石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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第27話 幕間 1995年

 1995年、秋。

 

 第四次聖杯戦争終了から1年弱が経過した。

 

 さて、秋といえば何の季節かと問われたとき日本人はなんと答えるだろうかそう改編期である。

 

 テレビやラジオなどの業界で番組の入れ替わりの季節である。

 

 業界の人間は悲喜こもごも。予算を割いた番組の視聴率が振るわず打ち切りになったり、低予算でやってた深夜番組がゴールデンに格上げされたり。

 

 そんな業界人の悲鳴を他所目にして、ついに始まった『婚活魔法少女メディアちゃん!』の実写ドラマ。

 

 日本で構築したメディアへの人脈をフルに使って製作したドラマである。全52話予定。

 

 主演はもちろんメディア様ご本人であり、ドラマオリジナルのボス役を担うのは第四次聖杯戦争にて巨大な姿を一般に晒してしまったアイリスフィールさんである。

 

 原作アニメで描かれていた空中でコンバットしながら魔法ビームを打ち合うシーンは、現実でやろうとすればワイヤーアクションとカメラワークを工夫しながらリテイクを繰り返す超苛酷かつ時間を消費する撮影となっただろう。

 

 しかし我々には魔術がある。

 

 メディアちゃんとアイリさんの空中戦闘は実際に空を飛んで魔力砲と魔術障壁を使った模擬戦をやってもらった。

 

 撮影には切嗣君の助手である久宇さんの蝙蝠使い魔にカメラを括りつけていろんな角度から撮影し、それらを良い感じに編集してこの時代の特撮技術や合成技術からはありえないビームとど派手な戦闘シーンを毎週水曜夕方5時からお茶の間にお届けしたのである。

 

 そんな映像的なエグさと、メディア様の再現度の高さ、もともとの『婚活魔法少女メディアちゃん!』というコンテンツがもつ期待度や話題性、それに加えて黒い『天の衣』を纏うアイリさんの醸し出すエロさも相まって、視聴率は第一話から20%を超えた。エロは世界を救うぞ見ろよ切嗣。

 

「イリヤ、今日は別の番組にしたらどうだい?」

「ダーメ! 絶対メディアちゃんを見るの! 今週はついにメディアちゃんがアイリちゃんに再戦してセツジョクを果たすんだから!」

「難しい日本語を知ってるねイリヤ、父さんは嬉しいよ。でもね、つまり、アイリがまたあの服装で飛んだり跳ねたりするんだろう? 子供には刺激が強すぎるんじゃないか?」

「じゃあキリツグが見なかったらいいじゃない、私はもう立派なレディだもの。だからメディアちゃんを見てもいいの!」

 

 切嗣君の膝の上でツーンとそっぽを向いてしまったイリヤ嬢のうなじを、彼は困った顔で見下ろした。何度か娘へと呼びかけるもヘソを曲げたイリヤ嬢は、この別荘に設置されているテレビのリモコンを抱え込んだまま返事もしない。切嗣君は困り果て、ソファでごろごろしている私やカウレス君へと縋るような視線を向けてきた。

 

 切嗣君の心配もわかるけどね。アイリさんみたいなバインバイーンな身体であの衣装だもの。衣装として採用されているドレスは、メディア様とハサン物作り四天王の人格があの神殿での戦いで彼女が纏っていた『天の衣』を完璧に再現してくれたからね。視聴した少年たちの性癖が歪むこと請け合いだ。

 

 自分の妻のそんな姿がお茶の間に流されるのだ、切嗣君としては胸中穏やかならぬことは想像に難くない。

 

 難くない、が。

 

 私とカウレス君はちらりと視線を交差させ、肩をすくめた。カウレス君に撫でられながら寝ていたチーターのファハドくんもあくびをしている。

 

「ドラマのスポンサーやってる私が見ちゃダメだよなんて言う訳ないじゃん。むしろ見せてあげなよ、お母さんの晴れ舞台なんだし」

「子供の教育と言ってもホムンクルスだろう? 年齢なんてあってないようなものじゃないか。俺の叔父が作ってるホムンクルスなんか作られた初日から叔父に説教してたぞ、製造技術にムラがあるとか魔術回路のバランスが悪いとか言って」

 

 なんだ、ムジーク卿のところもホムンクルスに下剋上くらってんのかウケる。アインツベルンの城から回収した技術使ったおかげでホムンクルスの性能は上がったけど、精神面のゆらぎはそのままだったらしい。

 

 切嗣君は私たちに言い返されると、据えた目になってこちらを睨んできた。

 

「ガリアスタ。言っておくが僕はアイリをあんな破廉恥な衣装でドラマに出演させたことを許していないからな」

「それは礼装をあのデザインにしたアインツベルンのデザイナーに言ってちょーだい。まあ9割はアハト爺ちゃんの趣味だと思うけど。それとも切嗣君が力づくで止める? もう魔術刻印も銃器入手の伝手もないのに」

「……くそっ、許してくれ、アイリ……」

 

 そうして『婚活魔法少女メディアちゃん!』の第27話が始まった。

 

 地球を哀しみで満たすため全人類を独身にしようと企む独身魔法少女アイリさんが悪の機械軍団オリュンポスの機械兵たちを率いて再びメディアちゃんの前に立ちはだかったところから話が始まる。

 

 迫りくる機械兵たちの銃撃を得意のマジカルクラヴマガによるマジカルCQCで回避し、マジカル殴打を繰り出しながら次々と破壊していくが、ついにメディアちゃんの婚活力にも限界がくる。力尽き膝を付く彼女に向かってアイリさんの邪悪な高笑いがこだまする。

 

「うー、こいつ腹立つー! がんばれメディアちゃーん!」

「イリヤ、お母さんに向かってあまりひどいこと言っちゃだめだよ」

「キリツグ静かに! 台詞聞こえない!」

「……」

 

 切嗣君がしょぼんとした顔をした。中年男性としょぼん顔の組み合わせが絶妙にきもい。

 

 メディアちゃんがついに絶体絶命となったその時! メディアちゃんの学校での友人であった二人の少女、サクラとケーネの二人がメディアちゃんを庇う位置に立ちふさがった。2人は我が家に引き取った2人の少女によく似ていた。

 

 なぜここに、と戸惑うメディアちゃんの問いかけに、二人の友人は手に握っていた魔法のステッキを彼女に見せた。

 

 二人のうち、桜嬢によく似た少女サクラが叫ぶ。

 

「もう、友達が戦っているのを見ているだけなんていやだから!」

 

 もう片方の、我が家で引き取った天才美少女魔術師ケイネちゃんに瓜二つな少女ケーネが告げる。

 

「君は、一人じゃないんだ」

 

 二人が「変身!」と叫ぶと、少女たちの来ていた小学校の制服がはじけ飛び、謎の光が二人の身体を包んだ。次の瞬間二人は魔法少女としてこの世界に再臨した。

 

「リリカル・ケミカル・クリニカル! 恋活魔法少女ケミカルキルケー参上!」

「リリカル・ラジカル・ラピッドファイア! 婚約魔法少女ラジカルアタランテ参上!」

 

 ついに現れた第二・第三の魔法少女! 彼女たちの実力は! 次回を待て! 

 

 ……ケイネス師けっこうノリノリじゃんね。

 

 

 

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 蒼崎女史からご教授いただいた『守護の獣』なる術式。

 

 これは簡単に言えば、他の魔術師から剥奪した魔術刻印を保管し、他者が間接的に利用することを可能とする魔術である。

 

 なんでそんな術式を開発できたのかと言えば、それは蒼崎女史が天才だからだとしか言えない。そんな発想を思いつける時点でだいぶ頭おかしい。

 

 とはいえ役立つものには違いない。

 

 術式の詳細はリアルタイムでメディア様が電磁ネットワーク越しに聞いていたし、彼女は聞いたその場でアーチボルト家の刻印を用いて『守護の獣』を再現してみせた。マジで頭おかしい。

 

 騎士王さんしかり、私の周りには頭おかしい女しかいないのかもしれない。

 

 それはそれとして、メディア様が『守護の獣』を習得してすぐ、私は切嗣君に衛宮家の魔術刻印の売却を打診した。

 

 親子三人+愛人一人の4人で暮らすのに一生困らないだけの金額である。

 

 第四次聖杯戦争に全ツッパしていた切嗣君は、傭兵時代に報酬として稼いでいた金のほとんどを装備や爆薬、情報の購入に費やしてしまっていたのだ。

 

 はっきり言ってほぼ文無しである。

 

 しかも仕事を探そうにも、自分にできるのは人殺しだけだ。甲斐性なしとアイリやイリヤに罵られる自分の姿を彼は必死に頭を振って追い出した。もしそれが現実のものとなったら自分は死ねる自信がある。

 

 そんな彼に残されたものは、日本で購入していた冬木市のとある屋敷と未使用の爆薬や弾丸、そしてその身に刻まれた魔術刻印程度であった。

 

 傭兵を引退して家族+愛人のために生きると決めた彼にとって、魔術刻印なんてなんの役に立つというのだろう。体内時計をいじれることが今後の生活で何に使えるというのか。むしろ衛宮の業に縛られているようで不快ですらある。

 

 売れるなら売りたい。時計塔ならそこそこの値段で買ってくれないだろうか。無理かな。搾りかすだものな。

 

 そう考えていた矢先に、私こと石油王アトラム・ガリアスタから売却を打診されたのだ。それも時計塔が提示するだろう額の100倍はくだらない額である。

 

 即決だった。

 

 こうして切嗣君は愛する妻子から甲斐性なしと蔑まれる未来を回避でき、私は円満に切嗣君から魔術刻印を譲ってもらったわけだ。

 

 とはいえこの刻印は元となる衛宮家伝来の刻印のごく一部。そのほとんどは彼の父である衛宮矩賢の死体が時計塔に回収された際に没収されてしまっている。封印指定されていたからねしかたないね。

 

 しかしその没収とは、当然ながら魔術的な手技によって切り分けられたのである。

 

 つまりこの残りかすみたいな刻印は、メディア様の『修補すべき全ての疵』で元に戻せてしまうのだ。

 

 そんなわけで、完全な状態に戻した衛宮家の魔術刻印は、メディア様同様に『守護の獣』を習得したホムンクルスたちに株分けして与えた。

 

 こうして我がガリアスタ家が誇るアルトリア型ホムンクルスたちはさらなる強化が施されたのであった。

 

 

 

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「マスター、そこに座りなさい。いいえ椅子にじゃないわ、その場に、正座よ」

 

 1995年の年末。第四次聖杯戦争からまるっと1年以上が経過している。

 

 世間は冬休みで浮かれており、学校が休みに入った桜嬢との約束を果たすため、私たちは懐かしの冬木市は遠坂邸へと赴いたのである。

 

 メンバーは桜嬢の他は私、メディア様、ボディガードに『妖美』さんの計4人である。

 

 桜嬢と凛嬢は久しぶりの再会に涙を浮かべながらハグを交わし、私は『妖美』さんと一緒になって彼女たちの母親であるミセス葵と初めましての挨拶をした。保護者としてね。

 

 遠坂親子の歓待を受け、夕食をごちそうになり、その後私たちは遠坂邸に泊まる桜嬢に挨拶をしてホテルの部屋に戻った。

 

 部屋に入るや否や私は正座を強要されたわけだ。もちろん断らない。私は元からこの形で作られた石像ですみたいな顔をして私はその場に正座した。

 

 座る私の前でガイナ立ちのメディア様はその整った唇を開いた。

 

「なんとなくそうじゃないかなとは思っていたのだけれど、私、成長してないわね?」

「いえいえそんな、ハサンさんから料理や掃除を学んだり、モデリングの技術も素人目にもさらに向上してますし成長してないなんてことは」

「身体の話よ」

「そ……すね」

 

 してませんね。

 

 この1年で桜嬢に身長ほとんど追い付かれてますしね。

 

 そう、実はこのロリは受肉したにも関わらず身体的な成長が見られないのである。

 

 かつては女神も参加したミスギリシャコンテスト堂々2位、ゼウスの求婚を袖にして無傷で生還した女(ゼウス・サバイバー)などの異名を持つ美貌を誇る女性である。それがこの有様なのだから文句の一つも言いたくなるというものだ。その気持ちわかる。自分も『全て遠き理想郷』の欠片を埋め込んでから成長してないもの。

 

「私が召喚されてから1年。たった1年と思うかもしれないけど、私のこの身体は12歳なの。成長期なの。それにも関わらず身長も体格も召喚されたときからまっっっったく変化していないの。これ何故かしらね?」

 

 愛らしい笑顔でこちらを見下ろしてくるメディア様。もちろんこの笑顔をそのままの意味で受け止めるほど私はあほではない。今が私の人生のハイライトである。

 

 原因については心当たりがある。

 

 メディア様は無辜の怪物スキルを所持し、魔法少女として召喚された存在である。このスキルが外れない限り魔法少女のままなのだろうと思われる。

 

 そうお伝えすると、メディア様は「でしょうね」と頷いた。

 

 うーん怖い。あと正座がもう辛い。

 

「で、あなたは私の目的に協力すると言ったわよね? お互いに助け合えると」

「言い……ましたっけ?」

「言いました。ところがあなたが召喚した霊基のせいでこのざまよ。一体どう落とし前を付けてくれるのかしら」

 

 

 わたし:言ったかな? 

 第0番:言ったかも。

 第3番:言ったと思う。

 第7番:言いました。間違いないです。

 

 

 言ったか、そうか。

 

「落とし前と言いましても……霊基を自分でいじってスキルを削除するなどは」

「試したに決まっているでしょう。受肉してしまったから今更霊基を改編するなんてできなかったわ」

「じゃあ魔術とか薬を使って身体を成長させるとか。ありましたよね老人を若返らせる薬。それの流れで逆に歳を取らせる薬を作るとか」

「もちろんそれも試しました。それでもだめでした。他は?」

 

 やだよ~……私今めっちゃいじめられてるよ~……。こんなのただの八つ当たりじゃん。ロリにいじめられて喜ぶ趣味は私にはないのに。

 

 

 第7番:じゃあ代わってください

 第0番:すいませんうちの馬鹿が乱入しました

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 ミュートされててもうるさいなあいつ。

 

「あ、それじゃあ逆にお相手の男性をですね、その薬で若返らせておねショタでなんかこういい感じにですね」

「何を馬鹿なことを……」

 

 そう鼻で笑ったメディア様だったが、数秒後にはたと真顔になり、召喚した椅子に腰を下ろして両腕で頬杖を突くようにして何事かを考え出した。

 

 1分ほど経って自分の部屋に戻っていいわよ、とお許しが出たので、私はしびれる足を庇うように転がりながらその場をあとにした。

 

 次の日の朝までメディア様はその姿勢のままだった。

 

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