本家の大広間に集まった各分家の当主。
本条家や四乃森家は以前と変わらず私を支持しているものの、やはり他の分家や親戚筋の奴らは私を値踏みし、雅桐一族は糸色景の関係者という立場上、何とも面倒臭い相手である。
「おお、妙様。お久し振りでございます」
「お久し振りも何も無いでしょうに。私の動向を剣客兵器を通して探っていた事は知っているわよ。使うならもっとまともに使いなさい」
そう言うと私は誰も座っていない上座に座り、背後の金具に蛮竜を置いて全員の顔を見つめる。半年前の時より老人は少なくなり、代わりに年若く私と同じか少し年上の男女が此方を見つめている。
「今回、会合を開いた理由を先に告げるわ。奈落と白面の者、その両方が私に異なるアプローチを仕掛けてきた。まず、若いも老いも関係なく女は気を付けなさい、奈落の目的は『母親になる女を探す』ことだったわ」
私の発言に女性当主の侮蔑や軽蔑の意識は強まり、奈落の株も大妖怪として警戒していた分、あからさまに全員の態度と士気も一気に下がってしまった。
男も五百年近く自分達を狙っていた奈落の目的に驚愕し、頬を引き釣らせているものもいる。まあ、私も初めて対峙したときはドン引きした。
「成る程、此度の会合は対策か」
「ご当主一人では倒せなかったと」
「いや、二回とも撃退しているけど。シンプルに気持ち悪かったから、みんなにも気を付けるように伝えに来ただけよ。この世には性別を変える泉があるからね」
その呟きに今度は男達は戦慄し、奈落を倒す方法を真剣に話し始めた。本条家の当主は「その時は是非ともウチをご贔屓に」と温泉のパンフレットを差し出して、ちゃっかり利益を得ようとしている。
流石は明治時代に最強の剣士と謳われた一人の血筋を引いている。私もあそこまで大胆に話したりすることは出来ないわね。もっとも一番気になるのは奈落の話を始めてから黙っている一部の分家だ。
おおよそ目星は付けたけど。
「(奈落に取り込まれたわけじゃないが、あそこはもう機能しているのか難しい状態か、あるいは当主を含めて奈落の傀儡に変わり果てているか)」
もっと詳しく調べてもらえるように御庭番衆と剣客兵器の両方に頼んでおくとして、相も変わらず面倒臭い奴らばかりだな。
「ご当主様、少し宜しいか」
「なにかな?」
「婚約者候補の三人に言い寄られてるが、本命は誰にするつもりですかね!私としてはあの強羅というワイルドとロジカルを兼ね備えた男が良いと思うのですが!やはり、ここはご当主様の意見も聞きたい!」
「えー、この子を当主据えたの誰?」
フンスフンスと鼻息を荒くして問うて来る彼女を指差して、そう全員に問いかけると一斉に顔を逸らした。成る程、巻き込まれるのが嫌だから逃げたわね。