蛮竜を一目見ようと集まってきた僧侶達に溜め息を吐き、私は地面に蛮竜を担ぎ上げ、静かに過ごせる場所を探していると険しく焦った表情の強羅とすれ違う。
スンと僅かに生臭く嗅ぎ慣れた臭いが鼻腔に漂い、地面に転々と斑を作っている赤々とした血溜まり。強羅が大怪我をするほどに強い敵がいる?
「くくくっ。臭う、臭うぞぉ…!」
空を覆う巨大な影。
ムカデやカゲロウのように見える妖怪が総本山の結界を破壊し、ずるりと入り込んでくる光景に驚愕と悲鳴、怒りの声が聴こえ始める。
ギチギチと牙を打ち鳴らし、空を泳ぐ妖怪を追いかけていると強い法力と殺気を感じ、後ろに振り返ると私と同じように妖怪を追いかける凶羅がいた。
「凶のおじ様、遅いじゃないの!」
「誰がオジサマだッ、俺はテメェが強羅の嫁になるなんざ気色悪くて嫌にならァ!!」
「ハハハ、そう言うと思ったわ」
お互いに悪態を吐きつつ蛮竜を地面に突き立て、凶羅と一緒に踏み台代わりにして家屋の屋根に飛び移り、私は蛮竜を呼び寄せ、光覇明宗の総本山の真上を飛ぶ妖怪の事をしっかりと見上げる。
「我は白面の御方の分身、名を〝くらぎ〟!白面の御方に仇なす人どもよ、今宵貴様等を散滅せん!」
「くらぎ、だってさ」
「下らねえ。バケモノはバケモノだろうが」
私の隣に立つ凶羅の言葉に「まあ、妖怪にも個々の名前はあるんじゃない?」と言い、風の傷を放とうとした瞬間、ドクンッ…!と蛮竜が鳴動した。
「(……風の傷を撃つなってこと?)凶羅、悪いけど。私は一足先に行ってるわよ!」
大量の月輪を撃つ僧侶の攻撃を受け、動きを止めるくらぎに違和感を感じる。コイツ、わざと巨大な身体を揺らして月輪を受け止めていた。
「糸色殿ッ!!」
「一先ず私が囮になるわ!」
私の名を叫ぶ僧侶に応えながら蛮竜を振り上げ、石突きの月牙をグリップのように握り込み、ただの衝撃波を繰り出した瞬間、直ぐ様、私の放った衝撃波よりも攻撃力を上乗せして、そのまま私に向かって弾き返してきた。
成る程、確かに風の傷じゃ対応できないわね。
この様子だと法力の月輪も弾けるか、あるいはわざと受けたままにしていると考えるのが妥当だけど。もっと情報が欲しい。
ゆっくりと地面に着地すると同時に今度は凶羅の穿心角がくらぎの巨体の表面を切り裂く。しかし、私と違って確実に殺す気で振るった分、凶羅の攻撃は彼の身体を刻み、地面に叩き落とした。
「ぐぬうぅ…!」
「カウンター型の倒し方って分かるかしら?」
「そんなもん倍以上の攻撃か、弾き返せねえ破壊力を叩き込む以外に方法はねえだろうが!!……いや、俺の穿心角とテメェの蛮竜なら行けるか?」
「オーライ。山魚の時にやった爆流破で行くわよ」
「チッ。乗ってやらァ!!」
そう言って私と凶羅は妖怪を睨み付ける。