人類が宇宙に進出してはや20年。
人類は銀河にある数々の惑星から様々な資源を掘出し一部の大企業が覇権を握っていた。
その中に当然悪の企業や組織、団体なんかも現れる。
その組織に虐げられていた人々は反旗を翻して企業と闘争の日々を送っていた。
数多くの中小企業はたまた大企業が出てきては消えていく中、一つだけ残り続ける企業があった。
その企業はグリーンアップ社、倉庫整理から事件現場清掃まで何でもこなす大企業。
その企業はいわゆる便利屋だった。
金さえ用意出来れば殺人現場の清掃、大企業の不祥事の隠蔽まで、本当に何でもする。
だがそれは職員の精神衛生を度外視したもので成り立っている為、離職率が異様に高い。
そして今日も新しく職員が就職して来た。
その新人の評価について企業設立当初から居る古参職員が語った。
『あいつは何か抱えているが詮索しちゃならん・・・きっと痛い目を見るだろう。』と。
大企業の一つロボトミーコーポレーション。
人類が直面してたエネルギー問題を宇宙に進出してから僅か5年で解決した最初の企業。
その本社に“彼”はいた。
『ロボトミーコーポレーションにようこそ、グリーンアップ社の従業員の方ですね?』
本社のある巨大な玄関で特徴的な作業服を着た男はロボットが投げかけたその問いに手話で答える。
(はい)
『ではネームプレートをご提示ください。』
彼は自身の胸元からネームプレートを取り出して見せた。
『はい、グリーンアップル社のケビン・オースさんですね、アンジェラが応接室でお待ちしています。
案内はケニーにお任せください。』
(ありがとうございます)
先程と同じく手話で返事をして中に入る。
中に入ると青い髪をした男性がいた、恐らく先程のケニーと言う人物だろう。
「ケビン様ですね?応接室はこちらになります。」
青い髪をした男性に連れられて豪華そうな部屋が目に入る。
「こちらが応接室となります。私は仕事があるので失礼いたします。」
(こちらこそありがとうございました)
手話で礼を済ませてドアをノックする。
『開いてますよ。』
中から返事があったので開ける。
『ようこそ我が社へ、グリーンアップル社のケビン・オース様。』
「・・・」
『私が代表なのに驚いていますか?無理もありません、見ての通り私はAIです。この体はホログラムです。』
(すみません、少し驚いていました。)
そこで彼は一つの懸念を払しょくするため声を出すことにした。
「手話は・・・分か・・ります・・か?」
「ウッ・・・ゴホッゴホッ!!」
『はい、手話は分かります、ですので無理におっしゃらなくてもいいですよ、ケビン様。』
先程の咳で出た血をハンカチで吹き取り話を続ける。
(すみません・・・近頃は手話をアップロードしていないAIが多かったもので)
『それは大変でしたね。さて仕事の話をしましょうか。』
(分かりました)
『ではこちらの書類を熟読の後サインをお願い致します。』
そう言って指さした書類に目を通しサインをする。
『ではここからは他言無用でお願いします。先ずは仕事内容。』
『今回の清掃作業はO-02-40の世話と収容室前の清掃をお願い致します。』
(分かりました、貨物はどうされますか?)
『貨物は指定した場所に陳列してくだされば結構です、それと。』
(指定ですか?)
『個人の判別の為ネームプレートを担当職員にお渡しください、ご遺族の方への説明の為です。』
(分かりました、もう炉は搬入していますか?)
『はい、搬入済みです。』
(では、案内を『お待ちください。』・・・まだ何か?)
『念の為作業の前と後で検査を受けていただきます、よろしいでしょうか?』
(分かりました、幾らでもいじっていいですよ。)
『いじりませんよ。』
(ハハハ、すみません)
『では先程と同じくケニーに案内させます。』
(分かりました・・・)
「誠心・・・誠意・・お掃除・・させて・頂きます。」
「ゴホッゴホッ、ゴポッ!?」
彼ケビンは無理して喋ったせいで吐血する。
指の隙間から血が垂れ大理石でできた床を汚す。
『大丈夫ですか!?』
(床を汚してしまい申し訳ありません)
『・・・本当に大丈夫ですか?体調がすぐれなければ日程の変更も可能です。』
(いや、少し喉を切っただけです、少し休めば仕事もできます、だから大丈夫です)
『検査の結果から判断いたします。』
『ケニー。』
「何ですか~・・・って血塗れじゃないですか!?大丈夫ですか!?」
『医務室で精密検査をしてください、さすがに心配です。』
「分かりました、立てますか?医務室に行きます。」
医務室で
医務室ではケビンの精密検査を実施したがどこにも異常はなかった。
(では現場に案内してください)
「わ、分かりました。こっちです。」
【噓でしょ、あれだけ吐血しておきながら異常が無いって・・・何があったんだろ。】
着いていくこと数分後
「ここから降ります、少し揺れますが大丈夫ですか?」
(はい、さすがにそこまでヤワじゃありません)
「では案内致します手すりに掴まってください。」
ケビンsids
地下深くで
その後もしばらくケニーさんに案内されて仕事現場にやって来た。
「この廊下の先が現場です、体調は大丈夫ですか?」
(はい、万全です)
心配されたが大丈夫だ、もう血は出ていないから。
「では何かあればご連絡ください、では・・・」
廊下の先は血塗れでどこにでも死体が転がっていた、特に首無し死体が多かった。
じゃあ・・・お掃除スタートだ。
お掃除の手順としては最初にすることはどの現場でも同じだ。
バケツディスペンサーと廃棄ビンディスペンサーを設置する、少し重いが慣れた。
そして我が社から送られて来た炉に火を入れ近場にある紙くずなどの資源ゴミを放り込んでいく。
血だまりを歩いたせいで足跡がついてしまうが後で拭けばいい。
そして死体などの生ゴミを廃棄ビン*1に入れていく。
遠い所にある五体満足な死体は担いで炉に入れていく。
5体ほど遺体を焼却したので手を合わせた。取り敢えずひと段落ついた。
どれもネームプレートを取っている、生存確認の為だろう。
5分程の休憩を終えバケツディスペンサーからバケツを取り出す。
零さないように気を付けて廊下の端に何個か置き持って来たモップを手に取る。
後はもうモップが血だらけになるまでつかった後バケツで洗浄するを繰り返す。
3杯ほどバケツを駄目にしてしまったが廊下の血しぶきは全て洗浄が完了した後は薬莢や紙コップのような資源ゴミと弾痕が壁に傷を残しているのみだ。
2つほど廃棄ビンをごみで一杯にして資源ゴミの回収は終わったので駄目になったバケツと廃棄ビンを炉に入れて焼却した。
後は弾痕の処置だ。
オフィスから持って来たトランクの中からヒートガンを取り出す。
ヒートガンは高温のビームで弾痕などを消すことが出来る道具だ、これがなきゃ弾痕処置ができない。
胸ポケットから遮光グラスを取って目にかけ作業を開始する。
火花が散るが気にならない。
弾痕の処置を済ませてトランクに突っ込む。
廊下の清掃は完了したので後はO-02-40と言う奴が居る収容室に入ることにする。
確か・・・パスワードがあったはずだが・・・指紋認証に変わっている、まあ書類の不備はいつもの事なので気にしない。
手からゴム手袋を外して右手をかざすと圧縮空気が抜ける音と共にドアが開かれる。
中に入り何をするか思い出しながらもう一つのロックを解除する。
やることは・・・確か対象の洗浄と餌やりだったな。
ドアが開かれ中の様子が見える。
そこにいたのは黒い毛玉だった。
書類には目が沢山あると書いてあったが開いていないので寝ているのだろう。
毛玉の隣にはランプが置いてある。
よしお風呂の時間ですよ~・・・あれ?
目の位置が分からないからどうしたもんか、起こす?起こすか。
「お・・お~い・・・起きてくれよ・・っづ!グホッ!ゴホッゴホッ!」
やばい、吐血してしまった。
口を拭いながら黒い毛玉から離れてモップを手に取る。
床の血をモップで拭き終え毛玉を見ると毛玉は起きていた。
沢山の黄色い目がこちらを品定めするように見据えていた。
「あ”~・・・気にしないで・・・くれ・・・身体を洗って・・ご飯を・・・食べよう。」
何だかいつもと違って喋りやすい、「グポッ!?」・・・そうでもなかった。
また吐血したので掃除してと・・・身体を洗わせてもらおう。
蛇口を捻って水を出したがお湯は出ないようだ・・・お湯にしておこうか。
「身体を・・・洗うから・・目を閉じてて。」
そう言うとちゃんと目を閉じた。えらいえらい。
炉で温めた水をかけて大きな汚れを落とした後備え付けのシャンプーを使って泡まみれにする。
しばらくわしゃわしゃした後、お湯で泡を洗い流す。
同じく備え付けのタオルとドライヤーを使いずぶ濡れになった毛・・・いや羽かな?を乾かす。
最後にご飯を上げればいいらしい・・・この食材の山から使えばいいのかな?
食材を厳選し炉から火を取って・・・ってこの子ランプを差し出してきた・・・使えってこと?
まあ取り敢えずランプの灯を使うか・・・どうやって燃料を入れるんだろ・・・ん?またもやこの毛玉が何かしている。
自分の体からくちばしを使って羽をむしり取りランプの中に入れると火力が上がった。
・・・いささか知能が高い気がするがそんなの気にしちゃ負けだ、何より
ランプの灯を使い、フライパンに掛けた油を熱する。
そこに卵を3個ほど入れスクランブルエッグみたいにする。
ぐちゃぐちゃになった卵に俺の昼食のおにぎりを入れて炒める、俺のおにぎりはそんなに塩をかけてないから変な味はしないだろう。
卵の残骸と合体した白飯に適当な大きさに切ったレタスをいれ炒める。
最後に塩コショウを適量入れてチャーハンの完成・・・あれ?動物って塩辛いのだめだっけ?
そんなどうでもいいことを考えながら紙皿にチャーハンを盛り付け毛玉に与える。
さて俺もいただこうかな。
「頂きます。」
うん・・・我ながら美味しい・・・が、喉切ってるから塩コショウがしみる・・・痛い。
毛玉の方は・・・食べてないな、もしかして安心して食べれてない?
食べてるときにあまり喋りたくないがやるしかない。
「安心・・・して・・毒は・入って・・ない、ゴホッゴホッ!・・・私が言えた物じゃ・・・無いけど。」
毛玉用に盛り付けているチャーハンを一口食べて安全な事を証明する。
そのことで安心したのか、毛玉が一口食べると・・・数秒動きが止まった。
硬直が終わるとさっきまでの様子はどこへ行ったのかフードファイターもびっくりな速度で食べ進めていく。
あっという間に空になった皿を眺め続いて俺のチャーハンに目を向ける。
「・・・食べる?」
3分後
あれから俺の分のチャーハンまで平らげた毛玉は満足したのか横(?)になった。
「私は・・・残ってる・・・仕事をするから・・もう帰るね・・・」
そう、餌やりを終えたので後はもう資源つまり貨物を整頓するだけで終わりだ。
すると先程使わせてもらったランプを差し出してきた。
「・・・これは・・・君のでしょ?」
だが梃子でも動かないようだ、グイグイ押し付けてくる。
「君のを・・・取ってしまうと・・・私が何て・・・いわれるか・・・分からない。」
「ゴホッゴホッ!・・・だから・・・受け取れない。」
見てわかるくらい落ち込む毛玉。
俺はフライパンや包丁を片付けて立ち上がる。
ドン!
前からもたれかかるように体当たりしてきた毛玉。
「・・・何?」
くちばしにはごみがついていた、取ってくれたのだろう。
「ありがとう・・・いい子だね?」
頭・・・が何所か分からないので取り敢えず撫でくり回す。
気持ち良さそうに沢山ある目を細める毛玉。
「・・・あんまり時間を・・・掛けられないから・・・帰るね。」
撫でるのをやめドアから収容室を出ていく、あの毛玉は引き止めなかったから本当にいい子だ。
後は散らばっている貨物を指定区画に並べてケニーさんのいる廊下に向かった。
玄関で
『ケビン様、今回はお疲れ様です。』
(疲れていません、大丈夫ですよ)
「ゴホッゴホッ・・・ゲホッ!?」
『お疲れの様なのでご帰宅は部下に行わせます、短い間ですがお休みください。』
「すみません。」
「この車にお乗りください、ご自宅までお送りします。」
(ご迷惑をお掛けしてすみません)
「いえいえ、仕事ですから。」
「少し・・・疲れたので・・・寝てもよろしいですか?」
「ええ、お休みになって下さい。」
その会話から少し時間が経つと寝息が聞こえてきた。
「・・・良い夢を。」
その時ケビンの帽子にはランプのアクセサリーが付いていてその灯は偶然にもケビンの胸と同じ様に揺らめいていた。
ケビン・オース
Yi Xi ちゃんみたいな感じ。