死別エンドガチ拒絶転生者in鬱ゲー   作:カピバラバラ

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想定よりも世界は過酷

 

──鐘の音が鳴る。

高校、大学、防衛軍のそれ以上に広い敷地内に響き渡る鐘の音は、昼食休憩を告げている。

白く無垢を思わせる建物の中で筆を取っている者、芝生と砂、様々なトレーニング器具が設置されてあるグラウンドを活用している者は、その音を聞いて一斉に食堂へと足を運ぶのだ。

 

その過程の談笑や、美味い食事への期待が場を温める。

だからこそ食堂はいつも癒しと賑わいに満ちていて、誰もがその時間を待ち遠しく思うのだ。

異能を開花させた者、させていない者。現場に出る者、後方支援の者、役割は違えど皆悪魔へ対抗する為に、一団とならなければいけない。

 

食堂とは、個々人が『集団』に属している意識を高める場────で、あった筈なのだが。

 

 

「…………」

 

「────」

 

 

──どうやら、食事が喉を通らない者が殆どの様だ。

前日にあった悲報もあるかもしれないが、一個人から放たれる鋭い殺気と怒りが皆の喉を締め付けている。

 

 

「…………」

 

 

防衛軍成績No.1、夕波昴。

あらゆる訓練において、他の追随を許さない圧倒的な強さを持つ彼からの威圧を受けて、食堂に長居出来る人間は居なかった。

防衛軍隊長の訃報、5年以上を共にした友人からの裏切り、隊長私室での魔族との通信記録。

 

ありとあらゆる証拠が、アザミミナミの断罪を余儀なくしていた。

 

 

「夕波くん」

 

「……」

 

「ちょっとイラつき過ぎ、落ち着ける?」

 

「──はい」

 

「アレは君の責任じゃない、君が果たす義務も無い。それでも果たしたいのなら……少し、肩の力を抜きなよ。ここは食堂だよ」

 

「…すみません、自室に戻っておきます」

 

「───アザミミナミの件は、上層部も冷や汗をかいている。入隊の為にアザミミナミが行っていた情報工作のせいで、捜索も難航中だ」

 

「慌てても、怒っても、何も起きやしない」

 

「……はい」

 

 

───理由があるはず。

理由があるはずなんだ、人を殺すにはそれなりの理由が要る。

人類が目の敵にしている悪魔と、殺人犯、そこに違いはあるのか。命を奪う行為は人間にとってどれだけ『赦される』ものなのか。

 

少なくとも、俺は初めて悪魔を殺した時は三日三晩夢に見た。

顔色を変えずにはいられなかった『命を奪う』という行為を、アザミミナミはまるで日常の一部かのように行なう。

 

殺害とは、殺人とは、そのようなものでいいのか?

そのようなものとして消化出来る人間だったのか、アザミミナミは。普段見ていた彼女の姿は、何一つ根底と合致していなかったと。

 

 

「─────」

 

『──Even so, smile。追い出されても、ユウがそう言ってくれるなら笑っていられるね』

 

「なぁ、アザミ」

 

「俺、お前の本名すら知らないんだよな」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「いやっほー!体が楽で仕方ねぇや!!」

 

 

動作補助MAXで動かす足や腕は、普通の時よりも圧倒的に素直に動いてくれる。

元々、鍛えていたとはいえ内臓ボロボロ四肢ボコボコ、動かすだけで一苦労だった私の体は、今や羽が生えたような快適感に満ち溢れていた。

 

最早危惧すべき事案は無い、なんてったって私が居るからな!!私こそが人類最終兵器であり、私こそが人類最強なのだから!!私が負けたら世界が終わるっ!!

 

…ちょっと誇張しちゃいました、まだ私より強い人間は片手程ですが存在している。まぁその中でも自由に動ける人間が居ないから結局の所……──私がオンリーワンって訳です。

 

 

「オラオラオラぁぁ!かかって来いよ雑魚ども!!」

 

「ぎギャッ!?」

 

「ナワバリバトルしようぜナワバリバトル!狭い場所で弱いガキの生き血啜って楽しかったかぁ?今度はテメェらの血で髪洗ってやるよぉ!!」

 

 

現在、フルパワーで試し斬り中。

手首足首の負担、心肺への負荷を考えずに刀を振り回す。『抜刀術』を使わずともスパスパと野良雑魚悪魔を切りまくってます。

 

体力の消費を抑える為に、攻撃が納刀と抜刀のワンモーションで終わる……技術的な側面の抜刀術を愛用してましたが、本来の『抜刀術』はマナ消費するだけで何故か威力が上がるので───、

 

 

「目に見える情報だけで判断するから死ぬんだよテメェらは!!」

 

 

やたらめったらに振り回す一太刀一太刀全てが、これまでに取得してきたバフ技の累乗を乗せて襲いかかる。

『抜刀術』『調律』『クリティカルショット』『リカバー』これだけでヒトナキ戰の攻略準備は整っております!!こっから始まるのは一方的な蹂躙だぜぇ……?

 

 

「ふッ───!」

 

 

───私の肉体はリアルに存在している。

コマンドゲームみたいに、命令に正しく従うプログラムの集合体じゃない。

 

意識に入り込んでくる自らの筋肉の繊維の稼働、機械腕との接合部位の違和感。脳内で思考する動きとは全く異なる現実の挙動。

死ねば死ぬ、生きているから生きている。当たり前をこの頃漸く実感してきた。

 

 

「────」

 

 

振りかぶりしなる右腕を力任せに袈裟切りへ、身体の芯を左足から右肩につなげたまま独楽のように力点が集中した右腕を中心に回転────するわけでは無いが、勢いを殺さず振り切った、加速を押さえつければ関節が故障する。

 

──スパり、と。

刃が肉を、骨を、内臓を通っている一つの『肉体』を音も無く通過した。

 

それだけで目の前の命は、だったものへと変わり果ててしまう。

筋肉の塊、心臓が両断されたのち、機械化により加速を受け止めていい左足から右足へ体重移動、手首が人間ではありえない回転を見せ、悪魔をクロスに刻み切った。

 

 

「……やっぱいいな、機械の体ってのは」

 

「手首もジャイロ機構だし、足痛くないし」

 

 

私は頭が良くない、ミクロ的な戦法を考えることもできず、挙句の果てに隊長を殺すことでしか問題は解決できないと、それを決行した。

分かるだろう、不器用なのだ私は。とてつもなく。まぁそういう事です。

 

 

「寝たきり生活の前世のせいで、余計色んなことヘッタクソだし」

 

「はーぁ」

 

 

だから丁寧に戦えない、ハイブリッドビルドを目指したのもステータスが一番盛れるからでそれ以外に特別な理由は無いんだ。

器用さが足りない、丁寧さも無い、大切にしたいものを大切にできるだけの器量が無い。

 

一人で長く居すぎたせいだ。何が幸せかもわからない癖に、ハッピーエンドなんか目指すから、どうせ何も為せずに何もかも失敗して最後には孤独の中で死んで────。

 

 

「ひぐっ…うぁう…」

 

「────」

 

「うっ、うあ……─」

 

「……どうしたの、こんな所で。お母さんとお父さんは」

 

 

野山で悪魔を殺していたら、茂みからじゃりんこが泣いて出てきた。

ここら辺は、今切り殺した猪みたいな見た目の悪魔が幅を利かせていたのか、住処から人骨がでるわでるわ、目ん玉飛び出るかと思いましたよ。

 

何せ都市に住所を置けない人間は、命の価値が塵以下の世紀末で生活を何とかしなくちゃいけない。信仰されている悪魔は外部遠征で討伐されない限り、その地域で暴虐を尽くし続けるだけだ。

 

 

「………迷ったの?」

 

「う゛……ん…」

 

「そっか。お姉さんと歩いて帰るかい?一人は、寂しいと思うし」

 

「うん…」

 

 

───ダメそうですねこりゃ。

多分、両親とも喰われてます。このまま帰しても犬の餌になって終わり、さてさてどうしますか。

 

数百キロ先の都市国家には1時間ほど、今更踵を返しておじさんの所に戻ってもそこそこ掛かるし受け入れてくれるかは分からない。

 

 

「………」

 

 

殺して供物にでもします?うーん、いやいや流石に倫理観の欠如。普通に家に帰して、強く生きていくことを願っておきましょう。

 

 

「それじゃ手を繋いで、ちょっと冷たいけど驚かないで欲しいな」

 

「ひゃっ…?お姉さんの手……」

 

「そう!マシーンです、カッコいいでしょ。見てた?悪魔ボコボコにしてた所」

 

「ううん…」

 

「………そっか」

 

 

正直なガキは好きで嫌いだよ!!お世辞ぐらい言わんかいお世辞ぐらい。

家族が死んでる瞬間は目撃してなさそうで良かった、お陰様で立ち直りが早そうで面倒が少ない。

 

私も同じく面倒なガキだった時代があると考えれば、この瞬間の行動もいつか巡り巡ると信じて、貴重な時間を割いておこう。

 

 

「自分の家の方向は分かる?あ、あと帰れても家族に私の事は話さない事」

 

「…!あのね、あのねおかぁさんがね、悪魔にね…食べられちゃって、お、おとうさんも、おとうさんもね…──!!」

 

「───分かってたのか」

 

「だ、だから、だから帰っても、帰っても一人なの…」

 

「…ふむ」

 

 

残酷なものだ、世界というのは本当に。

これぐらいの歳の時、私なら車椅子を押して貰って生きてた、他の人間を頼らないと生きていけない癖に、態度も悪かったし。

 

 

「立派だね、君は」

 

 

そんな言葉を吐いたとて、私がやる事は変わらないというのに。

見捨てる、それだけが選択肢に浮き上がる。非効率な生き方をしてきたせいで、この子を助けながら襲撃阻止、なんて方法が思いつかない。

 

 

「一人きり、帰っても君は一人きりだけど、それでどうする?一人ぼっちだー!って言って終わり?」

 

「………分かんない」

 

「そうだよね。当たり前だ…──お姉さんも、どうしたらいいか分からない」

 

「………」

 

「だから──頑張れ。頑張れ少年、この後私は君とお別れするけど、ずっと応援してる。何処に居ても、いつどんな時でも、頑張り続けてたら…いつか応援だけじゃなくて、手を繋ぎに来てくれる人は居るから」

 

「…………──」

 

 

今私が繋げって話ですよねー、まぁ物理的に繋いではいるんで許して欲しい。

どっちにしろ、私の戦いにこの子を連れていくと死んじゃう可能性があって────、

 

 

《では私が預かろうか?アザミミナミ》

 

「────あ?」

 

《心の色を見れば分かる、若干めんどくさいが見捨てるのも気分が悪い…のだろう?》

 

「は、は?うっそ、マジ?」

 

 

…──なんすか、これ!?

うそ、この脳内に直接語りかけてくる丁寧口調!この感じ!!もしかしなくても!

 

 

《このマモンが、最低限の生活を保障してやろう》

 

「────」

 

 

人間臭すぎる事で有名なマモチャンじゃぁン!!

はい、キタコレ!この悪魔はなんと隊長と密通していた方でございます。元々隊長と協力して悪魔も人間も削減するという目標を持つ激やば悪魔。

 

思想はこの作品でもぶっちぎりで終わってるのに、人への対応や同族との会話が天然気味の可愛い子。私のナンバーツーの推しです。

 

本編時空だと大体襲撃イベント以降、ユウの宿敵的な関係に。ですがまぁ大体殺し合って終わるんですが、時たま和解ルートにも突入したり。

 

 

「あ、お願いします」

 

《ククク、そうだろう受け入れがたい…む?》

 

「良かったね少年!それじゃ私は先行くから、マモンさんはまた後で!」

 

《ま──待て、何故そうも事を急ぐ?》

 

「貴方が起こす襲撃を無茶苦茶にするためですけど?」

 

《むぅ…それなら既に取りやめている。貴様という存在のせいでな》

 

「え、嘘。隊長死んだくらいじゃ止まらない筈なんですけど……」

 

 

……うーん、ちょい想定外ですねそれは…。

あー、アレか。あの戦闘(暗殺)見られてましたか。契約していた相手が瞬殺されて、渡した供物を持ち逃げされたとあれば、会談もやむなしと。

 

────ええぇぇ?どうすればいいの?この状況。

 

 

《貴様の願いは聞いていた……夕波昴、その者の幸福だと。貴様は強い、内に秘められている鋭敏な殺気が物語っているぞ。ならばこそ、我から一つ提案をしたいのだ》

 

「『望みを叶える代わりに悪魔にでも人類にでもなく、我に力を貸せ。盟友となろう』ですか?」

 

《────ま、まぁそうだ》

 

「私の願いってユウが悲しまずに、悪魔王の降臨後も幸せに生きる事なんですけど、それって貴方の望みと相反してますよ?」

 

《………》

 

「絶対的な君臨者、悪魔も人間も管理下に置くことで恒久的な平和を目指す。まぁ…寿命的に私とユウが死んだあとは好きにしても構いませんけど」

 

《…──────》

 

「取り合えず襲撃は起こしてくれません?あそこでユウの戦闘スキル鍛えないとこの後どうなるか分かりませんし」

 

《──いきなりで悪いが、我は既に貴様の事が苦手だ》

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