石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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20話および21話に登場したラスボスの魔法少女の設定を変更し、それに伴い作中の描写を変更しました。展開に変更はありません。


第21話 犠牲(修正済)

「はい、えー。今は時間がないので、戦犯の君たちのケジメはアヴァロンでケツバットです」

 

 こいつらが買い集めていた魔法少女のグッズのせいであんな巨大な魔法少女が生まれたのだから、そのケジメは必要だよね。

 

 聖剣の鞘の先端を持ち手にして野球のスイングを試してみる。うん、そこそこ握力があれば振り回す分には問題ない。

 

「痛いだろうけど怪我はすぐ治るよ、なんせアヴァロンだから。ほら尻を向けな」

「主、やめないと殺すぞって騎士王が騒いでるんですが。私のアヴァロンで何するつもりだって」

「うぇーい騎士王くん見てるー? 今から君の大切な鞘であなたのコピーのケツを叩きまーす」

「なんでそうやって人を煽るのあなたは……」

 

 メディア様に呆れられたが、悪いのはあの魔法少女()の洗脳電波であって被害者である私は悪くない。

 

「あと主、罰ゲームなら6番が1人で受けるべきです」

「ダイナミックに仲間売るじゃん。一応聞くけどなんで?」

 

 くい、と親指で指された後方を統括個体越しに覗くと、三つ編みを二本作っているホムンクルス、6番個体が愕然と目を見開いてぶつぶつ呟いている。

 

「あ、あれは、あの魔法少女詠唱は、婚活魔法少女メディアちゃんの姉にしてラスボスである独身魔法少女のもの……」

 

 姉がラスボスなのか、またありがちな。

 

「まだアニメでは名前は未公開なのに勝手にアイリちゃんなんて名乗ってる……まだ設定も全然決めていないのに」

 

 設定と脚本を担当しているらしい6番個体がひどくショックを受けている。

 

 ケジメの意味と売り上げが爆死している『メディざま』の恨みも込めてがっつりケツバットくらわしてやりたいところだけど、今はとりあえず情報収集を優先することにする。運が良かったなお前ら。

 

「アニメのラスボス魔法少女はどんな能力?」

「魔法少女は人々の感情を力に変えます。メディアちゃんは愛によって力を増すので、周りの人々を愛し合うように導きつつ自分を愛してくれる存在を探しています。一方で敵である独身魔法少女は世界中の悲しみ、孤独、嘆き、怒りといった負の感情を吸収して力に変える存在です。世界を負の感情で満たすために独身を増やそうとしていて、逆に愛を増やす婚活魔法少女を亡き者にしようと戦いを挑むのです」

 

 めっちゃ早口じゃん……。

 

 ……、負の感情をなんだって? 

 

「メタリク・メタリカ・キルエムオール・『Seek & Destroy』! どこにいるか、私をこ、こん、こんな恥ずかしい霊基で呼び出した痴れ者は!」

 

 6番個体の早口に気を取られていた間に、巨大な魔法少女がなんか叫んでた。やだ、すっごいキレてる。

 

 なんらかの術式を起動させたようだ。大仰な喋り口のくせに、術式を起動させるためか相変わらずのウインクピースである。外見がアイリスフィールさんと同じボンキュッボンな成人女性のそれだからキツさ倍増だ。

 

 まああんなスリット入ったミニスカでポーズ決めるものだから眼福ではあるけれど、喜びよりも痛々しさが勝ってつい目を逸らしてしまう。

 

 しかし男のサガとしてちらちらと向いていた私の目は、奴のドレスのそこかしこにキラキラしたものがくっついていることに気付いた。初めはドレスのデザインやアクセサリーかと思ったけど、あれってあれじゃん。私が頑張って集めた宝石たちじゃん。

 

 山のようにあった鉱石、宝石を取り込んで、自身が生む莫大な魔力を流転、貯蔵しつつ石に刻まれた術式を使用しているのだ。

 

 しかもその手に持って振り回している吐きそうなほど甘々でファンシーな杖、あれは間桐の家からパクった植物関連の呪体が軸に使われている。

 

 それはもうふんだんに。

 

 今は亡き蔵硯老もまさか自分が数百年かけて集めた希少な呪体がこんなファンシーに生まれ変わるとは思ってなかっただろう。

 

「私のものをこれ見よがしに見せびらかすように振り回しやがって痴女みたいな服着てさぁ」

「元はあなたのものでもないわよ」

「持ち主不在で拾ったんですから私のものです」

「持ち主を殺しておいてこの言い草……」

 

 メディアさまがその幼い外見に似つかわしくない疲れの滲み出る溜息をついた。おっとぉ、戦犯仲間に呆れられるのは心外なんですが? 

 

「見つけたぁ! メタリク・メタリカ・キルエムオール・『Hit the Lights』! 死にくされ痴れ者が!」

 

 巨大な魔法少女の掛け声と共に視界が光で眩む。

 

 それは純粋な魔力で作られた砲撃。柳洞寺の石段がメキメキと音を立てながら、戦車の砲身に似た形に変形し、その先端から発射された光の柱。

 

直撃すればいくら私がアヴァロンを手に持っていても蘇生の暇なく一瞬で森ごと蒸発してしまうだろう圧倒的魔力密度。

 

「マスター!」

 

 音もなく私やホムンクルスたちの前に躍り出たメディア様は、右手を魔力砲に突き出す。そこから一瞬で展開される巨大な魔法陣。それは魔力指向制御平面と呼ばれるもの。魔力の流れる方向を制御するために用いられる魔法陣の一種。

 

時計塔でも魔術研究に用いられるそれは、通常数十センチ程度のサイズでの運用が基本であるが、それをメディア様は半径20メートルはあろうかという規模で展開した。

 

 魔力砲が轟音と共に弾かれ、無力化される。どれだけ強力であろうともそれが魔力の塊にすぎない以上、制御平面の前では無力である。

 

 メディア様が紫の髪をかき上げる。

 

「あの独身魔法少女とやらは、どうやら神殿の信仰対象である神の座に就いたようね。あの神殿の結界や、魔力の高速回転増幅路を組み込んだ特大魔力砲台も彼女の制御下にあるとみて間違いないでしょう」

「何作ってんですか?」

 

 何を組み込んだって? 

 

「エヌマエリシュとやらに対抗しようと思って作ったのよ。要塞には迎撃機能がないとただの棺桶でしょう」

 

 まあ言われてみると、セミラミスの空飛ぶお庭にも色々付いてたような気がする。

 

「防ぐでないわ、私を辱めた罪を死で償え! メタリク・メタリカ・キルエムオール・『Whiplash』!」 

 

 続いて繰り出されたのは、魔力でできた巨大な鞭だ。ビッグサイズな黒衣の独身魔法少女が握るマジカルステッキ(盗品)から伸びる魔力が鞭状に固定され、薙ぎ払いの一撃を仕掛けてくる。

 

 なるほど、これが剣や棒であればまたメディア様の制御平面で防げるが、鞭のようにしなると制御平面で受けても先端が迂回して障壁の裏に身を寄せる私たちを蹂躙することになる。

 

「主、お借りします!」

 

 やべーどうしようと悩んでいるのも一瞬。セイバーコスプレの統括個体が私の手からアヴァロンを掻っ攫い、野球のスウィングのように振り回して迫り来る魔力の鞭の先端を殴り返した。

 

 鼓膜が砕けるような爆音がした。鞭の先端も、統括個体が振ったアヴァロンも、どちらも音速を超えた超速で正面衝突したのだ。そこから発生した衝撃波だけで周囲の木々がまとめてへし折れた。

 

 すげー、アヴァロンってあんな使い方もあるのか。

 

「こちらからも攻撃するわ──リリカル・メディカル・マリッジリング!」

 

 久しぶりに聞いたメディア様の魔法少女詠唱。いまだに照れを残すメディア様の魔法少女的な振る舞いに、手持ち無沙汰だったアサシンたちがWHOOOO! とライブのオーディエンスのように盛り上がっている。

 

 そうして放たれたメディアの魔力砲は、統括個体と鞭で切り結んでいる巨大な魔法少女の豊満な胸を素通りしていった。

 

 あれ? と困惑した空気が漂う。ゴホン、と咳払いしたメディア様は、

 

「あの大きいのは投射魔術を使ったただの映像ね。本体は神殿の中にいるのでしょう」

 

 と、何事もなかったかのように解説した。

 

「鞭は実体があったようですけど」

「光を使って、実体を持った影を投射しているのよ」

 

 あー、橙子さんの使い魔みたいなものだろうか。

 

 それにしても。

 

「さっきからあの痴女、なぜあんなに大出力の魔術を連発できているんですかね?」

「神の座についたからでしょうね。信徒の存在が疑似的に神としての力を増幅させている」

「信徒?」

「『この世全ての悪』よ。人口60億人分に匹敵する悪意がアレを信仰しているのだもの。負の感情を力に変える魔法少女としての性質と信仰が力となる神格の相性が良すぎたわね。しかもその莫大な信仰から得た魔力を『この世全ての悪』に供給しているから……世界滅亡までのタイムリミットがかなり短縮されたわ」

 

 ……みんなで頑張って作った神殿が全力で人類に牙を剥いてる。

 

 なんだろう、ちょっと責任を感じちゃうかも。

 

「対策としては一つですね。『この世全ての悪』と魔力炉と神殿の魔術的な繋がりを絶てばいいわけですから」

「ええ。誰かが神殿に侵入して、私の『破戒すべき全ての符』を突き立てれば解決するわ。そういう意味ではさっきまでより目的が明確になったのだけど……」

「ただ、ねぇ……」

 

 呟きながら、2人で空の要塞を見上げた。

 

 アイリちゃんがステージにしている山の各所から突き出た砲台が、戦艦の対空砲のように魔力砲を乱射している。その着弾先は統轄個体だ。アヴァロンを展開して防ぎ、時には鞘の形態に戻して野球のように魔力弾を撃ち返している。どうやら統括個体は右打ちも左打ちもいけるらしい。

 

「メタリク・メタリカ・キルエムオール・『Metal Militia』! 行け我が従者ども!」

 

 魔法痴女がウインクピースを決め、持っているマジカルステッキの先端から細く柔軟な針金が何百本と躍り出る。白銀の針金は独身魔法少女の魔力が通い、彼女の意思のままにそれぞれが複雑な輪郭を形成する。

 

白くも鈍い光沢を放つ、四足の獣の形をした針金細工の群れが、空中の円蔵山から私たちのいる森林へと飛び降りてきた。

 

 おそらくあれらは、神殿に貯めていた鉱石を針金に加工して作られた戦闘使い魔。アインツベルンの真骨頂たる貴金属の形態操作を以て作られたそれらは、ホムンクルスの視界と同調して観察するに、一体がおよそ体高二メートルはある巨体であり、木々をへし折りながらまっすぐにこちらに向かってくる。

 

「マスター殿」

「うん、行ってくれる?」

「お任せを」

 

『妖美』が心得たとばかりに、私の言葉を聞いて姿を消す。それと同時に他のハサンたちも。後には『怪腕』の肩車で眠ってしまった桜嬢だけが、毛布に包まれた状態で残されていた。

 

 手数で押す気ならこちらだって手数で対抗するさ。

 

 さて。

 

「さて、あとはどうやって空まで行くかよね」

 

 メディア様が腕を組む。

 

 そこを狙い撃つように一筋の魔力砲が迫る。統括個体が受け損ねた一発だ。

 

 それを再び展開した制御平面で上空に弾くメディア様。それにしてもとんでもない魔力量が込められた砲撃だ。熱量だけで前髪がちょっと焦げたかもしれない。

 

「私がここで撃ち漏らしを防がないと最悪冬木市が蒸発するわね」

「それはやばいですね」

「冬木や他の方向に無作為に砲撃されても後味悪いから、私に攻撃を集中させるわ」

 

 そう言って、メディア様はふわりと宙に浮いた。

 

「え、メディア様?」

「私たちが攻撃の的になって被害を抑えるから、マスターは神殿に侵入する方法を考えなさいな」

「そんな、メディア様!」

「こんな私でも、英雄としての矜持があるのよ」

 

 メディア様から『破戒すべき全ての符』を手渡される。私が受け取ったことを確認して、メディア様は一瞬だけ笑った。

 

 儚い、笑みだった。

 

 しかしすぐさま空へと向き直り、音もなく加速し、あっという間にあの巨大化した魔法少女アイリちゃんと同じ目線の高さに達した。

 

「リリカル・メディカル・マリッジリング! 全力全開! 神官魔術式・灰の花嫁(ヘカティック・グライアー)!」

「貴様が元凶か! メタリク・メタリカ・キルエムオール! 『The Four Horsemen』!」

 

 メディア様の詠唱により展開された数多の魔法陣。そこから射出される流星のような魔力弾は、メディア様に向かって駆け出した電撃を纏う四騎の騎士の形をした魔力の塊と正面からぶつかり合い、魔法少女ポーズを決める二人の間のそこかしこで球状の爆煙を上げた。

 

 その足元、暗い森の中ではアサシンと鉄の使い魔が戦闘を繰り広げている。

 

 魔法少女アイリちゃんが振り下ろす鞭や血塗れの槌を、セイバーのコスプレした統括個体がアヴァロンで殴り返している。その後ろでは他のホムンクルスたちが統括個体に魔力を供給しながら応援している。

 

 お互い決め手がなく、こちらの陣営で手が空いているのが私しかいない。

 

 手に握る短剣を見つめる。

 

 つまり、私があの空中要塞に侵入し、魔力炉にこの『破戒すべき全ての符』を突き立てるしか無いのだ。

 

 えー……私がやらなきゃダメな感じ? マジでぇ? 

 

 どうしたものか……。

 

「仕方ない、か」

 

使いたくはなかったけれど、最終手段に頼らせてもらおう。

 

 私は携帯電話を取り出しコールする。そんな私を戦っていないホムンクルスたちが不思議そうに見つめている。

 

 3コール目で繋がった。

 

「あ、もしもしウェイバーくん? 今暇? ライダーいる?」

 

 番号知ってるのかよ! とホムンクルスたちがハモった。

 

 そりゃ知ってるよ同クラだもの。

 

 




アイリちゃんの魔術名はメタリカのアルバム収録曲から。

魔力指向制御平面や魔力の高速回転増幅路の出典はプリズマ⭐︎イリヤから。面白いよねプリズマ⭐︎イリヤ。魔法少女の戦闘を書くにあたりいくつかの魔法少女作品を読み返してて投稿に時間がかかりました。プリヤ面白いよプリヤ。
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