中央暦1639年 4月5日
クワ・トイネ公国
欧州諸国によるロウリア王国への宣戦布告の5時間前。
薄暗く灯りがまともにないこの広い平野の一角に、異様に明るい場所がある。
それは、クワ・トイネ公国の技術力では到底建てられないものばかりであった。
そこには、一本の旗ポールに掲揚された、ネイビーの生地と中央に白い羅針盤の模様が描かれた旗が、風に靡いていた。
ロウリア王国国境部に近い都市ギム近郊のダイタル平野に建設された、NATO軍基地の作戦司令部の会議室では、司令官により各国部隊長が招集され、壁に設置されたスクリーンに投写されている映像を眺める。
「ふむ。国境部へのロウリア軍の集結速度が予想よりも速いな。あと半日もすれば、事前の情報通り40万人に達しそうだ」
「まぁ、その頃には最後通牒の期限が切れて、ロウリア軍の部隊は
口髭を添えたNATOダイタル連合空軍総司令のドイツ連邦空軍ハンス・アイヒベルク大将の呟きに、オランダ空軍コルネリア・ステーフマンス准将が哀れみの目線をスクリーンに向けながら答える。
彼らNATO軍は、クワ・トイネに駐留しており、
だが、その実態は、ロウリア王国からの防衛・若しくはロウリア王国への侵攻用の部隊としての側面が大きい。
ユーラシア各国政府はクワ・トイネ公国とクイラ王国からもたらされた情報により、ロウリア王国が差別主義・覇権主義国家であることはわかっていた。その実態を探るため、MI6やBND、DGSE、SVR、MSSなどの情報機関の諜報員が多数ロウリア国内に潜伏しており、ロウリア軍の動きや、詳細な情報をクワ・トイネのNATO管轄の電波塔や海中の潜水艦を経由し、本国に届けていた。
そして、そんなこんなで判明したのが、『クワ・トイネ公国とクイラ王国への侵攻計画』。
これが現実の物だと知ると否や、すぐにクワ・トイネ公国への駐留軍の大幅増強を開始。これと並行し、外交交渉を開始するも結果は『攻撃』と言う形で頓挫した。
だが、英仏露中はこれを好機と判断する。外交交渉を行うため派遣されてきた船を攻撃した。これはつまり、挑発行為である。
ならば、それに乗ろうではないか。
ロウリア王国というバルカン半島ほどの面積の土地が手に入る。この機会は絶対に逃せない。
故に、NATOとロシアはクワ・トイネ製の魔信でロウリア王国へ最後通牒を送りつけた。
あと5時間で期限が切れる。ロウリアが残り時間の間に最後通牒を呑み込む確率は、極めて低い。
「さて、『Operation:Spring cleaning』開始と行こうか」
これから始まるのは、ただの
—————————————————————
5時間後
ロウリア王国 ナーヘイン平野 ロウリア東方討伐軍 本陣
クワ・トイネ公国ではダイタル平野と呼ばれる地域は、ロウリア王国ではナーヘイン平野と呼ばれている。
クワ・トイネとロウリア両国は同平野を二分しており、西がロウリア、東がクワ・トイネと言った具合だ。
「ですが、もうすぐダイタル平野もナーヘイン平野と呼ばれる……」
ロウリア東方討伐軍副将に就任したアデム・オーヴァトンは満足気に呟く。
現在、ナーヘイン平野の国境部には、35万もの大軍が集結しており、まもなく最後の部隊が到着する予定であった。これで、ざっと約40万となる。
戦争相手となるであろうクワ・トイネとクイラ両国軍が例え予備役を収集しても、ロウリア軍の足元にも及ばない。
アデムは非常に愉快であった。
「副将、失礼します」
司令部として設置されたテントに、ロウリア東方討伐軍所属の士官が入る。アデムは気分を害されたためか、士官に向ける目線が鋭くなる。
彼は若干怒気をはらんだ声で問いかける。
「どうされました?」
「はっ。先ほど、最後の部隊が到着いたしました」
その報告を聞いた瞬間、再び喜びに包まれる。これで40万。攻め入る準備は整った。
「ならば、出陣ですか」
「はっ。既にパンドール将軍が激励を飛ばしています」
「おや、それでは行きましょう」
遅れては副将としてあり得ませんからねぇ、と呟きながらテントを出る。その顔には酷く不気味な笑みが浮かんでいた。
だが、これから彼らが逝くのはクワ・トイネではない。地獄だ。
文章力がぁ……。
誤字脱字報告ありがとうございます。
ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)
-
王制維持、民主化
-
王制廃止、民主化
-
社会主義化
-
分割
-
お好きにどうぞ