インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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楯無さん強すぎて死ぬぅ!!


第四十六話 生徒会長がクソ強すぎた件

「学園西側、不審者無し」

「東も同じだ」

「南も同じく」

 

学園のロッカールームの激闘の中、箒、鈴、セシリアは上空からの新手に備えていた。

 

「学園の皆や来客の避難は順調みたい」

「一夏さんと悠さんは無事なのでしょうか」

「分からないが、私達は私達の出来る事をしよう」

「悠は強いから何とかなるでしょ」

 

箒の言葉に頷くセシリアと鈴のもとに司令塔から通信が届いた。

 

『学園の北側から未確認のIS反応を確認!』

「三人とも、油断するな」

 

このタイミングで来るということは、間違いなくテロリストの仲間。

 

「食い止めるわよ」

 

緊迫感が三人を包む。この感覚は銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の時と同じ。

生存を約束された模擬線ではなく、命のやり取りを行う戦場。

命喰うか喰われるかだ。

 

それぞれのハイパーセンサーに新手のIS反応がヒットする。

一体どのような面構えなのか。敵にカーソルを合わせ、ハイパーセンサーを望遠モードにして確認する。

 

「なっ!?あれは!」

「セシリア?」

 

ハイパーセンサーに写るその機影に、セシリアは思わず目を見開いた。

何故ならその機体を彼女は良く知っているから。

 

ブルー・ティアーズより濃い藍色。カスタム・スラスターは蝶の羽を模し、腰には6機の小型の自立端末兵器。

ティアーズ・コーポレーションの資料で見た、セシリアの機体とは別のBT試験機。

 

「あ、あれは。BT2号機、サイレント・ゼフィルス!?」

「BT2号機って。セシリアのブルー・ティアーズの後継機だというの!?」

「そんな物が何故こんなところに!」

 

セシリアが箒の問いに答えることはなかった。正確には出来なかった。

 

ブルー・ティアーズの強化プランだったものを2号機として組み上げたサイレント・ゼフィルスはティアーズ・コーポレーションで開発を進めていたIS。

他企業に譲ったという報告は来ていない。勿論、この日この場所であの機体が来るなど聞いたことはない。

 

今起きてる状況を踏まえて出せる答えは一つ。テロリストに強奪されたということ。

 

(なんということか、まさか奪われた?なんという失態!これではイギリスの世界的信頼が地に落ちてしまう!)

「セシリア何してんの!撃って!」

「は、はい!」

 

鈴の龍砲から放たれた不可視の弾丸にセシリアは我に返り、スターライトMarkⅢの引金を引いた。

だが放たれた衝撃砲とビームはゼフィルスのシールド・ビット【エネルギー・アンブレラ】に阻まれる。

 

「なんなのよあいつ!」

「ならば、こちらも!」

 

腰のミサイルビットを起動し、ゼフィルスに撃つ。それを迎撃しようと、ゼフィルスは専用ライフル【星を砕く者(スター・ブレイカー)】で迎撃する。

 

BT制御による不規則な軌道を持った四発のミサイルはスター・ブレイカーの射撃を躱し、目標に飛翔する。

 

セシリアは必中を確信したが、次の瞬間目の前で信じられない現象が発生した。

ビームが弧を描いて曲がり、撃ち放たれたミサイルビットを全て撃ち落としたのだ。

 

「「なっ!?」」

「今のはまさか。BT兵器の高稼働時にのみ可能な偏光制御射撃(フレキシブル)!?」

 

あれはBT兵器の到達点。発射されたレーザーをいのままに歪曲、操作出来るという。正しく机上の空論と呼ばれた超上技術。

 現在公式記録でのBT適正の最高率はセシリアだが彼女は発現できていない。

ましてや不埒な略奪者にフレキシブルを使用されたという現実がセシリアの胸に深々と突き刺さった。

 

「くっ!」

 

屈辱に奥歯をグッと噛みしめ、レーザービットを分離してサイレント・ゼフィルスに接近する。

 

「「セシリア!?」」

「はあぁぁぁ!!」

「ふん」

 

セシリアが雄叫びをあげ、スターライトMarkⅢとレーザービットの五門同時制御射撃を撃つ。

サイレント・ゼフィルスはつまらなそうにビットを操作。相手より二機多いレーザービットと二機のシールドビットで無力化する。

 

繰り出される敵のフレキシブルにセシリアは歯噛みする。

何故自分は使用できないのかという不条理な怒りを込めたセシリアの射撃も相手の動きとシールドビットに阻まれ、逆にセシリアのビットがフレキシブルで全て落とされた。

 

「そんな!」

「こんのぉ!!」

 

敵のビームを避けながら、鈴は崩拳と龍砲による同時不可視射撃を乱れ撃ちする。

だが見えないはずの不可視の砲撃を襲撃者は弾道予測と特徴的な大型スラスターでヒラリヒラリと正しく蝶のように躱していく。

 

「くぅっ!当たらない!!初見の衝撃砲がここまで当たらないってあるっ!?」

「ならば、接近戦で行くしかない!」

 

紅椿が全身の展開装甲を展開し瞬時加速。

MAXスピードで襲撃者に双刀を降り下ろし、ゼフィルスはスター・ブレイカーにブレードを展開してそれを受け止める。

 

「これ以上好きにはやらせん!」

「篠ノ之束の妹か。第四世代機とはいえ、十全にこなさなければ意味もない」

「だからなんだ!」

 

箒の斬撃を軽々と躱しらいつの間にか周囲に配置された敵のビットから放たれた六条の紫光が紅椿に突き刺さって爆ぜた。

 

「箒!うぁっ!」

「きゃあ!」

 

乱れ撃ちされた敵のフレキシブルレーザーがヒット。三機は襲撃者の前で体勢を崩された。

 

「三人がかりでこれか。つまらんな」

 

襲撃者はセシリア達を一瞥した後、蝶のような大型スラスターを唸らせてその場を離脱する。

 

この戦いで三人は分かった。奴は悠よりも強い可能性のあるテロリストだと。

 

「あいつ、学園に!」

「逃すものですか!!」

 

箒達は急ぎ機体を立て直し、襲撃者の後を追った。

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

「楯無さん!!」

「嘘でしょ!?」

 

突如現れたIS学園生徒会長の更識楯無をオータムは一時の迷いなく装甲脚を突き刺す。

突き刺された楯無さんは力なくブランと吊るされ、二人は彼女の絶命を確信した。

 

だがオータムは違った。全身を突き刺し、排除したというのに、拭いきれない違和感を感じた。

 

何故こうも容易く殺せたのかと。

 

ロッカールームは完全にロック、唯一破壊された扉は瓦礫により隙間なく塞がれている。

この隔離されたこの空間に、誰にも気づかれず音もなく入りこんだ奴が何故こうもあっさりと。

そしてなにより、一番の不安材料は。 

 

「なんだ、この手応えの無さは?」

「あら、穴だらけになっちゃったわ。これじゃあお嫁に行けないわね」

「!?」

 

何が起きているのか? 

何故生きているのか? 

何故何事も無かったかのように笑っているのか? 

 

「楯無さんって僕と同じ………」

「違うわよー………でも、人ではないわね」

 

目の前の非現実的な光景にオータムは開いた口が塞がらなかった。

 

そこでオータムはやっと気づく。

全身を突き刺した楯無さんから流れているものが血液ではなく無色透明の液体であることを。

途端に楯無の体から色が消え、パシャっと音をたてて弾けた。

 

「これは、水か?」

「正解。それは私が作ったお人形さんよ♪」

 

いつから居たのか、オータムと一夏の間には、水色のISを纏った更識楯無が立っていた。

 

楯無さんは手に持つランスをオータムに一閃、アラクネは回避するも、切っ先はシールドエネルギーを掠り火花を散らした。

 

「残念、掠っただけか。そのIS、見た目に反して中々の機動性をもってるのね」

「なんなんだよてめえは!」

「ふふっ。IS学園生徒会会長、更識楯無。そしてISの名前は霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)。覚えておいてね、お・ば・さ・ん」

 

テロリストを前に、ポーズを決めながら自己紹介をする楯無さん

 

「なんだよあのIS……!」

「すぐ調べる!」

 

優雅な佇まいである楯無さんのISの姿を見て、僕は思わず困惑し、動ける範囲でISスキャナーで調べる事にした。

 

通常ISはフルスキンタイプを除いて全身を装甲を覆う必要はない。その理由はISの基本機能であるシールドエネルギーだ。

腕と足はISのパワーアシストと被弾率の高さから装甲が施され、胴体と下腹部は基本装甲を纏わずに無防備でありシールドエネルギーによって守られているのだが、

 

更識楯無のミステリアス・レイディのその姿は様々なISのデータを見ている俺からすれば極端に装甲を覆う面積が少なかった。

だがそれを補うかのように波打っているような透明で薄い水膜が。装甲の代わりに彼女の全身を覆っている。

 

通常のISを甲冑鎧に例えるならば、ミステリアス・レイディのそれはドレスアーマー。

 

他のISとは一線を画する水色の機体の側には特徴的な物体が三個一対、合計六個の【アクア・クリスタル】と呼ばれる浮遊物から装甲の上を覆う物と同じ水のヴェールが搭乗者を守護するかのように覆う。

 

そして水は手に持った大型のランス【蒼流旋】の表面にも流れ、まるでドリルのように回転を始めていた。

彼女の足もとからも白い水蒸気が溢れ、浮遊した水滴が彼女を彩った。

手も足も出ず。自身と友達が正しく絶体絶命である状態にも関わらず、水と霧を纏うISに僕はかっこいいしか考えられなかった

 

「楯無さん生きてて良かったです!」

「死んだら嫌ですよ楯無さん!」

「やーだーこの子達優しすぎるわ〜!!」

「ごちゃごちゃとうるせえんだよ! 今すぐ殺してやらぁ!」

「うふふ、なんて三流の下っ端が吐きそうな安台詞なのかしら。これじゃ私が勝つのは必然ね。あまり強い言葉を使うと弱く見えるって誰かが言ってなかったかしら?」

「言ってろやぁ!!」

 

アラクネの残った6本の装甲脚からの斉射を楯無はランスを前に出して水の障壁を展開、回転するそれはオータムの弾丸を弾き、又は絡め取り、悉く無力化される。

 

「ちぃっ!ただの水って訳じゃねえな!」

「あら鋭い。これはISのパワーを伝達する特殊なナノマシンを使って制御している水よ。そんな雑で軽い攻撃じゃ、私の守りは崩せないわ」

「糞が!なんなんだよてめぇは!」

「やぁねえ、ついさっき言ったじゃない。正確には49秒前だけど」

「しゃらくさい!」

 

アラクネは横に飛びながら水が張られていない側面にルーフワープを斉射しようとする、だがアラクネの動きに合わせるように、水の羽衣は二人の間を隔てていた。

 

「射撃戦がお好み? 良いわよ、付き合ってあげる!」

 

 蒼流旋をしまい、取り出されるのは身の丈程あるガトリングキャノン【バイタル・スパイラル】。

 

「パーリィ!」

 

重厚な音が出るかと思えば思った程重い音ではなく。ガトリングキャノンから出たのは実弾ではなく超圧縮された水の弾丸だった。

アラクネのルーフワープの実弾射撃はアクア・ヴェールに阻まれるが、水のガトリングキャノンはアクア・ヴェールをすり抜けて向こう側のオータムを乱れうちにする。

 

「てめぇ!インチキめいた装備使ってないでかかってきやがれ!」

「いやよ。私苛めるのは好きだけど、苛められるのは嫌いなの。ということで、一方的に殴られる、痛さと怖さを思い知りなさい!」

「冗談じゃねえ!!」

 

実弾射撃が通じないとわかると、ニューオメガに叩っ斬られたレールライフルを再び展開。最大出力で撃ち、高出力のビームは楯無の水膜を貫いた。

 

「あら危ない、抜かれちゃったわ」

 

貫いたビームを楯無は最小限の動きで躱し、背後の壁がビームの熱膨張で爆発する。だが楯無は余裕の笑みを崩さずに涼しくしている。

 

「た、楯無さん!」

「大丈夫大丈夫、ここはおねーさんに任せて一夏くんは休んでなさい。こんな蜘蛛お化けに負けるほど弱くはないから」 

「余裕ぶってんじゃねえぞ!!」

 

しかし、オータムは地面に何かぴちゃぴちゃと音が聞こえた。なんと水溜まりが滴っており、なんだか湯気が出ている

 

「あ?」

「ごめんなさいお漏らししちゃった」

「何してんすか!」

 

気持ち悪さでニューオメガが居る壁より後ろで離れたが、突然立てた方に驚いた

 

「一夏君立てたじゃないの」

「楯無さんそれはないですよ!!」

「まぁ冗談はさておき……悠君、SD–4を貸して!」

「あっ、はい!」

 

ボルテックカートリッジが装填済みのピストルを水溜まりに銃口を向ける

 

「一番怖いのって何かわかる?」

「んだよ分かんねぇよ!」

「一夏君、悠君は?」

「え?千冬姉?」

「爆殺?」

 

そう言った瞬間楯無さんはにやけた

 

「御名答!悠君」

 

打ち込んだ瞬間、大爆発が起き、オータムとアラクネはスパーク音が鳴り響く

 

「ギャァァァァァァァァ!!!!!」

((えええええええええ))

 

 

清き激情(クリア・パッション)

 

散布された水に含まれたナノマシンを発熱、一瞬にして気化させることで水蒸気爆発を発生させるミステリアス・レイディの十八番。

使いどころの難しい技だが、この技能により楯無は常に無色透明の爆弾を待機させると思えばその驚異は計り知れない。

 

クリア・パッションによって発動した水蒸気爆発の爆炎は瞬時にオータムを包み込み、アラクネの絶対防御が発動する。

 

しかし今回は違った。

楯無さんは悠のアクセラオメガから強引に武装を再び奪っており、ボルテックカートリッジの電極水を地面に滴らせる。 

 

次にクリア・パッション用の霧を湯気と勘違いさせる。

 

その後にSD–4を撃ち込む事で電磁爆発を起こすと同時にクリア・パッションによる水蒸気爆発というイカれてるのかって言いたいほどの高火力攻撃を引き起こしたのだ。

 

「あはっ。伊達や酔狂でベラベラ喋ってた訳じゃないのよ。私はね、相手が自分の失態に気付いたその瞬間が堪らなく大好きなの!んふん、今の貴方とても良い顔をしてるわぁ。二人とも騙してごめんね。あと一夏君このことは織斑先生に言っておくから」

「マジでやめてください!!」

 

ふわっと地面に降り立った会長の瞳には恍惚な光が移っていた。

 

「ガフッ、ま、まだだ。この私がぁ、こんな嘗められたままで終われる訳ねぇだろがぁぁ!!というかぁ……オレ様にも謝れよ!」

 

装甲脚が破損し、残りは二本。片腕の副腕と装甲から火花を散らしながらも。なおオータムとアラクネは立ち上がった。

それは正に執念と屈辱からの反抗で動いてるようなものだった。

 

「確かに、嘗められたまま終わるのって悔しいわよね。わかるわーその気持ち。貴方もそうでしょ? 一夏君」

「!?」

 

楯無さんの言葉にオータムは一夏に振り向いた。そこには、腕を突きだして目を閉じた、一夏の姿があった。

 

 

 

 

楯無が言った。

自分の思うことを強く願えと。

 

(俺の願い、それは何か?そんなの決まっている!)

 

取り戻せ、あそこには、白式には、千冬姉から受け継いだ刃がある。

 

それを奪われるのは俺の…………織斑一夏としての誇りさえも奪われるということだ。

それだけは断じてあってはならない! 

 

(だから白式、俺に応えてくれ。俺に、あいつを斬り裂く力をくれ!)

 

意識を極限まで集中する。何もなかった頭のなかに、うっすらと光が刺す。

光がだんだんと大きくなる。目の前の光が膨らみ、真っ白になり、景色が変わる

一夏は目を開いた。

 

そこには何処までも鏡面の水が地面と青い空が広がる景色が広がっていた。

そして一夏の前に白いワンピースと、白い帽子を被った少女の姿が。

 

「久しぶり。」

『易々と奪われるなんて、不甲斐ないんじゃない?』

「ごめん」

 

目の前の少女が誰かはわからない、だけど俺は自然と謝ってしまった。

いや、もしかしたら分かっているのかもしれない、だがそれを確かめる術は俺にはなかった。

 

『いいよ、君に免じて許してあげる。だけど次は愛想つかしちゃうかも』

「わかってる。もう離さない」

『ならばよし』

 

悪戯っぽく笑う少女は一夏に手を伸ばし。一夏はその手を迷わず掴むと、再び世界が弾けた。

 

カッと目を見開く、視線の先にはアラクネの装甲にマウントされた菱形のコアユニット。

これ以上伸びない手、だけど一夏の手には。しっかりとそれに届いていた。

 

「来い!白式ぃ!!」

 

この学園に来てから共にあった頼れる相棒の名を高らかに叫んだ。

菱形のコアはそれに応えるようにその水晶体の光を増幅させ、パシュっと弾けて消えた。

 

「なっ、コアが!?はっ!?」

 

弾けたコアが一夏の手の中に収まる。

それは再び弾け、待機形態である白い腕輪に変化する。

 

「白式・雪羅!展開!」

 

腕輪が輝き、意識が拡張される。

体内を駆け巡る充足感。体が軽く、何処までも飛べるような感覚と共に白色の装甲が展開。

背部に大型二対のウィングスラスター、左手には複合武装腕【雪羅】そして右手には誇り高い姉から受け継いだ刃【雪片弐型】がしっかりと握りしめられていた。

 

「な、なに!?てめぇ、一体何を!?」

「知ったことか!」

 

一夏がまずやった事はニューオメガについたゴム弾を切り裂いてニューオメガは解放された

 

「大丈夫か悠!」

「ごめん助かった……っぐ」

「無理すんな!ここからは俺がやる!」

 

悠は一夏が頼りになったと確信し、後を任せる方にした

瞬時加速に迫る程の速さでアラクネに接近、対してオータムは狼狽えながらも固定銃座とエネルギーワイヤーを撃ちまくる。

だが。

 

「遅い!」

 

実弾の被弾は最小限にとどめられ、エネルギーワイヤーは霞衣の前に霧散し、そのまま装甲脚の一本を斬り飛ばした。

 

「ガキぃ!」

 

 繰り出される副腕と装甲脚の刃が一夏と白式に迫る。しかしそれは酷くゆっくりに感じられた。

 

(なんだこれ。奴の動きがやけにスローに見える。いや違う、これは俺が速いのか。白式が俺の思う以上に動く!)

 

装甲脚による刺突を最小限の動きで躱す。

背後に回って雪羅をカノンモードに変形、至近距離で荷電粒子砲【月穿】を撃ちオータムをしりぞける。

 

「こいつ……急に動きが!」

「せあっ!!」

 

雪羅のビームクローを起動、一夏に振り返ったオータムは地面を蹴って回避。だが着地地点の瓦礫にバランスを崩してしまう。

畳み掛けるように一夏が上段の構えで斬りかかる。オータムは残った主腕、副腕、装甲脚を前にかざした。

判断は間違っていない。むしろ体勢を崩し、劣性に迫られた状況で防御に即移行出来たのは誉められたもの。

 

相手が白式でないのであればの話だが。

 

(ここだ!)

 

全神経を機械仕掛けの刀に注ぎ、自身の分身であるISは彼の呼び掛けに迷わず応えた。

 

《ワンオフ・アビリティー【零落白夜】発動》

 

雪片弐型に搭載された展開装甲が起動。

鉄の刀身が収縮され代わりに光の刀身を抜刀。それを伝うように黄金色の光が伸び、やがて白式全体を覆った。

 

その持ち手が砕けるのではないかと思うほどに力強く握る。眼前の魔化魍を屠る為に、一夏は全ての力をこの黄金の一刀に注いで吼えた。

 

「せえぇぇああぁぁぁっ!!」

 

咆哮と共に降り下ろされた文字通り全力の一刀はISの基礎機能であるシールドバリアを霧散させ。アラクネの特徴であった残りの装甲脚と副腕を吹き飛ばし、主腕を払いのけ、その必殺の一撃をそのまま胴体に叩き込んだ。

絶対防御が発動、アラクネはシールドエネルギー切れにより戦闘不能になった。

 

「こ、この私が。こんなガキに!?」

「一夏君!その人拘束して!」

「え、あっはい!!」

「クソが!」

 

オータムはコンソールを操作し圧縮空気の音を響かせてISと本体を分離させた。

すると主が離れるや否や、下の蜘蛛型ユニットがワシャワシャとこちらに向かってきた。目は赤く点滅し、アラートを鳴らしながら。

 

「置き土産だ、受け取れ!」

「な、何だ!?」

「一夏君!!」

 

アラートの感覚がコンマ数秒になった瞬間、蜘蛛型ユニットが光を放って大爆発を起こした。

 

「まずい悠君が!」

「悠ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

爆発による黒煙が晴れると、そこにはIS二機分を十分に囲えるほどの水のドームが二人を包んでいた。

 

しかし二人も水のドームを目撃した。

 

「大丈夫?!悠君!」

「土壇場で楯無さんの武装を模倣しました……」

「とにかく無事で良かった。」

「というかあの女は?」

「逃げられたわ。恐らく装甲の中にためてた残りのエネルギーを丸ごと爆弾にしたみたいね。まったく無茶苦茶してくれるわ。下手すれば生身の自分ごとお陀仏だったのに」

 

パシュっと二つ水のドームが弾けると、一夏は急いで立ち上がった。

それと同時にニューオメガの変身が解除される

 

「悠!」

「僕は大丈夫……直ぐに追わないと」

「いいえ、一夏君、悠君。貴方は上で避難誘導をしているラウラちゃん達と合流してちょうだい。あの女は私が追うから」

「え、でも!」

「大丈夫よ大丈夫。お姉さんの実力、貴方は分かってるでしょ?」

「……分かりました、ラウラ達と合流します」

「宜しい、なら早速行動よ!」

 

楯無さんは一度ISを解除して僕がオータムに誘導される時に使った隠し通路に、一夏はロッカーの扉の瓦礫を最大出力の月穿で吹き飛ばした。

 

ロッカールームでの激闘を終え、一夏は皆の元へ急がんと窓から外に飛び出そうとした

 

「悠動けるか!?」

「何とか!」

 

一夏は悠を福音戦の時のように乗せて飛び出した。

 

 

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