インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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第七十六話 平和に終わらせてくれよ!!

 

エム/織斑マドカが織斑一夏、水澤悠に襲撃する数分前

 

「ええ、今回は完全にこっちの落ち度よ。わかってる、リードはしっかり握るわ。ええ、それじゃ」

 

スコールは一呼吸置いて電話を切った。

 

「誰と電話してたんだ?」

「この作戦の実案者よマグナリオ。」

「何?そんな事俺は聞いてなかったぞ?」

 

知らなくて当然だ。素性は不明だしいきなりそんなキャラ出てきて大丈夫なのかと思うほどだ。

 

「目的はセシリア・オルコットの偏向制御射撃(フレキシブル)と水澤悠のデータらしいわよ」

「エム以上に覚醒したフレキシブルと偽物の模倣生成か。お偉い方はそれを何に使うやら」

 

マグナリオの目的とスコールの目的が相反してるのに協力してる理由、アマゾンを食物連鎖の頂点とし,人間を家畜にする。

ここまではアマゾンを味方にみてるようだが、まさかアマゾンは自分一人で十分だと言っており,スコールもアマゾンを消す為の利害の一致なのだが、妙に協力的である

 

「──!!」

「──!──!!」

「何だ?」

 

別室から怒鳴り声が聞こえた。

スコールは髪をかきあげ、閉め出されたドアを開けた。

 

「離せオータム!!」

「あーもう!いつも以上にじゃじゃ馬だな!ナノマシン打つって言ってんだから大人しくしやがれ!!」

「必要ない!殺す!奴を殺す!!私は負けてなどいない!!」

 

ベッドに押さえ付けられてるエムとそれを押さえ付けるオータム。

アラクネは修復中、サイレント・ゼフィルスは今スコールが持っているため二人ともISがない。

もしあればこの部屋は見るも無惨な姿に変わっていたことだろう。

 

「エム」

「スコール!ISを返せ!!今すぐ水澤悠を殺す!私は弱くなど」

「スレイブコード・バインド。アクティブ」

「っ!!?」

 

スコールがISの待機形態であるイヤリングに手を当て、キーワードをコールした。

 

「があああぁぁぁっ!!ああっ!うぐっ、うわぁーーー!!!」

「エム!?」

 

突然エムが頭を抱えて苦しみだした。

エムの体内には監視用ナノマシンが注入されており。スコールの認証によって行動を制限できる。

いまは無力化用の低出力モードだが、やろうと思えば数秒で脳中枢を焼き切ることが出来る危険な代物だ。

 

「カット」

「ああっ!ぐぅ、ふぅ、ふぅ………」

「す、スコール………」

「………マジか」

 

だがスコールは今までエムにそれを使ったことはなかった。

スコール自身こういうやり方は好みではないためだ。それをわかっているからオータムとマグナリオもスコールを見て驚いている。

 

普段穏和な笑み浮かべるスコールも、今回ばかりは許容出来ることではなかった。

 

「エム、あなたはやり過ぎたわ。今後、私の許可なしに行動すれば、今度はキルモードで使わせてもらう」

「ぐっ、か、は………」

「エム。あなたが織斑マドカであろうとそうでなかろうと、私には関係ないの。でもここにいる間は亡国機業(ファントム・タスク)のエムとしていて頂戴」

 

織斑マドカ。それが織斑千冬と酷似してる彼女の本当の名前だった。

 

「でないと、織斑千冬との決着なんて夢のまた夢よ。今のあなたは彼女の足元にも及ばない」

「貴様が姉さんを語るな」

「はいはい。私にも立場はあるの、賢いあなたなら理解できると信じてるわ」

 

スコールが出ていくのと同時にオータムも部屋を後にした。

 

「………」

「………」

 

一人ベッドの上に倒れるエムは胸元のロケットをあちこち包帯を巻いた震える手で開いた。

そのなかには、織斑千冬の顔写真が納められていた。

 

織斑千冬(ねえさん)………」

 

ギュっとロケットを握りしめながら彼女を姉と呼んで目蓋を閉じる。

するとベッドに何かが落ちる音がし,目を開けるとリロード式マグナムが置いてあった

 

「………それは何だ」

「あぁ4Cの雑魚から奪った対アマゾン用高電圧弾入りマグナム。これをどう使うかはお前次第だがな」

「…………」

 

エムはマグナム銃を見つめた………そこにある憎悪をあの水澤悠にぶつけるかどうかを

 

「できるだけやってみる」

「そうか」

 

するとマグナリオは掌を地面に置くとドアが生成され、扉が開く

エムは早速準備し,その扉から入っていった

 

「どう言うつもりだてめぇ!!」

 

オータムが扉を開けてマグナリオに掴み掛かるも謎に強い体術捌きで一気に押さえつけた

 

「グハァッ…………!!」

「あなた、エムに何を唆したって訳?ISは私が持ってるってのに。」

「なんだ。お前は知らなかったのか?4Cが対アマゾン駆除用の特殊マグナム銃の事を、俺はそれを渡しただけだ」

「……!」

「なぁに、見殺しにはしない。責任を取るのも王の資格だ」

「待ちなさい」

 

オータムの拘束を解き、エムが入っていった扉に入ろうとするもスコールに止められる

 

「アマゾンMって名乗ってるわよね?早くMが何か知りたいわ。アマゾンオメガ やアマゾンアルファの様にギリシャ文字かしら?」

「そうだな…………()()アマゾンミューズって名乗るか」

 

そう言い残してマグナリオは去っていった。彼の残した()()の台詞に疑問を残しながら……

 

 

 

ーー♢ーー

 

 

 

 

「アマゾンッ!」

『NEW・OMEGA』

 

即座に変身して一夏君の前に立ち、エムが撃った弾丸は心臓部に当たるもニューラングアーマーの硬さで弾き返した。

 

「悠!!」

 

一夏君が僕に駆け寄ろうとするもエムは再び照準を向ける

 

「オラァッ!!」

「ッ!?」

 

エムの後ろから謎の黒パーカーが飛び蹴りを入れるも間一髪で回避される

 

「よぉ、襲撃者!よくもまぁ仲間をやってくれたな!」

「……って天樹さん!?」

「誰!?」

「僕の知り合い」

「まぁそんな感じだ」

 

エムを挟み撃ちでの邂逅、なんだかあっさりしていた

 

「ISの待機形態が無いって事はな!」

「僕達が有利!」

「いや待てよ俺缶ジュースやペットボトル沢山持ってるんだぞ!?」

「………くだらん。」

 

エムはそう言い懐から高電圧弾入りマグナム銃を取り出した

 

「!!!(まずい!)」

 

何かを察したのか渋谷は走り出す、

 

「お前らよけろぉぉぉ!!!」

「うわぁっ!」

「くっ!」

『BLADE LOADING』

 

即座にニューオメガソードで防ごうとするが何者かが前に立ち塞がる

 

「くっ……!!」

「ラウラ!?」

「いつの間に!」

 

高電圧弾をAICで受け止めていたが,微かに掌が爛れていた

 

「ったく……二人が遅いと思ったら……こんなのに巻き込まれたのか…!」

 

すると渋谷の後ろから何者かが迫ってきたが、楯無が妨害する

 

「3人とも大丈夫!?」

「楯無さん!!」

「何とか!」

「………しくったなエム」

「………あぁ。」

 

ヴァイオレットカラーのラファールを見るとニューオメガは即座に警戒する

 

「お前……!!」

「今回は引いてやる。水澤悠、お前はこれから地獄を見るだろうな」

 

そう言い残してエムをお姫様抱っこして去っていった

 

「…………で、貴方は確か」

「チーム《アマゾン・トリニティ》の渋谷天樹だ」

「一応僕と同じ方ですね」

((一応なのか……?))

「ここで話すのも勿体無いし帰りましょ」

 

天樹さんはあの後予定あったらしく帰りました。

あの後遅いって言われたけどなんとか言い逃れに成功

 

帰ってきた途端三崎さんと高井さんが話しかけてきた

 

「おぼっちゃま………お前凄いよ」

「あぁ、綾音って子とぜっっっったい結婚しろよ?な?」

 

綾音、後で何を話したのか言わせてもらおうか

 

「でもねー水澤君。なんだか天条君何だか僕や水澤君と同じだと感じたんだけどさ,それって……」

「マモル君その話は一旦やめよ?うん?」

 

仁さんと同じだと知ったら何かがまずいうん。

そんななか、リビングのドアからガチャリと音がした。

 

 もうパーティーメンバーは全員リビングにいる。

 そんななかで入ってこられる人物は一人しかいない。

 

「ちふっ、織斑先生!?」

 

 この家の家主にして一夏の姉である千冬である。

 いつもの黒いスーツ姿の彼女を前に一夏は思わず名前で呼びそうになった。

 

「普通でいい。今の私は教師ではなくお前の姉だ」

「お、おう分かった千冬姉。でもなんでここに?」

「何故? 弟の誕生日を祝うのに理由などいらないだろう」

「え?」

「誕生日おめでとう、一夏」

 

 そう言って千冬が出したのは本日何回目かわからない黒い長方形の箱。

 一夏が開けるとそこには艶消しの黒と金メッキ色の如何にも上等なボールペンだった。

 

「ボールペン?」

「ああ。生徒会や関係資料でペンを使うことが増えてきただろう。それは私がいつも仕事で使っているものと同じ物でな。書きやすく長持ちする代物だ」

「持っただけで分かるよ。これは良いペンだ」

「ほう、そんなことが分かる歳になったのか?」

「一個歳くったからな。ありがとう千冬姉」

「喜んでくれて何よりだ。これから書くものも増えるからな。目一杯使うといい」

「どういうこと?」

「………本来ならここで言うことではないが、明日には公になるからな」

 

コホンと一つ咳払いをし。千冬は一時的に教師としての立場に戻った。

 

「織斑一夏」

「は、はい」

「水澤悠」

「はい」

 

二人の名前が呼ばれた。ということは先ほどの市街地戦についてのことか。

と思ったがそれならセシリアさんも呼ばれるはず。

小首を傾げるなか。千冬は鞄から書類を取り出した。

 

「先ほどIS国際委員会より正式な申し付けがあった。本日付で織斑一夏、水澤悠の両名は日本代表候補生としての任につくこととする」

「えっ!?」

「僕と一夏君が………代表候補生!?」

 

一夏君の白式は日本の倉持技研からの出。

僕のアクセラオメガは野座間製薬のIS特殊開発局からの出だ。

 

「表面上は決まっていたらしいが、今回の襲撃事件で後押しされたようだ。以後、二人は国の看板を背負うことになる。わかったな」

「「はい」」

 

悠はともかく、一夏は専用機持ちでありながら無所属だ。

長らく議論されていたが、収まるところに収まったというところ。

 

そして、それはもう一人にも適用される。

 

「そして篠ノ之箒」

「はい」

「お前も暫定的だが日本代表候補生となる。お前のISはの出自は特殊だからな。仮止めという形で所属することになる。異論はあるか」

「いいえ」

「よし」

 

三人は千冬から書類を受け取った。

 

性急な話となったが。IS学園に在住するレアケース三人は瞬く間に日本所属となった。

 

「すまないな。せっかくの祝い事に水をさすような真似をして」

「いや、これは必要なことなんだろ」

「ありがとう一夏」

 

目の前の重大発表に空気が張りつめるなか、その空気をぶち破ったのは学園が誇る生徒会長だった。

 

「はいはい!湿っぽい空気は終わり!こっからは一夏君の誕生日に加えて三人の代表候補生就任祝勝会よ!さあ騒ぎなさい若人!」

「そ、そうですね!おめでとう!」

「おめでとう!!」

 

場を盛り上げることに関して彼女の右に出るものはいない。緊張が解れてざわめき、各々が料理やスイーツに手を出した。

 

「箒、これで同じ土俵ね。負けないんだから!」

「ああ、望むところだ」

「悠さんおめでとうございます!!」

「マモちゃん!のんちゃんにお嬢!それと坊ちゃまの連れカモン!!」

 

三崎さんの誘導により美月、マモル君、高井さん、綾音、ラウラ、シャルロット、鈴により阪神優勝並みの胴上げをされました

 

「みんな……ありがとう………っていうかおろしてぇぇぇ!!」

 

ここにいる大半がISを持っている。

そんな異様な環境など忘れてるかのように。みな年相応に騒ぎあった。

 

「千冬姉。今日はもう仕事ないんだろ?ケーキあるから食べようぜ」

「ああ、いただこう」

 

 

 

ーー♢ーー

 

 

鷹山仁はのほほんさんから送られてくる誕生日会の様子を写真越しからみていた

 

「……悠が代表候補生か。」

 

そう言い残し仁は屋上から出て行った。

 

(余計に悠を殺し辛くなったな。まぁ奴がアマゾン狩りに多少協力的ではあるがな)

 

彼は怪我を負いながらもアマゾンは一人残らず殺す信念だけは死んではいなかった。

 

はなしてその狂気の信念は何処へ転ぶというのだろうか………

 

 

 

 

 

 

ーー♢ーー

 

 

 

一夏の誕生日パーティーが終わり、華やかとなったリビングはすっかり元に戻っていた。

いまリビングにいるのは一夏と、着替えを済ませた千冬の二人。

 

「お疲れ千冬姉」

「それはお前もだろう。現場にいたのだからな」

 

入れてきた紅茶を千冬の前に置き、一夏も椅子に座って紅茶をすすった。

 

「……飲んだことない味だ。それにこんなカップうちにあったか?」

「セシリアのプレゼントだよ。イギリスのいいとこなんだってさ」

「そうか」

 

普段コーヒー派の千冬でもこれは美味しい物だと感じた。

 

「最近はどうなんだ。一人は気になる女でも出来たか」

「またその話?いないってば」

「部活の助っ人でいく先々で人気らしいじゃないか。モテモテだな」

「だから違うって」

 

久方ぶりの家族として時間を過ごす二人。

中学時代も千冬の仕事や一夏のバイトですれ違いがあり、IS学園に入ってからは完全に離れた二人。

わざわざお互いの部屋に行くこともなく過ごした二人にとって今の時間は何物にも変えがたい物だった。

 

ゆっくりと話が出来る。

そんな状況の中で、一夏は普段聞けないことを聞いてみることにした。

 

「千冬姉」

「ん?」

「実は俺と悠、襲撃されたんだ」

「何だと?」

 

ティーカップを置き,千冬は問い詰める

 

「その襲ってきたやつは千冬姉に似ていたんだ」

「ほう…私に?」

「ああ、背は小さかったんだけど……なんか千冬姉そっくり…みたいな。あと「織斑マドカ」って名乗ってたんだ」

「織斑マドカ……」

「…一体なんだったんだ……?」

 

一夏が首をかしげている。

親は一夏が幼い時に千冬と一夏を捨てて失踪

そして親は親戚づきあいもなかったらしく、めぼしい親戚なども存在しない…つまり天涯孤独だったと一夏は千冬から聞かされていた。

そんな中、自分と同じ名字を名乗り、千冬によく似ていた「敵」が現れたことにより、一夏は混乱していたのだ。

 

「………そうか。大体敵の狂言か策略かもしれないな、何が言いたい?」

「その……俺以外に親族は居ないのかなって」

「一夏、私達の間で家族は一番のタブーだ。」

「あぁごめん千冬姉……」

 

普段の千冬の威圧に少し縮んでしまうが、さっきまでの雰囲気に戻る

 

「気にするな,お前もまだまだだな。水澤が一緒にいたから何とかなったに過ぎない。」

「そうだよな……あ、もう一つ聞きたいことがあるんだけどなんで俺ってIS動かせるんだ?」

 

一夏が偶然動かしてしまったIS

疑問に思ったのは最初の頃で、途中からはそれどころではなくなった。

悠という二人目の存在が出たとはいえ、それ以上に出たという情報はない。

 

そして自分の存在が世界にどれだけ重要視されてるか、そして自分の存在を目の敵にしてる者もいるということを知った。

 

「何故動かせるかについては。私から話せることはない」

「知らないってことで良いのか?」

「そうだ」

「本当に?」

「二度も言わせるな」

 

若干引っ掛かりのある言い方に聞こえた一夏は怯まず聞いてみるが結果は得られなかった。

 

「束さんは知ってるのか?」

「どうだろうな。それに聞いたところで素直に答えると思うか?」

 

誰に聞いても満場一致でノーだ。

 

この話は終わりとばかりに千冬は紅茶を口にする。

ある意味予想できた答えだったためにそこまで落胆していない一夏もティーカップを持ち上げた。

 

「すまんな」

「ん、なにが?」

「お前をISから遠ざけたことだ」

 

第二回モンド・グロッソの事件から。一夏にはISに関する一切を断つようにと千冬に言われた。

ニュースにISの内容が出ると番組を変えるぐらいの徹底振り。

一夏自身もネットで調べることもせず、やるとしたら弾や数馬の家でIS/VSをやるぐらいだった。

 

「なんでそんなことを」

「お前がISに関われば束が動く。そうなればお前に危険が迫ると思った。そんな私の言いつけをお前は素直に守ってくれた」

「それは」

「そのせいでお前に恥をかかせてしまった。オルコットとの諍い、ボーデヴィッヒとの確執。元を辿れば全て私の責任だ」

 

当時の一夏は自分に置ける状況もわからず。とにかくISに関しては無知だった。

『代表候補生とはなに?』と聞いたときのみんなのリアクションの意味を今では痛いほどわかる。

 

「俺がISに近づいたら動かせるって。千冬姉はわかってたのか?だからISから遠ざけた?」

「確証はなかったが。お前は束のお気に入りだ。実の妹だからという理由で第四世代を渡す女だぞ。しかも新造されたコアをつけてだ」

「それはまあ」

 

自分と悠は日本代表候補生になった。

だが箒は一時保留という扱いで暫定日本代表候補生。

それほど紅椿と紅椿のコアは扱いに困る代物なのだ。

 

「私はお前を可能な限りISから遠ざけて守ろうとした。だが今となってはそれは間違いだった。私がお前にしたのは守護ではなく隔離だ。お前は私の弟。遅かれ早かれ巻き込まれることはわかっていたはずなのに」

「千冬姉」

「すまない一夏」

 

千冬は対面に座る一夏に頭を下げた。

一夏はこんな千冬を見たことはなかった。いつも傍若無人で、それでいて強い人。

IS学園でも鬼教師、人の心とか無いんか?なんて冗談交じりに思ったことはあったが、こんな姉の姿は見たことがなかった。

 

「謝ることじゃないだろ千冬姉」

 

そんな姉から目を離さず、一夏は言葉を投げ掛けた。

 

「千冬姉がやってたことは全部俺を思ってのことだろ?俺は別にそれで嫌な気持ちになったことはないし。現に俺はなんとかなってるだろ。だから千冬姉が謝ることなんて一つもねえよ」

「………ありがとう一夏」

 

一夏は確かに優しい。だがそれでも人の子だ。こればかりは不平不満を言われることを千冬は覚悟していた。

 

それでも一夏は千冬を許した。いや、許すもなにも一夏は最初から不満などなかった。

千冬にとって一夏はたった一人の家族。

家族を守るということは至極当たり前のことなのだと一夏は自分にも言い聞かせているからだ。

 

顔を上げた千冬はしばし押し黙った。

なにかを言いたげな、だが迷ってるようなふうに。

そして意を決したのか。千冬の目は一夏の目を真っ直ぐとらえた。

 

「一夏」

「ん?」

「強くなったな」

「………え?」

 

しばらくして出された千冬の言葉に一夏は耳を疑った。

 

いま自分の姉はなんと言ったのか。

もう一度ちゃんと聞きたかった。だが普段突発性難聴だと言われてる自分の耳には確かに強く残っていた。

 

強くなったな、と。

 

「千冬姉」

「勘違いするな」

「え?」

「確かにお前は強くなった。だが私から見ればまだ殻を破った雛鳥に過ぎん。これからも自分の腕を過信せずに精進しろ」

 

言い終わった千冬は立ち上がってリビングを後にした。

 

「ち、千冬姉どこに」

「トイレ」

 

パタン。なんとも味気のない音と共にリビングから千冬がいなくなった。

 

呆気に取られる一夏だったが。次第に腹の下から沸き上がる情動に身体が震えた。

 

「………よっっしっ」

 

そして満面の笑顔で小さくガッツポーズをするのだった。

 




これにてインフィニット・アマゾンズ血涙疾走(ティアブラッド・ファスト)編完結です!

次回は完全シリアスの喰人生物差別主義(アマゾン・カースト)編スタート!
ぜひご覧ください!!
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