石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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第12話 問答

「ほう……なかなか悪くない酒ではないか、婚活魔法少女よ」

「……お褒めに与り光栄にございます」

「うおおっ! これは、神代の製法で作られた酒だな⁉ 魔法少女なのにさてはお主神代出身の英霊だな!」

「……ご想像にお任せしますわ」

 

 全身キンキンギラギラギルガメッシュと、ムキムキマッチョイスカンダルが、目の前で酒盛りをしている。非常に目にうるさい。

 

 場所はいつもの神殿の広場である。

 

 そう、神殿なのである。

 

 私とメディア様が丹精込めて建設し、ホムンクルスやアサシンたちと一緒にワイワイ楽しく聖杯戦争やってたあの神殿なのである。

 

 そんな神聖な領域に、他のサーヴァントを寄せ付けない防壁と完璧な隠蔽が施された私たちの聖域に、なぜか部外者が我が物顔で酒をかっくらってやがるのである。

 

 しかも今飲んでいるのは、メディア様が道具作成スキルでもって醸造した葡萄酒である。そのスキルで酒も造れるの? とは思ったが、メディア様の伝説にある若返りの秘薬の材料として並ぶ葡萄酒であるため、道具のうちに含まれるのだそうだ。

 

 つまりライダーが言ったように、奴らが飲んでるあの葡萄酒は神代の製法でもって造られた葡萄酒なのである。それを道具作成スキルをAランクで所有するメディア様が自身の魔術でもって最適な環境の下醸造したのだ。これには英雄王もご満悦である。

 

 つうか勝手に上がり込んで飲みだしてまずいだの言いだしたらどうしてくれようかと思っていたところだ。

 

 メディア様が普段使用している玉座の予備を二つ、寺の物置から引っ張り出して王様二人を座らせている。二人の間には古代ギリシャ風の彫刻が施された長テーブルが置かれている。これは普段ホムンクルスたちが食事に使う長テーブルで、以前メディア様と『造形』『露塗』『研磨』のハサンのモノづくり四人衆が無駄にこだわって装飾したものだ。彼らは暇さえあればメディア様が中心となって何かを作っている。

 

 さらに二人の王の横にはクラシックなメイド服姿で、アサシンから借りた仮面を被ったホムンクルスが三人ずつ控えている。仮面はセイバーそっくりな顔を隠すためだ。1番個体が中心となって電磁ネットワークから指示を出しながら王どもに配膳したり葡萄酒を注いだりと働いている。

 

 このホムンクルスの運用法は、本来は戦闘における連携向上のための仕様なのだが、実践投入より先にレストランのウェイトレス的作業に活用されるとは思ってなかった。

 

 ちなみに本来のネットワークの中心である統括個体は、まだセイバーコスプレでこちらにダッシュで向かってきている最中だ。アイリスフィールを抱えての移動だからまだ時間がかかるだろう。

 

 厨房では『美食』や『医食』、『業火』のハサンが中心となって葡萄酒に合う料理を進めている。メインの牛肉が焼ける匂いが鼻腔をくすぐる。

 

 まあこのように、我らがキャスター陣営が持ちうる全戦力を投入して、王どもにご奉仕しているわけだが。

 

 なんだこれ。

 

 なんでいきなり他所の陣営にカチコミかけてきてるのこいつら。

 

 もともとこいつらそんなに聖杯戦争やる気なかったじゃん。やる気出して自分から戦闘に参加しだすのはなんだっけ、ジル・ド・レェが未遠川でデカい怪物を召喚してわちゃわちゃした頃からじゃなかったか。

 

 それまではどっちも散策のほうがメインだったはずだ。まだ聖杯戦争が始まって3日しか経っていない。昨日の海浜倉庫街での戦闘でも、バーサーカーに逃げられた後に「我と見えるのは真の英雄のみでいい」とかなんとか言っていた。細かくは覚えていないけど、間違ってもこんな人里離れたお山のお寺なんかにカチコミかけるような時系列ではないはずだ。

 

 なのになぜこんなに行動が早いのか。まるであの有名な聖杯問答でも始めかねないノリなんだが。セイバーいないけど。

 

 その謎を解明すべく、私は広場の隅っこでちびちびと葡萄酒すすりながら魚のムニエルを口に運んでいる少年に声をかける。

 

「ウェイバ~くぅん?」

「お前、ケイネス先生の声真似で名前言うのやめろよ……ほんとお前そのネタ好きだよな。ねっとりした感じが無駄に似てるのが嫌だわ」

「致し方ないなぁウェ~イバァ君、私が特別授業を受け持ってあげよう、あとで保健室に来なさい」

「だからお前そういうネタやめろよ! クラスの女子にどんな噂されてるのか知ってるだろ!」

 

 そういうのはいいから、なんだってこの山まで来たのか教えてよ。

 

「街中の霊脈を辿ってたんだよ。川の残存魔力は外れだったから、この街全体の霊脈の流れを調べてみた。そしたら太い霊脈がみんなここに集まってたから、とりあえず調べてみようかってなったんだよ。そうしたらお前がいたってわけ」

 

 そう言いながらウェイバー君はつまらなさそうに魔道具を見せてきた。

 

 ガラス製のシャーレに虹色にきらめく粉末が収められている。

 

「妖精の鱗粉と呼ばれる呪体を加工して魔術的に遮断された空間に閉じ込めただけの、道具ともいえない単純なものだよ」

 

 ははぁ、妖精由来の呪体は地脈に敏感だからね。方位磁針のように方向を示してくれるわけだ。

 

 ……。

 

 え、こんな単純な道具でメディア様の隠蔽が見破られたわけ? マジで? 

 

 こんなところで有能さを無駄に発揮しやがって。そういうのは将来のために取っておけばいいのに。

 

 いきなり乗り込まれたおかげで、私もメディア様も隠れる時間がなかったんだが。

 

「メディアちゃんが作ったこの神殿に比べればちっぽけなものだよ。すごいなここ。柱に刻まれた彫刻の一つ一つが互いに影響して魔術的防護を高めてる。かと言って無駄のない機能美ばかりというわけでもなく適度に遊びもあって見ていて飽きない。流石メディアちゃんだな……というかなんでアニメのキャラクターが召喚できるんだ?」

 

「違くてぇ……ホントはメディア様を召喚したくて本気出したら無辜っちゃってぇ……。それよりさ、なんでアーチャーまでいらっしゃるわけ?」

 

「街で霊脈を調べてたら私服でぶらついてたアーチャーと鉢合わせして。ライダーが酒飲もうって誘ったら散策のついでだって言ってついてきた」

 

 お前マジお前ふざっけんなよマジで。ついてきた、じゃねーんだよ連れてくんなよ人ん家に勝手に。こいつらがここで暴れたら私たちの拠点がぶっ壊されるだろうが。お前このショタ顔野郎、私になんの恨みがあるんだ。あるな。恨みあるな。同性愛者疑惑の原因作ったの私だものな。ごめんな。

 

 

 

 medeia:マスター、どうするわけ? あなたの友人が連れてきたのでしょうに

 わたし:どうしようもないですし。こいつらが飽きて帰るまで耐えましょう。吹雪をやり過ごすペンギンの群れのように

 medeia:その例えはよくわからないけれどわかったわ

 

 

 

「それにしてもよい神殿だのう。小ぶりではあるが神聖さに満ちておるし、懐かしさも覚える意匠が散りばめられておる」

「うむ。現代でこれほどの聖域を構築するとはな。誉めて遣わすぞ婚活魔法少女」

「……ありがたき幸せにございます」

「あの辛気臭い教会の数倍居心地が良い故な、今後もこの神殿を使ってやろう」

 

 

 

 medeia:こいつらまた来る気満々よマスター、早く断りなさいなマスターでしょ

 わたし:メディア様こそ断ってくださいよ施工主でしょう

 medeia:いやよ怖いじゃない。それにいちいち婚活魔法少女と呼んでくるのが腹立つわ。絶対楽しんでいるわよねこの金ぴか。というか出会いがしらに爆笑したの絶対許さないわ

 

 

 

 まあ、腹抱えて転げまわってたよねアーチャー。『ヒハハハハ! おいおい見ろよライダー! 婚活魔法少女! 婚活魔法少女ではないか! ゲホッゴホッブハハ!』って指差して爆笑してたものね。つか咽せんなや。今もちょっと笑ってるし。無辜の怪物スキルでこんなことになってしまっていると見抜いているんだろう。たしかアーチャーには千里眼スキルがあったはずだし。それにしたって笑い過ぎである。

 

 その一方でライダーは痛ましいものを見るような? あるいは痛々しいものを見るような沈痛な面持ちでメディア様を見ていた。嗤われるのも業腹だが同情されるのも許し難いとはメディア様のお言葉である。

 

 私たちはちらりと視線を合わせた。メディア様の幼くも整った顔が決意の色を帯びてコクリと頷いた。ネットワークを介さなくても、簡単な意思疎通なら視線だけでできるくらい私たちの関係は深まっている。

 

「幸甚の至りに存じます」

「どうぞごゆるりとお過ごしください」

 

 二人でへへーと頭を下げた。

 

 こういうところで息が合ってもあまり嬉しくないな。正直な話。

 

 いやなんというか、王様二人のオーラがすごいよ。英雄王と征服王のコンビよ? よくウェイバー君はライダーと一つ屋根の下で暮らせるよね。

 

 わたし:やっぱり王様ってすごいんだなって。

 medeia:私も王族なのだけれど。

 わたし:なんでしたっけ、コルキス魔法王国のお姫様なんでしたっけ。でもそれってアニメの話ですし

 medeia:それあなたのせいで追加された設定だし実際に王女だったのだけれど⁉

 

 

 

 頭を下げながらお互いを罵りあう仲良しな私たちをよそに、王二人の会話が佳境に入ってきた。聖杯の所有権がどうの受肉で世界を征服がどうの。

 

 ちなみにセイバーはいない。今頃ランサーと楽しく戦ってるんじゃない? 知らんけど。それか衛宮切嗣の助手のねーちゃんにアイリスフィールを攫った犯人扱いされて喧嘩になってるか。

 

 

 

 medeia:そういえばマスター

 わたし:なんですか王女様

 medeia:なんか腹立つわね……なぜ彼らに聖杯の汚染について言わないのかしら? 求める聖杯が願望器として欠陥品であると知れば停戦協定を結べるのでは? 

 

 それなー。

 

 私も考えないではなかったんだけどさ。

 

 わたし:ライダーとは同盟を結べそうですが。マスターもウェイバー君だし。ただアーチャーがですね

 medeia:まあアーチャーは他人と同盟を組むなんてタマじゃなさそうだけど

 わたし:そもそもとしてですね、アーチャー……ギルガメッシュは願望器程度所有しているに決まってるんです。

 

 

 

 ネットワークに沈黙が降りた。

 

 

 

 わたし:古今東西、人の願いを叶えるアイテムの伝承伝説なんて枚挙に暇がありません。あらゆる宝の原典を所有するギルガメッシュの蔵に願望器の原典がないなんて考える方がおかしいというものです。

 

 

 

 それに先ほどもアーチャーは言っていた。『我の許に下るというなら杯の一つや二つ下賜してやってもよい』と。

 

『願いを叶える魔法のランプ』なんて彼からすれば珍しくもなんともないのだ。

 

 

 

 medeia:それは、つまり『聖杯の汚染を取り除き正常化できる』という私の利点が役に立たない? 

 わたし:もっと悪いです。ただの願望器では英雄王の興味を引けない。しかし今の聖杯はアンリマユに染められた、人類史においても最強の殺戮兵器と化しています。地上から人類を一掃できるほどの。

 medeia:なるほど、ギルガメッシュとしてはそちらの方が価値があるということね? 

 わたし:殺戮という一点においては英雄王の秘蔵の剣「乖離剣」ですら及びません。英雄王としては殺戮兵器として使える今の聖杯の方が興味の対象になる可能性が高いでしょう。それは言い換えれば、

 medeia:アンリマユを浄化し聖杯を正常化できてしまうと英雄王に知られれば、同盟どころか真っ先にこちらの命を狙って来かねないということね。

 

 それに加えてマスターの問題もある。

 

 わたし:マスターの遠坂時臣と彼に協力している教会からすれば、聖杯が汚染されているかどうかは関係ないんです。汚染によって願いが破壊や殺戮の方向に捻じ曲げられようが、七体の英霊の魂を束ねて世界の外側にある『根源』に至るための穴を開けるという御三家本来の目的においてはなんら問題にならないんです。地下の汚染具合を見せつけたところでだからどうしたと遠坂時臣は言うでしょうね

 medeia:主従そろって同盟の望み薄ということね。

 

 

 

 王たちの宴は佳境に入っている。イスカンダルがその身で世界の征服に挑むと語り終え、ギルガメッシュが殺意と愉悦を露わに笑みを浮かべる。互いが互いに向かって堂々とした宣戦布告を述べ合い、一旦話題がひと段落した。

 

 

 

 medeia:ではライダー陣営は? 

 わたし:同盟を結んでも、メディア様、アサシン、ライダーの3人の受肉を叶えるだけの魔力のリソースを確保できるかというのが1点。

 medeia:……確保できなければ、最後はライダーと私たちの陣営で正面からぶつかることになるのね。『王の軍勢』と言ったかしら。神殿から固有結界に引きずり込まれてタコ殴りになるわけね

 わたし:以前も言った通り、セイバーはまだ死んでないから倒したところで小聖杯の魔力リソースには貢献しません。アーチャー、ランサー、バーサーカーを倒して、アーチャーがサーヴァント3体分と換算しても5体分。これで3人の受肉を果たすことは可能ですか? 

 medeia:未知数ね。特に征服王イスカンダルという破格の英霊を受肉させるのにどれくらいの魔力が必要なのか……監督役から奪った令呪を使えればもしかするけれど、できる限り温存しておきたいし

 

 

 

「そう言えば、王を名乗る雑種はもう一匹いたはずだが? あの騎士王とやらは誘わなかったのか」

 

 アーチャーが興が乗った話題の続きとして、今度はセイバーについてライダーに尋ねた。

 

「ん、むう」

 

 しかしライダーは先までとは打って変わって口が重くなった。

 

「いや、一声かけたのだがなにやら急いでいた様子でな。何かを探しているようであった故軽く何を聖杯に願うかだけ問うてみたのだ」

「なんだ、そこまでつまらぬ願いであったのか?」

「いやなんでも『故国の救済』だと。それだけ言って立ち去ってしまってな」

 

 途端にアーチャーは白けた顔をして杯を煽った。隣に控える三つ編みの3番個体が空いた杯に葡萄酒を追加する。

 

 

 

 わたし:あと一つライダーと同盟を結びたくない理由があるのですが

 medeia:筋肉ムキムキなところ? わかるわ、私も筋肉だるまは御免被りたいもの

 わたし:違くて。受肉したあと世界征服に乗り出すんでしょうライダーって。同盟ってことは征服王の軍門に下るってことじゃないですか。巻き込まれたら嫌でしょう普通に

 medeia:それはそう

 

 

 

 私もメディア様も、平穏に長生きしたいのだ。世界征服の片棒担ぐなんてまっぴらごめんである。

 

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