【完結】風薫る日陰に寄り添う妙花   作:SUN'S

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夜の時間 急

両端に刃を持つ薙刀の左右上下に振るわれる自由自在・変幻自在な攻撃を十文字槍の虎翼を振るい、薙刀の大きな穂先を絡め、柄を素早くねじり込み、白童子の片手を切り裂き、弾く。

 

しかし、切り裂いた筈の手は瞬時に再生し、飛び散った肉片が槍の如く尖り、私の事を間合いの外に押し出して八寸を撃つタイミングを狂わせてくる。

 

「瞬雪斬!」

 

「冷気を纏う技、雪女にでも習ったか?」

 

「うえっ、りゃあっ!!」

 

突進と切り下ろしを同時に行い、擦れ違い様に白童子の身体を斬るも斬った手応えよりも異様に柔らかな肉の感触に手元が狂い、慌てて虎翼を捻って白童子の纏う着物を穂先に絡めて、放り投げる。

 

しかし、今度は軽やかに家屋の屋根に着地した彼を見上げる形になり、妖しげに妖気を纏い始める薙刀の刀身は突風を巻き起こし、風の傷……いや、爆流破の攻撃に似た斬撃を二連続で繰り出してきた。

 

「ちょ、わっ!」

 

いつもジーンズだったせいか。浴衣の裾をはだけるように足を出し、地面を切り裂く程に強烈な突風を躱しながら、虎翼を地面に突き刺し、左右の袖の中にそれぞれ隠していた八本の手槍を白童子に投げつける。

 

「霊槍は巫女が握ってこそ真価を発揮する。儂を殺したいのなら直接貫くか、今はお前にしか振るえぬ蛮竜の金剛槍破を使わねば無理だろうな」

 

「ハハハ、私しか使えない(・・・・・・・)事には気づいているってわけね。けどね、私が使えなくなったら蛮竜は弟を選ぶわ、あの子は優しすぎるだけで誰よりも強い力を持っているのよ」

 

「相も変わらず、家族愛の強い血筋だ。少しは神楽や悟心鬼にも見習って欲しいものだ」

 

「そう思うから教えてあげれば?あと一瞬だけ私の足に視線を向けてたけど、奈落に乗っ取られたら手加減抜きで蛮竜の冥道残月破を使うから」

 

「安心しろ。儂の身体は儂のモノだ。兄は家族を大切に想う余り、奈落の干渉を受けやすい。だからこそ奈落を滅するためにお前の力を儂と儂の片割れは欲しているというのが今の現状だ」

 

「おい。オレの嫁に手出しは許さねえぞ?」

 

「流君、起きてたの?(今ナチュラルに私の事を『嫁』って宣言していたけど。まだ私と君は婚約も正式に結んでいんだけどなあ?)」

 

ゆっくりと私に近付いてきた彼は身に付けていたジャンパーを私に差し出してくれた。浴衣の帯を結び直す暇も無かったから正直に言えば助かる。

 

流君のジャンパーを着込み、白童子と流君に背中を向けて帯と裾を整えて正す。あとは胸元が見えていなかったことを願うばかりね。

 

「……チッ。儂はお前の煩わしい嫉妬に付き合うつもりはない。糸色妙、先程の頼みを受けるも受けないもお前の自由だ。だが、奈落はいつもお前を見ているぞ」

 

そう言うと白童子は夜空に消える。

 

一応、彼の愛馬を取り戻す事は防いだけど。流君に薙刀を取りに行くところを見られていたら、わりと困ったことになるわね。

 

「とりあえず、夜風は身体に障る。糸色は関守達のとこにさっさと帰れよ」

 

「え?いや、うん、ありがとおぉ!?」

 

「糸色!?」

 

少し視線を逸らす彼の反応に驚きつつ、素直にお礼の言葉を伝えて帰ろうとした瞬間、白童子の切り崩した地面の裂け目に草履を引っ掛け、私は流君に向かって、前のめりに倒れ込んでしまう。

 

彼がタンクトップ一枚だから、分厚い筋肉の力強さが直接伝わってくる。私の鍛えているのに細い腕とは違う、ガッチリと盛り上がった筋肉質な腕に包まれる感覚に戸惑いと、負けるかもという不安が汲み上げてきた。

 

「あっ、その……」

 

思わず、彼を見上げてしまった

 

「先に謝る。ごめんな」

 

「え、ごめっ、んんッ?!」

 

刹那、うなじを掴まれて彼の顔が迫ってきた。

 

流君と唇が触れ合った。でも、不思議と嫌な気持ちとかそういうものは感じなくて、むしろ安心感……そう、何処か安心してしまう様な感覚に私の身体から力が抜けてしまった。

 

「……っはあ…!…この、すけべ男…」

 

「ぐッ、確かに今のは無理矢理だった…すまッ?!」

 

「うるさい、ファーストキスの仕返しだ。ばーか!」

 

やられたことをやり返し、私は純と日輪の眠っている部屋に向かって走っている途中、白目を剥いて気絶する杜綱悟と強羅っぽい二人を目撃したものの、気のせいだろうと判断して部屋に向かった。

 

 

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