死別エンドガチ拒絶転生者in鬱ゲー   作:カピバラバラ

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『RTAしてたらチャートぶっ壊れてて草』

 

前回のあらすじ。

 

どうしてか、真昼間の平日からゲームを楽しんでいた私は、鬱ゲー『骸戦記・ヒトナキ戰』に転生してしまった。闇のゲームに転生した私は貧弱なモブAとして生活していくつもりが、待ち受けているのは人類滅亡のバットエンドだった!?

 

お願い、死なないで主人公!

あんたが今ここで倒れたら、幼馴染との約束はどうなっちゃうの?

 

ライフはまだ残ってる。ここを耐えても、まだ未来は真っ暗なだけど!

 

次回「主人公、過労」デュエルスタンバイ!

 

前置き終わり。

 

 

「はぁ」

 

「…どうした、ため息吐いて。隊長の折檻が効いたか?」

 

「別に~」

 

「じゃあなんで」

 

「理由が無かったらため息も許されないのかなー?」

 

「………そういう訳じゃ…」

 

 

いや~、元々引きこもりデスクワークコミュ障だったもので、死ぬほどコミュニケーション能力が低いんです、ごめんね、だからそんな呆れた声出すの辞めて欲しいな。

仕方ないんだよね私が暗い顔をしてため息吐いちゃうのも……──ちゃんと理由があるんです。

 

悟られないようにそっけない態度をしてるけど、あとちょいで私達が悪魔を倒すために所属している組織、つまりはここが壊滅するから悩んでるんだよねー。

 

 

「はぁぁ……──」

 

 

と、嘆きはともかくとして、少しこの世界での私の行動を振り返ろうと思う。

不思議に思ったんじゃない?モブAの筈の私が、そんな組織に入り何故か主人公とタッグを組んでて最前線で悪魔と戦っているのかが!

それを話すより先に、この世界の構造を少し理解しておこう!という訳で説明ゴー。

 

 

──異次元侵略生命体。ある日突如現れた侵略者を、人類は『悪魔』と名付けた。

悪魔の到来と共に人類に目覚めた異能は、通常兵器では太刀打ちできない悪魔を滅する力を有し、死後その肉体を塵へと還す。

 

それは約200年前の話。長く続く悪魔との戦いで人類側に大きな変化が訪れ───進化したんだ。人類という種族そのものが、長い侵攻というストレスを受け続け、それに対応するために自らを進化させた。

 

そして200年続いた人類と悪魔の生存競争は佳境に突入する!そう、悪魔側の世界で生まれた一体の王によって、世界は混沌の渦中へと墜ちていく!!

 

生き残るのは進化を遂げた人類か、それとも悪魔か。その勝敗は如何に……って所でネタバラシ。

 

えっとですね、この人類と散々争ってる悪魔の正体なんですが……普通に人間です。異次元生命体でも何でもなくて、この地球生まれ地球産の同じ地球母ちゃんのお腹から生まれた同郷。

じゃあ今話した設定って何なの?──ミスリードです、はい。

 

 

「………ごめんね、言い方が悪かった。何でもない時に、ため息を吐ける位の余裕があれば、心にも余裕と余白が出来るかなって」

 

「ん…確かに、それは否定しないが…心配なんだよ。よどんだ顔でぬるい息吐いてさ…」

 

「優しいね、ユウは」

 

「………」

 

 

愉快痛快、悪魔という存在はただ別の進化を遂げた人類というだけであり、その昔宇宙から飛来した隕石に付着していた……なんちゃらかんちゃらが一足先に『悪魔側』の人間を進化させました。

知能を、力を、異能を、全てを手に入れた旧人類は新人類に発展のための知能だけを授け宇宙に旅立って──。

 

 

「これからもっと、沢山の人に優しくしてあげてね」

 

 

どうなったのかは、分かりません。今世界を襲っているのは、旧人類の子孫。ぶっちゃければ規模デカめの帰省です。

今世界を襲ってるのは向こう側の野犬とかそこら辺の雑魚。本物の人型は、今のステータスだと一ミリも敵わない。異能も持ってないし。

 

ああ、私が悪魔を倒すために使った『抜刀術』や『クリティカルショット』は『マナ』を使った攻撃ですね、別に異能じゃないのであしからず。

 

 

「もっと、沢山の人……──」

 

 

マナは進化の過程で手に入れた人類の新たなエネルギー源!身体能力強化や疑似異能、通常兵器を悪魔に通用するようにしたりと様々活用法があります、なのでこのゲームで強くなりたい場合三種類の方法がある。

 

その1:『マナ』に対する適応率を上げ、異能と合わせて使う事でステータスと共に殴る脳金ビルド。

 

その2:異能系列に頼らず、身体を機械化させることで圧倒的な範囲火力と耐久力で相手を殲滅する脳金ビルド。

 

その3:悪魔側にその身を落とし、悪魔の超常的な能力と膂力で全てを粉砕する脳金ビルド。

 

以上の三つです。──全部脳金じゃねぇか!!!!

 

 

「そう、ユウは私と違って転んだ誰かに手を差し伸べれる力があるからさ。自分が泣いちゃいそうな時に、自分に手を貸してくれる子が居てくれるように…」

 

「ユウは、沢山沢山、人を助けるの」

 

「…折檻で頭痛めたか?そんな、なんつーか…らしくないよ」

 

「らしくない事も無いでしょ、普段変な事ばっかり言ってるのに」

 

「それ自分で言うんだ…」

 

 

まぁ、つまるところ、全ての真実を知るものとして誰よりも強く早く備えにゃならんわけです。

んでも、強くなるってどうすればいいの?って話になってくるよね、適合率だのなんだの、基本一般家庭モブAが辿り着ける場所にありません。

 

そこで!必要なモノがぜーんぶ揃ってる最高の環境がこの世界に存在する!!

 

 

「とにかく!あんまり隊長に迷惑かけない、アザミの行動で一番苦労してんのはあの人なんだから」

 

「……普段威張り散らしてるんだから、ちょっとは苦労する方が良い」

 

「──いつか防衛軍追い出されても知らないぞ?」

 

 

──防衛軍。

最初に言った私が所属している組織の事だ、防衛軍の飯はうめぇぞ~?栄養士公認の健康ランチが朝昼晩タダで食える!生まれがクソ貧乏な私にとっては神の環境。

世界の平和を守る為、各国が設立した『世界を股に掛ける』人類の希望。まぁ陸自とかそこら辺の対悪魔組織バージョンって感じです。

 

異骸戦記周回プレイヤーの私にとっちゃ、鼻ほじりながら入隊が可能。なんてったって主人公の複雑なエンド分岐の為に、入隊に関する条件は根掘り葉掘り研究し尽くした。

入隊に必要なステータス!技能!名声ゴマすりなんやらかんやら!お陰様で暗い噂立ちまくったけどね!!

 

あ、ちなみに私の身勝手な行動で苦労している防衛軍第二支部隊長さんはおもっきり裏切り者で、ここが壊滅する理由なんで大っ嫌いです。

 

 

「追い出される…か。ユウは私が追い出されたらどうする?」

 

「どうする?じゃなくて、追い出されるなって言ってるだろ…」

 

「それでも聞いておきたくてさ、ユウは私が防衛軍に入ってからずっと優しくしてくれてるよね?そんな理由も意味も無いのに」

 

「お前の言葉借りるけど、理由が無かったら人に優しくしちゃダメなのか?」

 

「───無いね」

 

「ならこれが理由だ。優しくしない理由も無いなら、俺は…俺…は…──。…取り敢えず追い出された時は俺が何とかするよ、ユウが変人だけど真面目で努力家って事、みんなに知って貰ってさ」

 

「そうしたら、きっと。きっと何とかなるよ。俺が保証する」

 

 

──はぁ。

 

心の中でため息を吐く。自分に向けて?ユウに向けて?いいや誰に向けてでもない、強いて言うのなら、神様に向けて。

神様にこの溜息の理由が分かるのかな、含まれている感情は?安堵?落胆?それとも暗い愉悦?

 

それを推し量る必要はない。吐いた溜息にこもっていたものなんて、オタクの下らない想いに過ぎないものだから、空気より軽くて透明なのだ。

 

 

「そう……だね、きっと何とかなる。ユウがそういうのなら、きっと」

 

 

ああ、きっと何とかして見せる。

君が笑顔になる為にこの世界は存在していて、君が喜ぶために私が存在していて、その理由は誰にも知らない空気よりも軽いものであり、存在自体が透明な私だからこそ、

 

 

「………なんでそんな遠い目してんだ…?アザミが追い出されたらの話だぞ?」

 

「いや、自分の変人さを思い出すと普通に挽回無理だなーって」

 

「諦めんなよ!?」

 

 

夕波昂が人に与える優しさを、夕波昂へと返すことができる。

人に優しくする。それはこの世界で最も達成が難しい実績で、少なくともクソガキ(わたし)が何もかも拒絶してるのに、そんな不気味で薄暗い性格悪い子供を守れる奴は少ない。

 

お陰様で、関わるつもりも無かったのに結構どっぷり関係持っちゃった。

 

 

「──Even so, smile。追い出されても、ユウがそう言ってくれるなら笑っていられるね」

 

「………アザミ、やっぱ今日調子悪いか?」

 

「なんで」

 

「悲しそうな顔しながら、笑ってたら誰でもそう思うだろ」

 

 

もうこの世界に『主人公』はいない。

プレイヤーが居ない、夕波昂はプレイヤーの力を借りられない。リトライもコンティニューも何もない。

 

攻略サイトを片手に、サイダーを飲みながらこの物語を涙ながらに導いてくれる存在は何処にも居ないのだ。

 

だからこそ、この世界から救世の英雄は────決して、産まれない。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

──アザミミナミ。

 

俺が知っているのはその名前と、年齢だけ。

別にそれ以外も情報は防衛軍のデータベースに乗っているし、産まれから入隊までの全てが把握されているらしい。

 

アザミ曰く、入隊を早める為に色々したからと言っているが何をしたのかは教えてくれなかった。多分、聞かされても理解できないとは思う。

 

 

『アザミミナミ、年齢は10。以上です』

 

 

目を疑った。

期待の新人、未来有望な最少年、才能あふれる若者。そういった言葉を大人達から掛けられ続けてきた自分の、6歳下が隊服を着て挨拶していた。

 

短い腕だ、まだ袖口が手に被さっている。

短い足だ、まだズボンの裾が余っている。

短い体だ、成長しきってすらいないじゃないか。

 

16歳の子供が言うのもなんだけど、流石に若すぎる。

とにもかくにも、訓練後のそいつを見に行って──。

 

 

『ごめんなさい、無視してください』

 

『ごめんなさい、無視してください』

 

『ごめんなさい、関わろうとしなくていいので、無視してください』

 

 

コイツ本当に人間か──?

視界の端に映る姿は暴風のようで、聞き耳を立てれば断固として人間と関係を持とうとしていない。

 

なんというか、人間味が無さ過ぎる。過去に何かあってこうなったのか何なのか、知ったこっちゃないぐらいに棘をまき散らす。

俺も、やさぐれている子供な自覚はあった、周りの大人から見たらもっとすさんだ人間にみえていたと思う。

 

そんな自分の目が覚めるぐらい、おかしな人間だった。

 

 

『──はぁ』

 

 

そして、人間味たっぷりの溜息を吐くんだ。

アレはヤバい、一度聞けば分かる。本気で興味ないんだなって溜息は、簡単に人との縁を切ってくる。

 

そんなんだから、入隊して一瞬で孤立してた。仕方ないにも程がある、一切を拒絶してる人間にわざわざ足を踏み入れる人間は物珍しさの好奇心か、悪意が理由の干渉か。

 

…で、まぁ、虐めが起きる。当たり前の帰結、誰の擁護も無いひな鳥が一人、そんな態度でいれば当たり前だ。

 

 

『────』

 

『──────』

 

 

じゃあ、俺は?

何してた、変な子供が入隊してきて、これから実戦が待ってる上に異能訓練も始まる。

 

当然、構っている暇はない。

構う必要が無い、何かしてほしくもなさそうだ。理解を拒む人間に、意見を広げてもらうには中々な時間がかかる。そして俺には時間が無い。

 

 

『──先輩、辞めてあげてください』

 

 

なんでだろうな。

どうしてだろうか、どうしてなのか、何故なのか。

 

俺には時間が無い、この世界は冷たさに溢れていて残酷だ。

強くなるには時間が足りない、同年代で最も秀でていた所で意味が無い。

復讐に身を捧げるには、寄り道している時間なんてない。

 

 

『夕波くん…でもさ…!』

 

『分かります、怒りが収まらずに手を出してしまう理由も。協調性の無い人間が実践に赴けば、被害を受けるのはこっちですし』

 

『なら……』

 

『ですがその怒りの使い方は、間違ってると思うんです。俺の主観で申し訳ありません、それでも、なんというか…やはり間違っているというよりかは、正しくは無い…って』

 

『…じゃあどうすればいいの、この子』

 

『──俺が面倒見ます』

 

 

結局、後悔する選択を取りたくないだけなのかもしれない。

家族は人の手で、絢音は悪魔の手で、選択は自分で。失った原因は自分以外の誰かにある、けれどあんな結末になったのは自分の選択。

 

あーあ、また、これが間違いじゃなかったら、な。

間違いだとしても、何が起きても、後悔は消えないのだろうけど。

 

──いつも通り、そんな風に思っていた。

 

後悔しないことは無い、選択を誤っていても正しくとも、選択の責任を前に人間は怖気づく。この世で最も恐怖心を煽るのは血や死、悪魔や悪意じゃない。

 

──暗闇だ。

見えないモノ、分からないモノ、知らないモノ。一秒先の未来に恐怖心を抱く、一分先、一時間先、一日先、一年先の見えない未来を恐怖する。

 

 

──そして後悔は、恐怖を乗り越えようとする者へ牙をむく。

後悔がある限り、人間は人間で、それを持ちえない存在は所謂『悪魔』になるのだと思う。

 

 

『……大丈夫か?』

 

『大丈夫です、ありがとうございます。ですが私の事は────』

 

『ん…?』

 

『わ、わたし、わ、わわわ────!?!?!?』

 

『ど、どうした?』

 

『えええ…なんで?第二支部に来る訳無くない…?え?なんで…』

 

『???』

 

 

そんなこんなで色々悩んでいたのに、全部真っ白になってしまった。

おかしな子供同士の、おかしな出会い。

 

 

『そ、あ、その!助けてくれてありがとう!いやこれキャラじゃないええと、…助けてくれてありがとう、私はアザミ』

 

『……』

 

『貴方の名前は?』

 

『──夕波昴』

 

『ユウナミスバル…良い名前ですね、憶えておきますそれではまた』

 

『…………──』

 

『なんだったんだ……』

 

 

今でも、あの時の顔を覚えている。

絶望と、それと悲しみ。そして喜びの混ざった変な顔。

 

後悔しないといいな、そう願った自分の願いに応えるように、彼女は俺の人生に現れた。

アザミミナミ。名前と顔と、年齢しか知らない10歳の子供。

10歳で防衛軍に入り、何に対しても興味のなさそうな、ただの子供。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

「………」

 

 

 

「………────」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「アザミが隊長を殺害して逃げた?」

 

 

 

そんな、ただの子供を、俺は一生忘れることは無い。





《アザミミナミ》

普通に偽名で防衛軍に入隊した不届きもの。
自分の過去を全て捨てて、子供の間に転生知識で人脈無双した結果10歳で入隊という異例の事態を引き起こした馬鹿。

その一環で本来ストーリーでは合流するはずの無い場所で夕波昂とマッチングした馬鹿。テンパって主人公の前だとキャラが常ブレブレ。


《夕波昂の先輩》

普通に良い人、良い人だけど精神性は軍人なので命令に従わないアザミにぶちぎれてる。小さい子を守りたい欲と、こんなのを寄こした上層部への怒り、そして本人の態度で情緒が不安定になった結果少し暴力行為に走る。

あとついでに飯時に邪魔したら結構反抗されて余計に手を出すようになっちゃった。9,9割アザミが悪い。異能もち。


《隊長》

おもっくそ人類裏切るクズ。表面上は防衛隊を仕切ってはいるが、根底にあるのは出世欲と力への渇望。
念話で悪魔から取引を持ち掛けられてあえなく陥落、大隊長ちわーっす!え?最近犠牲者多くない?何のことですかね……?
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