欧亜諸国召喚   作:丸太餅

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今回は短めです。


第8話「列強、パーパルディア皇国 前編」

中央暦1639年 5月2日

パーパルディア皇国 皇都エストシラント沖合 外交使節艦隊旗艦〈クイーン・エリザベス〉

 

 第3文明圏。

 

 それは、この世界における三大文明圏の一角であり、フィルアデス大陸と呼ばれる大陸の南部をその領域としている。

 

 その第3文明圏唯一の列強国であり、この世界では五大列強と呼称される列強国の内、序列第4位に位置している国家が、パーパルディア皇国という国家だ。

 

 ユーラシア各国の諜報機関や新世界の様々な国の政府からの情報によれば、パーパルディア皇国は非常に傲慢。他の列強である4ヶ国以外は基本格下であると認識し、それ以外の国々に対し多数の奴隷や領土の献上を命令。それを拒否した場合、パーパルディア皇国に侵略され属領にされるという。

 

 まさに、前近代的思考の国家運営をしていた。

 

 故に、第3文明圏国家や大多数の周辺文明圏外国家からは恐れられ、憎まれている存在だという。さらに上位列強からの評判も芳しくないとのことだ。

 

「……最も、我々も人のことは言えないのだが……」

 

 男は、地球世界での軍事力第1(アメリカ)第2(ロシア)第3位(中国)のことを思い浮かべてしまう。

 

 そんな彼の名は、ジン・ハーク強襲戦でNATO連合艦隊司令を務めたカワード中将。今回もまた、艦隊司令を務めていた。

 さて、英空母〈クイーン・エリザベス〉を旗艦とする6隻の多国籍空母打撃群は、ポルトガル共和国リスボン港を出港し、イベリア半島から僅か3,000km程しか離れていない地、フィルアデス大陸南端の都市へと向かっていた。

 

 彼らの目的地は、そのパーパルディア皇国の象徴であり首都、エストシラント。

 

 属領、第3文明圏国家、周辺の文明圏外国家から献上された(吸い上げた)数多の富がここに集められており、皇都に住む皇国人は皆が一等臣民である。そして、パーパルディア皇国の思想そのものが、皇都臣民の思想だった。

 

『偉大なるパーパルディア皇国はいずれ世界を統べる存在。パーパルディア皇国軍に勝る存在などない』

 

 そんな哀れな思考をしていた彼らに、文明圏外の蛮族と罵っていた地域から、自らの文明を超える国々による多国籍艦隊を直接皇都に送りつけてみたらどうなるか。

 

「ん?なんだ?あの船は。ミリシアルか?」

 

「ミリシアル……?いや、旗が違うぞ!!どこの国だ?」

 

「あの方角は東から……?蛮族の住む文明圏外からか!?」

 

 自国の優位性を崩され、先入観を破壊され、混乱する。

 

 それは、パーパルディアの首脳部も同様であった。

 

 

 

 

—————————————————————

 

 

 

 

同時刻

パーパルディア皇国 皇都エストシラント パラディス城

 

 パーパルディア皇国の皇都エストシラントには、政府機関が集約されている巨大な建物がある。

 

 パラディス城。

 

 エストシラントの一等地。広大な面積を有しているこの豪華な宮殿は、列強国であり第3文明圏の支配者であるパーパルディア皇国の威厳を示す象徴として、皇国本土では畏敬の念で、属領や周辺各国では恐怖の象徴として知られている。

 

 だが、今この宮殿内は慌ただしかった。

 パラディス城に勤務する職員は大量の資料を抱えながら走り回る。別の職員は魔信で上層部へ慌てた口調で事態を報告する。ある衛兵は他の同僚や部下を率い、武器を構え港へと急行する。

 

 その目的は単純。現在エストシラント港冲で皇海軍による臨検を受けている鋼鉄艦隊は、列強第1位の神聖ミリシアル帝国や2位のムー国のどちらにも属していないからだ。

 

 普段では決して見ないようなこの慌ただしい光景を、ある若者は執務室の窓から見据えていた。

 

 彼の名はルディアス・パールディレア・エストシラント。このパーパルディア皇国の現皇帝にして、第3文明圏のトップに君臨する男だ。

 

「……ルパーサよ。一体彼らは何者なのだ?」

 

 多数の渡り鳥の鳴き声が、彼の不安をより一層増幅させる。

 

 皇帝の相談役、ルパーサへと問いかけるが無論、彼が知るはずがない。

 

「ミリシアルやムーでもない鋼鉄艦を有する国……私にも分かりませぬ」

 

 ルパーサはそう返答するしかなかった。何しろ、情報が少な過ぎるからだ。

 

「ではどこの国なのだ……」

 

「皇帝陛下。続報をお持ちしました」

 

 皇帝執務室に入室してきたのは、列強国を担当する第1外務局の職員であった。この鋼鉄艦隊についての続報を持ってきたのだ。

 

「何だ」

 

「はっ。彼ら鋼鉄艦隊の所属と来航目的が判明しました。彼らはグレートブリテン及び北アイルランド連合王国、フランス共和国、ドイツ連邦共和国と名乗り、()()()()である我がパーパルディア皇国と交流を持ちたい……と話してきました」

 

「……どれも聞いたことがない国々だ。ミリシアルの保護国かは分からぬが……一先ず、彼らを第1外務局へ案内しろ。我が国の担当代表はエルトを任命する。他の人選は彼女に任せろ。それと、ミリシアルとムーの大使館に彼の国々について尋ねてくれ」

 

「はっ!失礼しました!!」

 

 職員は、第1外務局へ皇帝からの命令を伝えるため退出する。

 

「……さて、我が皇国の未来がこれで決まるか……」

 

 ルディアスは、これから行われるだろう会談の先行きについて、若干の不安を覚えた。




次回は今月中に投稿予定です

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ロウリア戦争後、ロウリア王国の処遇は?(10月28日まで)

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