石油王()に転生したので全力でメディア様に媚びる   作:Una

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第34話 幕間 2002年

 2002年、春。

 

 この一年で私の周りでは多くのことが起こった。

 

 一番の出来事といえばやはりマリスビリー・アニムスフィアが失踪したことだろうか。

 

 なんか? 一人娘が? 100年近くかけてこつこつと作ってきた魔術礼装を? 次期当主権限で勝手に売却しちゃったとか? 

 

 なんで10歳かそこらの子供にそんな権限与えてるんだって話なのだけども、そこは魔術界隈特有の事情というか、魔術師の世界では年齢なんて意味がない天才や異才なんて腐るほどいるわけで。

 

 それに加えてマリスビリーはアニムスフィアのグランドオーダーを自分の代で達成することをほとんど諦めていたから、それにまつわる礼装や天体運行の術式について段階的に次世代に譲渡していく過程だったのだ。

 

 術式についての譲渡先がキリシュタリアとかいう超天才であり、そちらの進みがあまりにも早かったためにオルガマリーへの礼装の譲渡も早まってしまった形だ。

 

 彼の想定としては、術式をキリシュタリア、礼装や家門の管理を血縁のあるオルガマリーに。天体を運行する術式について指南する方が当然時間がかかるためにマリスビリーがそちらに掛かり切りになった結果、オルガマリーはほとんど放置されることになり、しかし次期当主としての厳しい教育だけは使用人越しに与えられていた、そんな感じだったのではないかと思う。

 

 で、アニムスフィアに連なる術式『理想魔術』やアニムスフィアのグランドオーダーの概念についてあらかた弟子に教導できたあたりで礼装の所有権を譲った、と。

 

 その途端に売り払われたわけであるからして。

 

 礼装の対価として持ち込まれた財宝の数々は、そりゃあ霊墓アルビオンから出土する呪体に匹敵するような神秘が籠った一品であった。が、なぜかそれらが『ラインの黄金』と呼ばれる呪われた品々であるという噂が広まっていた。

 

 焦ったマリスビリーはその財宝を精査したのだが、その噂は的中していた。

 

 因果を歪め、所有者の運勢を転落させる呪いだ。

 

 その検査結果をマリスビリーが知るころには、先日流れた噂が真実だったという噂が改めて流されていた。

 

 そんな噂が流布している状況では、その黄金を現金化することができない。誰も買ってくれないのだから当然である。マリスビリーは人脈を駆使して譲渡先を探したが、むしろ声をかけた家がみなアニムスフィアから離れていく結果に終わった。

 

 なんだこれは。

 

 そもそもなぜ我が娘は、こんなものと引き換えに至高の礼装を売り払うような真似をしたのか。

 

 さすがのマリスビリーもその柔和な笑みを引きつらせて自分の娘に問うた。

 

 すると娘はなんら悪びれることもなくこう宣ったのである。

 

「あら、別にいいじゃないですか。お父様には家名も刻印も残っているのよ? アニムスフィアの外側はそのままなんですから違いなんてないでしょうに」

 

 言い捨てたオルガマリーはその足でハサンに従ってアラブのガリアスタが所有する別荘の一つに上がり込み、後日マリスビリーも天体科から姿を消した。

 

 アニムスフィアの直系がそろっていなくなった天体科を運営できるのは、次期当主として目されており当主から厚く教育を施されていたキリシュタリア・ヴォーダイムだけだった。

 

 しかし彼は別にアニムスフィアに養子縁組していたわけでもない。むしろヴォーダイム家の当主になる予定であった。

 

 1年の議論の結果、マリスビリーが1年以上姿を現さないという現実と合わせて、ヴォーダイム家が天体科のロードとして新たに就任することになった。

 

 さらばアニムスフィア。

 

 ちなみにモジャモジャした長髪に緑のシルクハットを乗せたおじさんはいつの間にか自殺していた。

 

 脳髄を保存しておきたかったのに、とはメディア様の談である。

 

 

 

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 メディア様に関する話題で一つ。

 

 彼女は第二魔法に片足つっこんだ。

 

 切っ掛けその一はもちろんあの不愉快な愉快型魔術礼装マジカル☆ルビーちゃんを手に入れたことだが、切っ掛けその二は去年アニムスフィアから譲り受けた礼装の一つ『近未来観測レンズ・シバ』である。

 

 これは元来はカルデアスを観測するための専用望遠鏡であるわけだが、これは要するに別の世界、別の地球を観測するために使用されるものである。

 

 平行世界にアクセスできるルビーちゃんをシバのレンズパーツに合体させることで、平行世界をより正確に観測できる礼装としてルビーちゃんは生まれ変わったのである。

 

『いやー! こんな、らめええ!』と叫ぶルビーちゃんの悲鳴を無視してメディア様は改造を容赦なく施した。ファンシーな見た目でステッキ界のファッションリーダーを気取っていたルビーちゃんは無骨なレンズがルビーちゃんの星型を中心にガチャガチャと取り付けられて、幼女が振り回して扱う本来の用途が全く似合わない外見にされてしまった。その外見は例えるなら手術室の天井からぶら下がっているライトがたくさん付いた照明器具。無影灯というやつだ。鬼である。

 

 これをただルビーちゃんに押し付けただけでは意味はないが、そこはメディア様の腕がモノを言った。マリスビリーの私物にあったフォトニック結晶とホムンクルスたちを支点としたネットワークによる演算能力をフル活用して、無限ともいえる平行世界の中からこちらが入力した情報に限りなく合致する、この世界と近い位置にある平行世界を検出し、その近未来を観察することができるようになったのだった。

 

 あれ、これって私の原作知識いらなくない? 

 

 私の存在理由ってなに? 

 

 メディア様が有能すぎてそんな悩みに苛まれる今日この頃である。

 

 Medeia:実際必要ないわよね。あなたの原作知識とやら、うろ覚えでスカスカだし、当て嵌まる平行世界なんて全然ないんだもの。

 わたし:まあ、私の原作知識なんて元から時間が経ちすぎてうろ覚えだった部分も多いし、散々やりたい放題した後なので今更ではあるのですけど

 Medeia:そもそも聖杯戦争の勝者の顔も覚えてないってどういうことなの。

 わたし:いや、まあ、はい。

 

 さすがに原作主人公の顔や髪の色を覚えていなかったのは致命的でしたわ。

 

 去年メディア様が学園の屋上から見ていた高跳びの人。あれ主人公だったわ。隣にいたワカメ頭は間桐慎二だし。

 

 全然覚えてないでやんの私。

 

 ルビーちゃんの改造を終えたメディア様にすごい怒られた。こんな重要な情報をなぜ忘れるのあなたはって。いやまったくもっておっしゃる通りです。

 

 メディア様は改造した無影灯型ルビーちゃん名付けて逆光ちゃんを介して多くの平行世界を観測した。

 

 条件としては自分が召喚される聖杯戦争が起こる世界。

 

 それはどれも2004年に行われる第五次聖杯戦争である。

 

 そのほとんどで彼女は高跳び少年と敵対していたが、その中でも彼女はある世界に注目した。

 

 高跳び少年を杖に改造してしまうルートである。

 

 その世界ではメディア様が聖杯戦争を勝ち抜いていた。魔術しか能がない自分が、人類史においてトップレベルの知名度を誇る英傑たち相手に戦い抜き聖杯を獲得していた。

 

 ギルガメッシュ、アーサー王、クー・フーリン、メデューサ、ヘラクレス。

 

 こんな激ヤバなメンツを相手にして勝利を手にする要因となったあの少年の魔術。それは投影魔術を名乗っているが、宝具すら投影し、魔力さえあれば真作に迫るものをいくらでも作れて、しかも作られたそれらは時間経過では崩壊しない、半永久的に存在し続けるという謎仕様。

 

 そんなトンデモ魔術の担い手をこのまま放置するわけにはいかない。

 

 魔は魔を引き寄せる。

 

 本人に自覚があろうとなかろうと、彼がその身に内在する魔は必ずや魔を引き寄せ、少年にとって大きな災いとなるだろう。

 

 Medeia:だから私が彼を保護して、魔術についてしっかり教える必要があると思うのよ。

 

 そんなことを宣う恋愛弱者メディア様。相変わらず何か理由をつけないと行動できない無様さを発揮していらっしゃる。

 

 そうやってメディア様が正当化するための理屈をこねていると、

 

 

 第7番:保護するよりも観測した平行世界の通りに杖に改造した方がいいんじゃないですか? 

 Medeia:なぜかしら? わざわざそんなことする理由がないじゃない。

 第7番:メディア様が一から魔術を教えるなんて何年かかるんですか、時間がもったいないじゃないですか。脳髄摘出して杖に改造するなんてメディア様なら1日かからないでしょう? 

 Medeia:時間なんて、ネットワークを経由した情報共有があるのだから魔術を教えるくらいいくらでも捻出できるわよ。

 第7番:平行世界で見た前例の通りになぞるべきでは? 

 Medeia:彼は第四次に巻き込まれてないから前例はすでに破綻してるわよ。

 第7番:平行世界のメディア様は裏切られる可能性を考えていたから杖に改造していたんじゃないですか? なぜ自意識を残す真似をするのですか。杖にしてメディア様が思う通りに投影魔術を行使した方が研究するにしても効率がいいでしょうに。

 

 

 とまあこのように、恋心を認めずに理屈をこねて高跳び少年との接点を作りたいメディア様と、メディア様にガチ恋しているが故に屁理屈で反論する七番個体のレスバが最近ずっと続いているのである。

 

 そのために、いつまでたってもメディア様が高跳び少年へのアプローチができずイライラしているし、ネットワーク内もギスギスするしで、ガリアスタ陣営は大変よろしくない状況にある。

 

 面倒くさいからやめてくれないかな。

 

 

 

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 個人的に今年1番の出来事といえば、ウェイバー君が借金を完済したという慶事をおいて他にあるまいて。

 

 本来であればコツコツコツコツと、教室を運営するうえで入る授業料だとか時計塔からの講師としての給料だとか、他の魔術師が見せびらかした魔術を解体して勝手に登録した術式の特許から入る特許料だとか。

 

 そういったものでゆっくり地道に返済をしていくはずだった。

 

 しかもある程度返済が進むとあの金髪小悪魔偏屈ツンデレロリことライネスが恩を売りつつ借金を増額させることまでしていた。

 

 あのツンデレロリはウェイバー君との繋がりを借用書からしか感じられないかわいそうな生き物なのだ。まるでメルヴィン君みたいだ。

 

 そんな、借金の完済なんて絶対にさせない方向でやる気に満ちていたライネス嬢に対して如何にしてウェイバー君が借金を返済するに至ったか。

 

 カミュのおかげである。

 

 カミュ・ペリゴール。ウェイバー君とは時計塔の同期であり、時計塔を離れた現在はペリゴール社というIT・ハイテク系企業にCEOとして勤めている女性だ。

 

 彼女とは私も含めてVR関連の新技術についてよくミーティングを開いていたのだが、その技術で取得した特許とそれを用いた新製品の売り上げが実に好調なのだ。

 

 そしてカミュ嬢はロイヤルティとして売り上げの5%をウェイバー君の口座に振り込んでいた。

 

 はじめはウェイバー君はカミュ嬢からの申し出を断っていた。お金を受け取るほどのことはしていないと。しかしカミュ嬢も断固として譲らない。

 

「ウェイバー。このVR技術が形になったのは、折に触れブレイクスルーとなる助言をくれた君のおかげだ」

「う、む。しかしだな」

「だから君には報酬を受け取る義務がある。君にとっては大したことがなくても、知恵や技術には対価が支払われるべきだ。この前提が守れない経営者にだれがついてくるんだい? 私は搾取するだけの無能なお山の大将に成り下がってしまう。だから、私の立場を守るためだと思って、ね?」

 

 まるでキスでもするような距離で囁かれて、ウェイバー君は頷いてしまったのだった。

 

 私は? ねえ私は? とは思うが、ガリアスタカンパニーは共同出資の立場にあるので、そこの社長である私に直接ロイヤリティを支払う義務は契約になかった。寂しい。

 

 ともかく、話をまとめてしまうとだ。

 

 ライネス嬢がウェイバー君を自分のそばに縛り付けるために押し付けていた借金を、横からしゃしゃり出てきた泥棒猫が勝手に完済させてしまったのである。

 

 ライネス嬢は激怒した。

 

 必ず、かの破廉恥千万の泥棒猫を除かねばならぬと決意した。

 

 ライネス嬢には色恋はわからぬ。ウェイバーに好意を伝えようとした際には表情を邪悪に歪めて「子作りでもするかね?」などと誤魔化して暮らしてきた。けれども寝取られに対しては人一倍に敏感であった。

 

 こうしてウェイバー君の周囲も、カミュ嬢とライネス嬢のつばぜり合いでたいそう空気が悪い。それに加えて最近現代魔術科を卒業してそのまま講師の資格をとって同じ学科で教鞭をとっているケイネちゃんまで参戦して、同じ講師と言う立場を利用してウェイバー君に干渉するのだから教室の空気は地獄である。

 

 しかし三人の地獄じみた関係が半年ほど続いたある日、とんでもない爆弾が彼女たちの間に投下される。

 

 ウェイバー君が、とんでもない美少女を内弟子に招いたのである。

 




メタ的な解説

FGOルートに行かない場合の多くでレフが自殺することになるのは公式らしいです。彼にはもっと細かい事情があるのですが本作では特に重要でもないイベントなので一行で終了。
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