PokéDun LEGENDS Realization 作:ゲーマーN
●アカリ
●ブルー
●レオ
モンスターボールとは、ポケモンを捕獲し、使役するための球状装置の総称だ。全ポケモンが有する「小さくなる習性」を利用しており、どんなに大きいポケモンでも対象の体に投げ当てるだけで内部に収納することができる。
前世の世界では最も安価なボールが200円で購入できるほど普及しており、世界中で広く用いられる必需品だったが――言わずもがな、この世界にそんなものが存在するはずもない。
●ショウ
●ジン
名前通り、どんぐりのような殻斗を持つ様々な色の球形の木の実――ぼんぐり。モンスターボールが市販される以前は、この実を割って中身を取り出し、特殊な装置を埋め込んだものがポケモンを捕獲する道具として用いられていた。これはポケモン史の授業でも取り上げられるほどには有名な話だ。
ヒスイ式モンスターボールの製法においても基本は同様であり、細部こそ異なるものの、やはり基礎としてぼんぐりは欠かせない。
●レオ
●ジン
●ショウ
●アカリ
●ブルー
一先ず、今はここまで。これ以上の話し合いは、各自の調査を踏まえて行えばいい。他にも問題は山のようにあるが、モンスターボールが手に入らない限りはどうしようもない。そう判断したハルトは、アルセウスフォンをカバンにしまうとすぐに家を飛び出した。
☆*1
前世では、長い年月をかけて人間とポケモンの棲み分けが進められてきた。人の暮らす町の中にも野生のポケモンは生息しているが、人を襲うようなことはまずない。地域によっては、ポケモン除けの効果を持つむしよけスプレーを撒き、住民の安全を守っているところもあるくらいだ。
対して、突如としてポケモンが出現したばかりのこの世界で、両者の共存も棲み分けもされているはずがなく――それは、気性の荒いポケモンが人の生活圏にいるのを意味していた。
「ニドッ!」
体色が紫で胴体に斑点模様があるウサギに似た姿のポケモン――ニドラン♂。草むらから飛び出してきたニドラン♂は、最大の武器である頭部の角を突き出して真っ直ぐに突進してきた。不意を打った一撃は、しかし彼女の警戒を抜けるには足りず――
「チコ!」
大きな岩がニドラン♂の角を防ぎ止めた。”つのでつく”なら砕けていたかもしれないが、威力からして今のは”つつく”と見て間違いない。岩に深く突き刺さった角が引き抜かれるよりも早く、ハルトは指示を飛ばす。
「ローリエ、”たいあたり”!」
「チコーッ!」
「ニドッ!?」
自らが生み出した岩に全身でぶつかっていく
「”はっぱカッター”!」
「チッコー!」
風に乗って放たれる無数の葉刃。幾枚もの鋭利な葉に切り刻まれたニドラン♂は、成す術もなくその場に崩れ落ちる。最後まで気を抜かずに様子を窺うローリエだったが、ニドラン♂に反撃の兆しは見られない。瀕死状態に陥ったようで、ふっと輪郭を滲ませ――やがて姿を消した。*2
「⋯⋯ふう。ローリエ、お疲れ様」
「チコチコ!」
「⋯⋯この調子なら、今の
大きな道路を歩いている間は襲われることもなかったが、一歩自然に踏み入れた途端にこれだった。建物の間を抜けると、足元は草に覆われ、畑の脇を縫うように伸びる細い道に出る。我が家の畑への近道――徒歩数分にも満たない短い道程の間に、ニドラン♂は現れた。
前世ぶりの戦いは戦闘勘を取り戻す一助になったものの、やはり技の選択肢と能力値という点では不安が残る。野生の個体でもLv15以上、それこそLv20を超えるようなポケモンになると正面から戦うのは厳しいだろう。なるべく早いうちに育成する必要がありそうだ。それに――
「けど、こんな住宅地のすぐ近くで野生のポケモンに襲われるとなると⋯⋯」
オレンの実やモモンの実を探すのも急いだほうがいいかもしれない。ポケモン由来の毒の多くを解毒できるモモンの実は勿論、キズぐすりなどの回復薬の調合に必要であることに加え、殆どのポケモンが好んで食べるオレンの実。それらがあれば、多少なりとも野生のポケモンによる被害を抑えられるはずだ。この考えも、チャットに打ち込んで仲間たちに共有しておく。
「っと⋯⋯着いた着いた」
軽く息をつきながら顔を上げると、丁度視線の先には見慣れた畑が広がっていた。雑草の生い茂る荒れ地ではない。丁寧に耕され、畝ごとに区切られた土壌に様々な作物が植えられた、家庭菜園としてはかなり広めの畑だ。日頃から父と二人で畑仕事をしているハルトは、勝手知ったるその中を軽やかに進んでいく。
「んー⋯⋯畑は荒らされてないみたいだね。地面から震動も伝わってこないし⋯⋯ディグダとかもいなさそうかな」
もぐらポケモンのディグダなど地中を行動範囲とするポケモンは、掘り進む過程で特有の震動を伴う。こうした自然現象を手がかりにポケモンを探し出すのも、トレーナーの腕の見せ所だ。
因みに、ディグダによって耕された土は非常に良質で、そのフンも天然の肥料となる。質の良い野菜が育てられるため、前世では殆どの農家がディグダを飼育していたほどだ。もっとも、ディグダが好む品種の作物もあるので、完全な益獣とは言い難いのだが――それはさておき。
「トマトがマトマの実になったりはしてないかぁ⋯⋯。こっちの生き物が前世のそれに変わるってのはなさそうだね。少し期待してたんだけど⋯⋯そう都合良くはいかないか。――はぁ⋯⋯」
味はともかく、マトマの実はトマトとよく似た木の実だ。トマトの木にしれっとマトマの実が混ざるようなことがあれば、蜜柑の木からオレンの実が、桃の木からモモンの実が――といった具合に、既存の植物から前世で見た木の実などが採れるかもしれないと考えていたのだが⋯⋯。
トマトがトマトのままである以上、この可能性は潰えたと判断するべきだろう。残念ながら、現実にはそこまで夢のある出来事は起きないらしい。
「⋯⋯大きい方の畑も見に行ってみるかな」
畑⋯⋯とは言ったものの、もう何年も前から使われておらず、雑草やら何やらが生え放題の典型的な耕作放棄地だ。岩や切り株がないだけ牧場経営ゲームの初期状態よりはまだマシ――いや、地下茎の根深いカヤが大繁殖している分、むしろこちらの方が酷いかもしれない。
せいぜい徒歩数分の距離。ここまで来たのだから、ついでに見て回るのも悪くないだろう。そう考えて、ハルトは少し離れたところにあるもう一方の畑へと足を向ける。
「これは⋯⋯」
確かに背の高い草は生えていたが、昨日まではここまで酷くはなかった。いまや畑の隅から隅まで、全長3mを超える謎の草がびっしりと生い茂っている。その上、まるで人を誘うかのように、一人が通れるほどの隙間がぽっかり空いており――
「二人とも、出てきて!」
「カゲーッ!」
「ミジュマルッ!」
見るからに異変が起きている以上、念には念を入れるべきだろう。呼び出した
この景色を――否、この空間を知っている。目を見開き、ハルトはその正式名称を口にした。
「不思議のダンジョン!?」