欧亜諸国召喚   作:丸太餅

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急に4,000文字です。


第2話「接触、そして会談」

中央暦1639年 1月24日

クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク沖洋上

 

 この新世界に存在する三大文明圏と呼ばれる地域。その地域から外れた文明圏外地域には1つのある大陸が存在している。

 ロデニウス大陸と呼称される中世文明程度の大陸の北西部に位置するのは、農業大国クワ・トイネ公国。この国の港湾経済都市マイハークは、公国第二の都市として発展していた。

 

 そんなマイハークの沖合では、第6飛竜隊所属の竜騎士マールパティマが相棒であるワイバーンに跨り悠々と哨戒任務に励んでいた。

 

 公国北東方面には、現在国どころか島すら一つも確認されていない。これまでに数多の冒険者が新天地を求め大海原の向こうへと旅立っていったが、帰還した者は誰一人としていなかった。

 

 さて、なぜマールパティマは哨戒任務に就いているのか。と、言うのも近年緊張状態が続いている西の隣国ロウリア王国からの侵攻を警戒してのことだった。

 ロウリア王国との対立は激しさを増している。それこそ、戦争が起こりかねない状態でもあった。そのために彼は、海からの奇襲攻撃がないようこの任務が与えられていた。

 

「本日も異常なし、っと」

 

 彼は交代の時間になったため、任務を終わらせ帰投しようとする。

 

 だがふと、視線の先に()()()見えた。

 

「……何だあれは?」

 

 疑問に思う。この時間帯にこの空を飛んでいるのは自分しかいなかったはずだ。

 

 ではロウリア?いや、だが彼の国のワイバーンの航続距離では到底辿り着けない。

 

 なら文明圏のどこか?三大文明圏には竜母と呼ばれるワイバーンの基地船があるらしい。そこから出撃したのだろうか?いや、あれはどう見たってワイバーンではない。

 

 彼は警戒度を上げる。

 

「速度は……遅い」

 

 彼は此方に近づいてくる物体を凝視する。

 

 外見は灰色。歪な形をしており、上部に巨大な羽が回転し轟音を轟かせている。

 前方には窓らしき物が設置され、中に人らしき者がいることから生き物ではない。……何やら此方を見て驚いている様子ではあるが。

 後部は細長く、横に小さな羽が回転していた。その表面には白い文字らしき言葉が書かれていたが、何と書いてあるかは分からない。

 

『ROYAL NAVY』

 

 この言葉(文字)はこの世界には存在しない文字なので、彼が分からないのも無理はない。

 

 彼は呆然としていると、前方の物体が声が発する。

 

『此方は南方方面多国籍派遣艦隊所属機である。我々は貴国との国交樹立を目的として派遣された』

 

彼は前方の物体の言葉に一瞬理解できず唖然とするが、頭が整理されると慌てて司令部に魔信を送るのであった。

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

中央暦1639年 1月24日

クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク沖合60km地点 イタリア共和国海軍 旗艦《カヴール》

 

 マールパティマからの魔信を受けた司令部は、第2艦隊司令室とクワ・トイネ政府へ伝達。両者共に突然の報告に慌てるものの、第2艦隊司令室は南方方面多国籍派遣艦隊から1番近い海域で哨戒中の軍船《ピーマ》を案内役として選定した。

 

 軍船《ピーマ》艦長のミドリはこの指令に意気揚々と任せられたのだが、多国籍艦隊の全貌を目撃した彼は乗員と共に唖然。自身の常識外れの艦隊に乗船することに萎縮するも、軽空母《カヴール》の乗員の案内もあり、護衛役2人と共にエレベーターを使い甲板に上陸した。

 

 さらに、その甲板上でも困惑し、騎馬戦が出来そうなほどに広大な甲板に加え、四角い小さな箱の様な物(25mm機関砲)灰色の箱に細い棒がついた様な物(76mm単装速射砲)など、彼にとっては意味不明な武装。そしてこの船は鉄鋼船。

 

 もはや、彼の脳の処理能力は追いついていない状態だった。

 

 そんな彼らの元へ、紺色の礼服を身に纏った4人の男が近づく。

 

「……失礼。貴殿がクワ・トイネ公国の案内役でよろしいですかな?」

 

 細身の男がそう尋ねる。

 

「あ、あぁそうだ。私はクワ・トイネ公国海軍第2艦隊所属軍船《ピーマ》船長のリョクリーン・ミドリと申す。今回、クワ・トイネ公国までの案内を承った。ところで、此方も貴殿らの所属を確認したい。よろしいかな?」

 

 ミドリの言葉に左の男から順に答えていく。

 

「これは失礼。私はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国外務・英連邦・開発省のジェフ・グリフィスと申します」

 

「イタリア共和国外務・国際協力省のセノフォンテ・ブリーニです」

 

「フランス共和国ヨーロッパ・外務省のテランス・フォルです」

 

「スペイン王国外務・欧州連合・協力省のバジャルド・リオです」

 

 4ヶ国の代表は自己紹介を終える。

 

「ありがとう。貴国らの訪問理由は、我が国との交渉ということでよろしいかな?」

 

「その通りです、ミドリ殿」

 

「うむ。それでは、我々は公国一の経済都市マイハークまで案内する。ようこそ、クワ・トイネ公国へ」

 

 ミドリは乗員の案内により《カヴール》を下船すると、《ピーマ》へと戻った。

 

「……やはり中世ですな」

 

 グリフィスは《ピーマ》と彼らの服装を眺め呟くと、他の3人も小さく頷いた。

 

 その後、《ピーマ》による案内を受けた多国籍艦隊はマイハークへ停泊。外交官らは下船後、《カヴール》搭載の軍用ヘリで公都クワ・トイネまで移動した。

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

5時間後

クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 首相官邸

 

 今回の会談場所となった公都クワ・トイネの首相官邸では、英仏伊西の代表がクワ・トイネ代表を待っていた。

 

「やはり中世だ……まさしくな」

 

 フォルは思わず呟いてしまう。

 

 首都の街並み、首相官邸の内装、市民の服装、この国の文化。

 どれをとっても数百年前のヨーロッパの文化にそっくりであった。それ故に親近感は持つものの、中世と現代の常識の違いが懸念点であった。

 

「まぁ、心配が杞憂で終われば良いんだが……」

 

 リオはそう呟くが、どうしても不安は拭えなかった。

 

 と、4ヶ国の代表が試行錯誤している間にクワ・トイネ側の代表が部屋に入室する。

 4ヶ国の代表とそれぞれの補佐官は椅子から立ち上がる。

 

「皆様方、待たせしました。私はクワ・トイネ公国首相を務めております、ナモギ・カナタと申します」

 

「クワ・トイネ公国外務卿を務めております、ショーヴェ・リンスイです。本会談の司会進行役を担当させていただきます」

 

 クワ・トイネ側の挨拶が終わると、4ヶ国の代表が挨拶を始める。

 

「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国外務・英連邦・開発省のジェフ・グリフィスです」

 

「イタリア共和国外務・国際協力省のセノフォンテ・ブリーニです」

 

「フランス共和国ヨーロッパ・外務省のテランス・フォルです」

 

「スペイン王国外務・欧州連合・協力省のバジャルド・リオです」

 

 こちら側も挨拶を終えると、双方ともに席に座った。

 

「まず、今回の我が国への来訪理由について尋ねたい」

 

「はい。まず、こちら側で用意した資料を配布します。その資料を用いての説明を行います」

 

 後方に控えた4ヶ国側の補佐官がスッと立ち上がると、英語、仏語、西語、露語で書かれた資料をクワ・トイネ側に配る。

 

「ふむ……失礼だが、我々にはこの文字は読めん」

 

「なんと……!!いえ、申し訳ございません。英語を話されていたので……いえ、失礼。では、口頭で説明させていただきます」

 

 代表らは一瞬驚愕するも、外交官らしくすぐに気を取り直して説明に移る。

 

 最初に説明を担当するのは、グリフィスとブリーニ。

 

「我がイギリス連合王国が属するヨーロッパと東に隣接するアジアと呼称される地域が属するユーラシア大陸は、貴国から北東約3,000kmに位置しており……」

 

「現在、96ヶ国が確認出来ています」

 

 その説明にクワ・トイネ側から声が上がる。

 

「なっ!!!!」

 

「あの海域には大陸どころか群島の集落しかなかったはずだ!!」

 

「えぇ、元々はそうなのでしょう。未だ原因が究明出来ておらず、各国政府や国際機関が全力で調査中なのですが、客観的事実から……」

 

「我々ユーラシア諸国は、国土ごとこの世界に転移したと考えています」

 

「国土ごと転移だと!?神話を元にした法螺話も大概にしろ!!!」

 

 会議場で野次の嵐が吹き荒れるが4ヶ国の代表や補佐官は動じない。

 この反応になるのも想定内だったからだ。

 

「……確かに、前世界でこのような発言をされたとしても、貴国と同様の反応をするでしょう。……我々は貴国使節団をお迎えする用意があります。ご足労をおかけいたします」

 

「使節団だと!?貴方方は……」

 

 リンスイは興奮のあまり、プルプルと震える。

 

「……いいでしょう」

 

「カナタ首相?」

 

 と、ここで今まで静観していた首相のカナタが口を開く。

 

 4ヶ国側はクワ・トイネ側の拒絶から、会談を打ち切り、別の文明へ接触しようと考えていたからだ。

 

「貴殿らの話ぶりは誠実で礼節を弁えておられる。例え、何か言われようとも動じないその姿勢に感嘆しました。それに、300m超えの巨大鋼鉄船や奇妙な形をした飛竜など、列強国ですらもっていないような兵器であり、貴国らが転移国家であることは本当でしょう」

 

 カナタは一拍開けて、続ける。

 

「そこでです。貴国らは我が国に対し何を求めになりますか?」

 

 4ヶ国側はようやく話を進めることが出来る、とカナタに密かに感謝した。

 

「えぇ。我々ユーラシア諸国は食糧と資源、この世界の情報。その対価として……」

 

 アッカーが話を引き継ぐ。

 

「インフラ整備とそのノウハウ。そして……旧式ではありますが、兵器の輸出を考えています」

 

 兵器の輸出。その言葉を聞いた瞬間、クワ・トイネ側に電撃が走った。近年対立しているロウリア王国との戦争は間近に迫っている。

 

まさに、この状況は彼らにとって好機だった。

 

「わかりました。では、国交樹立及び使節団派遣の協議を進めていきます」

 

「えぇ、よろしくお願いします」

 

 カナタと4ヶ国の代表らは椅子から立ち上がると、それぞれ握手を交わした。

 

 1週間後、クワ・トイネ公国は使節団を派遣。ベルギー首都ブリュッセルにおいてクワ・トイネ=ユーラシア諸国間の実務者会議が行われ、無事、大部分のユーラシア諸国*1はクワ・トイネと国交を樹立することに成功した。

 

また、南の隣国クイラ王国ともクワ・トイネの仲介を経て国交を樹立。この国からは大量の鉱物資源だけでなく石油や天然ガスが埋蔵されており、各国がこぞって採掘権獲得と租借地の確保に乗り出すのだった。*2

*1
一部紛争状態にある国々や未承認国家などを除く

*2
その際に各国は中東から輸入する石油量を大幅に削減し、中東諸国が反発。クイラと中東との関係に溝が生まれた。




——南方方面多国籍派遣艦隊編成——
・カヴール級軽空母《カヴール》
・アンドリア・ドリーア級駆逐艦《カイオ・ドゥイリオ》
・フォルバン級駆逐艦《フォルバン》
・カルロ・ベルガミーニ級フリゲート《フェデリコ・マルティネンゴ》《エミリオ・ビアンキ》
・イドラ級フリゲート《サラミス》
・アルバロ・デ・バサン級フリゲート《アルバロ・デ・バサン》
・ヤウズ級フリゲート《ファーティ》
・パティーニョ級補給艦《カンタブリア》

次回も1週間以内に投稿予定です。

ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)

  • 王制維持、民主化
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