死別エンドガチ拒絶転生者in鬱ゲー   作:カピバラバラ

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死亡スチルを眺めながら食う飯は旨い

 

死別って素晴らしいと思いませんか?

 

死別、それは結ばれていた絆や心が死によって離れ離れになり、秘めていた思いも何もかもを置き去りにしてその命を落とす。

死がふたりを分かつまでの分かたれた後バージョン。

 

死を以て事態が収束したり、やむを得ない事情で敵対していた二人が片方の死によって真実を知るきっかけになったり。

つまるところまぁ、死別は物語を冷たい色で飾ることのできる代物なのだ。

 

 

ところで、死別ってクソだと思いませんか?

 

待ってくれ、そんな異常者を見る目で蔑む前に言い分を聞いて欲しい。

死別、ああ素晴らしきかな死別。人間らしい生活が出来なかった子が、様々な人間とのかかわりで漸く情緒と常識、穏やかな日常を得た後に、感謝の言葉を継げようとした矢先にお世話になった相手が死んでしまう。

 

どうしてか裏切った組織の人間を始末するための極秘ミッションを進める中で判明する、裏切り者の真の姿。

忠誠によって犠牲になることを強いられた中で、主人公を死なせたくない一心で大立ち回りを繰り広げる悲劇のキャラクターとの死による別れ。

 

有名になるゲームや漫画には、主人公やその他キャラクターを『死』という要素で彩っている事が多い。

死別にはドラマがある、リアルな心情で描かれ、退屈を忘却させる激動のシーンの数々。

天才達によって、繊細で躍動感のある人生最後の瞬間、その儚さが画面や紙で味わえてしまう。現代文明とは本当に素晴らしいもので、その一瞬の感情の破裂を何度も味わえる上に、共感を引き起こす事さえできるんだ。

 

死にゆくものこそ美しいとゾー○様が言っていた通り、死という瞬間に放たれる全てが凡百なものだったとしても、特別に思え、そして共感を引き起こす。

感情移入という奴だ、死んでもいないのに死に向かうキャラクターを見て涙を零して幾千回の私が思うに、共感できてなければ死別に感動することも無い。

 

色々他にも悲劇的なシーンはあるよ?何も今生の別れは死別だけじゃない、何気ない一言が永遠の別れになったりもする。

そういう観点で言うと自分は、もう二度と元に戻らないものが大っ嫌いなのかも。

その終局が死別なだけで、ナーバスになる要素全般が絶望への道を塗装している。

 

まぁ、つまり、何が言いたいかというと。

 

 

────普通に悲し過ぎて無理。

 

 

 

 


 

 

 

 

もう二度と笑顔で話し合ったり、思いを伝えるのも出来ないね!今後このキャラクターは回想でしか登場しないよ!じゃねぇんだよバカ。

 

馬鹿、バカタレ、そういうお話を作るのは良いけどさ、その分読み手のメンタルはボロボロだっつってんの゛。

なんで好きなキャラと好きなキャラが殺し合って、残された側がまた悲しむ姿を見なきゃいけないんだ。

 

それを姉妹兄弟家族親友とかでやりだすだろ?──悲しみは悲しみを呼び、ああ悲劇スパイラル。ワタクシのメンタルは既にデッドシテマース。

 

 

「…………」

 

 

何千回もそういったゲームや漫画を読んで、何千、ちゃんと話し合えよと涙を流したことか。

仲たがい闇落ち勘違いすれ違い、少しの掛け違いと因果で生まれる悲劇は見てられない。

 

 

「……──」

 

 

名作、神作、やりたい読みたい奴は大抵それだ。メ○○○アとかチェ○○ー○○とか呪○とか、いやまぁ自分からその成分を求めて読んでるから大丈夫なのだけれど。

 

 

「────」

 

 

あーあ悲しい悲しい、いっそ全知全能の神になって全部丸く収める力でも手に入れられたらな~。……そうしたら物語の魅力が減るか、というかそれを養分にして生きてる妖怪だから無くなったら死んじゃうもん。

 

 

「あーあ、もっと世界が優しかったらなぁ」

 

「こんなことにも、ならなかったのに」

 

 

──見上げる先には、妙に見覚えのあるデザインをした翼の生えた化け物が、空を群雄闊歩している。

おや、もしかしてここは異世界ファンタジーの世界かな?やや、化け物が飛んでいるのはビルの隙間だぞ?という事はここは現代社会らしい。

 

人々に襲い掛かる化け物どもを、輝きが失われた目で見つめ続ける。

祈りをささげる者、意味も無く涙を零す者。

赤子の欠けた頭部だけを抱きしめて、ただひたすらに沈黙する母親。

 

 

「どうして、転生なんかしちゃったんだろ」

 

 

そこらかしこで絶叫と恐怖、絶望と怨嗟が渦巻く地獄。

純日本人である自分が、どうしてこんな血みどろの地獄絵図に巻き込まれているのか、部屋でごろごろしていただけの自分が何故、こんな悲惨な光景を眺めていないといけないのか。

 

 

「……そこの人」

 

「……」

 

「どうしてだと思います?」

 

「…………──」

 

 

問いかければ答えが返ってくるほど世界は単純で優しくない。

まぁ、とりあえずこの先一生、私が『どうして』の理由を知ることは無いと思う。

 

 

「どうして、自分の赤ちゃんが食べられなきゃいけなかったんですかね」

 

「……」

 

 

でも。

私は、この人達の『どうして』を知っている。

世界は残酷だから、なんて陳腐に吐きだしてみようか。なんて適当なんだ、ああだがしかし、確かに世界というものは、悪戯でどうしようも無く抗いようのない運命とやらが流れている。そう考えると陳腐が適当だ。

 

でも、でもでも、でもこの人達は少し違う。

──運命じゃない、『設定』を持つこの人達は、残念ながら世界を彩る演出として消費される。

 

 

「答え、私知ってますよ」

 

「……」

 

「──世界は残酷だから」

 

「……」

 

「いや、世界が、残酷だから。ですかね、この世界を作った神様が世界という真っ白なキャンパスに筆を落とす際……血の顔料を求めた」

 

「────」

 

 

漸く、女性の顔がこちらを向く。

我が子を失い、今、自分自身の命さえ消えゆく最中、そりゃ隣でべちゃくちゃ喋るガキが居たら気にもなるだろう。

だがこのセリフはとても大切なものなんだ、中二臭い台本に乗っている台詞を吐いてから、舞台の幕は開き始める。

 

なんったって、このシーンは───ゲームのオープニングなのだから。

 

 

「けれど、けれども、神様は一色だけじゃ全然満足出来なかったみたい」

 

「それどころか、絵を描くだけだけじゃ飽き足らずに、沢山の舞台を求めたんです。人の一生という舞台を」

 

「そしてその中から最も輝くモノを差し出せと、神様は人類に告げた。主役を寄こせ、神様のお眼鏡に叶う最高の舞台と、その舞台に立つ資格のあるものを」

 

 

世界だの舞台だの神様だの、普段の自分じゃ絶対漏らさない言葉の数々が放たれる。

この日を待ち望んでいたからかな、ワクワクしているから?よくわからないけど、調子に乗っているという奴。

 

神様ってのが制作陣で、舞台はそのまんまこのプログラミングで作られた世界を暗喩してるんだけど……このこだわりは残念無念、誰にも伝わらない。

 

 

「だから残念だけど、貴方の『どうして』の答えはただ、舞台を飾る小道具でしかないって事。誰の目にも止まらないし、神様も興味をもってはくれない」

 

「……っ…」

 

「ふぅ…ねぇ、まだ生きていたい?目の前で自分の赤ちゃんの頭かじられて、その後に頭のおかしい子供に暴言吐かれて、次は化け物に喰われるのをじっと待っとく?」

 

「……」

 

「今──見てるよ。今、私は貴方の事を見ている。悲劇を、悲しい舞台の閉幕を眺めてる。神様が見てなくても、私が見てる」

 

「君はまだ、舞台の上だ」

 

「…………」

 

「……ぁ…」

 

「ぅ……ぁ…───ころ、して…」

 

「あいつらを……ころして、ください……」

 

「──いいね。復讐心」

 

 

転生してはや16年。中々ここまで辿り着くのは至難した。

目線の先にはこだわりぬかれたデザインの化け物が居る、赤子を喰らい、街を破壊し悲しみと絶望をもたらす相応しい異形共。

 

だが私にいわせりゃそのデザインには何のタクティカルアドバンテージも無い!!無駄にデカい翼に、戦闘時の身体のバランスが考えられていないアンバランスでアシンメトリーな身体!図体だけののろまを殺すのに数秒もかからねぇぜ!それはそれとしてグッドデザイン。

 

 

「その願い、貴方の出演料金代わりに叶えてあげる」

 

「私は、悲劇をそこで終わらせたりはしない」

 

 

はい、という訳でここいらで自己紹介をば。

どうも異世界転生者です。転生先はとあるゲーム。

 

──『異骸戦記・ヒトナキ戰』

マルチエンディング型のコマンドRPGゲームである『異骸戦記』はなんと、100種類以上のエンディングが用意されている!ちなみに売り文句はというと、

 

《選んだ道の先は救いか、それとも破滅か。─それは誰かの命を踏みにじる選択だった》

 

《世界に正解は用意されていなかった。ただ、選ぶしかない。─生き残る為、誰かを守る為、誰かを殺す為》

 

《貴方の手で終わらせろ。全ての代償は、選んだ者へと還っていく。死は終わりではなく、新たな地獄の始まりでしかない。─全ての結末は、後悔から始まる》

 

《選びぬいたその先で、後ろを振り返って見てください》

 

《──誰か一人でも、笑顔でいてくれましたか?》

 

というもの。そしてヒトナキ戰とあるように、突如現れた化け物と、異能という人ならざる力を持った人間が互いに生存を繰り広げる内容になっている。

 

ええ、はい。鬱ゲーですね。

 

 

「私は!」

 

「神様が残酷であれと願った世界に、抗って見せる!!」

 

 

私の叫びに反応して、周囲で死体を貪っていた化け物共の視線が一斉に集まってきた。

そしてこちらを指さし、おどろおどろしいうなり声をあげた後に加速を始め、一直線に向かってくる。

 

 

「四匹」

 

 

奴らは賢い。ちゃんと知能がある。

人間に近い見た目であればある程賢く、一部は戦略を考えれるレベルにまで達していることもある。

 

一直線に向かってくる奴は獣の姿に大きく寄っていて、その背後で三匹の知性持ちが様子をうかがっていた。恐らくは、私がこの一番槍にどう対応するのかを観察してから戦闘を始める腹積もりだ。

 

───だとしてもそのにやけ面は腹が立つな。

大方非力な女と思われてるのだろう、ならばやることは一つ。

 

 

「──かかってこい」

 

 

技能『抜刀術』。小さい頃から極振りしていた技を使う為に身をかがめる。

背中には素朴な、何の装飾もされていないひと振りの刀がさやに納まっている。それに手を掛け、ひたすらに刃を抜くに値する一瞬を待ち望む。

 

目を閉じ、音を感じないように感覚を閉ざし、鋭敏に肌を突き刺してくる殺意と敵意だけに意識を集中させた。

血の匂いも人の焼けた香りも、子供や大人が泣き叫ぶ声も、何もかもが遠く感じ始めた頃。

 

 

「すぅっ……──死に晒せやゴラァッ!!!」

 

 

全力で刀を振り下ろし目を開けると、そこには望み通り首を落とされた獣型の化け物が、飛びかかった慣性のまま首と泣き別れした胴体を道路にすりおろされている光景が見え、目じりを喜びで歪ませる。

 

私が降り立ったのはコマンドRPGゲームの世界な筈なのだが、現実はそう甘くなく、ターン制なんてものは存在しない。私が首を切り落としたのを見て、後ろに居た化け物達は翼を大きく広げ空に舞い、口から瞳を塗りつぶす極光を蓄えていた。

 

 

「ターン制が無いのはッ、こっちもなんだよッ!!」

 

 

この世界に、ゲームとしての常識は通用しない──の、だが、知識は通用する。

私が今この身体に携えた全ての戦闘能力は、ゲームプレイ上『壊れ』と評されるもの達ばかり。技能『抜刀術』はその最たるもので、ゲームでは直接、又は物理攻撃をカウンターし、発動時二ターンの自己バフを掛ける。

 

自己バフの倍率は1,5倍。カウンター攻撃にも乗る上に、バフの種類が何と『与ダメ』。なので何故かカウンターしただけで──、

 

 

「『クリティカルショット』1,5倍増量キャンペーンじゃオラッ!」

 

 

本当に何故か、拳銃でのダメージも1,5倍になる。

そして『クリティカルショット』は攻撃倍率低めでMP,この世界だとマナをドカ食いする代わりに確定クリティカル、クリティカルは与ダメ二倍、という事は、どういう事かなぁ?

 

 

「……ほんと気分悪いもん見せやがってからに…!グロ系無理なんだよこっちは」

 

 

無論、ワンパンである。

極光を溜めていた三匹の化け物は、頭を爆弾で吹き飛ばされたかのように消失させてこの世を去った。

バフだのなんだの、ダメージの計算方法がこの世界じゃどうなってるかは知らないが、ゲームをしてた時の常套手段を何とか習得してみて検証した結果、戦闘周りは変わっていなかったかな、多分。

 

こういうタイプの鬱ゲーは大概が高難易度なのだが、ストーリーを見たいだけの人にも考慮してか、あからさまにぶっ壊れのスキルが随所に見られるんだよね。

 

RTAの動画でも、この二つは必ず入手されてたから……信頼感がエグヤバのチャケパネェ。

 

 

「アザミ!」

 

「──ん」

 

「はぁっ、はぁっ……んぐっ、な、なんで一人で突っ走ったんだ!」

 

「……」

 

「隊長から言われただろっ、ツーマンセルで動けって…!悪魔は孤立してる奴から狙ってくるんだぞ!?」

 

「……そうだね」

 

 

──潤いのある黒髪に、可愛げがありながらカッコよさが混じる小顔の美少年。

けれど目の下にはクマがべったりと張り付いていて、けだるげな雰囲気は振り払えていない。

 

血気迫った顔は心配が故なのか、私の両の肩を強く掴んだ後に深呼吸を挟むと、安堵の表情を見せる。

怯えているのか、恐怖しているのか、触れている手から少しの震えが伝わってきて、私はその手に頬を擦り寄せ、自分の手を重ねた。

安心したのか、一呼吸おいてから、話の通じない私を放置し近くに居た民間人を保護していく。勿論、廃人になりかけていたあの母親も。

 

 

「……」

 

 

そうですね、主人公君です。ヤクザ口調聞かれなくてよかった。

制作陣という名の神に愛された存在であり、このゲームの鬱と曇らせを一身に受けるマジで可哀想な存在。

 

このゲーム、ストーリーの中で結構な人数仲間が増えるんですけど、その殆どが選択肢次第で脱落していくんですよ、なので手間暇かけて育てても最終的な意味があるのは主人公だけ。

 

過去背景も可哀想の連続で、家族を人間に、大切な幼馴染を化け物…悪魔に殺されてます。マルチエンディングな事もあって、この過去のせいで闇落ちエンディングも多め。

トラウマもしっかりこさえており、『失う事』に対して強烈な拒否感を持ってるんだけど…───はい、沢山仲間が死ぬゲームの中で、こんな精神性なので、ほんっっとうに可哀想な目に合う。

 

 

「……ねぇ、ユウくん」

 

「…何か言いたくても後にしろ、先に民間人を───」

 

「君は、絶対に私が守るから」

 

「………ならさっさと手伝え。俺を守るってなら、俺が守りたい奴も守れ」

 

 

ここに、この場面に辿り着くまで結構苦労したが、それは語る程の事でもない。

大切なのは、この子に待ち受ける過酷な運命を、私の手で何とかしなきゃいけないという事。

 

基本的に、この世界のストーリーはプレイヤーの手によって導かれる。だがプレイヤーという存在が不在な以上、物語の結末は何処に向かうか分からない。

私が思うに、プレイヤーのクソつよ主人公育成計画が為されない場合、待ち受けているのは悪魔の王襲来による人類滅亡、ノーマルバットエンドだ。

 

 

「…───」

 

 

その他幾らでも、この子が悲しむ結末は無数にあるんだよ。

優しくて不器用で、そのせいで人一倍悲しむことになるこの子を、私は放ってはおけない。

 

何せ推しだから。あと死別系が好きだったのに、苦手寄りになったのこの子が原因だし。

だからさ、私が──。

 

 

「私が、必ず」

 

 

必ず、君をハッピーエンドにまで連れていってあげるから。

誰も死なせない、誰も失わない、そんな優しいエンドを迎えさせる。それが、この世界に転生したモブAの私の願い。

ネームドやサブキャラですらない、背景に過ぎない私。良くてチュートリアルの雑魚敵と数秒戦って戦死する程度の私。だとしても、必ず。

 

 

──死別エンドだけは!回避してみせるから!!





適当メモ

《異骸戦記・ヒトナキ戰》

転生する前にやってた鬱ゲー。主人公君への精神的、肉体的な虐めが終わらないゲーム。レビューは星4.8。
いっぱい死ぬし、いっぱい苦しむし、いっぱい別れを経験させられるので転生前は見る専だった。VTuberの配信を見ていたらやりたくなって、見る専から脱却。

全エンド履修した転生者ちゃんに蹂躙される宿命を背負った悲しき世界。


《転生者・アザミミナミ》

転生体がまさかの背景モブだった。オープニングで沢山人が死ぬ映像が流れてくるけどその中の一人だったりする。
インチキスキルの組み合わせは知っているが、習得方法が転生してから地道に努力するしかなかったので滅茶苦茶頑張った。

でもまだ本題の異能関連には手を出せてないので伸びしろ◎。


《主人公・夕波昂》

アザミからはあだ名でユウと呼ばれている。今作の被害者兼曇らせられ係、凄く可哀想。
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