欧亜諸国召喚   作:丸太餅

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします
……もう少し投稿頻度を上げたいところです


第6話「ジン・ハーク強襲戦」

中央暦1639年 4月6日

ロウリア王国 王都ジン・ハーク港冲 NATO連合艦隊旗艦〈クイーン・エリザベス〉

 

 ダイタル平野より、ダイタルの戦いが繰り広げられる直前の大陸沿岸部へと場所は移る。

 

 ロウリア王国の首都ジン・ハーク。そこより北方に併設された巨大な港湾。この場所は、正式な名称はないものの、王都に併設されていることから、ジン・ハーク港、若しくは北の港とも呼ばれていた。

 

 そんな港の沖合では、港の街並みとは全く見合わない光景が広がっていた。

 

 それは15隻の鋼鉄艦隊……イギリス海軍の大型空母〈クイーン・エリザベス〉を旗艦とするNATO連合艦隊だった。

 

 数日前、マイハーク国際租借地に新設された港を出港した彼らは、最後通牒の期限が切れるその瞬間を待っていた。

 

「各艦、準備はできているか?」

 

『Yes sir』

 

 渋い声で無線で各艦へ確認を取るのは、〈クイーン・エリザベス〉の艦橋で優雅に紅茶を嗜むイギリス人。名前はカール・カワード中将。このNATO連合艦隊の司令官を務めている男だ。

 彼はかつてアフガン紛争中のインド洋や、海賊退治のためソマリア沖に派遣され、幾つもの戦果を叩き出した名将だった。そんな彼がNATO連合艦隊の指揮を執ることになったのだから、士気は絶好調である。

 

「……しかし、上の連中も無茶なことをする」

 

「と、言うのは?」

 

 独り言のような呟きに、側に控える下士官が反応する。

 

「いや、なに。クワ・トイネの確か……ダイタル平野、だったか?そこの戦いと同時進行で、しかも国内の混乱が完全に収束していないこの状態で戦争を始めるなど、はっきり言って正気だと思えん」

 

 ユーラシア大陸が丸ごと異世界へ転移した影響は甚大だった。

 経済は分断され、軍需産業も混乱を極め、何よりアメリカ合衆国という超大国との物理的断絶は、欧州諸国にとって致命的ですらあった。

 

 ロシアとウクライナの戦争は無期限の停戦で双方合意したとはいえ、緊張が解けたわけではない。そんな中で行う異世界国家との戦争は、負担が軽いはずがなかった。

 

「……政府にも、何か算段はあるのでしょう」

 

「常識的に考えれば、戦後のロウリアを利用する腹だろうな」

 

 カワードは紅茶を飲み干し、カップを下士官に渡した。

 

「……あぁ、軍人が考える話ではなかったな。忘れてくれ」

 

 そして、その瞬間が来た。

 

「司令官、時間です」

 

「そうか。……さて、諸君。出撃の時間だ!海軍飛行隊は準備完了次第発艦!随伴艦は対地誘導弾発射準備!目標、ロウリア王国首都ジン・ハーク!!間違っても市街地には攻撃するな!!」

 

 ヨーロッパの魔の手は、王都へと延びる。

 

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

 

 

同時刻

ロウリア王国 ジン・ハーク港 東方討伐艦隊司令部庁舎

 

 港は、船で埋め尽くされていた。

 

 ロウリア王国東方討伐艦隊。

 

 クワ・トイネ公国侵攻のために建造されたガレー船の群れは、もはや()()という言葉では足りない。

 

 その数、約4,400隻以上。

 

 司令部庁舎のバルコニーからそんな大艦隊の光景を見下ろす男……シャークン・ドクリーテニア海将は先ほど手渡された報告書を片手に、呆然としながらも誇らしげに眺めていた。

 

「……まさか、ここまでになるとはな。これほどの数を私が率いるのか……」

 

 十数年前、ロウリア王国の南方遠征で敵艦隊を壊滅させた名将。

 先日海軍に復職し、東方討伐艦隊の司令官に任命された彼でさえ、この規模は想定外だった。

 

「えぇ、シャークン海将。ですが、この東方討伐艦隊は()()ロウリア王国海軍の底力。クワ・トイネ公国は奥底から震え上がるでしょうな」

 

 シャークンの背後に控える男は、このどこか淡々とした声で応える。

 彼は黒いローブを身に纏い、素顔を完全に隠している。この怪しさを隠そうともしない姿に、シャークンも一定の距離を取って接する。

 

「だが、これほどまでの大艦隊を揃えることができたのも、()()からの支援のお陰です。我がロウリア王国によるロデニウス大陸統一は、貴国なくては成し得なかった。心から感謝する」

 

「いえいえ。では、シャークン海将。後日の宣戦の際には、観戦武官として……」

 

 だが、続きの言葉は唐突な叫びにより遮られた。

 

「な、なんだあれは!!!」

 

 水兵の叫びに、全員が空を仰ぐ。

 

 上空には、轟音を撒き散らしながら接近する、数十の鉄の飛竜があった。

 

「な……ヴァルハル殿、あれは……?」

 

「少なくとも、あんな兵器は皇国は保有していない……」

 

 と、黒ローブの男……ヴァルハルは言葉を失い、やがて呟いた。

 

「……まさか、ミリシアル……?」

 

 彼の呟きに、思わずシャークンの背筋が凍りつく。

 

 自他ともに認める、この世界の人間であれば知らぬ者などいないとまで称されるほどに影響力を持つ国。世界最強の国家、神聖ミリシアル帝国。

 そんな国の軍勢が、態々遠方の文明圏外国家に現れるはずがない。

 

 と、そこでシャークンは右手に握っている報告書を再び確認する。

 

 そこには、『ポルトガル、クロアチア、ギリシャと名乗る国家所属の鋼鉄船4隻を攻撃により門前払いした』と報告があった。

 

 血が引いていくのを、彼ははっきりと感じた。

 

「ま、まさか……ヴァルハル殿!失礼する!!」

 

 依然として唖然としたまま固まっているヴァルハルを置き、シャークンは王城との通信が可能な魔信室へと駆ける。

 

「(くそっ!ポルトガル、クロアチア、ギリシャ……いや、この3ヶ国だけではない。もっと多くの国がいるはずだ。クワ・トイネとクイラに接触した国々も……早く王城へ報告せねばっ……!!)」

 

 だが、彼が魔信室へと辿り着くことはなかった。水平線の彼方から放たれた艦対地ミサイル数十発。そのうちの一本が、正確に司令部庁舎を捉え、直撃する。

 

 閃光と爆発が巻き起こると同時に、司令部庁舎は跡形もなく吹き飛び、建物内とその周囲にいた全ての人間が一瞬で命を失った。

 

 だが、地獄は終わらない。この攻撃が起こると同時に、ジン・ハーク港に停泊していた全てのガレー船、ジン・ハーク港の港湾施設、港に近いワイバーン飛行場が攻撃を受ける。

 

 〈クイーン・エリザベス〉より発艦したF-35B戦闘機25機。この編隊から発射されたミサイルは、全てのガレー船を木っ端微塵に破壊していく。水兵らの断末魔は爆音に掻き消され、水面には大量の木片や肉塊が漂う。

 内陸部の飛行場では、決してワイバーンが迎撃のため離陸できぬよう、滑走路、厩舎、全てを破壊し、王都における制空権を確保する。

 

 やがて、編隊がジン・ハーク中心部に着く頃には、彼らにとって抵抗可能な組織は消滅していた。

 

 

 

 

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同時刻

ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城上空

 

 王都各地に点在する軍事施設からは炎と黒煙が噴き上がり、城下町の中心部や市街地からは、悲鳴と怒号の嵐が途切れることなく飛び交う。

 

 そんな混乱を見下ろすように、〈クイーン・エリザベス〉より発艦した8機のヘリコプターが、雲を掻き分け王都へと侵入する。

 

「……やっぱり中世だな」

 

 機内で誰かが呟いた。

 フロントガラス越しに見える光景は、城壁、見張り塔、貯蔵庫、納屋……ハーク城の様々な箇所が赤く燃え広がり、城内は既に瓦礫の山と化していた。

 

「念の為に聞くが、王城の対空兵器は?」

 

『事前に巡航ミサイルで全て破壊済みです』

 

 無線からの応答に、パイロットは満足する。

 

「流石海軍だな。まもなく目標空域へ侵入する」

 

『了解。各機、作戦を開始せよ。健闘を祈る』

 

 先頭を飛翔するヘリは、ハーク城の西の一角……城内に潜り込ませていたスパイからの情報で、謁見の間へと続いていた通路だった場所へ高度を下げる。後方の7機もそれに続き、高度を下げ始めた。

 

「よし、出ろ」

 

「了解。我々の移送、感謝します」

 

 顔を隠し、最新鋭の装備を身に付けた集団……イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)の隊員たちは、ヘリからラペリング降下を開始する。

 任務を終えたヘリから旋回し、速やかにハーク城上空を離脱していく。

 

 彼らを見送った隊員らは、なお生き残っているであろう衛兵からの奇襲に最大限の警戒を払いながら、崩落を免れた城内へと静かに浸透していった。

 

 彼らの目的はただ一つ。

 

 ロウリア王国国王……ハーク・ロウリア34世の身柄の確保。数時間前に始まった戦争を、強制的に終結させるため、彼らは謁見の間を目指す。

 

「……MI6のスパイからの情報では、この扉の奥が謁見の間だ」

 

 巨大な扉の前で、SAS小隊長ハウイットは静止の合図を出す。

 それを受け、後方に控えていた隊員は前へ出ると、扉にC4を複数個設置する。

 

「カウントする。3……2……1……」

 

 ハウイットが拳を振り下ろす。

 

「爆破っ!!!」

 

 途端、凄まじい爆発と共に、厚い木製の扉は簡単に吹き飛ぶ。

 

「フラッシュ!!」

 

 黒煙で隠れている中、隊員の1人が謁見の間へと閃光弾を投げ入れ、平衡感覚を奪う。

 謁見の間で待機していたロウリア王国の重鎮らや衛兵らが悲鳴を上げながら混乱する。

 

 謁見の間へ突入したSAS隊員らは、そんな悶える彼らを射殺しながら玉座へと近づく。

 

「ロウリア王国国王、ハーク・ロウリア34世だな!!!?」

 

「ぐっ……貴様らは……」

 

「北大西洋条約機構だ。貴様には加盟国の外交船に対し損害を与えた。これは明確な国際法違反だ。よって、身柄を拘束させてもらう」

 

「……好きにしろ」

 

 ハウイットが倒れる彼の体を無理矢理起こし、身柄を拘束、目隠しをする。

 

「目標確保」

 

『了解。直ちに回収地点へ向かえ』

 

 無線からの指示を受け、SAS隊員らはハーク・ロウリア34世の身柄を拘束したまま、回収地点へと移動する。

 

 彼らは回収地点にて待機していた輸送ヘリに乗り込むと、王都から離脱。〈クイーン・エリザベス〉へと帰投した。

 

 2時間後、到着した〈クイーン・エリザベス〉にてハーク・ロウリア34世が降伏を宣言。

 

 これにより、ロウリア王国とヨーロッパ諸国の戦争は、後者の完全勝利で停戦となった。




次回は今月中に投稿予定です
……そろそろ異世界日本国召喚のリメイクを書き始めますか……

誤字脱字報告ありがとうございます!

ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)

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