インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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第七十一話 負けてたまるか

 

街中上空にて三機のISが睨み合っていた

 

ISスキャナー越しにセシリアさんの情報が流れてくる。

 

右腕に刺し傷、血はISの保護機能で止血されている。

バイタルサインは危険域ではないが、セシリアさんの顔色が著しくない。

 

ISもシールドゼロ。何一つ武装もない。

だがこちらを見上げるセシリアさんの目は今もなお強い光を宿していた。

 

「後は任せて」

「お任せします」

 

それを最後に彼女は意識を手放した。

 

ここまで弱ったセシリアさんを見るのは久しぶりだ

 

「………チッ」

 

吹き飛ばされたサイレント・ゼフィルスが体勢を立て直した。

バイザーには小さなヒビが入っているがまだ健在だ。

 

そして、後方から高速で接近するIS反応。

 

「セシリア!悠!」

「一夏君!」

 

後方から追い付いた一夏君と白式が僕達とサイレント・ゼフィルスの間に入った。

 

恐らく出ていった僕もセシリアさんを前に我慢出来ず、アリーナのシールドを零落白夜で抜けたのだろう。

 

「セシリアは?」

「右腕を刺された」

「なんだって!?あいつがやったのか!」

 

怒りをあらわにした一夏はサイレント・ゼフィルスを睨み付ける。

 

「一夏君。君はセシリアさんをIS学園に運べ、近くの病院では受け入れてくれるかわからない」

「わかった、ってお前はどうするんだよ」

「サイレント・ゼフィルス、奴の捕獲するかこの場で倒す。奴はアマゾンや僕の友達にまで手を掛けた、これは僕の責任だ……!」

「悠、お前」

「良いから行けっ!」

 

一夏君は思わず息を飲み、後ずさった。

 

目の前の親友が発した声は静かで、まるで地獄の底から響いてきたような低い声色だった。

背中越しでも分かる親友の怒りに一夏君の怒りは飲み込まれた。

 

「セシリアさんは君にフレキシブルを見せたがっていた。」

「そうか」

「だから先に連れてって。そして、聞いてあげて。」

「あぁ、死ぬなよ悠!」

「ああ!」

 

力強く答えた後セシリアさんを抱えた一夏君はIS学園に飛んでいった。

 

「わざわざ待ってくれたのか」

「………」

 

問いかけに答える気がないのか、文字通り沈黙するサイレント・ゼフィルス。

だがそれは単に僕と話してるからではなかった。

 

『エム、想定よりも随分とやってくれたわね』

『それがどうかしたか?』

『野座間の闇が暴かれたから後は時間の問題ね。でもセシリア・オルコットに時間かけたのは少々勿体なかったけど』

『丁度水澤悠の前に居る、鷹山仁やアマゾン・トリニティは無理だが奴の首だけは持って帰る』

『そ、なら頑張って』

 

スコールとの通信を切ったエムは僕と向き合った。

 

「お前、名前は?」

「………エム」

 

エム。恐らく本名ではないんだろう。

 

「お前も僕を殺せって言われてるのか?」

「話が早いな」

 

エムはスター・ブレイカーをアクティブにする。

だが僕がニューオメガソードを収納しろくに構えもしないことに疑問を抱いたが、迷わず引き金に手を掛けた。

 

「お前には死んでもらう」

「無理だ」

「命乞いか、だがお前の確認など必要は」

「お前には無理だ」

「………なに?」

 

エムは俺の物言いから無理=死にたくない、ではなく。無理=お前に俺は殺せないという意味だとわかった。

エムが怪訝な顔をした。だが次の一言で豹変した。

 

「だってさ──君、弱いよね?」

「なっ」

 

エムは俺の抑揚のない言葉を前にバイザー越しで目を見開き、息を飲んだ。

一瞬幻聴かと迷ったところを、間髪いれずに言ってやった。

 

「もう一度言う。お前は弱い」

「虚言を」

「わからないなら、わかりやすく言ってやろうか。お前は雑魚だ」

「ふざけるな!それ以上口を開くな!!私にそのような言葉を吐くな!!」

 

度重なる侮辱に普段は澄ました顔をしているエムも声を荒げた。

スター・ブレイカーの砲身を開き、エムのイラつきと同じように溜まる光を見ても、僕は動じることなく話し続けた。

 

どうやら彼女にとって『弱い』という単語は禁止ワードらしい。

 

「何故お前が僕に勝てないと断言する理由。それはお前がセシリアさんや綾音より弱いからだ」

「何をっ!」

 

自分があの女より弱いだと? 

エムは本気で耳を疑った。

 

現に最後の不意打ちを除いて彼女の攻撃を一発食らっていない。逆に彼女を丸裸にした。

それなのに目の前のアマゾンはセシリア・オルコットの方が強いと言っているのだ。

 

「よく考えたけど君僕と一回戦ってるよね」

「あぁその時はお前殺せたがな」

「そこだよそれ。でもその時の僕のコンディション悪かったからさ、いまいち君が強いとは思えないんだよね」

「なんだと!?」

「それと、君がセシリアさんに勝てた訳なんだけど、街を盾にしたよね」

 

ここに来るまでの間に僕は遠くからセシリアさんとエムの戦いを見ていた。

そして二機がしきりに高度を変えていたことも。セシリアさんが攻撃する時は相手と同じ高度を取っていた時だけだということを。

そして、セシリアさんが敵の砲撃に身を挺して受けていたことも。

それだけで俺は理解した。

 

「何故セシリアさんが本来の力量を出せなかったか。それはお前が街を、下の人間を盾にしていたからだ。じゃないとセシリアさんに勝てないと思ったんだろ」

「違う!!」

 

エムは全力で否定した。何故なら、本当にそういうことではなかったからだ。

 

エムはセシリア相手に遊んでいた。セシリアの生真面目な性格を読み取り。こちらが背にしていれば撃ってこない、自分が上を取ったら慌てて高度を上げてくると分かっていた。

 

決して自分がセシリアさんを恐れていたからではない。エムはそれを言いたかった。

 

実際、エムの言い分は正しいのだろう。

どんな理由にしろ、戦場にあいて負けた側の理由など通りはしない。世間一般的な見解ではセシリアさんの敗北と見られるだろう。

 

現にセシリアさんは眼下の街に被害を出さなかった。

 

ノブレス・オブリージュ。

貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いをしなければならない。

国は違えど、セシリアさんは守るべき者を守りきった。

 

それが強さでなければなんというのか。流石英国貴族のお嬢様って言った感じだ

 

「それに君は造られた者が嫌いっておそらくだけど僕と比べてるよね?

そりゃそうか、『弱い』自分を否定したい為に自分より弱い奴を倒して強いって過信してるの終わってるね」

「黙れ!!!」

 

ブチギレるエムであったが顔が見えないニューオメガの内側はシンプルに煽り、怒り、嘲笑してる様子だった。

 

「さ、話は終わり。上に行くぞ」

 

そう言いアクセラオメガのスラスターに火を入れた。

 

「………?」

「それにまた街を盾にされたらたまったもんじゃない。場所を変えるんだよ」

「なんだと」

「このまま逃げてもいい。恥ずかしいことじゃない。お前は僕を恐れて尻尾を巻いて逃げた。その結果が残るだけだ」

 

あからさまな挑発を後に、僕はサイレント・ゼフィルスを置き去りに一気に上昇した。

そのまま雲に穴を空けて遥か上空に飛んでいった。

 

「来るなら来い。誰にも邪魔されない場所で勝負しよう。お前が本当に強いなら、あの時みたいにやれるのならな。」

「………上等だ」

 

もはや任務など関係ない。

ここまで自分を侮辱してくれた男を殺す。

 

どんな風に嬲り殺そうか。それだけを胸にエムは飛翔した。

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

アリーナ観客席Gブロックの有り様は酷いものだった。

ある椅子には夥しい数の弾痕が、ある椅子は熱により焼けただれ、ある椅子は真っ二つに切り裂かれていた。

もはや観客席としての機能など欠片すら残されていない。

 

アリーナ内のデュラハンと専用機持ちの激闘や駆除班と4Cと実験体アマゾン達のに引けを取らず、こちらも苛烈な戦いを繰り広げていた。

 

現日本代表来栖輝のホワイト・アルビオンと亡国機業(ファントム・タスク)のラファール・リヴァイヴ使い

 

翼を展開し、ホワイトツインブラスターをラファール使いに撃ち続けると

ラファール使いは即座に適応し、上からの斬撃にブレッド・スライサーを呼び出して受け止める

 

「それすら読めてるのね!」

 

アサルトライフルがいきなり近接武器に変わっていたのは高速切替(ラビット・スイッチ)の特徴、それだけで曄か見出したのはただ一つ

 

(今目の前にいるのはシャルロッテ・アグニージュの可能性があるって事よ!)

 

次の瞬間にグレースケールを打ち込まそうになるも右腕から非実体型シールド《ルミナンス・ユナイド》を即座に展開し弾き返す

 

(唯一心配なのはあの3人のISパイロット。セシリアちゃんと悠君はまだしも織斑一夏君まで言ったら専用機持ちの戦力が削がれてしまったわ)

 

さっさと目の前の敵を叩き潰して専用機持ちの加勢に行きたい曄。

今からスコールを追っても追い付けないし、追い付けたとしても邪魔になるからこその選択だった。

 

(それに砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)の精度が高過ぎる。やっぱりアグニージュだよね?)

 

グレースケールを構えたまま動かないラファール使いにどう対処するか考える為にサイドスカートにつけられている白剣を構え直す

 

(ならこちらから近づけさせるのみ!!)

「はぁっ!!」

 

日本代表来栖曄の奥の手は両腕、両太腿、胸部装甲の計6基の《ハンドアンカー》の同時射出

 

ハンドアンカーに備え付けられたブースターにより即座に相手を捉え、逆に巻き取られる事で急速接近が可能なのだ

 

「スラァァァ…………って何!?」

 

近づこうとした瞬間計24発のマイクロミサイルが飛んできた為即座に巻き取ってその反動でバックステップを取る

 

「ぐはっ!!」

 

吹き飛んだ反動で地面に転んでしまうがラファール使いはミサイルに紛れて忽然と姿を消した。

広域索敵でそれらしい反応はあったが、直ぐに消失した。

おそらくISを解除したのだろう。

 

「…………まぁ良い、兎に角あの子達を助けに___」

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

「くっ!一発一発の威力は低いが、この弾幕!!」

「あのアマゾンを操ってるのサイレント・ゼフィルスじゃなかったのかな!」

「だとしても数が多過ぎる!」

「でぇい!みんな、残りエネルギーどんぐらい!?あたしはまだ行けるけど!!」

「強がるな鈴。だがこのままでは決着がつかんな!」

 

一夏が二人の後を追ったが、戦場は膠着状態が続いており、残り385機以上。

アマゾンと言えどアーマーを纏っている為夏休みの時に戦ったシャルロットはおかしいと感じていた

 

「ってうわぁ気持ち悪いわね!!」

 

時折デュラハンが噛みつき攻撃を仕掛けて来るのだが、頭部バイザーが開いて生々しい実験体アマゾンが喰おうとしてるのだ。

 

「死に晒せ………!!」

 

ラウラはプラズマ手刀による貫手でエネルギー節約をしていた。

 

「弾切れはきついね…………!!」

 

シャルロットは武装に限界が来始めており、クイックサブマシンガンを呼び出し、撃つのを再開する

 

「はぁぁぁっ!!」

 

綾音はと言うと今までにない気迫により突き進んできた

天ノ双剣だけで相手をバッタバッタ切り裂いておりその姿は鬼神そのもの

 

「…………うぅっぷごほぉっ!」

 

アマゾンに覚醒した弊害だろうか、突如として綾音の移植されたアマゾン細胞とニューオメガから受けた傷が搭乗者保護機能の回復では間に合わずに吐血してしまう

 

「綾音…………」

「はぁ……はぁ………大丈夫……です……」

レースがデッドヒートしてるところの乱入とサイレント・ゼフィルスに削られたシールドが後を引いている。

 

このままではジリ貧だと、この場に居る全員が理解していた。

手があるとすれば。

 

「箒!絢爛舞踏は使えるか!あれがあれば戦局を覆せる!」

「あれは、そんな都合良く使えるものでは………」

 

箒のワンオフ・アビリティーのトリガー。

それは一夏を強く思うこと、彼の力になりたい。一夏の側で戦うことを強く願うこと。

これまで数回発動した時には必ず一夏が側にいた。それでも発動しない時があった。

一夏がこの場に居ない状況で発動できる自信が箒にはなかった。

 

「そうか………」

「済まない…」

「そんなに自分を責めないで箒さん……」

 

周りのみんなは綾音をガチで心配していたが、綾音はある決断を下そうとする

 

「綾音は大丈夫なのか…?」

「ごめんなさい。移植されたアマゾン細胞が活性化し、私はアマゾンになってしまいました………」

「そんな……私は初耳だぞ」

「だから決めたんです。アマゾンが生きてちゃいけない存在なら私はエネルギー切れした瞬間自爆特攻をします……!!」

「「「「!!!!」」」」

 

アマゾンとデュラハンを巻き込んだISのクリスタル・コアを使用した自爆

それは綾音がアマゾン達をあの世に送り完全抹殺すると言うとんでもない事だった

 

「何言ってんだ綾音!悠を置いて死ぬつもりか!」

「考え直しなさいよ!」

「でも……私はアマゾンと人間が共存できると考えていたのに……私がアマゾンだったら意味がない!!」

 

勝手に造られて勝手に殺されるアマゾンの現状に綾音は憂いており、その考えた末がアマゾンと人間の共存なのである

 

「それで綾音はいいの……?」

「シャルロットさん……良いんです…これで」

「よく無いよ!アマゾンになったからって死のうとしないで!」

 

綾音はもう覚悟が決まっちゃっていたのだが、ラウラは別案を考えた

 

「私がAICでガードするからその隙にやれ!」

「だとしたらあんたがレーザーで蜂の巣じゃ無いの!」

「綾音が犠牲になるくらいならこれしか方法がない!」

 

ラウラの言うことは一理あるが、友人をそんな危険な目に合わせる訳にはいかないと承諾出来ずにいた。

だが膠着状態が続いても危険なことには変わらない。

隙をつかれてデュラハン達が皆に捕食された暁には凄惨たる未来が確定する。

 

(私はなんて役立たずなんだ!)

 

空裂のエネルギー斬撃を振るいながら自分を叱りつけた。

 

(肝心な場面で使えない!友人が死んでしまうら覚悟をしているのに!味方の窮地を救える力がありながら私は!!)

 

自分の絢爛舞踏は一夏への想いの強さで発動してきた。

だから絢爛舞踏を発動できない度に、箒は不安になったのだ

自分の一夏への想いが足りないのではないかと。

 

接近するデュラハン1機に雨月の刺突を繰り出すも躱され、接近を許した。

腕を掴まれバイザーが開きトンボアマゾンの口が開く

 

(しまっ….)

「どぉぉっせぇい!!」

 

すかさず鈴が双天牙月を投擲し、デュラハンの頭部が吹き飛び蹴りで吹っ飛ばす

 

「箒、あんたって見掛けによらず豆腐メンタルよね!」

「な、なんだ行きなり!!」

「ワンオフ・アビリティーのトリガーがなんだか知らないけど。どうせ一夏絡みなんでしょ」

「んなっ!何故それを!?」

「あ、ホントにそうなんだ。ごめん」

「鈴!!」

 

箒は心中で不覚を取ったと嘆いた。

 

「まあ予想通りだったから言わせて貰うけど。発動できないからって自分が本当は一夏のこと好きじゃないんじゃないかって考えてるなら殴るからね」

「そ、そこまで考えてはない!」

「あっそ。だったらシャンとしなさいよ」

「言われなくとも」

「あっ、もう一個言うわ」

「今度はなんだ」

 

これ以上何を言われているのかとうんざりし始めた箒に鈴は特に抑揚もなく言った。

 

「あたしがなんで強くなりたいか、知ってる?」

「一夏だろう」

 

それ以外に何があるのかと、眼差しを向けられた鈴はニッと笑った。

 

「もう一つあんのよ」

「なんだ」

「強くなりたい。ただそれだけよ」

「……!」

「あー、我ながらガラにないこと言ったわ。行くぞオラァ!」

 

ムズッとした鈴は拡散衝撃砲をぶっぱなしたのちに再び斬りかかった。

 

短い言葉だった。

だがその言葉は何よりも力強い言葉だった。

 

その言葉に箒は悠に反省会中に言われたことを思い出した

 

『でも発動条件が一夏君を思う事ならこう考えてみたら?』

『どういうのだ?』

『一夏君の周りの人を守りたいや力になりたいって思ったらどう?

人は人間の細胞やアマゾン細胞みたいに人としての情報は周りの人間による印象も詰まっている。一夏君が君が無事で良かったと思うように他の人も思うかもしれない。織斑先生や僕、セシリアさん達のようにね』

 

そうか。そう言うことか。鈴の叱責が悠の言葉に繋げてくれた。

 

彼が強いのは勿論だが、それは誰かを守りたいと言う気持ちがあり、

福音戦の時、皆の『一夏の敵を討つ』と言う気持ちで皆が頑張れた。

離れていても心は一緒だとそう思わせてくれた。

 

(そうだ。離れていても一夏への想いは変わらない。なにせ私は四六時中一夏のことを考えているといっても過言ではないからだ)

 

我ながら恥ずかしいことを考えているが、今の箒に羞恥心などない。

むしろそんなの邪魔だったのだ。

 

(一夏は二人を追った。自分がすべきことを為すために。なら私も、今自分に出来ること為す!!)

 

一夏は格段に強くなった。

その姿を見て鈴は強くなりたいと思った。それは自分も同じだと箒と紅椿は正面を向いた。

 

「私は強くなりたい。誰にも負けないぐらい強く!力を貸せ紅椿!みなと共にこの状況を打開するために!!」

 

ギュイィン! 

紅椿の装甲。否、紅椿の展開装甲の内部が鳴動した。

短く唸った後、箒の呼び掛けに答えるように紅椿の全展開装甲が花開いた。

 

『絢爛舞踏、発動。エネルギーバイパス接続。オールクリア』

 

薄桃色のエネルギーウィングと紅の装甲が黄金に輝き、紅椿のエネルギーがレッドゾーンからフルに変わった。

 

絢爛舞踏、発動成功。

 

だがそれだけではなかった。

 

突如紅椿の肩部ユニットがジャキンと音を立てて変形していく。

変形が終わったその姿はテールスタビライザーを携えたクロスボウのようなものだった。

 

『無段階移行シームレス・シフト、蓄積経験値の規定値をクリア。最適化開始。出力可変型ブラスターライフル【穿千(うがち)】、スタンバイ』

「な、無段階移行(シームレス・シフト)だと?」

 

一瞬困惑するが、姉が密かに組み込んだ機能だろうと無理やり納得した。

 

視界に穿千の詳細が書かれるが、今はそんなものを見てる余裕などないし見たところで箒は理解できないとパネルをどけた。

 

射撃兵装という文字が見えた。

それだけわかれば充分。

 

「みんな!アマゾンやデュラハンを出来るだけ中央に集めてくれ!」

「え、それって」

「細かいことは聞くな!説明など出来ん!!」

「了解!!」

 

箒が絢爛舞踏、そして見知らぬ装備を展開してるのを見た専用機持ちは箒の言うとおりデュラハンや観客席から降りてきたアマゾンを取り囲むように動いた。

 

紅椿の黄金の輝きはまだ収まらない。

その無限のエネルギーを両肩の穿千に収束していく。

 

『フルチャージ完了。PICブレーキ、最大』

「打ち抜け!穿千ぃぃ!!」

 

2門の穿千から閃光が爆ぜ。極太のビームがアリーナの地面を焼いた。

 

僚機のおかげで中央に集まったデュラハンやアマゾンの大半は光の本流に呑み込まれ、掠った物は吸い込まれるように流されて爆散した。

 

385体のアマゾンとデュラハンが、一瞬で半分の192機にまで減った。

 

「覆るとは言ったが、ここまでとはな!」

「ほんと規格外だね紅椿は!」

 

紅椿は穿千を収納したのち再び展開装甲を全て開いた。

金色の光を放ったままの紅椿を纏った箒は両の刀を構え直す

 

「みんな、私が飛び回る!すれ違いざまにエネルギーを受け取ってくれ!!」

「わかった!みんな、もう一息だよ!」

 

大輪の華が展開装甲に物を言わせてアリーナ内のデュラハンに斬りかかり、近くにいた甲龍とハイタッチした。

 

三分の一ほど回復した自身のエネルギーパラメーターを見て、鈴は軽くタメ息を吐いた。

 

「まったく、どんだけ好きなんだっつの」

 

鈴は双天牙月を構え直して加速し近くにいたデュラハンを真っ二つにした。

愚痴るようにこぼすが、鈴の顔はライバルに対する戦意に満ち溢れていた。

 

「綾音!」

「はぁ…はぁ…箒さん!」

 

ふらついていた綾音の周りのデュラハンを穿千で全部打ち抜き綾音にタッチするとエネルギーが回復される

 

「なんで……」

「綾音がアマゾンだったとしても綾音は人間だ。それに叶ってるじゃないか。人とアマゾンの共存」

「……!!」

 

箒は初期から悠の事を知っている為言えた。それと同時に綾音は涙がポロポロ流れ始めた。

 

「そう泣くな。悠に見られたら恥ずかしいぞ、兎に角もう一息だ!行くぞ!!」

「はい!!」

 

 

 

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