欧亜諸国召喚   作:丸太餅

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今年最後の投稿です。なんとか間に合った


第5話「ダイタルの戦い」

中央暦1639年 4月6日

クワ・トイネ公国 ロウリア国境部 ダイタル平野上空

 

 夜はまだ深く、空には無数の星が瞬いていた。

 

 地平線の向こうまで続くようなダイタル平野。その静寂を切り裂くように、30機の戦闘機が音速で漆黒の空を駆けていく。

 それは、NATO軍ダイタル基地に併設された滑走路から離陸した、F-35B、ユーロファイタータイフーン、ラファールM、トーネード、グリペン、Su-35などの各国の戦闘機30機からなる編隊である。

 

 そう、NATO軍とロシア軍は既に作戦を展開していた。

 NATO各国政府とロシア政府がロウリアに突きつけた最後通牒は期限を迎え、宣戦布告が行われた。本国やクワ・トイネのテレビでは戦争開始の緊急ニュースが流れている頃だろう。最も、それを観られるのは基地に帰還してからの話だが。

 

 30機の編隊は、国境の向こうに集結しているロウリア軍40万の戦力を()()するため、滑るように飛翔していた。

 

 そして、まもなく到着する。

 

『こちら大家(HQ)から清掃屋(戦闘機編隊)掃除(作戦)を開始せよ。繰り返す、掃除(作戦)を開始せよ』

 

「了解。これより掃除(作戦)を開始する。総員、箒を持て」

 

 先頭を飛翔する隊長機のパイロットは、司令部からの指令に短く応えると、各機に配置につくよう指示を出す。生物が映るよう改良されたレーダーには、無数のワイバーンの反応が映っていた。

 

『この世界で最初の相手が蜥蜴(ワイバーン)か……』

 

『しかし、まさか価値観19世紀の熊畜生(ロシア)と手を組むことになるとはな』

 

『こちらとしても主人を失った飼い犬共(NATO)と共闘するなんて思わなかった』

 

 無線の向こうから国籍もバラバラ、軍や思想も違い、歴史が違えば今頃友好関係だったか戦争相手だったであろう野郎どもの軽口が飛び交う。編隊長はそれを聞きながら内心苦笑するが、部隊を預かるものとして放置するわけにはいかない。

 

「軽口はそこで終わりだ。……接敵する」

 

 静かに伝えられた隊長の一言に、空気が変わり、レバーを握る手に力が入る。

 

 彼らの視界の先に映るのは、迎撃に出たロウリア軍のワイバーン部隊、ざっと150騎程度。

 その姿は空飛ぶ蜥蜴。若しくは空の王者。最も、この未知の世界にはそれ以上の存在がいるのかもしれぬが。

 

 だが、NATOとロシアにとっては。そんな()()など、ただの()に過ぎなかった。

 

「この世界で最初の仕事だ。派手に行くぞ。新世界にヨーロッパの力を思い知らせてやれ。FOX2!!」

 

 その短い号令とともに、各戦闘機から次々と空対空ミサイルが発射される。無数の光線が夜空を貫き、轟音と閃光が暗闇を切り裂く。

 

 次の瞬間、爆炎と衝撃。それらとともにワイバーンとそれに搭乗する竜騎士は動かぬ黒い肉塊へと変貌。鱗も翼も鎧も全てが消え、地上へと落下していった。

 

『命中確認。どうやらいつもの演習より簡単なようだ』

 

 無線から発せられた一言に、各機から思わず笑いがこぼれる。

 ロウリア側の航空戦力はまだ半分以上は残っていたが、それでも余裕があった。

 

「では諸君、もう一回喰らわせてやれ」

 

 再度発せられたその悪魔のような言葉に、各機のパイロット達は悪い笑みをこぼしながらレバーに力を込める。

 

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

 

同時刻

ロウリア王国軍第4竜騎士団

 

 我々は一体何と戦っているのか。

 

 現在クワ・トイネ公国へ侵攻していたロウリア軍東方討伐軍傘下の飛竜部隊、団長率いる第4竜騎士団の団員たちの思いは、この一言だった。

 

 本来であれば、クワ・トイネ公国の国境付近の都市ギムをこのワイバーン部隊と地上部隊で陥し、憎きクワ・トイネの亜人共を焼き殺すはずであった。ロウリア軍はそう思っていた。否、そうとしか考えられなかった。

 

 だが、なんだこの目の前で接敵した竜たちは。明らかにワイバーン、それどころか生物ですらないようなこの鋼鉄の竜たちは、自分たちの仲間を次々と光の矢で撃ち殺しまわっている。

 

 容赦なき蹂躙。ここにあるのはただそれだけだった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「くそっ!また光の矢が来るぞ!!!総員、急旋か……追ってくるだと!!?」

 

「追いつかれるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 最早ロウリア竜騎士団には、指揮系統は存在していなかった。そこにあるのは、有象無象。

 

 やがて、空には連合軍*1の戦闘機のみが残った。

 

 次なる目標は、ロウリア東方討伐軍本隊。

 

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

 

 

同時刻

ロウリア王国 ナーヘイン平野 ロウリア東方討伐軍本陣

 

 場所はまた変わり、ロウリア東方討伐軍本陣。

 

 彼らの上空で繰り広げられた戦い(一方的な蹂躙)は、ロウリア軍の兵士たちを完全に混乱させ、士気を最低まで低下させるには十分すぎる材料だった。

 

「一体どうなっている!!!!」

 

 ロウリア東方討伐軍司令官であるアンブロウズ・パンドーラは、ロウリア王国三大将軍とは思えぬ青ざめた表情をし、本陣のテント内で悲鳴混じりに問いただす。

 

「ま、全くわかっておりません!!た、ただ。く、クワ・トイネの亜人どもがワイバーンとは言えない何かでりゅ、竜騎士団を殲滅したとしか……!!!」

 

 今にも斬り殺しそうなほどの殺気を放つ副将アデムの隣で報告を行う、生きた心地のしない伝令兵。

 

「奴らを叩き落とす策は!!」

 

「ありません!!!」

 

 アデムの手が懐の鞘に触れる。

 

「対応にあたっているジューンフィルア伯爵は!!!」

 

「現在東部諸侯団を率い、至急クワ・トイネ方面へと進軍中で」

 

 だが、伝令兵のこの報告の続きは遮られた。遠くで爆発音が聞こえたためだ。ロウリア軍の幹部らは、何事だと我先に本陣のテントから外へと出る。

 

 だが、そこに広がっているのは、炎により赤焼けとなっている空と、そこを飛翔する50機となった連合軍の戦闘機編隊。そして、その戦闘機編隊から投下される爆弾の数々。

 ロウリア軍の兵士たちは皆平等に爆発による死を迎え、()()()()生き残った者らはあまりの痛みに泣き叫ぶ。

 

「逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「悪魔だ!!!悪魔がやってきたぁ!!!!」

 

「ジューンフィルア伯爵がやられたぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 泣き叫びながらロウリア軍の兵士たちは敗走する。

 

「き、貴様らぁぁぁぁ!!!何を逃げているのですっ!!!!」

 

 目の前の現実(地獄)が見えてないのか、逃げ惑う兵士たちを愚かにも叱責するアデム。だが、そんなアデムの怒号など、兵士たちは聞いているはずがなかった。

 

 むしろ、アデムも、パンドールも、伝令兵も。皆が等しく爆風に巻き込まれ死んだ。

 

 この攻撃は後続の第2次攻撃隊、第3次攻撃隊と続き、ロウリア軍40万の兵力を一方的に撃滅していった。

 

 翌日、ロウリア王国ナーヘイン平野より偶然にも残っただろう魔信より、NATO軍ダイタル基地に降伏が伝えられた。即日、ダイタル基地駐屯の少数の連合軍地上部隊はナーヘイン平野へと進駐を開始。

 その後、3日以内にクワ・トイネ公国各地の国際租借地より、NATO各国軍が派遣されることが決定。ナーヘイン平野は完全にNATO軍とロシア軍の占領下に置かれた。

 

 ……場所は変わり、ロウリア王国北の港冲合へと移る。

*1
NATO、ロシアによる航空部隊




アンケートの結果、ロウリアは王制維持&民主化が決定しました。

誤字脱字報告ありがとうございます!

ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)

  • 王制維持、民主化
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