欧亜諸国召喚   作:丸太餅

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今回でロウリア戦争編は終了です。


第7話「戦後の大西洋」

中央暦1639年 4月10日

クワ・トイネ公国 マイハーク国際租借地 国際租借地行政委員会庁舎 租借地監督官執務室

 

 ロウリア戦争、僅か5時間で終結。

 

 この見出しが掲載された新聞が今、マイハーク国際租借地から大都市を中心にクワ・トイネ公国全土を駆け巡っていた。

 公国内ではこの見出しの新聞に対し、驚愕、歓喜、疑念など様々な反応があったが、先日のクワ・トイネ政府からの記者会見で、正式にロウリア戦争の存在とロウリア王国の降伏が発表されて以来、今や全土でお祭り騒ぎであった。

 

 それもそう。クワ・トイネ公国と同盟国クイラ王国は、これまで長年ロウリア王国からの圧力に晒され、両国の国民はいずれロウリア王国に飲み込まれ、亜人は皆殺し、人間でも奴隷にされると思っていた。

 

 だが、彼らが知らぬ間にそんな危機は完全に消えていた。これは両国の政府内では、国家滅亡の危機が消えたことに対する歓喜とNATOへの感謝、そしてそのNATOへの警戒心を強める結果となった。

 

 ……などのことが書かれた報告書を提出した職員に対し、租借地監督官……マイハーク国際租借地の最高責任者である男は一瞥した後、退室を促す。職員が退室したのを確認後、隣に控える秘書との会話を始めた。

 

「さて、これでロデニウス大陸での紛争危機は消えたわけだな」

 

「もし起こるとすれば、我々から戦争を仕掛けることによって、ですがね」

 

 租借地監督官は、秘書の淡々とした返答に苦笑するしかなかった。

 

「だが、ロウリア王国という広大な土地とそれなりの人口を完全な影響下に置くことができる」

 

「ですが、今ロウリア王国は分裂寸前ですよ?今はNATOの軍政下にあるとは言え、地方の武装蜂起などで内戦になってもおかしくありません。我々は何かするのですか?」

 

 秘書の言うとおりだった。ロウリア戦争の終結後、NATO加盟国とロシア間の会談にて、ロウリア王国はNATOの管理下に置かれることが決定した。最も、これは一時的な措置であり、ロウリア王国の完全な民主化と近代化計画が完全に終了したのち、主権を返還することも決定され、後日ロウリア政府に提示される予定だ。

 

 だが、それに対し中央・地方貴族の反発が高まっていた。それは、この近代化計画の中にはロウリア王国の中央集権化も含まれていたからだ。貴族としての地位や権力の剥奪は勿論、領地や領民も没収。彼らが嬉々とし進めてきた奴隷制度も廃止。亜人への迫害も禁止。

 さらに、ロウリア南部には数年前まで独立国家であった諸侯領が多数あり、彼らはロウリアからの完全な独立を求めている。最もそれらは独立させる予定ではあるが、ヨーロッパ各国の影響下を置くことが決められていた。山奥に潜むロウリア軍残党の掃除も必要だ。

 

「秘書君。それは本国や今度設置予定のロウリア行政運営委員会の仕事だ。我々の仕事は、あくまでマイハークの租借地の運営。それも欧州だけでなく、アジア各国までマイハークの利益を得ようとスパイ天国下での運営だ」

 

 ユーラシア大陸各国政府からの圧力や、租借地管理委員会の委員の一部の暴走、諜報機関から報告された近代化されつつあるクワ・トイネ公国による秘密裏の奪還計画案。彼は胃に穴が開きそうとまで話していた。

 

「それに近々、このマイハーク国際租借地の拡張と租借期間の延長が行われる予定らしい」

 

「……租借地の拡張と租借期間の延長?それって……」

 

「まぁ、各国の思惑は見え見えだ」

 

「……マイハークの直接統治、ですかね?」

 

「実際分からんが、良からぬことを企んでいるのは確かだな」

 

 彼は肩をすくめ、目の前の業務を再開する。

 

「……ところで監督官。一つ報告が」

 

「何だ?」

 

 秘書は資料や報告書が積まれている彼のデスクに、一枚の報告書を置く。

 

「中東にて大規模戦争の予兆です。イスラエルとイランの対立が原因でしょう。おそらく、両国のマイハーク租借地駐屯軍も臨戦体制に移行するかと」

 

「これ以上仕事を増やさないでくれ」

 

 監督官は前世界からの対立による戦争の影響が、現在の業務と植民者たちの生活に支障が出ないことを切実に願うのだった。

 

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

 

中央暦1639年 4月20日

スペイン王国 マドリード市 とある高級ホテル

 

 ロウリア戦争における両陣営の停戦から2週間が経ったこの日。

 スペイン政府が建物丸ごと貸切にした高級ホテル。前世界でも有名であり、富裕層や各国の政府要人らが宿泊するようなこのホテルのロビー。

 

 そこで、NATOとロシア、ロウリア王国間の講和会議が開かれていた。

 

「では、ハーク・ロウリア34世陛下。この内容でよろしいですね?」

 

 イギリスの外務・英連邦・開発省から派遣された外交官は、目の前で座る憔悴しきった表情をした人物へと問いかける。

 その人物は、ロウリア戦争勃発直後に拘束されたロウリア王国国王ハーク・ロウリア34世。

 

 彼は英陸軍特殊空挺部隊(SAS)によって拘束、〈クイーン・エリザベス〉艦上へと移送された後、マルタ共和国のとある収容所に収容されていた。最も、一国の国王なので、待遇はそれなりの物だったが。

 だが、自国よりも美味い料理(地中海料理)と王都ジン・ハークよりも清潔感のある首都バレッタ、次に移送されたこの世界の列強の首都を超えているであろう大都市*1であるスペインの首都マドリードという、収容所で説明された通り、別世界の都市の光景に自らのプライドを破壊されていた。

 

 さて、そんなロウリア国王率いるロウリア王国へと提示された講和内容は以下の通りである。

 

北大西洋条約機構、ロシア連邦およびロウリア王国間の終戦に関する講和条約案

 

1、ロウリア王国はクロアチア共和国外交船舶へと与えた無警告攻撃に対し公式に謝罪する。

2、ロウリア王国は政府の全権限をロウリア行政運営委員会へ委任する。

3、ロウリア国王ハーク・ロウリア34世は退位し、後任には王位継承者である第一王子クラウス・イェルム・ロウリアを国王に任命する。

4、ロウリア王国は北大西洋条約機構及びロシア連邦がジン・ハーク港を150年間、北大西洋条約機構加盟国及びロシア連邦が指定する地域の99年間の租借を認める。また、各国が租借する土地は一国につき3地域までとする。

5、ロウリア王国は独立を要求する諸侯領の独立を認める。

6、ロウリア行政運営委員会はロウリア王国における民主化の完了と同時に、一切の主権をロウリア王国へ返還する。

7、ロウリア王国は今後新設予定の国際機関へ加盟する。

 

 ハーク・ロウリア34世はこれらの内容が記載された文書に目を通すと、決意するように小さく静かに頷き署名する。次にNATOとロシアの代表が文書に署名した。

 

 これらの内容は、後にマドリード講和条約として発表されることとなり、ロウリア戦争はここに完全に終結した。

*1
新世界基準とする




次回は2週間以内に投稿予定です。

誤字脱字報告ありがとうございます!

ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)

  • 王制維持、民主化
  • 王制廃止、民主化
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