中央暦1639年 4月5日
クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 首相官邸
クワ・トイネ公国の首都であるクワ・トイネは、3ヶ月前とはまるで見違えるほどに
クワ・トイネの大抵の建築物は主に木材が使用されており、公都に構える貴族の別荘や私邸などは石材が使用されている場合が多いのが印象である。
中心街の道は基本ある程度整備されてはいるが、郊外へ出るとガタガタであり、整備されていないことが多い。公都外なら舗装すらされていない。
しかし、それは3ヶ月前までの話。
クワ・トイネの北東の海からとある国家群が来訪してきた。彼らは
当初、クワ・トイネ公国政府はその話を信じなかった。当然である。異世界転移というお伽話や神話でしか聞かない単語を平然と言うのだから疑って当然であった。
しかし、それは本当であった。彼らがやってきた際の船は、帆船ではなく上位列強しか保有していない鋼鉄船であった。さらには外務局がユーラシアへ送り出した使節団からの報告では、列強第四位、パーパルディア皇国をも超えているだろうと言う話だ。
やがて、ユーラシア諸国から十数万単位の大規模な開拓団が派遣されてきた。彼らはまず、経済都市マイハーク港を整備し、鋼鉄船が寄港できるようにした。
さらに、簡易的な宿舎と駅が建設され、公都まで鉄道が走れるようレールが敷設された。そして、彼らはさらに、公都とマイハーク全体の改造と穀倉地帯への鉄道の延伸、飛行場の建設や軍事顧問団によるクワ・トイネ軍に対する銃火器の指導、挙句の果てにはユーラシア諸国軍の駐留など、わずか2ヶ月ほどでこれらを成し遂げてしまった。
「この数ヶ月で我が国は建国史上途轍もない発展をしました。ユーラシア諸国には感謝しかありませんね」
カナタ首相は大規模改装された首相官邸の執務室の窓から、一面に広がる現代風の建物群を眺めている。
既にこの公都は冷戦時代並みの建物で溢れかえっており、水道管やガス管、電柱なども敷設され、衛生面も改善されつつあった。
「えぇ。しかし、彼らが平和主義で助かりました。少数ながら覇権主義を唱えている国や軍事政権もあるそうですが、それらの国々も優しくしてもらっています」
カナタの隣に控えている秘書バイドは、冷や汗をハンカチで拭い、安堵する。もしあの国々に侵攻された場合、数日以内に亡国となるだろう。最初の会談で政府の閣僚らの野次により、ユーラシア側の逆鱗に触れなかったことが幸いだった。
「……バイド殿。最近のロウリア王国の動きは?」
「はっ。既に確認済みです。こちらを」
バイドはユーラシア製の上質な紙に印刷された資料を手渡す。カナタは資料を受け取り、記載されている文を読み進めるが、次第に苦々しい表情へと変わっていく。
「……なるほど。どうやらきな臭くなっているようですね」
「はい。既に国境付近にロウリア軍が集結しつつあることが確認されています。おそらく……」
「……えぇ、そろそろでしょう。……戦争は」
二人の表情は暗くなる。
「……ユーラシア諸国へ支援要請をしましょう。」
カナタは決意する。戦争は避けられないだろう。だが、この国には強力な味方がいる。それも大勢。惜しみない支援を要請しようと思案する。
だが、その時……。
「首相!失礼します!!」
執務室の扉が甲高い音を立て、開かれる。外から入ってきたのは、外務局員の一人だった。カナタはその慌てように、最悪の事態を想定する。
「どうされました?まさか、ロウリアが遂に……?」
「いえ、違います!!そ、それが……ユーラシア諸国が、本日未明、ロウリア王国に宣戦布告いたしました!!」
カナタとバイドは予想を斜め上をいく回答に、思わず固まった。
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中央暦1639年 4月5日
ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城
クワ・トイネ公国・クイラ王国両国と国境を接する国家、ロウリア王国。
人間至上主義を国定とし、エルフやドワーフなどの亜人の殲滅とロデニウス大陸の統一を唱える覇権主義国家である。
さて、そんなこの国の王都、ジン・ハーク。ロデニウス大陸最大の大国として、技術レベルはクワ・トイネやクイラよりも少し上である故、王都の規模は非常に大きい。
だが、そんなジン・ハークに聳え立つハーク城の謁見の間では、国王ハーク・ロウリア34世が怒りに震えていた。
先ほど、ロウリア王国の魔信に、一通の通信が届いた。それは、ロウリア王国への宣戦布告文だった。
「……マオスよ。これは一体どう言うことだ!!」
謁見の間に国王の怒号が響き渡る。王の目の前で跪く家臣たちは、皆顔を青ざめさせ、震えている。
国王に指名されたロウリア王国宰相マオス・ベイエルは、若干震えながら報告を始める。
「は、はっ。4月2日、ジン・ハーク港に4隻の金属製の小型船が我が国の領海を侵犯しました」
「ほう、それで?」
「海軍による臨検を実施したところ、ポルトガル共和国、クロアチア共和国、ギリシャ共和国と名乗る国々の外交官であり、国交開設の交渉を行いにきた、と申してきました」
「ふむ」
「しかし、彼らはクワ・トイネ公国とクイラ王国と既に国交を樹立している、などと言ったため、ワイバーンと海軍の援軍部隊により、門前払いを行いました。その際に船に1隻損害を与えたと報告されました」
ロウリア王はこの時点では満足であった。
元々ロウリア王国は、人間至上主義を掲げている故、亜人が主体の国とは国交を持っていなかった。否、大体は追い返していた。今回もそれに当たるが、偶然にも、外交船1隻に損害を与えたという。
「4月4日。我が国に対し、12時間以内に謝罪と賠償を求める最後通牒を送ってきましたが、それを無視しました。そして本日4月5日。我が国に外交官を派遣してきた国々も連名で我が国に対し宣戦布告を行ってきました」
「そうか……わかった。よもや負けることはないな?」
「無論です、陛下」
そう答えるのは、ロウリア王国軍防衛騎士団団長パタジン・シュトラック。
「なら良い。奴らはクワ・トイネと国交を持っているんだったな?」
「はっ。おっしゃる通りです、陛下」
「ならばこの際だ。クワ・トイネ公国とクイラ王国へも宣戦を布告しろ!!」
「ははっ!!」
大陸統一戦争の予定が若干早まったものの、一同は頭を下げ、再び忠誠を誓う。
だが、彼らに待っていたのは、地獄だった。
……こじつけ感半端ないですね。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)
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王制維持、民主化
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