の前に蛮竜を置き、ゆっくりと後ろに引いて正座する。しとりお婆様が小さな傷もある蛮竜の鎬を撫でるように触れると鈴のように鳴り響く音は静まり、穏やかな刃音が聴こえ始める。
「……ん。私達に会いに来てくれたのね」
「本当に優しい子達ね、皆」
そう言うと蛮竜に触れることをやめた二人の視線が私に向けられ、また何かを言われるのかと警戒してしまうが「みんなの力が貴女を守ってくれるわ」と告げられた瞬間、私も蛮竜に自ら取り込まれに私のところまでやって来た妖怪達を思い出した。
そっか、二人の笑い声はまだ聴こえるんだね。
「白面の者の討伐には妙も参加することになります。まだ若く強くなる途中の貴女に危険な事を任せるのは忍びなく思いますが、光覇明宗と共に戦って頂きたい」
「その話は受けるよ、二人の頼みだからね」
「ん。それは良かったわ。じゃあ、ついでに私と御角の二人で選んだお見合い相手と少しだけ話してもらえる?四師僧がどうしてもと言うから」
「断っても良いですからね?」
「へ?」
突然のお見合い宣言に困惑する私の真後ろの襖が開き、見知った顔ぶれが其処に立っていた。流君、杜綱悟、強羅が私の事を見下ろしていた。
待って、待って、そういうのは苦手だってば…!