面倒臭い会合を終えて、食事を始める全員の事を見回していると私の婚約者候補について根掘り葉掘りと聞いてきていた彼女の姿は消えており、どこに行ったのかと結界を広げた瞬間、縁側で弟に鼻息を荒くして学生の恋愛模様を聞いていた。
アイツはもうダメだな。
「妙様、少し良いですかな?」
「本条君、どうしたの?」
「ウチの息子が女装を始めたんだがどう思う?」
「えっ、ウ~ン、えーっと、良いんじゃないの?」
「そうか」
多分、私に聞くべき事じゃなかったわね。そう静かに思いながらお酒を勧めてくるオッサンのお誘いを断り、私は爺やの淹れてくれたコーヒーを飲む。
缶コーヒーもいいけど。爺やのコーヒーは格別、至高の領域に達していると思うし、なにより爺やは絶対に私を裏切らないから安心できる。
「爺や、目星は?」
「既に済んでおります。ご当主の皆々様も事前に用意しています故、いつでも仕掛けを作動する準備は万全。一切の嘘も偽りも通じませぬ」
「そう。それなら良かったわ」
すうっと右手を掲げるように上げ、楽しく談笑する各分家の当主に向かって「始め!」と告げた瞬間、この中に紛れ込んでいた妖怪を当主のみ使用できる武具を振るい、粉々に破壊していく。
「全く、年寄りを労ってほしいわい」
「うるさいわよ。私に不満があるならサシでやってあげるって全員に言っているのに、ネチネチと小言や嫌がらせばかりする方が悪いのよ。爺だろうが婆だろうが生きている内は戦いなさい」
「子供の頃の事を未だに引きずってるねえ」
私の事を二十も年上のオッサンと結婚させようとした婆が何を言うかと文句を言いつつ、奈落の放った妖怪を外に放り出していく。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、今回は少ないね。しとり婆さんが居た時はもっと釣れてたと思うんだがね」
「ありゃあしとり婆さんの友人だったろう?」
大正か昭和初期かそこらに生まれた爺婆の言葉を無視して、庭園を踏み荒らす妖怪を見つめる。今回は人の形を真似るために力を使ったのか。
少しばかり歯応えがない。
「ご当主様、金剛槍破をお願いします!!」
「いやよ、貴方達持っていくし。自分達の業で倒せるなら倒してほしいんだけど」
そもそも招き入れたヤツは何処に行った?と周囲を見渡すと正門に向かって逃げていくオッサンを見つけ、爺やに「どの分家か分からないから捕まえてくれる?」と頼み、私は奈落の傀儡を見据える。
「ご当主様、奈落ってイケメンですね!」
「……貴女ねえ?あそこにいるのは五百歳も年上の妖怪。そんな妖怪に『お前は儂の母になるのだ』とか言われて嬉しいの?嬉しいなら着いていって良いわよ」
「すみません。やっぱり嫌です」
そりゃあ、そうでしょうね。