石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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第25話 戦後

 切嗣君は黒アイリに吸収されていた間に、聖杯の本質を理解してしまったようだ。殺戮を繰り返してきた自分が世界平和を願った場合、例え聖杯が正常であってもそれは人類抹殺と解釈されるのだと。

 

 それを知り、魔術師殺し衛宮切嗣の心は完全に折れてしまっていた。

 

 平和のために殺してきた。幼馴染が死に、大切な父を殺し、母と思っていた女性も撃墜した。そうまでして続けていた願いだから、止まるわけにはいかなかった。

 

 それって惰性と何が違うん? と私なんかは思うのだけど。

 

 これでも私は中東の全ての財閥を掌握したガリアスタの後継者である。事業を起こした数なんて大小含めれば数えきれない。その中には失敗したものなんて山のようにある。相当な投資をしておきながら手痛い失敗に終わったものだっていくつもあるわけだ。そんな時は損害が広がる前に撤退するに限るわけで、まあコンコルド効果である。

 

「つまり切嗣君はコンコルドなんだよ」

「何がつまりかわからない」

 

 そんなことを話しながら、私たちはドイツの雪山を歩いている。目的地はアインツベルンの本拠地。切嗣君を道案内として雇い、アインツベルンの抱えるホムンクルス技術やら財産やらをまとめて掻っ攫おうという計画である。

 

 道案内が済んだ後で切嗣君が自分の娘を誘拐しようと城を爆破しようとこちらの関知するところではない。一応連れてきているムジーク家のホムンクルスには子供型のホムンクルスは無傷で捕まえるように指示はしておいた。

 

 結果は語るまでもない。ムジークがひゃっほーと叫んでいたことはお伝えしておく。

 

 

 

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 1000年の歴史を持ちその神秘を維持してきた錬金術の大家である、その結界の堅牢さや迎撃魔術の激しさ・悪辣さは執行者や代行者を相手にしようが難攻不落の防御力を誇ることだろう。だがこちらには神代の魔術師であり人類史において五指にはいろうかという魔術の担い手、メディア様がいるのだ。たかが1000年維持された神秘など、魔術の神ヘカテーから直接の薫陶をうけた彼女からすれば児戯に等しい。

 

 年季が違うのだよ年季が。

 

 メディア様の指の一振りで結界を破られ、睨みつける視線一つでホムンクルスたちを機能停止させていく。アインツベルンの最後の抵抗を無人の野を行くように踏破して、メディア様を先頭に私、ムジーク卿、切嗣君他ムジーク家のホムンクルスたちは最奥にて待ち構えていたアハト翁の元へと辿り着いた。

 

「ふん、サーヴァントを従えた程度で私に敵うとでも」

「なるほど」

 

 メディア様が指をパチンと鳴らした。それだけでアハト翁と呼ばれたユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンはその機能を停止させた。

 

「セイバーのマスターから200年を生きる長寿と聞いていたけれど、それも当然ね」

「どういう意味だ? キャスター」

「この男はゴーレムよ」

「なんだって?」

 

 メディア様は手のひらに作った光弾を倒れた老人に投げつけた。それはぶつかると同時に彼の身体を爆散させ、老人の頭部がごろごろと切嗣君の足元へと転がってきた。

 

 その断面からは血が流れていなかった。骨はある。筋肉もある。しかしそれは身体を動かし、支えるために必要であるというだけで、人間として必要な血や臓器は備わっていなかった。彼が製造されてから、おそらく一度も食事や排泄、睡眠といった生理的な動作は行われていなかっただろう。

 

 とはいえ人間の営みに理解がなかったわけではないだろう。アインツベルンの製造するホムンクルスたちを見ればわかる。

 

 女性型しかいない。巨乳ロリ型、貧乳長身型、貧乳ロリ型。ギザ歯、八重歯、犬歯。目隠れ、ポニーテール、ツインテール、ウルフカット。あらゆる属性を網羅した彼女たちからはどれも癖に満ちたこだわりを垣間見ることができる。間違いなく彼女たちを製造したアハト翁のフェチが全開だ。ゴーレムなのに。

 

 敵でなければきっとムジーク卿と友人になれたことだろう。惜しい男を亡くしたが、聖杯戦争を阻止するためだ、仕方ない。

 

 

 

 

「イリヤ……!」

「キリツグ!」

 

 泣きながら娘に抱き着く切嗣君と、彼の無精ひげが頬に当たる感触に眉を顰めるイリヤお嬢様。

 

 そんな感動の再会を後目に、私やムジーク卿はお目当てのものを求めて家探しである。

 

 ムジーク卿の目当てはもちろんアインツベルンで1000年かけて培われたホムンクルス製造ノウハウである。連れてきたムジーク家のホムンクルスたちと一緒に魔導書から培養器、果ては地下にある廃棄槽に沈んでいた欠陥品のホムンクルスまで掬い上げて持ち帰ろうとしていた。

 

 対して私が求めているのは、アインツベルンの財源である。

 

 誰もが不思議に思うだろう。ドイツの雪に閉ざされた山奥に居を構え、どうして錬金術の研鑽を積むことができるのか。どうして無尽蔵にホムンクルスの製造と廃棄を繰り返すことができるのか。どうして小聖杯なる錬金術の頂点ともいえる魔道具をいくつも製造できるのか。

 

 このどれか一つとっても莫大な金がかかる触媒が必要なのだ。それこそ、ガリアスタ家でも躊躇する規模の額である。そうでなければホムンクルスくらい自分の家だけで製造に取り掛かっていた。それができない規模の初期投資と製造コストがかかるため、私はムジーク家に頼らざるを得なかったし、アインツベルンのホムンクルス製造技術をムジーク家に譲ろうと考えたのだ。

 

 ともかく、アインツベルンのその財力は、この世界の貴族と呼ばれる魔術師の家系をもってしても異常だ。

 

 その秘密は、こっそり連れてきていたアサシンによって明らかになった。

 

「これは、ニーベルンゲンの歌に登場する竜の財宝ですな」

 

『査定』のハサンを起こしたアサシンがそう告げた。

 

 アサシンは聖杯に『人格の統合』を願い、統括人格を『妖美』のハサンに指定した。その結果アサシンは『妖美』の肉体で受肉することになったが、その内に眠る百貌の人格たちを好きな時に起こしてそのスキルを使用できるようになった。

 

 今、アインツベルンの地下にある隠し扉の内側にあった山のように積みあがっている財宝を前に、『査定』のハサンを起こしたアサシンがその鑑定スキルでもってその財宝の由来を明らかにしていた。

 

「ニーベルンゲン? ジークフリートの?」

「左様です、マスター殿」

 

 そう、アインツベルンの財力の源は、ジークフリートが竜殺しで手に入れた竜の財宝なのだった。

 

「素晴らしい質ね。竜がため込んでいただけあって、ただ光物をかき集めただけではないわ。その全てが神話や伝説の主題として使われてもいいレベルよ。それがこれだけの量……」

 

 メディア様もそう感嘆のため息を漏らす。元王女のメディア様が言うのだからそうなのだろう。

 

「じゃあ『収貨』のハサンに代わってなるべく運びやすいようにまとめておいて。私とメディア様は錬金術の技術について使える資料がないか探してくるから」

「承知しました、マスター殿」

 

 そんな感じで、アインツベルンのお宅訪問は何事もなく終わった。

 

 

 

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 将来、魔力が世界から枯渇するようなことがあった場合、世界経済と武力は西欧に偏ることになる、らしい。多分。

 

 それまでに中東の経済基盤を掌握し西欧財閥に対抗できるようにならないといけない。

 

 そのための手札として必要なのがマナよりオドを中心とした技術である錬金術と原子力を融合させた新しいエネルギー資源のインフラと、ホムンクルス技術を元にした医療技術、労働力、情報。

 

 医療技術については言わずもがな。依頼人の遺伝情報を元にした臓器生成と治癒魔術を用いた移植である。子供を誘拐して臓器を売り捌くようなどっかの国より遥かに人道的かつノーリスクだ。あらゆる金持ちやスポーツ選手が四肢や臓器の再生を求めてガリアスタカンパニーに頭を下げることになるだろう。

 

 労働力としては、長命にデザインしたホムンクルスを世界中に流通させる方向で考えている。有能かつ見目のいい彼らを求める国や地域は無限にあるだろう。それだけでも彼らはガリアスタの多大な収入源となる。

 

 もちろん単なる労働力ではなく、彼らには原始電池の礼装を組み込んでだ。つまり私と情報を共有できるホムンクルスがあと20年もすれば世界中に広がり、あらゆる情報を手中に収めることができるようになるのだ。

 

 後々ホムンクルスの製造技術が裏にも出現するだろうが、アインツベルンの技術を取り込みメディア様の研究でブラッシュアップされたムジーク家製ホムンクルスは間違いなく世界一のシェアを持つことになるだろう。その後ろ盾となる我がガリアスタカンパニーの将来は安泰である。

 

 そんな未来をより確実にするために、最近私はムジーク卿の親戚であるフォルヴェッジ家の姉弟と頻繁に会っている。

 

 今後の世界の趨勢を握るホムンクルス事業を進めるにあたり、ガリアスタ家とムジーク家の繋がりを強化しようという話になったのだ。

 

 1995年現在、15歳である私に対し、フィオレ嬢13歳。カウレス君12歳である。

 

 別に婚約がどうとか言う話ではない。フォルヴェッジ姉弟の両方と友誼を交わしているだけである。

 

 というか、この姉弟との出会いにおいては弟の方が重要度が高い。

 

 というのも、彼の電気魔術の適性の高さに理由がある。原始電池を扱うセンスも素晴らしく、フォルヴェッジ家では姉と比べられて格下扱いされていた訳だが、ガリアスタ家基準では賓客としてもてなしたいレベルの才能を見せつけてくれている。

 

 それにカウレス君に期待できるのはそれだけではない。2030年頃とかそのあたりで使われているだろう電脳世界での魔術、『コードキャスト』。その基礎理論を開発するのはカウレス君なのだ。科学と魔術の融合の先駆けである。

 

 いや、月に聖杯があるかはわからないからextraルートなのかは今のところ不明だけれども、少なくとも電脳世界への霊子ダイブ技術は開発可能なはずだ。

 

 ゆくゆくはガリアスタ家はITにも手を出すし、その技術を魔術と融合させた電脳世界も開発していくつもりだ。その中で使える魔術を開発し特許を取得できたらはたしてそれはどれほどの利益となるか。

 

 加えてフィオレ嬢である。彼女は両下肢の魔術回路が変性し、下肢が不随状態になってしまっている。

 

 それを治療というか、魔術回路を損なうことなく運動機能を回復させる。そうすれば、彼女は実家から出奔する必要がなくなり、言い換えればカウレス君を我がガリアスタ家に引き取っても文句は言われなくなるという寸法よ。

 

「それで、姉さんの足は動くようになるのか?」

 

 姉思いなカウレス君が、原始電池をいじくりまわしながらそんなことを聞いてくる。

 

 場所は中東、アラブに作ったガリアスタ家の別荘の一つだ。プールサイドにパラソルを広げて、私たちは水着姿でベンチにごろ寝している。

 

「多分ね。原始電池の礼装を組み込んで、体内の電気を掌握することができれば歩くどころかそこのプールで泳ぐこともできるようになるだろうさ。君ほどではないけど、彼女にも電気魔術の才能はそこそこあるからね。なにより指導しているのがメディア様だし」

 

 顎で指した先には、桜嬢やイリヤ嬢をはじめとした少女たちがプールで遊んでいる。ビーチボールでバレーじみたことをやっているが、全員が魔術を修めているため超次元サッカーのような模様を呈している。

 

「では、私も参加させていただきますね」

 

 そういいながら、私とカウレス君のベンチの間を通り抜けていった女性の姿が。豊かに波打つ茶色の長髪をたなびかせて、2、3歩の加速でプールに向かって飛び上がる。そこにちょうどビーチボールが舞い上がり、それは見事なスパイクをその女性は決めた。

 

 その衝撃で、プールの水が隕石の墜落を受けたように高々と舞った。とんでもない音と威力に反応できる者はだれもいなかった。

 

 舞い上がったプールの水は数秒でプール内に落ちる。そこに魔力の反発を使って水上に着地したビーチボール爆撃の下手人、それはつい今しがた話題にしていた、フィオレ・フォルヴェッジ嬢だった。

 

 パレオからすらりと伸びるその細い両足は、紫色の電気がパリパリと走っている。

 

「彼女は電気を体外に放出する才能はないけれど」

「あ、メディア様」

 

 フィオレ嬢の堂々たる立ち姿に唖然としていると、ふよふよと浮いてきたメディア様が私たちに声をかけた。

 

「体内電流の操作は強化魔術に近いから、コツさえつかめばすぐに習得してしまったわ。あと痛覚を伝える神経の電気信号を遮断することもできるようになったし、日常生活にはもう困らないでしょう」

「そうでしょうね」

 

 プールでは『妖美』のハサンのアタックを華麗にレシーブするフィオレ嬢の姿。それを桜嬢が影の触手でトスし、再び跳躍したフィオレ嬢の全力スマッシュが『妖美』さんの脇に突き刺さる。もちろん『妖美』さんはある程度手加減しているのだが、それにしたってフィオレ嬢の身体能力はとんでもないものである。スパイクを決めて桜嬢とキャッキャと笑いながらハイタッチしている。

 

 それを見ながら、カウレス君は嬉しそうに笑っていた。

 

 全く、こーのどスケベめ。

 

 

 

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「この子だれ?」

 

 聖杯戦争が終結し、その事後処理の諸々を終えて一休みしていた頃の話。

 

 赤い髪の少女が、メディア様に連れられて私の執務室にやってきた。

 

 その後ろからは白髪の眩しいイリヤスフィールと、カラスの濡れ羽色の髪をリボンで結っている桜嬢もメディア様について入室してきた。

 

 赤髪の少女は釣り目の視線を私から逸らし、整えられた眉を不機嫌そうに寄せている。

 

 年の頃はフィオレ嬢と同じくらいだろうか。凛々しさと幼さを兼ね備えた、非常に愛らしい少女である。纏う黒いゴシックロリータなドレスもまたその愛らしさに拍車をかけている。だけどなんか、このロリどっかで見覚えあるな? 

 

「こちらは蘇生させたランサーのマスターよ」

「……ケイネス先生?」

「そうだが」

 

 その可憐な唇から漏れたロリ娘の声は死体のように低く抑えられていたが、なにぶんロリの声帯である。ふてくされちゃってかわいー以外の感想は出てこない。目のハイライトは消えているけれど。

 

「え? 蘇生ってどういうことですか? 蘇生させるにしてもなんですかこの外見は」

「肉体は額を撃ち抜かれて脳漿をぶちまけた婚約者さんよ」

 

 なんか今えぐいこと言ったなこの魔法少女。

 

「つまりね。脳以外は無事だった婚約者の頭に、頭部だけが無事だったケイネスという魔術師の脳を移植したの」

 

 うふふ、と笑いながらメディア様は元ケイネス先生のロリっ娘の頭を撫で撫でしている。絵面は可愛らしいのにすっごいおぞましいぞ。

 

「ホテルから回収した礼装を見るに、ケイネスという男は天才だったと思うの。あのまま打ち捨ててしまうのはあまりに勿体ないと思って。とはいえ神経も内臓もぐちゃぐちゃだったでしょう? そこに、すぐ傍に脳以外は無傷で新鮮な身体があったからちょうどいいかなって」

「ちょうどいいからってやっていいことと悪いことがあると思うのですが。あとなんでソフィアリ嬢の身体が若返っているんですか?」

「そっちの方がバランスがいいじゃない」

 

 メディア様は元ケイネス先生の両隣にロリ二人を並べる。バランスという意味ではそりゃまあロリを揃えてきゃっきゃうふふさせたほうが見栄えもいいだろうけども、そんな理由でロリにTSさせられたロード・エルメロイが不憫でならない。

 

「愛しの婚約者の死体に移植するなんてやることエグすぎません? ソフィアちゃん完全に目が死んでるじゃないですか」

「本人に選ばせた結果なのに非難されるのは納得しかねるわ」

 

 そりゃ脳だけ試験管に浮かべるようなのよりはマシかもだけど、目からハイライト消えてんのよ。

 

「あとほら、魔術的な何かでめちゃくちゃにされた魔術回路と魔術刻印はこうして私の宝具でピカピカに治してあげたし、ね?」

 

 ね? じゃないが。

 

 

 

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「つまり、遠坂時臣氏の尽力により、魔術刻印の2割が焼失から逃れ残存しております。それらの移植については時臣氏が生前に遺した書簡の通りに執り行われる予定です」

「そう、ですか。ありがとうございます」

 

 遠坂家は暗い雰囲気が立ち込めていた。

 

 当主である夫あるいは父を失い、その弟子である神父も亡くなった。夫たる遠坂時臣は自分が亡くなる場合に備えて、自身の死後に関わる手続きや刻印の移植に関して完璧な形で時計塔に託していた。

 

 そのことを伝えに来た魔術協会の法政科の者だという金髪の女性が、今後当主を失った遠坂がどのように振舞えばよいかを教えてくれていた。

 

「刻印の移植については、ご息女の第二次性徴が完了する前に段階的に行われます。それまでの間摘出された刻印は、時臣氏に依頼された刻印の扱いに長けた魔術師に保管されることになります」

 

 穏やかな口調で、丁寧かつ親身にその女性は夫や父を失った遠坂家の母娘に説明してくれる。言葉にしてこちらを労わるようなことはなかったが、その距離感が凛には心地よく、ありがたかった。

 

 法政科を名乗る女性は、肩に下げた二つの三つ編みを揺らしながら説明を続ける。

 

「あの、シックスさん」

「はい、どうされましたか凛様」

 

 なお、そうして二人に説明しているシックスを名乗る金髪の女は、もちろんガリアスタが所有しているアルトリア型ホムンクルスの6番目、六番個体と呼ばれ、日本のHENTAI文化に染まり腐女子と成り果てたホムンクルスである。

 

 ちなみに、遠坂の魔術刻印のうち、焼失したとされる8割の魔術刻印は凛の妹である桜に移植される手筈になっている。

 

「その、遠坂の後見人の件なんですが」

「はい。お二人が嫌でなければ、時臣氏の遺言に則り私が務めさせていただこうかと。加えて、凛様の魔術の指導もさせていただく所存です」

 

 遠坂家は6番がそのまま日本に残り、遠坂家の資産運用を引き継ぎつつ凛に魔術の指導を行うつもりだった。

 

 敬愛する父を失った凛をガリアスタのホムンクルスに依存させるための戦略である。時計塔の許可なんて札束ビンタでどうにでもなるのだ。

 

 そうして、遠坂が所有する日本の霊地や遠坂凛という型月世界においても有数の才能の持ち主を、ガリアスタが裏から支配させてもらうのだ。

 

 全てをガリアスタ名義にする必要はない。いざというときに使用できればいいし、極東の土地や地脈を手に入れる必要もあまりない。

 

 ただ、将来冬木はメディア様のラブロマンスの舞台になるのだ。

 

 そこのセカンドオーナーとして時計塔に認められている遠坂家を取り込んでおくのである。すべてはメディア様のためである。

 

「あ、ありがとうございます! ご指導、よろしくお願いします!」

 

 六番個体が自分の魔術の師になると聞いて、凛は父の死を一瞬忘れて喜色に顔を緩めた。

 

 6番を見た遠坂凛は、その美しさに自失した。

 

 錦糸のような金髪の2本の三つ編みに目を奪われ、強い意志を感じさせる碧眼に心を射抜かれた。こんな素敵な女性に師事できるのなら、あのうさん臭い神父が……と不謹慎なことを考えそうになって凛は頭を振ってその思考を追い出した。

 

「はい、よろしくお願いします。同意をいただけるようでしたら、保護者として葵様にこちらの書類にサインを」

 

 母が受け取った封筒は、六番個体が後見人となることを示す書類だった。

 

 もちろんガリアスタが札束の暴力で作らせた書類である。本来ならガリアスタ家が遠坂の後見人になるような繋がりも義理もない。だがなければ作る。金の力で。型月的分類にてガリアスタ家は代々作る者にして使う者である。金の作り方も使い方もおそらく魔術師界隈で一番うまい。最近は奪ったり燃やしたりばかりだったけど。

 

「はい、署名いただきました。こちらその控えです。加えて、こちら桜嬢からの手紙となります。最後になりましたが、どうぞ」

「桜!?」

「い、生きてたの!?」

 

 涙を浮かべながら遠坂親子は手紙を受け取る。封筒から取り出したその手紙には拙いながらも丁寧な文字が並んでいた。

 

『お母さんと姉さんへ

 

 まとーのおうちは全焼したけど私は元気です。

 

 まとーのおうちの子になってからのことはあまり覚えていません。気づいたら遠坂のおうちを出て一年が経っていて、おうちが燃えていて、魔法少女のメディアちゃんとそのおともだちのはさんさんたちに助けてもらってました』

 

 

 メディアちゃんの? 

 

 

『メディアちゃんが言うには私とイリヤちゃんはまじゅつしよりも魔法少女の才能があるそうです。ですので、まとーのおうちは燃えたけど、遠坂に帰るのではなくメディアちゃんに弟子入りすることにしました』

 

 

 弟子入りとかそれずるくない? それなら私だってメディアちゃんの弟子になりたい。というかイリヤちゃんて誰? 

 

 

『なのでわたしは今アラブしゅちょーこくれんぽーにいます』

 

 

 なんで? 

 

 

『砂漠の真ん中に大きな街があります。メディアちゃんのマスターさんのおうちはとても広いです。遠坂やまとーのおうちよりもおおきいです。東京ドーム百個分です。お庭にプールがあって、ライオンさんとチーターさんと黒いヒョウさんを飼っています。門からげんかんまで車で10分かかります。このまえはおうちの中で迷子になったけど、とーかつこたいさんに助けてもらいました。さいきんはまじゅつだけじゃなくて、お料理をはさんのおねーさんからおそわっています。メディアちゃんもイリヤちゃんもケイネちゃんもフィオレさんもアイリさんもはさんさんもとーかつこたいさんもアトラムさんも、みんなやさしくて大好きです』

 

 

 また知らない登場人物出てきた。とーかつ? メイド長的な存在だろうか。

 

 

『まとーにいた時はお手紙をかいちゃだめって言われてましたが、アトラムお兄さんは書いて良いって言ってくれました。学校がお休みの日には遠坂の家に行ってもいいそうです。

 

 ふゆやすみになったらそちらに遊びにいきたいと思います。おみやけも持っていこうと思います。

 

 それでは二人ともお元気で。

 

 桜・ガリアスタ』

 

 

 読み終わった二人は思った。

 

 ガリアスタて誰!? 

 

 封筒の中には何枚も写真が同封されていた。大きなビルやヤシの木的な街路樹の写る背景を背にピースする桜。アニメで見るメディアちゃんそのままな少女と手を繋いで写真に写る桜。プールでメディアちゃんや白い髪の少女、赤い髪の少女、胸の大きい茶髪の少女と楽しそうにバレーをして遊んでいる桜。漆黒肌に紫のポニテをしたエキゾチックな美女と台所に立つ桜。チーターを抱き枕にして寝ている桜。

 

 生死不明で行方不明になってた妹が、アラブの石油王の豪邸でめっちゃセレブになっていた。親子の意識は宇宙に飛び立ち、その顔はまるで猫のように目を見開いてセレブ生活を満喫する妹の写真を見つめていた。

 

 

 

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 ウェイバーはしばらく旅をしていたようだが、いつの間にかロンドンに帰ってきていて、私になんの相談もなくエルメロイ教室を買い取っていた。

 

 それを知って私はすぐケイネス先生inソフィア嬢を向かわせ、突然変異的に市井の家から生まれた天才美少女魔術師ケイネちゃんとして潜入させた。

 

 特に理由はない。そうした方が楽しそうだと思ったからやらせてみただけである。

 

 そうしているうちになんかいつの間にかウェイバーがエルメロイ二世を名乗るようになった。

 

 金髪小悪魔ツンデレロリことライネス・アーチゾルテちゃんの要求を全て受け入れてしまったが故だ。

 

 タイミングを見て再生させたアーチボルトの魔術刻印を彼らに売りつけるつもりである。なんなら移植もメディア様に頼んでやってもらってもいい。本来なら時間をかけて肉体を改造しながら拒絶反応と薬の副作用に耐えつつという面倒臭い刻印移植だが、メディア様の手にかかれば一瞬である。

 

 もちろんハリウッド超大作を作れるレベルの金はもらうつもりだ。




関係ないですがマリスビリーって外見が超いいですね。殴りたくなるくらい
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