インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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完全仲直り回です。

サブタイトルの元ネタは仮面ライダーガヴお菓子の家の侵略者のオマージュです。


第六十三話 心は同じなんだよ

 

「………………」

 

言葉も出ない。というより思考が完結しなかった。

 

遺伝子強化素体だとか、アドヴァンスド・チルドレンだとか

鉄の子宮?なにそれ。

 

いつもの突拍子もないぶっ飛んだ発言だと思いたかったが、目の前のラウラさんの表情は軍人スイッチ時のソレで、とても妄言とは思えなかった。

 

どう返していいかわからないまま、ラウラさんは何かに気づいたように声を上げた。

 

「あっ。すまないが悠。さっきとこれから話すことは他言無用で頼む。国家機密レベルなのでな」

「ちょっと待ってよ!!なんでそれサラッと言ってんだよ!!」

 

VTシステム暴走事件後のラウラさんの唾液には医療用ナノマシンが含まれている発言は最初改造人間の特徴だと思っていた。

 

だけど実際は違う。僕と同じく培養されて作り出された人造生物

 

「確かによく考えるとラウラさんの肌って綾音と同じようで違うような質感してる」

「あまり人を見るなと思いたいが最初綾音を見た時私も同じ事を思った。」

 

気を取り直してローストビーフサンドを食べ直す。

チラッとラウラさんを見てみると、なんともスンとした顔でエクレアをモッキュモッキュと食べている。

煌めく銀髪に赤い目。白磁のようにシミひとつない肌。確かにこれが人工的に調整されたからこうもなるって言われたら納得してしまう。

 

「でも贖罪って何?生きて償うって訳?」

「そうだ。ISが生まれる少し前からドイツの秘密機関で優秀な遺伝子を掛け合わせ、そして生み出し続け、その成功作が私だ」

「淡々と話してるけど。ラウラさんはなんとも思わないの?」

「ない、な。私にとってそれが当たり前だと教えられ、私も納得した。普通の人間を見ても特に羨ましいとかそういう感情はなかった」

 

そう教えられたからか…………母さんも本当の事を言ってくれたら自分が何者か葛藤する事はなかっただろうな。

 

「それって、明らかにゲノム法違反だよね。君も僕も同じ作られた存在……それって大丈夫なの?」

「そうだな。私は生み出されてしばらくたってから直ぐに軍に属され、訓練を受けた。後に私が生まれた機関は壊滅したという情報が入ってきた。それだけだな」

 

その後は、ひたすら訓練の日々。

戦うために最適な兵士を作るという目的の名の元で生み出されたラウラは戦うことだけを学んだ。

 

何処を撃てば人は死ぬか、何処を切れば致命傷を与えられるか。

様々な兵器の扱い方。銃、ナイフ、手榴弾、戦車、戦闘機の扱いを。

まだ幼い彼女はそれを当たり前のようにこなし、並みの大人すら上回る程の戦果を上げた。

 

ラウラは正にそのゲノム機関が思い描いた理想の姿であっただろう。

 

戦うだけが生きる意味であり存在意義。

それがラウラ・ボーデヴィッヒの全てだった。

 

「だがISが生まれ、白騎士事件を経て全てが変わった。今までの兵器体勢は追いやられ、ISによるパワーバランスが主流となった」

「IS一機あれば全ての方が出来るもんね。IS万能論や軍事兵器不要論みたいな」

「あぁ、それで気がつくと私もISに乗り戦果を叩き出していった。」

 

しかしラウラさんの分岐点は今から話す事だった。

 

軍はISへの適合性を上昇させるため、兵士にナノマシンインプラントによる疑似ハイパーセンサー、【越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)】の実装に着手した」

 

それはIS搭乗者にナノマシン施術を施し。脳への視覚信号伝達、動体視力、状況処理能力を爆発的にブーストするもの。

ISOへのリンクも飛躍的に上昇するそれは使用すればISの動作、戦闘力も上昇する。

 

「当時、その技術は確立されたものとして運用された。希望者を集め、処置は実行。理論上は危険もなく、不適合も起きないということだった」

「嘘っぽいなぁ」

 

理論上は問題ない、危険はないなんて一種の死亡フラグだ。

そう言って最後は「こんな筈では!」なんてのがお約束だ。

 

「まぁ、能力に個人差があったり、発動しないということはあっても不適合は起きなかった。成功したものはヴォーダン・オージェの力を発揮し、実験は成功した………私を除いてな」

 

ラウラさんは自身のトレードマークとも言える左目の眼帯を外し。ゆっくりと目蓋を開いた。

 

「それが例のヴォーダン・オージェって訳か。」

「ああ、ドイツのナノマシン技術の最高傑作とうたわれたナノマシン技術だ」

 

開かれたその目は右目と同じ赤ではなく。輝く黄金の瞳だった。

黄色かかったとかそういうのではなく。本当の金色。その目は光に照らされる純金のように淡く揺らめいていた。

 

「あの時の外れた眼帯から現れたら黄金の瞳………その時僕驚いたよまさかオッドアイだなんて」

「驚くのも無理はないな」

「でもなんで眼帯なんてしてるの?やっぱりコンプレックス?」

「いや違う。この眼は見え過ぎるんでな。特殊な眼帯を通して見なければ疲れる。普段は眼帯越しに見ることで処理能力を落としている」

「ていうことは、眼帯してても左目見えてるのか」

 

ISを補助するナノマシン・インプラント。

条約としてはギリギリというところだが。当然ながら通常のISバトルでは規定違反。

正に本当の戦闘を目的に想定された処置ということになる。

 

「それで、さっき私以外はって言ってたけど。それは正常に作動していないってこと?」

「いや、逆だ。常に稼働状態のままカット出来ずに制御カット出来ずに制御不能となった。本当はオンオフが聞く代物なんだ」

「だから眼帯を。なんでラウラだけそんな………」

「恐らく、私が遺伝子強化素体だからだろう。ヴォーダン・オージェのナノマシンと相性が悪かったのか、又は相性が良すぎたのか」 

 

なんとも皮肉な話だな。

最高の物と最高の物を掛け合わせて必ずしも良いものにはならないという訳か。

 

……………全てが繋がった。

 

ラウラさんはかつての軍の最高傑作、僕は造られたアマゾンの中の最高傑作。

共通点あったんだ。

 

「今の状態もかなり良くなった方なのだ。移植当時は圧倒的な情報量を処理出来ず、ISは愚か通常戦闘すらまともにこなせなくなり、私はトップの座から転げ落ち、『出来損ない』の烙印を押された。そこで待っていたのは侮蔑と嘲笑、私は誰からも眼をかけられなくなり、私は一人になった」

「辛いなぁ。」

 

勝手な話だと簡単に切り捨てること簡単だ。

だが軍事は実力が全て。

戦力にならないものは前線から外されるのは必然である。

 

「今までの輝かしい戦績は闇に葬られた。私はその闇の中で存在意義を失い。ただうずくまるだけの木偶に成り下がった。その時、私は教官、織斑千冬に出会った」

「一夏君から聞いた。織斑先生はドイツでIS指導を任されたって」

「教官の決勝戦辞退の話は?」

「全部一夏君に聞いた。それが亡国機業(ファントム・タスク)の仕業だということも」

「そうか、話が早いな。教官は落ちぶれていた私を見つけ、私を部隊内最強の地位に戻してやると言った。その力強い言葉と姿に、私は光を見つけた」

 

それから織斑千冬の指導の元、教えを忠実に実行していく内に力を取り戻し。やがて今のIS専門部隊『黒兎隊(シュヴァルツェア・ハーゼ)』に変わった軍で再びラウラは最強の座に返り咲いた。

 

「私は黒兎隊の隊長となり元の景色より上を見た。だが私は安心出来なかった。私を蔑み疎んでいた部隊員も上官も、国も軍も自分さえもどうでも良かった。あの強者であり、そして凛々しく、いつでも堂々としている織斑教官に焦がれた。私も、この人のようになりたいと」

「隣に居たいと思ったの?」

「どうだろうな、そこまで細かいことは考えてなかった。ただ傍に居たいと思った。私にとって教官は一であり全だった」

 

世界最強の存在、何者にも負けない絶対的存在。

ラウラさんはそんな織斑千冬を盲信した。

 

「そんなある時だ。私は教官に何故そこまで強くなるのかと聞いた。その時だ、いついかなる時も鬼のような厳しさを持った教官が、優しく笑ったのだ」

「それって……」

「教官は言った。『私には弟が居る、あいつを見ると強さとは何か、そのさきに何があるのか』と。そんな教官を見て、私は眼を背けたくなった。こんなの私が憧れた教官ではないと。その時の私は愚かにも目の前の教官に戸惑い、否定した」

 

そしてラウラさんは織斑先生を変えてしまった要因である一夏君を調べ、その仮定で千冬の第二回モンド・グロッソ決勝戦棄権の真相を知った。

 

「私は許せなかった。教官を変える存在である一夏を、教官がモンド・グロッソ二連覇の偉業を邪魔をした一夏を。この手で叩き潰すと誓った」

「そんなのって」

「ああ、分かっている。そんなもの独りよがりのエゴであると。だが教官を盲信していた私にはその事に気づくことなく、一方的に一夏に恨みを抱いた」

 

それはあまりにも一方的かつ独善的だも思った。

だけど僕は口を出さずラウラさんの話を聞くことに集中した。

 

「私はドイツの代表候補生としてIS学園に赴いた。その中で一夏の姿を見た私は眼を疑った。こんな惚けた顔をした明らかに世間に疎そうな凡愚が教官の弟なのかと」

「それで僕とも出会い初対面なのに駆除すべきアマゾンだと罵った」

 

あの時僕は感情の振れ幅が大きく、友人が馬鹿にされたとなると烈火の如くブチギレた。

 

「転校してきた初日でも皆と拒絶してたよね。岸原さん話しかけようとして睨まれて逃げたのを思い出した」

「それは後で謝っといた。話を戻すが当時の私はIS学園の生徒、一年一組みんなを見てまたも眼を疑った。こいつらはISが兵器であることを理解していない。意識が甘く、危機感にも疎い、武器を扱ってるという自覚もなく、ISスーツのデザインがどうとかと盛り上がる。ISをファッションか何かと勘違いしている程度の低いものだと認識した」

「軍事基地と空気違いすぎるからなぁ」

 

僕も最初困惑したもん。ISはスポーツ用の兵器とはいえど実際戦いにも使える危ない兵器だし責任があったからね

 

「でもIS学園に来たての女子達にそのような考えを押し付けるのは難しいんじゃない?」

「それでも私は我慢ならなかった。お前を半殺しにした後織斑教官にも同じことを言った。こんな極東の場所で愚者に教えを授けるならドイツに戻って教鞭を振るった方が遥かに有意義だと」

「織斑先生、怒っただろうね」

「ああ『15歳にして選ばれた者気取りか?』とな。今思えば戦争と戦闘を知らない者にそんな認識が最初からある筈もない。誠の愚か者とはあの時の私に他ならなかった」

 

当時は今とは違いとにかく冷徹で表情も乏しく、IS学園では異彩を放っていたラウラさん。

今のラウラさんと比べるともはや別人じゃないかと思うぐらい、ラウラさんが話すラウラは本人と別人のように聞こえた。 

 

「私は一夏を叩き潰して力を示そうとした。教官の弟である一夏を排斥すれば、教官が私を見てくれる。あの荘厳で最強の存在である教官に戻ってくれるのだと。たとえどんな手を使ってでも成そうとした。だが当の一夏は戦う理由がないと、勝負に取り合ってくれなかった。だから私は理由を作ることにした」

「それって…………」

「セシリアと鈴、そしてその場にいたお前を利用した」

「利用……」

「私はたまたまアリーナに行くセシリアと鈴を見て、彼女らを利用しようと思った。セシリアと鈴が一夏に好意を持ち、悠が一夏と仲良しだったことも見れば分かった。だからお前達を焚き付けてIS戦に持ち込み、二人を蹂躙した」

 

やっぱりそうなるよな

 

「じゃあやっぱり僕を攻撃したのは僕があの時抵抗したからで…」

「違う。私はお前の情報を見たから駆除すべきと言ったんだ。」

 

ラウラさんはIS学園に行く前にアマゾンはどんなのか調べたらしい。

 

そこで知ったのが僕、僕はIS学園に来る前は駆除班と呼ばれる民事組織に属しておりそこで逃げ出した実験体を葛藤ありで駆除していた。

 

「お前は確か最高傑作と言われていたな。その理由があの時に分かったんだ。」

「だろうね」

「悠…………アマゾンオメガにプラズマ手刀による腹部貫通でアリーナのグラウンドに血が滴り数歩程下がって倒れた時私はある達成感が高揚した」

「………」

「私はお前が許せなかった。同じ人ならざる者なのに生まれた時に戦闘訓練を積まれた私と違い、人として扱われた。しかもお前に至っては喰人生物アマゾン。その中の最高傑作のお前を拒絶したかった。」

「ラウラさん………」

するとラウラさんが飲んでいたアイスティーに涙が落ちる

 

「お前を半殺しにした後……鷹山さんに話しかけらた。」

「仁さんに!?」

「アマゾン1匹殺したぐらいで調子に乗るな、所詮ISが無ければお前は雑魚だと。」

「………」

「あの時の私は軍人と呼ばれるに相応しくない畜生だった。三人に力を行使することを、自分が強者であるという愉悦し、それに酔いしれた痴れ者に成り下がった。あの時の私は軍人以前に人以下の獣だったのだ」

「ラウラさん……」

「あの後悠が完全回復をしたと聞いた時,私は精神がおかしくなっていた。何故死んでいないか、なぜ周りの者はそれを疑問にすら思わなかったのか。考えれば考えるほどおかしくなり学年別トーナメントの時にVTシステムが暴走し、アマゾンすら凌駕する学園最強へとなろうとし、一夏と悠に助けられた。」

 

ラウラさんが僕を部下にした理由、それはラウラさんが今まで僕のした罪を忘れない為にずっとそばに置いておく事だった。

 

「臨海合宿の時……お腹の傷が消えていて私は安心してしまった。けど悠は許してくれた。」

 

ラウラさんが我慢していた涙が一気に溢れ出す

 

「ずっと……不安だった。いつか悠が報復する、絶交されるんじゃないか怖かった……!嫁の友人に手を掛け,拒絶されるのも恐れた……!今まで謝りたくても過去の記憶でなかなか踏み出せなかった……!」

「ラウラさん……」

「お前がどう思うかは別だがな……私は受け入れる」

「そうか……なら目を瞑って」

「あぁ」

 

ラウラさんは受け入れたかのように目を瞑り僕はラウラさんの額に高火力のデコピンを叩き込んだ。

 

「あいだぁっ!!………ってこれだけか!?」

「はいおしまい。」

「わ、私は納得いかんぞ!」

「もう一発叩き込んでやろうか?」

「や、やめろ!分かったから!」

 

なんだか張り詰めた空気が一瞬で萎んだ。

 

「けどね、僕はなんだか安心したんだ。ラウラさんも僕と同じ造られた存在だったって」

「それが……どうしたのだ?」

「僕も人間じゃないと何回も言われてきた。けど僕とラウラさんはIS学園で人として扱われる。まぁ僕は特別強化特待生として入ってきたけどあまり言われないでしょ?」

「確かに……」

 

悠はラウラさんの手を握った。冷徹な軍人少女の掌に温かみがあった。

 

「これからも副官として接して欲しい。ラウラ・ボーデウィッヒ少佐」

「あっ……あぁ!勿論だ!これからも宜しく頼むぞ水澤悠副官!」

 

これで本当にラウラさんとの確執が消滅した。随分と長いようで短いようだった。

 

「あと綾音と結婚するとしたらすぐに私に連絡をよこせ。いいな?」

「しばきますよ?」

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