「で、妙さんは誰を選ぶの?」
未使用の浴衣を借りて淹れたてのコーヒーを味わっていたとき、唐突に突っ込んできた純に視線を向けると下世話や反応を楽しもうとしているわけではなく、純粋にコイバナをしたいらしい。
日輪も気になっているのか注意もせず、チラチラと私の事をベッドに腰掛けたまま見ている。女子会ってこういうことを言うのかしらね?
それに誰を選ぶって言われても三人とも強いし、向こうが本気で私を押し倒し……いや、コホン、倒すことに集中したら負ける可能性も有り得る。
「うーん、一番強いヤツかな」
「それだとバトル漫画の主人公じゃない!私としては光覇明宗の中でも優秀なお兄ちゃんをオススメするけど。日輪は誰を推す?」
「わ、私も言うのか!?……あの三人で糸色先輩に会うヤツは性格的に強羅だと思うが、流もアイツに劣らず強いのは知っている」
「優柔不断だなあもう」
「良いじゃないの、乙女は移ろいやすいものよ」
私は恋愛経験ほぼ皆無だけど。
分家も本家も蛮竜を使える私を欲しがっているだけだし。結婚したら弟に家督を譲って、私は争いを離れるのもありだけど。
この身の内に閉じ込めた戦いを求める闘争心は中々どうして、そう簡単に抑え込めるものじゃない。どれだけ戦っても抑えきれないときもある。
まあ、表に出したことはないけど。
「二人とも私の事ばかり聴くけど。好きな子とかいないの?光覇明宗の中で二人は人気みたいだし」
「私には不要だ」
「私も好い人はいないかな」
「ちょっと若いのにダメだよ。恋愛の一回か二回は経験していたほうが良いんじゃない?」
そういう糸色の家系は一度の恋を成就させ、生涯を一人と添い遂げるみたいだけど。私は恋そのものがまだなのよね。どうやったらお母様やしとりお婆様のように出会えるのかも分からないわね。
「ちなみに初恋とかあります」
「純はコイバナ好きなの?」
「わりと好きです。ついでに日輪も」
「ぐっ、私もか」
女三人集寄れば姦しいとは言うけれど。こうもコイバナに花を咲かせるなんて想像していなかったけど。私の初恋、初恋ねえ……。
「…………剣路お爺様かな?真っ直ぐキリッとした佇まいが好きだった、剣の腕だけは絶対に敵わないって思うぐらい強くて、しとりお婆様を一番大事に想っていて、私はああいう人と結婚したいな」
「糸色先輩のお爺様ということは緋村剣路なのだろうが、日露戦争に参加していた銃弾の飛び交う中を刀一本で勝ち残った剣客だったか?」
「えぇ、それで合っているわよ」
私達には想像も出来ない時代を生きているのよね。
まあ、予言の一族とか言われる糸色では最も激動する時代は昭和らしいけど。確かに妖怪もホムンクルスも自動人形も活発化しているのよね。