【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

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夜の時間 破

「…………」

 

みんなが寝静まった真夜中、私はくらぎの消滅した跡地に来ていた。理由は幾つかあるけど、あっさりと消えたアレが本物だったのかを怪しんでいるだけだ。

 

妖気や邪気は感じず、今回の件に奈落は関与していない事を願っていたとき、正門の扉をすり抜けて入ってきた真っ白な着物と白髪、初雪のように純白の肌をした少年が武法具庫に向かって歩いていくのが見えた。

 

白童子。

 

白面の者の仲間と同じように杜綱悟の身体に取り憑いていた少年風の妖怪を追い掛ける。光覇明宗の総本山を囲う結界を潜り抜けた力にも興味はある。

 

「糸色妙、儂をつけるのは構わんがこの目は常に奈落と繋がっているぞ。あやつも浴衣姿の貴様を見て、さぞ狂喜乱舞していることだろう」

 

「気色悪い事を言わないで貰える?あと自分の親玉を貶して貴方にメリットがあるとは思えないわね。謀反でも企てているの?」 

 

「儂とて相手は選ぶ。あの奈落は我らの兄の体を奪い、利用しているのだ。五百年も糸色の女に執着し、お前達の家系に女が産まれやすいのも奈落の遺した二つ目の願によるものだからな」

 

「うげぇ……」

 

「ふはっ。そうだろうそうだろう、儂らもあやつの色に狂った姿など気持ち悪くて仕方ないのだ。尤も儂と儂の片割れは奈落の支配は受けていない完全な個として存在している。これも兄のおかげだ」

 

どこか自慢げに話す白童子。

 

その兄にも私は狙われる可能性があるのかと思い、少し溜め息を吐いて武法具庫の前にやって来た白童子が右手を扉に翳した瞬間、彼の身の丈を越える柄の両端に穂先のついた薙刀が彼の右手に叩き込まれるような勢いで飛来した。

 

いや、薙刀というより両刃刀かしら?

 

「銘は筋雲重長巻。外道衆を名乗る妖怪の一匹の持っていた物だ。儂の死後は法力僧の物にされていたらしいが、やはり主人たる儂を求めて哭いていたな」

 

「外道衆。ウチの古書にも載っていたわね」

 

「さて残るのは儂の愛馬だけだが地下か」

 

そう言うと地面に薙刀を叩き下ろそうとした白童子の穂先を虎翼で受け止め、ニヤリと笑みを向けてあげると「全く今回の糸色は好戦的だな」と笑った。

 

「肩慣らしだ。儂の相手をさせてやろう」

 

「ハハハ、偉そうに言うわね」

 

結界を解いて薙刀を構える白童子に対して、私は穂先を下に向けて十文字槍を構える。こうやって強い相手と戦えるのは楽しいけど。

 

あの目の向こう側に奈落が見えるのよね。

 

「おい。要らん詮索はやめろ」

 

「あら、ごめんなさいね。あまりにも気配が気持ち悪かったから」

 

「チッ。奈落のせいだぞ」

 

白童子は悪態を吐いて、逆薙ぎに薙刀を振るってきた。

 

 

 




【概要用語解説】

本作に登場する単語や転生者、その親族に関する用語を少しずつ解説してきます。

筋雲重長巻(すじぐもかさねながまき)

戦国時代に活動していた外道衆より白童子が奪った柄の両端に巨大な刀身を持つ両刃刀。当時の白童子は普通の薙刀を使っていたものの、犬夜叉に砕かれて以降は此方を使用していた。

元ネタは「侍戦隊シンケンジャー」のアベコンベ


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