インフィニット・アマゾンズ   作:らんくらニキ

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やべぇよやべぇよ!九十話まで行っちゃったよ!


第九十話 やり直しを求められるのなんなん?

 

 

IS学園の地下区画。

その更に奥にある地下特別区画の解析室。

ホログラムの光に照らされた薄暗い部屋で山田真耶は胸に風穴が空いた首無しになった無人IS、もといゴーレムⅡの解析を行っていた。

 

せわしなくコンソールを操作する横でマグカップが置かれた。

 

「織斑先生」

「一息入れろ。インスタントで悪いがな」

「いえいえ。頂きます」

 

千冬はコーヒーを冷ます真耶の横で風穴空いて首無しとなったゴーレムⅡを眺めながらコーヒーを一口飲んだ。

 

「……それにしてもよくもまぁやってくれたなぁ」

「水澤君は兎も角織斑君もこれを見て何か思ったではないでしょうか…」

 

剣道をやっていた一夏や千冬は分かるはずだが、本来首を切り落とす行為は人間としての否定と見せしめの役割を持つからである

 

「あいつがどう思おうと何もないかもな。無人ISだし」

「……ですよね。織斑君は優しいし。」

「真耶も優しいしな。一度織斑に胸を揉まれて顔を赤くしてたけどお咎めなかったの懐かしい」

「な、ななななんのことでしょぉ。あーコーヒー美味しいアチチチ」

 

普段以上の慌てっぷりを必死に隠すためにゴクゴクとアツアツのコーヒーを飲み干した。

 

「の、喉が熱暴走してます」

「フッ。で、解析は出来たのか?」

「ンフンッ。コアは破損していて断片的なデータしか取れませんでしたが。やはり未登録のコアでした」

「そうか」

 

驚くこともなく千冬は黙ってモニターを見る。

 

「それ以外は」

「いえ、まだそこまでは」

「気にするな。コアが無事だろうが破損してようが。情報なんて抜き取れるもんじゃない。むしろ壊れていて良かった」

 

そんな尻尾を出すような奴ではないしな、と千冬は頭の中で陽気に笑う某エボルラビット兎女を追い出した。

 

「………」

「どうした?」

「織斑先生は今回の首謀者をご存知なのですか?」

「なぜそう思う」

「それは、その………織斑先生が現状を見ても落ち着いてるといいますか………落ち着きすぎてるといいますか………」

「私が焦れば他の奴らも焦るだろう」

「………もしかして。前回と今回の無人機を仕掛けたのは………」

「そこまでにしておけ真耶」

 

真耶の見解を千冬が制した。叱るのでもなく、諭すように言ってきた千冬に真耶も口をつぐんだ。

 

「私もな、確信はしても確証はないのさ。確証のないことは無闇に言うべきじゃない」

「すいません」

「いや、私こそすまない。色々苦労をかける」

「いいですよそんな。此処に赴任した時から覚悟はしてますから」

「ありがとう」

 

この場所は限られた数名しか詳細を知らない。

そんな限られた機密を共有するパートナーに千冬は真耶を選んだのだ。

 

「もう少しだってのに水澤も苦労してるな」

「抗う精神はお手本になりますね」

 

真耶が緑繋がりでシンパシーを感じてるのではないかと思っていた千冬はちょっとぬるくなったコーヒーを飲み干したのだった

 

 

 

ーー♢ーー

 

 

 

「無効試合よ」

「はぁ!?」

 

場所は夕焼けのオレンジに染まった生徒会。

女性至上主義の会リーダー雨霧沙苗の言葉に思わず反感を隠せない一夏は困惑する。

 

「それまだ言っちゃうんだ」

『さっさと負けを認めろよ』

 

僕の手に液晶タブレットが置かれており仁さんは入院中の為リモート通話してあるのである

 

「まぁ確かにそうだけどさ」

「悠も認めるのか!?」

『いやそりゃそうだろ。ちゃんとした決闘がゴーレムⅡに邪魔されたんだぞ?』

「…………確かに」

 

なんか潔いと思った雨霧は妙な違和感を感じながらも続ける

 

「結構潔いわね」

「当たり前でしょ」

『ここまできて無効試合にするのテンプレすぎて呆れるんだけど』

 

僕と仁さんがワンピースウォーターセブン編初期のロブ・ルッチみたいだがそこはスルーしてもらう

僕達が敗けを認めるのは絶対にしない。

こっちが事後処理に忙しいところにわざわざ押し掛けてきたんだからなおのこと。

 

「まあ僕達が勝敗論議したところで、他の生徒から見たらどっちが勝ったかなんて明白でしょ。サッカーでいうならこっちは11点とオウンゴール、そっちは無得点なんだから」

「だけど私たちは再戦を欲求するわ。このまま終わりなんて納得がいかない!」

『そうだよなぁ勝手に乱入者を味方と勘違いしたあげく蜂の巣にされたら面目丸潰れだもんな』

「負け犬で草www爆笑爆笑爆笑」

「っ!!?」

 

かぁーっと雨霧の顔が赤くなった。

 

『お前が再戦も申し込もうとしてるところ悪いけどもう異種多人数戦は出来ないぞ。今回は特例中の特例なんだから』

「それなら4体4で仕切り直しをすればいい」

「三倍の数で大敗したのに?」

「俺の零落白夜で怯えていたのに??」

『もし戦っても俺一人で潰せるのに???』

「だ、黙れ!いいから再戦を受けなさい!」

「嫌です!」

「なっ!?」

 

いやなっ!?じゃなくってよ(セシリアさん意識)

 

「もう生徒会の目標は達せられた。これ以上やってもメリットはない」

「逃げるというの」

「うん、勝ち逃げも悪くないかな」

「私たちは負けてない!!」

『今回の試合の作戦をたてた水澤悠。かつて織斑千冬が扱った零落白夜を見事使いこなし、敵の大半を落とした織斑一夏。使用禁止武器所持の女子生徒の鎮圧と複数人を倒した俺こと鷹山仁。更に突如襲来してきた正体不明のISを男性操縦者のみで倒した。結果はご覧の通り、さて生徒はどちらが勝ったと認識するか考えろ。』

 

あの試合が終わったあと生徒の間で生徒会、そして僕と一夏君の評価は爆上がりし、仁さんは見直したと再評価され明らかに無謀な戦いを見事制した。

この活躍は学園の全てが目撃し、学園内の風潮は早くも変わりつつある

 

まあこっちは汚い手を使って相手を四面楚歌状態にしたから素直に称賛受けるとむず痒くなるけど。

 

現にそれに焦りを感じた雨霧が事後処理の真っ最中の生徒会に単独で来る始末だ。

 

『アマゾンに友達を喰われたからってそこまでするかぁ?俺が責任取るために1匹残らず殺すってのに』

「まぁまぁ仁さん落ち着いて。とにかく勝負は無効。並びに僕と一夏君の自主退学と仁さんの退職の話も無しになった。僕達生徒会はこれ以上続ける気はない」

「だから再戦するって言ってるでしょ!?」

『話聞いてる?』

「あ、因みにお前たちの告発は予定どおり行うから宜しくね?」

「はぁっ!?そんな横暴が通ると思ってるの!?」

 

頼むからお前たちが「横暴」なんて言葉を使わないでくれよ。また笑っちゃうよ。ナハーwwwww

 

「横暴ねぇ………こっちは君達の言う通りにしたはずだよ?それにわざわざこっちの目的も達成されたしわざわざ理由なんてない筈だ」

「生徒会は大多数ISバトルに勝ち、女性至上主義の会を訴えれる証拠も十分に揃ったし流れはこっちが有利だ雨霧さん。罰は受けてもらいますよ。そうですよね楯無さん」

 

一夏君頼もしいぃー!モテてるだけあるよマジで

 

「一夏くんの言う通りね。とにかくフェンス落下事件の犯人の古谷紗栄子と悠くんに濃硫酸入りスープジャーを渡し、鷹山さんに植木鉢を落とした狭間田栞は退学ののちに警察に引き渡します」

 

楯無さんが出した証拠映像と、榊原先生が目撃し写真に収めといたのを出されて雨霧は怯えるしかなかった

 

「うーん………でも雨霧さんは納得いかないよね」

「…………」

『なぁ悠、もうここまでにしたら良くね?』

 

 

すると僕はあることを思い出しそれを活用することにした

 

 

ーー♢ーー

 

 

それはあの日織斑先生に呼び出された日だった

 

「何かあれば相談しろ。いいな?」

「分かりました。」

「話はここで終わりだ。水澤が元気そうでよかった」

 

織斑先生からのお話が終わり学食へ向かおうとした時だ

 

「うーん………どうしましょうか」

(何の話だろう……)

「二学期におけるクラス対抗戦……あの襲撃事件以降いつするか延期に重ねてしまっていつ開催するか分からないですね……」

 

僕はその時クラス対抗戦によるゴーレムⅠ襲撃事件の裏側の苦労を知ったのだった

 

「後処理で合コンの予定が潰れるのも嫌よね」

「「それは貴方だけです!!」」

 

部活棟の管理を任されている教員で年齢は29歳の榊原菜月先生のクソどうでもいい裏も知ったのでした

 

 

ーー♢ーー

 

「雨霧さん、取引しない?」

「取引…?」

 

事前に織斑先生に許可を得て遅くなった中期クラス対抗戦の案を雨霧に提示した

 

「一週間後に中期クラス対抗戦がある。それに雨霧さんは四組代表で僕は一組代表として出る」

「クラス代表は一年間変えれないはずじゃ」

「学年責任者の織斑先生から特例として、クラス対抗戦のみ変更という許可は貰った。四組のクラス代表の更識簪さんも快諾してくれたよ」

仁さん『お前やっぱイカれてるよ』

 

特例措置の書類を雨霧は隅々まで確認する。 

 

「1対1をするというの?」

「うん。タイマンでやるなら実力のある方が勝つ。雨霧さんならこの試合に勝てる自信あるよね???」

「そ、それは」

「あれ、もしかして専用機がないから勝てるわけないなんて言うの? へー、優秀な女性は負ける理由を予め用意してるんだ」

「ち、違う!!」

「じゃあ決定ね。逃げたら容赦しないから」

 

楯無さんの元で見続けてきた煽りスキルを今ここで発揮し、雨霧を追い詰める

 

「勝負の報酬はこちらが勝てば貴方達を強制的に解体し、貴方達がしてきた事を明るみに晒す。あ、名前を出すのは今回の一連の事件に大きく関わってる奴らだけだから」

 

現に今回の張り紙やら嫌がらせに関わっていない生徒も少数居るし。更識のスパイしてた人達への被害も最小限にしたいからね

 

「逆に僕が負ければこれ以上事を荒立てない限り女性至上主義の会の解体には乗り出さないということを生徒会は約束しよう。その紙はそれに対する契約書だ。書けるよな?これ以上の譲歩案はないと思うけど」

「な、なんで」

「ん?」

「なんで態々」

「お情けだよ」

 

雨霧の目が開かれて俺を見た。

次第にその瞳は怒りの色を滲ませていった。

 

「よくそんな目が出来るね、今際の際だってのに。貴方達が下等生物や怪物とか化け物と蔑む男がわざわざ上位存在である貴方達女に救いの手を差し伸べる。雨霧さんのような女尊男卑主義者にとって、これ以上の屈辱はないでしょ?

言わなくてもわかるだろうけど。クラス対抗戦までに妙な真似したら即解体に持ち込む。契約も破棄だ。わかったら契約書にサインしろ」

「くっ!」

 

ギリリと歯ぎしりするほど歯を噛みしめる雨霧

僕が目の前で契約書にサインをすると、他に道はないと理解した彼女は自分の名前と学年を契約書に書き出した。

 

「…………今どんな気持ちだ?」

「何よ。慈悲な訳?」

「いや、慈悲というわけにはいかないんだけどさ。どうしてそこまで諦めが悪いのかなーって。今の状況だと全部貴方がやった事なのにね」

「はぁ?」

「よく考えてみてよ。逃げ場のない八方塞がり。自分に降りかかるであろう罰。そして周りから非難の眼差しを受けながら生きていくという不安。全部貴方達に被害にあった人達の気持ち大体これだ。」

 

雨霧はもう言い返す事が出来なくなった

 

「まぁせいぜい自分のやった事を噛み締めるんだな」

「………」

「契約書もらうね。楯無さん確認を」

「はい、確かに受理しました」

 

生徒会長の判子が押される。後は織斑先生の判子が押されれば契約成立だ。

 

「雨霧さんもういいわよ。くれぐれも大人しくしていてね」

「…はい。失礼します」

 

もはや否定する気力もなく、雨霧は生徒会室から退室した。

 

「…こんな感じで良かったですか」

「ええ、ばっちりよ。特に最後が良かったわ。これで彼女は更に追い詰められた筈」

「尻尾、出すんですかね……」

「大多数バトルの時は慢心して自分たちが負けるイメージなんてまったくなかったわ。でも今回は違う。いまの彼女は後のない負ければ終わりという崖っぷちの状況。必ずボロを出す、又は動いてくる」

「いよいよ締めって訳ですね」

 

とうとうここまで来たんだ。大詰めってところかな

 

一夏「悠よく頑張ったな。」

「一夏君達とか楯無さんのお陰だよ。」

()()()()でもあるんじゃないか?』

「そうですね」

『素直だな』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「じゃあ俺たちこっちだから」

「一応だけど、道中気をつけてね」

「了解です。じゃあまた明日」

 

会議の後に事後処理をしたが結構な量で外はもう暗くなってしまった。

 

「腹減った」

 

綾音には遅くなるだけ伝えていたけど僕はどうしよう。普通にハンバーガーだけでいっか

 

「おいおいなんか良い匂いするぞ??」

 

ドアを開けると真っ先に綾音が駆け寄ってきた

またエプロンに包丁携えてる……

 

「おかえりなさい!」

「あ……ただいま。」

 

あっけらかんとしていたが、切り替える事にした

 

「てか綾音、ご飯はどうしたの?」

「もう食べ終えてから作ってました」

「優しいなぁあ、料理できたなら皿用意するね」

 

今日の献立はというと、無限ニラささみとチキンカツとキムチ、デフォでハンバーガーがまたあった

 

「あまりハンバーガー使って欲しくないなぁ。非常時の時必須だし」

「それはごめんなさい。」

「良いよ良いよ。」

 

ご飯作って貰う身としては文句は厳禁だからね。

 

「昼間の時は申し訳ありませんでした」

「昼間………あぁ襲撃時の叱咤激励か」

 

あれあまり関係ない一夏君の事まで言われてて少し混乱した。

 

「あれ最初弱音を吐いてる悠さんをみて箒さんが何か思ったのかガツンと言おうと皆さんに話したらしいんですよ」

「箒さんが?」

「なんか臨海合宿の時に弱っていた自分を立ち直らせた悠さんがしおらしくしてたのが納得いかなかったとか」

 

………あの時ガチビンタ二回もしちゃったからなぁ。そこまで強烈だったからか覚えられても仕方がないか

 

「でも私も弱ってる悠さんを見て何か言いたかったんですけど……あまり出ませんでした」

「そんなに落ち込まないでよ。実際綾音達や仁さんが言ってくれなきゃ僕達勝てなかったし」

 

それにしてもチキンカツザクザクしてて美味しいな

IS学園の女子は料理スキルが高いのは恒例なのだろうか

 

「あ、そうだ。明日噂になるだろうから今言うけど。僕と一夏君の退学は取り消しになったから」

「本当ですか!?」

「うん。雨霧さんが色々言ってきたけど結局無効試合ってことになった」

「やったあああ!!嬉しい!!」

 

すると綾音は立ち上がり僕をプレゼントの人形をもらった子供の様に喜んで抱きついた。

 

「あ、綾音!!ご飯溢れる!」

「はっ… す、すいません!」

「気をつけてね袖がソースに着いちゃうし」

 

綾音の制服は振袖タイプの長袖で、それ以外は標準タイプの制服というアレンジを加えたやつだからである。

 

でもなんであんな振袖みたいな感じにしたんだろ

 

「ねぇ綾音。綾音の制服ってなんで長袖だけ改造して振袖にしてるの?」

「えー聞きます?」

「聞きたい聞きたい」

「もーしょうがないなぁ」

 

するとなんか真剣な面持ちに変わった。

 

「その……人よりも薄くて細い腕を隠したくて……」

「……あぁ入院してたし多少気にするよね。ISスーツ着てる時は別として」

「でもこれにして良かったと思ってます。ほらレジスターつけてるの悟られないし」

 

あーそうだった。僕が母さんと橘局長に釘を刺してまで処置したんだった。

綾音のアマゾン細胞覚醒を完全抑制する為にしたとはいえアマゾン扱いしてないか心配になった

 

「綾音。綾音は自分自身のことなんだと思ってる?」

「何言ってるんですか()()ですよ」

「………だよね!」

 

良かった〜。ずっとこの認識で居てくれるから安心した。

アマゾンズレジスターをつけられてから自分が何者かわからなくなっているかと思ったけどようやく肩の荷が降りた様な気がする

 

「あ、あと女性至上主義の会はどうなっちゃうんですか?」

「未だに現存してるから次のステージに繋げる事にした。」

「次?」

「一学期の時に襲撃事件で中止になったクラス対抗戦ってのがあるんだけど。それの中期クラス対抗戦をやるって訳」

「あれ?たしかクラス代表は一年の任意な筈……」

「織斑先生の特例措置でなんとか出来た。」

 

織斑先生の名前出せばあの人達大抵のことは止まってくれるもん。

あ、後でクラスと専用機LINEに退学の話なくなったこと伝えとかなきゃ。一夏君あたりがやってくれてたら助けるけど。

 

「てかそんな回りくどいことするんですか?」

「女性至上主義の会の皆さんにチャンスを与えた後に僕が雨霧さんをボコボコにする事で僕達の完全勝利を実現するんだよ」

「容赦ないですね」

 

そりゃそうだ。ここまでしないとまた現れるかもしれない。

一番怒り心頭だったのは鈴さんとシャルロットさんてラウラさんだったな。

ラウラさんに関してはナパーム弾持ち出すぐらいだもん

彼女の心情を鑑みるに今すぐにでも現況を潰したいんだろうけど。

 

でもなんか彼女達の気持ちもわかる気がする

イベントごとに事件起きてるとか、IS学園ってマジで呪われてるんじゃないか。

しかも今年からだ。うーん認めたくないけど、僕と一夏君の疫病神疑惑出てきてる? 

 

まぁその話は後にする

 

「てかこのキムチ辛くて美味しいよ。どっから仕入れたの?」

「セシリアさんのルームメイトの如月さんがセシリアさんを通して貰ったんです」

「へぇ……っ!?後から来る辛さしてる!!」

「あ、それわかります」

 

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

女性至上主義の会リーダーの雨霧は自室に戻った後でもショックを隠しきれなかった。

 

ルームメイトは空気を読んだのかいつの間にか部屋から居なくなっており、ぶつぶつと呟く雨霧を止める者は居なかった。

 

「まずいまずいまずいまずい……」

 

大多数ISバトル。

結果的には大敗だ。雨霧も底無しの馬鹿ではないから結果は無効になったとはいえ理解だけはしていた。

だけど決して納得するわけにはいかない。

 

「まずいまずいまずいまずいまずい」

 

女が男に敗北した。

そんなことがあってはならない、絶対にあってはならない。それだけは認めるわけにはいかない。それを認めるのは女の矜持に関わるから。

 

負けたのは男ではなく生徒会だという考えも浮かんだが。戦力の8割をおとしたのは紛れもなく三人の男だった。

 

試合は無効になった代わりに結果は中期クラス対抗戦に持ち越しになった。

女性至上主義の会は首の皮一枚繋がった。 

 

「いやそんなことない。全部生徒会の策略に乗せられてる」

 

最大の目的である水澤悠と鷹山仁に並び、織斑一夏を学園から排除する算段が完全に霧散した。

逃げ場を完全に無くされてなし崩し的に自分たちにデメリットしかない契約をさせられた。

 

無意識のうちに彼女らは虎の尾を踏んだ。

その報復は見事その中核を打ち砕いた。

 

自分たちは正しい、間違ってなどいない、自分は女性として、友の仇を取る為に戦う勇敢であるべき姿。

延々とそれを頭の中で呪詛のように繰り返した。そうでなければ雨霧は平静を保つことさえ出来なかった。

それほど今回の結果は安城にとって受け入れがたい現実になったのだ。

 

「も、もしかしたらあの時の学園祭のチケットのこともバレてるんじゃ………」

 

呟いた途端身体が震え出す。

 

チケットを横流しして亡国機業(ファントム・タスク)のメンバーを学園に入れた。

母親から亡国機業(ファントム・タスク)の橋渡し役として出された安城。

上手く行けば男性IS操縦者を葬れるということを聞いて喜んで協力した。

 

オータムが失敗した後は再び母親経由で男性操縦者両名と鷹山仁の排除の指令が出た。

入学してから着々と勢力を増やした女性至上主義の会を使うが、突拍子に実行すると怪しまれる為,キャノンボール・ファストにおけるアマゾンパンデミックを利用し,目障りで虫酸が走る男性IS操縦者を陥れる。

特に水澤悠を最優先で陥れようとしたが,彼自身社会がどんなのか知っている経験者な為一筋縄で落とせなかった。

 

そこで考えたのが水澤悠と仲が良い天条綾音を巻き込む事。だが偶然織斑一夏に助けられてそれもダメになった。

 

IS学園に住み着く人喰生物ことアマゾン。しかし彼は人を食べないと公言していたがいた人を喰うか怪しいと考えた。

人間達を守るためにアマゾンとその疑いがある織斑一夏、そしてアマゾンを一人残らず殲滅する目標を持つ鷹山仁をIS学園から追い出す事でIS学園に平和を(もたら)そうとした。

 

しかし実態は水澤悠と織斑一夏の人望により全ておじゃんにされ、その結果がこの有り様だ。

 

(どうしてこうなった。勝てたはずなのに、数では圧倒的に勝っていたはず。なのに何故こうなったの!?)

 

未だに原因を紐解けない雨霧は思考の渦に囚われていた。

 

女性至上主義の会のメンバーも、あの試合を皮切りに半分以上が退会した。

残ったメンバーも保守的な姿勢を見せて、もはや女性の為の会は砂上の城だ。

 

(どうしたらいいの。私が亡国機業と繋がってることを感づかれたら、母さんに迷惑がかかる)

 

もはや打つ手はない。

今さら引き下がることなど出来ない。

 

自分の思想に従う者はついてきた、思想に従わない者も自分を恐れて不必要に触れようとしなかった。

今まで日本女性権利団体の娘という肩書きだけで生きていた安城敬華にとって権力が通じないことなどなかった。

 

だけどこれから戦う相手にそんなのは通用しない。

ISの成績はごく普通の雨霧、三倍の戦力差でも勝てなかった相手に勝てるのか。

 

水澤悠に勝てるのか。

 

「勝てるわけ、ない」

 

 絞り出すように出た声は苦痛に満ちていた。

 

 一年の専用機の中でも悠はラウラ・ボーデヴィッヒに次ぐ実力者そして亡国機業(ファントム・タスク)の一人サイレント・ゼフィルスを単独撃退に成功させている彼の戦闘力は図りし得ない。

現にシールドがほぼ満タンだった古谷がなす術もなく一方的に削り殺された。

一夏のような一撃必殺を持たずにだ。

 

それ以前に他の対戦相手は?自分と相反する相手に勝てるのか?二組の専用機持ちの凰鈴音に勝てるのか? 

 

『…………今どんな気持ちだ?』

「………」

『慈悲というわけにはいかないんだけどさ。どうしてそこまで諦めが悪いのかなーって。今の状況だと全部貴方がやった事なのにね』

「……るさい」

『よく考えてみてよ。逃げ場のない八方塞がり。自分に降りかかるであろう罰。そして周りから非難の眼差しを受けながら生きていくという不安。全部貴方達に被害にあった人達の気持ち大体これだ。』

「………うるさい!!」

『まぁせいぜい自分のやった事を噛み締めるんだな』

「だまれぇぇ!この化け物があああっ!!!」

 

如聞こえてきた幻聴を振り払う。

 

だが悠の声はエンドレステープのように脳内で反響した。

 

精神が磨耗しきった彼女を助けるものはいない。

雨霧沙苗は孤独に幻聴を振り払うべく叫び声を………

 

プルルルルルルルッ。

 

「ヒッ!?」

 

スマホから着信が鳴ると同時に幻聴が消えた。

鳴り続ける着信音、スマホの画面には非通知と出ていた。

 

「も、もしもし?」

 

すがるような思いで電話に出た。

 

『こんばんわ。雨霧沙苗さんでいいかしら?』

 

聞こえてきたのは亡国機業のモノクローム・アバターのリーダー、スコール・ミューゼルだった。

本の少し恐怖を覚えるも、雨霧は恐る恐る応じた。

  

「す、スコールさん!?」

『貴方、随分と追い詰められるじゃないの。本来なら見捨てるところだけどお母さんに感謝ね。スコッチ・ミストのリーダー雨霧沙織にね。』

「すいません…………」

『謝らなくて良いのよ。貴方に特別な贈り物を差し上げるわ』

 

贈り物……響きはいいが実際は地獄のパンドラボックスを表し,雨霧はそれが何かを知らずにスコールに頼った

 

『貴方の母親からとある提案が出されたわ。』

「と……言いますと?」

『水澤悠を殺しなさい』

 

突然耳に届いた言葉に雨霧は一瞬息をすることを忘れた。

 

「こ、殺す?」

『そうよ。でも大丈夫、あなたが罪に囚われる事はない。水澤悠は事故で死ぬって貴方のお母さんが言ってたわ』

「事故………」

女尊男卑主義者が言いなりね。とにかく頑張るのよ。雨霧沙苗さん」

「はいっ!!」

 

常識を逸した申し出。

それでも雨霧は快諾した。

月明かりに照らされた口元を歪ませながら。悪魔女神の手を取ったのだ。

 

果たしてそれはどっちへ転ぶか。

 

災禍は終わらない




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