PokéDun LEGENDS Realization   作:ゲーマーN

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第4話 ここって もしかして 不思議のダンジョン?

 ――荒れた畑 1F*1

 

 ローグライクゲームというジャンルがある。マップが固定された構造ではなく、通路や敵、罠、アイテムなどの配置がプレイのたびにランダムに組み替えられ、まったく同じ構成のダンジョンが現れることはない。基本的には、最深部に到達するのが攻略の目標となる。

 不思議のダンジョンとは、ゲーム作中におけるランダム生成ダンジョンの名称であり、同時にタイトルとしても使われるフレーズである。

 

ポケトモ

日本(6)

 

あの⋯⋯

何故か畑が不思議のダンジョン化してたんだけど⋯⋯

 

●アカリ

ふ、不思議のダンジョンですか!?

 

●ジン

え、不思議のダンジョン……!?

 

●ショウ

不思議のダンジョン⋯⋯?

 

●ブルー

なにそれ?

 

●レオ

確か、ローグライク系のゲームシリーズだな

俺もプレイしたことはあるが⋯⋯

 

 

「⋯⋯レオって、ゲームとかするんだ」

 

 思わず口に出たハルトの呟きは、やや失礼な響きを含んでいた。⋯⋯とはいえ、それを書き込まない程度の分別はある。画面を見るかぎり、過去生で実際に不思議のダンジョンを冒険した経験を持つジンとアカリが、他の面々に説明しているようだった。

 ならば、自分はここの探索に専念すべきだろう。そう決意したハルトは、もう一度だけ仲間たちへ報告を打ち込み――

 

 

何か道具が落ちているかも

ちょっとダンジョンの奥まで潜ってくるね

 

 

 アプリを閉じると、改めて正面の広場へと向き直った。部屋の中には道具らしきものも、野生のポケモンの姿も見当たらない。このまま先へ進んでも問題はなさそうだ。

 残るは隊列だ。植物の通路という点から、くさタイプやむしタイプのポケモンが生息している可能性が高い。ほのおタイプのレーヴァ(ヒトカゲ)を前衛に据え、相性を補うため後衛にはリップル(ミジュマル)を配置。そして、不意打ちへの備えとして、トレーナーであるハルトの後方をローリエ(チコリータ)が守る。

 

「⋯⋯行こう」

 

 通路を真っ直ぐに進むと、ほどなくして次の部屋へと辿り着いた。外からでも見える位置――と言うよりも、入ってすぐのところで「Zz⋯⋯」と1匹のポケモンが寝息を立てている。小ぶりなウツボカズラをひっくり返したような黄色い頭部が特徴のそのポケモンの名は――

 

「マダツボミ⋯⋯!」

 

 マダツボミ――フラワーポケモン。小さい虫を細いツルで捕食する食虫植物の一種で、動くものに敏感に反応し、獲物を捕らえるときの動きは目にも止まらないほどに素早い。細長い茎の胴体も相まって、戦闘態勢のマダツボミに攻撃を命中させるのは非常に困難だが――寝ているのなら話は別だ。睡眠中は脚を地面深くまで伸ばして水分を補給しており、すぐには動けなくなる。目を覚ます前に、効果抜群の一撃で仕留めるのが最善だろう。

 

「レーヴァ、”はじけるほのお”!」

 

「カゲェッ!」

 

「ツ、ツボッ!?」

 

 叫びとともに、レーヴァの口腔から炎の塊が吐き出された。火球は寸分違わずマダツボミの身体を捉え――火花のように弾ける。命中の衝撃で目を覚ましたものの、炎の勢いに巻かれて苦悶に喘ぐばかりで反撃には至らない。寝込みを襲う行為であるため気が引ける部分はあるが、不思議のダンジョンでは可能な限りダメージを負わないよう立ち回るのが基本中の基本だ。それを承知しているリップルは、指示を待たずに追い打ちをかけた。

 

「ミジュッ!」

 

”れんぞくぎり”

 

 一閃――お腹の貝殻で切りつける。この貝殻は「帆太刀(ホタチ)」と呼ばれており、ツメと同じ成分で形成されている。盾としても使えるほど堅牢なその小刀の一振りが、先の炎で弱ったマダツボミの残り体力を根こそぎ刈り取った。

 

「レーヴァ、リップル、お疲れ様」

 

「カゲカゲ!」

 

「ミジュ~!」

 

 レーヴァとリップルに労いの言葉をかけつつ、周囲へ軽く視線を巡らせる。この部屋にも特に変わった点は見当たらず、道具の影もない。強いて言えば、現時点でも本来の畑より広く感じられる程度だが――外観と内部構造に齟齬があるのは、不思議のダンジョンではよくある話だ。それこそ気に留めるほどのことではない。

 

「⋯⋯ここのポケモン、思ってたよりもLvが高いみたいだね。ローリエはともかく、レーヴァとリップルまでLvが6に上がってる」

 

 続けて、ポケモン図鑑アプリで戦闘で得た成果を確認する。レーヴァの炎に耐えた時点で予想はしていたが、やはりここに生息するポケモンはLvが高いようだ。過去生でLvを上げた経験からか、転生したポケモンは通常よりも成長が早い傾向にあるとはいえ、本来ならこれほど少ない戦闘回数でLvが上がることはない。にもかかわらずレーヴァとリップルはLv6、ローリエに至っては7に達している。タイプ相性が有利だからと油断すれば、間違いなく痛い目に遭うだろう。

 

「Lv上げにはちょうどいいかな。⋯⋯よし、このまま先に進もう。もちろん、みんなも探索中は警戒を怠らないようにね」

 

「チコチコ!」

 

「カゲッ!」

 

「ミジュマル!」

 

 探索を再開してから数分後――キャタピーやポッポといったポケモンを退けながら進むうちに、他の通路とは明らかに雰囲気の異なる通路を備えた部屋へと辿り着いた。その通路の入口の両脇には畑で使う緑の棒――俗にイボ竹と呼ばれる支柱が立てられており、さらにその上部を三本目のイボ竹が渡され、鳥居のような形を成している。

 一見して他のものと異なる怪しい通路。間違いない。あの二脚鳥居支柱の通路こそが――

 

「あれがここの階段か⋯⋯」

 

 不思議のダンジョンを進むには、まず次の階層へと通じる”階段”を見つけなければならない。だが実際には、それが本当に階段の形をしているとは限らず、裂け目や吊り橋、或いは崖下・崖上へと続く自然の坂道などというのも珍しくはない。

 今回の場合、あれほど分かりやすい目印があるのだ。十中八九、あれこそが次の階層へと続く階段と見ていいだろう。何の躊躇いもなく、ハルトたちは緑支柱の鳥居を潜り抜けた。

 

 

 

 ――荒れた畑 2F

 

「あれって⋯⋯!?」

 

 鳥居の通路を抜けた先、最初の部屋にそれは落ちていた。どんぐりに似た、しかし堅果の部分がソフトボールほどもある木の実が、合計で5つ。まさか――と胸を高鳴らせながら拾い上げる。掌に収まる大きさと、指先に伝わる感触は、記憶にある通りのものだった。ハルトの手の中にあるのは間違いなく――

 

「ぼんぐりだ⋯⋯!」

 

 いきなり探していたものが見つかった。喜びに沸き立つ心を宥めつつ、ひとつひとつ丁寧にカバンへとしまっていく。これでクラフトの材料として最低限の数は確保できた。とはいえ、本当に最低限しかない。これからを考えれば、もう少しばかり集めておく必要があるだろう。

 取り敢えずはとアルセウスフォンを取り出し、不思議のダンジョンでぼんぐりを手に入れた旨を伝えようとした、その時――

 

「キャッタァァァ!!」

 

「!?」

 

 振り向けば、アゲハチョウの幼虫によく似た、緑色の皮膚に、大きな黒い眼状紋と赤いY字状の触覚が特徴のいもむしポケモン――キャタピーの姿が。体が軟らかく力も無いため、自然界では常に捕食の対象となっており、通常自分から戦うことは滅多にないはずだが――敵意を剥き出しに口から吹き出した糸を、レーヴァが咄嗟に”はじけるほのお”で焼き払う。

 

「うかうか連絡もできないね⋯⋯三人とも、行くよ!」

 

「カゲッ!」

 

「チコ!」

 

「ミジュ!」

*1
【推奨BGM:小さな森】ポケモン不思議のダンジョン 救助隊DXより




ハルトの手持ち
レーヴァ (ヒトカゲ)  Lv7
ローリエ (チコリータ) Lv8
リップル (ミジュマル) Lv7
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