石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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第20話、第21話の一部を修正しています。具体的には敵として登場させた魔法少女を、FGOとFate/Zeroのコラボ企画『Fate/Accel Zero Order』に登場した黒アイリに変更しました。展開自体は変更ありません。


第22話 突破

 

「おいなんだよあれ、なんか目のやり場に困る衣装だけど」

 

 電話してから2分、ウェイバー君はライダーの空飛ぶチャリオッツで颯爽と私の隠れている森までやってきた。これってつまり、

 

「チャリで来た」

「は?」

「ごめんなんでもない」

 

 まだ黒アイリの洗脳電波の影響があるみたいだ。

 

「ウェイバー君、よく聞いて。あそこでポーズ決めてるデカい痴女は独身魔法少女アイリちゃんです。世界を孤独と哀しみで満たすために全人類を独身にしようと企む悪の魔法少女です」

「ごめんよく聞いても言ってる意味がわかんなかった。確かに悪っぽい色だけどさ。あれも魔法少女なのかよ。メディアちゃんには出てきてないよな? あんな年代の魔法少女なんて」

 

 ウェイバー君と二人、上空を見上げれば黒アイリちゃんとメディア様がポーズを決めながらどっかんどっかん魔力砲をぶつけ合っている。爆発音に混じってメディカルだのメタリカだのと詠唱も聞こえてくる。

 

「確かに魔法少女っぽい動きだけど……なんというか、すごいな」

「うむ、素晴らしい眺めだな! ウェイバーよ、お主もちゃんとそちら方面の欲求もあったのだな」

 

 ウェイバー君の呆けたような感嘆の声に、ライダーがにやにやしながら同意した。まああんな短いスリット入りスカートや胸部の守りが薄い服でポーズを決めていたらそりゃね。揺れたり捲れたりで大変だよ何がとは言わないけど。とりあえず間違いなくブラしてないわあれ。

 

「ち、違うぞライダー! 僕はあの魔術の技量の高さに着目しただけで」

「まあまあ隠すでないわ」

 

 ポンと肩に置かれたライダーの手をウェイバー君は顔を赤くして振り払った。

 

「そんなことより」

 

 ごほん、と咳ばらいを挟む。

 

「世界が云々はよくわからなかったけど、魔術の秘匿的な意味からしてなんとかしないとダメだよなあんなの」

「そうね」

「……けど、あれってどうすればいいんだ? そもそもどんな術式であんな巨大化してるんだ? 魔力源は? お前のとこと同じようにアニメを原典にしたサーヴァントなのか?」

「魔力源はケイネス先生が時計塔から持ち込んでいた魔力炉。それに大聖杯が結びついてアンリ・マユが世界滅亡のカウントダウンを始めたけど魔法少女の悪役の殻を被って世界を独身で埋め尽くすことになった」

「待て待て待て全然わかんない。アンリ・マユ? 拝火教の? それに大聖杯ってなんだよ、聖杯とは違うのか? あとお前、もしかしてケイネス先生の至上礼装パクったの? え、本当に?」

 

 おっと、これはまずい方向に話が転がりそうだぞ。

 

「ごめん、今は詳しく話している時間がないんだ。なんせ世界の危機だから。私のサーヴァントとホムンクルスがいつまであの巨大な痴女相手に持ちこたえられるかもわからないし」

「……あとで話せよちゃんと。で、どうすればいいわけ?」

「やることは単純だよ。あの痴女の足元の山の頂上にエルメロイの魔力炉があるから、それにこの短剣をぶっ刺せばいい」

 

 私はウェイバー君とライダーにメディア様から託された『破戒された全ての符』を見せる。

 

「そうすればあの巨人への魔力供給とか魔術的つながりが解除されて、また私たちは聖杯戦争に戻れるって寸法よ」

「どうやってあそこまで行くつもりだ? ハリネズミみたいに大砲が付いてるじゃないか、集中砲火なんてされたらライダーの『神威の車輪』でも近づくのは難しいと思う」

 

 今もメディア様との間でどっかんどっかん鳴ってる極太魔力砲を指でさしながらそんな弱気なことを言うウェイバー君。

 

「そこまで近づかなくてもさ、適当な距離で『王の軍勢』を発動させて、中にいる魔法少女の本体を固有結界の中に巻き込めばあの砲撃から引き離せるし安全にこれを刺せるでしょ」

「なんでお前が『王の軍勢』を知ってるんだ?」

「私のサーヴァントはキャスターだよ? 情報網ぐらい構築してるさ」

「それもそうか。でも、申し訳ないけどその作戦は無理だ」

 

 無理? なにそれ。

 

「なんで」

「アーチャーとの戦闘を見ていたならわかるだろ? もう魔力なんてほとんどすっからかんなんだ、『王の軍勢』は打ち止めだよ」

「じゃあウェイバー君何しに来たの?」

「お前が呼んだんだろうが!」

 

 はーつっかえ。じゃあどうするかな。

 

 数秒ほどネットワークで相談するも、メディア様やホムンクルスたちも同じ回答になった。

 

「その戦車で神殿に乗り込むしかないか」

「それしかないか。いいよ、連れて行ってやる」

「え?」

「え?」

 

 え? 

 

「ガリアスタ、何が『え?』なんだよ?」

「いや、私が行く必要なくない? ライダーにこれ貸すから刺してきてよ。私たち邪魔でしょ正直」

 

 至極当然なことを言っているはずなのにライダーからすごく残念なものを見る目で見られた。

 

「お前も来るんだよ! 当たり前だろ!」

「私の一番好きな言葉は不労所得なんですけど?」

「だからなんだ!」

「のうウェイバー。お主、友は選んだ方がいいぞ」

 

 なんて失礼なことを言うんだ。

 

「ライダー、今の言葉撤回しろ。ウェイバー君には選べるほど交友の選択肢なんてなかったんだぞ!」

「その通りだけどその選択肢本人に言われると傷つくなあ!」

「そうか、すまぬウェイバー・ベルベットよ。お主友達少なそうだものな。趣味もないしな。初対面の相手との会話の仕方とか教えてやろうか?」

「お・お・き・な・お世話だよ!」

 

 まったく、これだから生まれつきコミュニケーションに困ったことのないコミュ強は。ウェイバー君みたいなコミュ障の気持ちを理解できないんだ。

 

 

 

 ¥¥$$€€ ¥¥$$€€ ¥¥$$€€

 

 

 

 会話を挟んでお互いの人となりを共有しあったところで、私たちはライダーのチャリオッツに乗って空飛ぶ円蔵山に接近していった。

 

 移動は隠密優先で、円蔵山の真下までは森の中をゆっくりと移動していく。牛くんたちの蹄から漏れる雷も最小限に抑えてもらいながらのものだ。

 

「真名解放すれば速いけどすぐばれちゃうしね、うるさいから」

「うるさいとか言うな人の宝具を」

 

 近づくまではメディア様や統括個体に黒アイリちゃんの注意を引くようにネットワーク越しに指示を出している。

 

「そんな成人女性の身体で魔法少女と名乗るの恥ずかしくないのかしら?」

「やかましいわ! これでもこの身体は満八歳であるのだ!」

「老け顔にもほどがあるわね。やめたら? 魔法少女」

「私とて名乗りたくて名乗っているわけではないわ! 名乗るなら貴様のような外見年齢がよかったに決まっておろうが! というか貴様ではないのか⁉ 私の霊基に魔法少女などという訳のわからぬものを混ぜたのは!」

 

 う、と一瞬メディア様が言葉に詰まった。

 

「わ、私じゃないわよ」

「では貴様かホムンクルス!」

 

 叫ぶ黒アイリちゃんが魔力の鞭を振り下ろす。それをアヴァロンで殴り返しながら、

 

「え、自分から好きで魔法少女のポーズを取っていたのではないのですか? 大丈夫ですよ。魔法少女を引退した主婦みたいな趣で、一部にカルトな人気があるジャンルですから魔法熟女って。自信持ってください」

「死ねぇ!」

 

 うむ。きっちり囮としての役割を担ってくれている。

 

 優秀な仲間で私も心強いよ。

 

「ウェイバー、キャスターのマスターよ。山の真下に到着した。ここからはさらに注意深く山に近づいていくからな、あまり騒ぐなよ」

「ああ」

「ういーす」

 

 チャリオットが角度を変え、ゆるやかな螺旋を描くように上昇していく。御者台には重力場が働いているのか、斜めとなっていても身体が落ちそうになることはなかった。

 

「もしあの独身魔法少女とやらにばれた場合には、『神威の車輪』の真名を解放して一気に山門とやらまで向かうからな。気を引き締めておけよキャスターのマスター」

「なぜ私だけに言うのか」

「返事が適当すぎるからだよ、なんでお前はそんなに緊張感ないんだ?」

 

 そんな会話がフラグになったのか。

 

 白銀の針金でできた鳥型の使い魔が、いつの間にか戦車の真横に位置付けてこちらを睨みつけていた。

 

 鳥型の使い魔、恐らくは鷹だろう。チャリオッツを引く神牛と同サイズのそれが羽ばたきもせずに滞空している。

 

 その鋭い嘴が開く。そこからスピーカーのようにひび割れた、しかし聞き間違えようもない黒アイリちゃんの声が耳を貫いた。

 

『貴様か魔術師いいい!』

「口を閉じろお主ら!」

 

 ほぼ同時にライダーが手綱を引く。ライダーの意思に応え、二頭の神牛は一瞬で加速した。百メートルを静止状態から一瞬で踏破するその加速力で、まるでロケットの様に円蔵山に向かうが、鷹の使い魔はそれに追随してきた。

 

 白銀の鷹は御者台に立つ私たちを見下ろすような位置に陣取り、速度を合わせたままこちらにその開かれた嘴を向けた。

 

 嘴の奥から魔力の高まりと奔流を感じる。

 

 山全体に設置された魔力砲台と同じものがおそらく内蔵されているのだろう。

 

 彼我の距離はおよそ20メートル。たったそれだけの距離からあの魔力砲をぶち込まれたら、まあ私たちは蒸発するだろう。

 

 

 medeia:マスター! 

 わたし:こちらに転移できる? 

 medeia:無理です。ライダーの抗魔力の影響で転移の術式が阻害されます! 令呪を使用してください! 

 わたし:もう間に合わないな。一応使うけどさ。

 

 

「来いキャスター」

 

 ネットワーク上での会話は高速思考を用いたものであるためほんの一瞬で多くの情報をやり取りできる。しかしそれは情報のやりとりだけで、実際に魔術を起動するのにかかる、魔術回路で魔力を生成し、詠唱し、術式を起動し終えるまでの時間も短縮できるわけではない。

 

 ネットワークを利用した疑似的な高速思考でもって令呪を見守る。手の甲に刻まれたそれがようやく発光し始めた。歯噛みするほどに遅く感じる。それに対して鷹型使い魔の口内で渦巻く魔力はすでに発射が始まっていた。これではどう考えてもキャスターがここに召喚されるよりも私たちがチャリオッツごと蒸発するほうが早い。

 

 失敗したなあ。

 

 まさか倒すべきサーヴァントが残り一騎というところまで来ての、これだものなあ。

 

 まあしょうがない。最後くらい潔く──

 

 

 わたし:潔く死ぬなんて思うなよお前ら! 見てろよ絶対

 

 

 ネットワークにそこまで書き込んだところで。私の視界が光に包まれた。

 

 思わず目を閉じる。死ぬにしても一瞬で蒸発するから痛くはないよね、それだけはラッキーだったな、なんて思った。

 

 そんな思考ができることに疑問を抱いた。

 

 おかしい、私はとっくに死んでるはず。そう考えながら目を開ければ、鷹型使い魔が地上から放たれた苛烈にして清浄な光に撃墜されていた。

 

 その極光は、あまりにも眩しかった。ただ光量が強いわけではない。その光には私が思わず目を逸らしたくなるほどの尊さがあった。

 

 

 騎士王:今だけだ。魔術師。

 

 

 ネットワークに、騎士王の名で言葉が綴られる。視線を先ほどまでいた森へと向ければ、そこには輝きを束ねた聖剣を握る統括個体が見えた。

 

 

 騎士王:その山には、アイリスフィールがいるのだろう? それも生きた状態で。しかしおそらくその独身魔法少女とやらに囚われているのだろう? 

 わたし:はい。

 騎士王:ならば誓え、魔術師。アイリスフィールを救出すると。そうすれば、その頂上にあるという神殿までの道を私が開こう。

 

 

 このタイミングで、ようやく令呪が発動し、黒アイリちゃんと交戦していたメディア様が御者台に現れた。

 

 メディア様と視線を交わし頷き合う。

 

 

 わたし:誓います。あなたが守ると誓いを立てた女性は、必ずや私とメディア様が救出すると。

 騎士王:その言葉、違えるなよ。そして勘違いするな。私は貴様に与したわけではない。あくまでアイリスフィールのために力を貸すだけだと。

 

 うっそだろ、この騎士王様ったらこんなコテコテのツンデレセリフ言っちゃうの?

 びっくりしている間に再びの閃光が森から走る。横なぎに振るわれた聖剣より放たれたその光の奔流は、円蔵山の表面をまとめて焼却し、魔力砲台を轟音と共に薙ぎ払った。

 

「おいガリアスタ、今のって」

「私の仲間の援護だよ」

 

 それだけ告げて、私は前を見据える。そこには柳洞寺の山門がある。あの門が、サーヴァントが神殿に侵入できる唯一の入り口だ。

 

「行きましょうメディア様」

「ええ」

「……行こう、ライダー」

「おうとも」

 

 幅が大きすぎて山門を通れないチャリオッツから飛び降りて、私たちは神殿へと向かった。




黒アイリの服装は「黒アイリ」または「天の衣 最終再臨」で画像検索すると出てきます。
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