インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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第八十三話 SHADOW STAMPEDE〜宣戦布告開始

 

 

フェンス事件の翌日

SHRで伝えられた緊急の全校集会に集められた女子の話し声は小さくも響き、途切れることを知らなかった。

 

「いきなりどうしたんだろうね」

「やっぱり最近学園で出回ってるやつじゃない?」

「そうかもね」

「あの2人がいなくなったら収まるんじゃない?」

「ちょっと、そんなハッキリ言わなくても」

「だってそうじゃん、もしかしたら私たちも巻き添えくらうかもしれないんだよ?」

「いつ人を食べるか分からないし」

 

所々から一夏と悠を非難し始めていく。

それは生徒の不安に入り込み、水に足らされた絵の具の用に広がっていく。

 

人は目の前の噂に飛び付く。

文面でしか理解せず、その裏側や奥を見ようともしない。

人は不安になると何かにすがり付かずにいられなくなる。何かを掴めば、それを安息の地として収まるからだ。

 

(地盤は固まりつつあるわね)

 

ざわめく女子の中で、女性至上主義の会リーダーである雨霧沙苗はほくそ笑んだ。

 

(昨日の牽制と脅迫文は見事効果を為した。私たち女性がどれだけ本気だったのかようやく理解してもらえたようね)

 

様々な陰湿なイジメ、フェイクニュース。色々手段を講じても彼らに対したダメージを与えることは出来なかった。

 

偽告白は完全に悪手だったと思っている。

 

悠に告白した女子生徒は悪夢を見るようになり本当のカウンセリングをしなければならないとは思わなかったが。

 

埒が明かないと考えた雨霧達は、ついに直接危害を加えるということにシフト。

勿論最初は寸止めのつもりだったが悠を確実に殺す為直撃コースに変更してしまったが。結果的に状況は大きく動いた。

 

雨霧達の言い分を歯牙にもかけなかった楯無がついに動いた。

ようやく重い腰を上げた。良くて男子2人の退学、悪くても男子に対して何かしらの制約がかかることだろうと。

 

脅しの文は本気だ。

もしも一夏と悠がこの学園から去らなければ、その周りに危害を加える。

現時点で雨霧は悠含めたアマゾンに対する恨みはあり、冷静なのは悠に悟られない為である。

 

神聖なるIS学園に現れた男とアマゾン

雨霧からすれば彼らと仲の良い女子は男に平気で媚びをうる尻軽に過ぎないし、あんな化け物と仲良くなってるのに納得が行かない

そんなの今の女性の正しい在り方ではない、それに気付かせることも女性の為の会の使命なのだと考えている。

 

(2人を退学に追い込んだ後、用務員でアマゾンの鷹山仁を何とかしなければね。まぁ仲間が上から植木鉢を落としたおかげで何とかなったと思いたい)

 

そして遂に一夏と悠をこの神聖なる学園から追い出す。

その思いが今、実ろうとしている。

雨霧達女性至上主義の会メンバーはそれを疑わずにいまかいまかと全校集会の始まりを待ちわびていた。

 

「それでは生徒会長、よろしくお願いします」

 

生徒会会計である虚に促され、更識楯無が壇上に上がった。

 

「みんなおはよう。今日は集まってくれてありがとう」

 

楯無はいつもと変わらない笑みを浮かべてみんなに挨拶するが。生徒の反応はいつもより収めだった。

 

「さて、今回の議題はみんなが予想してる通り校内で起こっている反男子運動よ。それについて生徒会からお知らせがあります」

(来たっ!)

 

雨霧は顔に出ないように下唇を噛んで耐えた。だが目は水を得た魚、鯉の滝登りで竜になったかのように輝いていた。

 

「それでは副会長と生物環境委員と用務員さんは前へ」

「え?」

 

呆気にとらされたのだった。

 

 

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

後ろに一夏君を立たせて壇上に上がると、色んな視線を感じた。

 

困惑、期待、疑問、そして嫌悪、侮蔑。

 

誰がどんな視線をしてるか、一人一人注意して見ればわかるが。始めてこの場所にたった時よりは格段に居心地は悪いということは明白。

 

後仁さんに至っては何してそんな怪我してるんだと思われてるらしい

 

……………数人ぐらい目線が合ったのは気のせいじゃなかった。

 

普段のメンツやクラスメイト、そして女性至上主義の会のメンバーの一部が心配の眼差しを向け、何をする気だと睨みつけてるが1人だけ違った。

 

それが綾音だ。何かするんじゃないかと心配になり、左上腕部につけてるレジスターを振袖越しに抑えている

まぁ………何かするけどね。

 

「皆さんおはようございます。行きなりですが今回の一連の犯人は女性至上主義の会という女尊男卑思考の女子グループによる犯行です」

 

あまりにも、あまりにもサラッと言った内容に体育館はシーンと静まり返った。

静かすぎない?

 

「もう一度言います。今回の一連の犯行は女尊男卑とアマゾン迫害を掲げる女性至上主義の会の犯行です」

「え、それ本当に?」

「ちょっと!何をでたらめなことを!」

「私まえからあそこ胡散臭いとことは思ってたんだけどねー」

「嘘だ!」

「これは罠だ!!」

 

それぞれいいリアクション取ってるな……………

それにより少し緊張が解ける。

 

「キャノンボール・ファスト以降における男子差別及びアマゾンを追い出す運動から一週間が経ちました。そこで僕と織斑君は何とかスルーしたり上手く受け流したりして居ましたが。彼女らは業を煮やしたのでしょう。昨日の朝の登校で、僕と一年二組の天条綾音さんの上からフェンスが落下してきました」

「え!?」

「それって……」

「今から見せるのは、この時間一髪で助けてくれた。織斑君の白式のログから取り出したものです」

 

ホロコンソールを操作し、後ろのスクリーンに動画が流れる。

そこにはその時の惨状と臨場感が伝わる良くできたログだった。

 

本当に間一髪だったし、僕が変身していたのにも関わらず何も出来なかったのは自分の力不足だ。

近くにラウラさんが居たみたいだけど………この一瞬じゃわからないな。

 

動画を落ちてきたフェンスの画像に変えてマイクを手に取った。

 

「これと同様に鷹山仁さんも上から植木鉢を落とされると言う()だったら死ぬような怪我を負いました。」

 

あの用務員さんが!?と、皆が反応して前にいる仁さんに一斉に目線を集める。

元人間と言えどアマゾンだが、僕より再生能力は半分にも劣るにも関わらず立っている事がおかしいからだ、

 

「そして放課後に差出人不明の脅迫状が届きました。内容を読み上げます

──神聖なるIS学園に住まう怪物、水澤悠と織斑一夏に通告する。今朝のフェンスは警告だ。即刻IS学園から退去せよ、さもなくばお前たちの周りで媚を売る友人に危害を加える。これは最後通告である。足りない頭でよーく考えることだ──だそうです。僕だけ酷い言われようだ……ほんと、人の心とか無さすぎる」

 

ビリッ!

 

僕は脅迫状を何食わぬ顔で破り続け、体育館にはASMRの様に響き渡る

 

「何でこんなに滑稽なんだろうな。」

 

それを眼前に放り投げた。

紙吹雪とかした脅迫文がヒラヒラと床に降り積もっていく。

 

「僕達は我慢しました。過剰に反応すれば相手を喜ばせるだけだと。再発防止のために色々頑張って、収まるのを待つのが得策だと信じて来ましたが。ええ、ええ、甘かったと自覚していますよ、本当に甘過ぎた」

 

目元を抑えた。視界の裏には昨日の喪失感と無力感、絶望感が鮮明に写し出される。

いっそのことこの映像を現像できればと思うほど。

 

「僕は義務で人を守ってるんじゃありません。皆の優しさに触れ、自分がここにいていい場所なんだと思って守ってきました!

しかしその矢先、アマゾンが人を喰う怪物だと分かった途端、周りの人を巻き込んで迫害して命を奪おうのするのは間違っています!!

ここIS学園は多種多様な国から来た人達が居ます!人種差別とかは無いはずですが、一生物を差別するだなんて言語道断です!!」

 

その眼差しは力強く悲しみを感じた、問題から目を背けずにただ真っ直ぐに見つめていた。

 

「アマゾンだって生きている!全て同じに決めつけるな!!……っ!」

 

話し終えた後、仁さんが僕のマイクを奪い、壇上に立つ。

 

「えー……みなさんこんにちわ。IS学園用務員の鷹山仁です。単刀直入に言うとね。俺ねがっかりだよ」

 

その表情は正気が薄く悠と違い掴みどころのない眼差しに皆が恐怖した。仁さんが何を考えているか分からないように感じさせる

 

「俺は確かに人間には手を出さないって言った。だが俺がアマゾンだからって常にやられっぱなしじゃねーんだよ。」

「…………」

「何が言いたいか分かるか?今回の件でよく分かった。一応人間の味方の俺が女性至上主義の会に徹底抗戦を申し込むって訳だ。そうだろう?悠!!」

 

そして仁さんは再び僕にマイクを返却し、僕は再び前に立つ、

深呼吸をし、目に確かな意思を持ち。この場にいる全員に言葉で殴り付けた。

 

「いまここに生徒会は宣言します!生徒会はあらゆる手段を持って!この学園に根付く女尊男卑の弊害であり女性至上主義の会の解体、打倒を宣言する!」

 

僕の宣言に一気に生徒はどよめいた。

一部教師も驚きを隠せず織斑先生でさえ腕をくむ手を強めた。

 

「全生徒に問います!今この世に男性が2人、ISに乗れるという現状に関わらず女性がまだ強いという風習が消えないですが、人間とは違うだけでいじめ、巻き込ませるのは断じておかしい事です!だけど僕達がいくら声を上げようとこの状況が変わるほど甘くはありません!!世界は愚か、この学園の誰も見向きはしない!今の学園の根底を覆すことなど出来はしないでしょう。ならば覆す!その固定概念を僕達生徒会が踏破する!」

 

バックスクリーンの画面が代わる。

 

「そこで生徒会は女性至上主義の会に、異種大多数チームIS戦の挑戦を申し付けます!!」

 

スクリーンに映ったのは僕と一夏君、そして仁さんに布仏姉妹の写真だった。

 

そしてその下にVSと区切られて、女性至上主義の会、12人と書かれていた。

 

「こちらは更識楯無さんを覗いた5人!対する女性チームは12人。戦力比2倍という異色のISバトルです!」

「5対12って、そんな戦力差」

「いくら専用機があるからってそんな無茶を」

「本気で言ってるの?」

 

端から見たらあまりにも、無茶が過ぎる発言に生徒は困惑を隠せない。

 

「もしこちらが勝利すれば、女性至上主義の会は解体する。僕達もただ黙っていたわけではない。今日のような日に備えて。女性至上主義の会を失墜させれるだけの証拠が此方にはあります!」

「何!?」

「だが此処では言わない、お前らがぴゃーぴゃー叫ぶのを避けるためにな。」

 

仁さんも割り込んできた、

 

「仁さんの言う通り、敢えて公表しません、仮に女性至上主義の会を正攻法で解体したからと言って、また第二第三の組織が生まれ、また繰り返すでしょう。その為の異種大多数チームIS戦!この圧倒的戦力差に勝利し、女性至上主義の会の優位性をことごとく粉砕する!!」

「「おおーーー!!」」

 

風向きが変わり、生徒の熱声が体育館を震わす。

生徒は怒涛の展開に見事飲み込まれた。

校内に漂っていた男性やアマゾンに否定的だった流れが、たちまち生徒会(ヒーロー)VS女性至上主義の会(ヴィラン)という流れに傾いていった。

 

「さて、何か言いたい事があるようですね。一年四組雨霧沙苗さん」

 

熱狂が静まり一人の生徒、雨霧沙苗が壇上に誘導された。

彼女は動揺を隠し、冷静を装って僕と仁さんと対峙した。

僕は笑顔でどうぞと発言を促すと、昨日と変わらない丁寧語で話し始める。

 

「随分と妄言を並べられたものですね」

 

妄言か。よくもまあこの空気で折れずに言えたね。

そうじゃないと張り合いがなさすぎるけど。

 

「妄言?そんな訳無いだろ。ぶっちゃけ俺の頭に植木鉢落としたの榊原先生見てたからな?」

「と言うかそう言うのは貴方達が知ってる筈です。」

「ええだからこういうわ。全て生徒会の空想よ」

「そんな訳無いでしょ」

「口ではなんとでも言えるわ。我々はいたってクリーンな集まり。世の女性をより正しく導く為に日々努力を」

「ダッハハハハハハ!!」

 

突然声を上げて笑いだした仁さんに流石の雨霧と僕もビクっと後退りした。

 

「な、なに!?」

「いやいや失礼。余りにも的外れな発言をさも当然のように言うからな。馬鹿馬鹿しく思えちゃって。」

「な、何ですって!?」

「日々努力とか言ってるけどぶっちゃけただの八つ当たりだろ。ISが使えないお前みたいなやつは男性を冤罪に陥れたり悠や織斑やその周りの人達巻き込んでんのダセェんだよ!!」

 

こいつらは紛れもなく異常者だ

間違った倫理をさも当然のように振りかざす、理不尽に糾弾する。罪悪の欠片すら持たない女尊男卑の権化。

 

「もう一度言う。僕達生徒会の申し出を受ける気はあるか」

「断る。こんな遊びに付き合うほど暇じゃない」

「この戦力差で負ける自信があるのか?」

「愚問ね。そんなことは万にひとつもあり得ない。わからないなら言って上げるわ。ハッキリ言って、これを受けるメリットがない」

 

確かにこれでは一方的に条件を提示しただけだ。雨霧の言うように、メリットはこちらしかない。

今現在では。

 

「ならそちらが一番に望む事をしてあげますよ」

「望む事?」

「ああ、君達、いや貴方が一番に望むものだ」

「………っ!お前まさか」

 

気づいた彼女の言葉を遮るように、再び眼下の生徒に向き合い高らかに宣言した。

 

「この勝負に生徒会が敗北した場合、水澤悠と織斑一夏君は、IS学園から自主退学し、鷹山仁さんも辞めていただきます!そしてこの約束をこの場にいる全ての人に宣言します!」

 

笑顔で言い放つには衝撃過ぎる宣言に。全生徒は余すことなく絶句した。

 

「勿論一夏君や仁さんも了承済みです。そうだよね一夏君!」

「あぁ勿論だ!友達がいじめられてるのを見捨てるなんて出来ない!今の俺があるのは悠のお陰だ!だから責任は取らせてもらうぞ!!」

 

その姿に一夏君ヒロインズは空いた口が塞がらなかった

 

「僕達が負けた場合は貴方達に対する発言を全て撤回する。僕と一夏君がいなくなれば、貴方達はこれ以上行動を起こす意味もなくなりますからね。」

「本気なの?」

「ああ、これが僕達の覚悟だ」

 

仁さんとセリフを裏で合わせたので今この場で言い放つ。

 

「おい雨霧、よく聞け。今この場だと俺と悠がヒーローでお前はヴィランだ。」

「……………」

「でも違う。これは1人の生物の生存競争による闘いなんだ。でもこれだけは言える。」

 

そう言い僕と仁さんは雨霧に指を刺す

 

守るべきものは守り

狩るべきものは狩る!!

 

「「それが今の僕(俺)達の信念だ!!!」」

 

そこから生徒達は再び湧き上がり、雨霧はそれに圧倒される

 

「勝負は一週間後!放課後の第一アリーナにて執り行います!女性至上主義の会メンバーは明日までにエントリーする人物を選んで生徒会に提出してください。練習機を他のアリーナから運ぶのにも手続きがいりますからお早めに。生徒会からは以上です。皆さん、ご清聴ありがとうございました」

 

演説が終わり。壇上から降りた。

 

「………悠お前やるやんけ」

「………仁さんもね。」

 

あの後一夏君に大成功したな!って褒めてくれたし、仁さんは一夏呼びに変わった。

 

この演説から十年にわたるIS学園の歴史が変わった瞬間だった。

 




宣戦布告ってかっこいいよね。
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