ラブコメ世界に戦闘系の能力は必要ですか?   作:ふくきたる

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第1話

拝啓 蝉の声がにぎやかに響く季節となりました。

   前世のお父様お母様、お元気でお過ごしでしょうか。

   こちらは相変わらず元気にやっています。

 

   私は高校生になり、ちょっと特殊な世界で生活をしているので、多少バタバタしておりますが、なんとか頑張っています。

 

   暑さの厳しい時期ですので、くれぐれも無理をせず、どうかお体を大切にしてください。

   もう二度とお会いする事は叶いませんが、違う世界からお二人の幸せを祈っております。

 

   まずは書中にて近況のご報告とご挨拶まで。

 

   ごめんなさい、重要な事を伝え忘れるところでした。

   この世界の私は、地球人ではなく、フレイム星人という異星人でした⭐︎てへぺろ

                                          敬具

 

どうも皆さん初めまして、ヨシツナ・フィアンマ改め朝利吉綱(あさりよしつな)と申します。

彩南高校の2年生になりました。趣味で自警活動をやっています。あと宇宙人です。

 

この世界に転生してから、前世の年齢と並んだ。

転生した当初は色々と嘆いていたが、今はこの生活が気に入っている。

住めば都というやつだ。

 

漫画の主人公のような生活に憧れていた前世ではあったが、この世界はToLOVEるの世界。ラブコメの世界なのだ。

物語の主人公は、結城リト。

彼の元にメインヒロインの1人であるデビルーク星の第一王女、ララ•サタリン•デビルークがやってきて、リトを好きになる。

そこから始まるちょっとエッチなドタバタラブコメディ!そんな感じの漫画だ。

ちょっとエッチな←ここがとても重要

 

もちろん、前世でもこの作品は読んでいた。

自分の身体では漫画を買いに行けなかったので、両親にいつも欲しい作品を頼んでいた。

だけどToLOVEるシリーズは、母親ではなく、父親にのみこっそり頼んでいた事を思い出す。

ダークネスに移行してからは表現がさらに過激になり、表紙で父親に気づかれ、最新刊を持ってきてくれる度に温かい目をされていた。

 

べ、べつに、この漫画は純粋にラブコメとして読んでいたのであって、そういうのが目的で買ってもらっていたわけじゃないんだからねっ!←大嘘

 

朝から布団の中で、くだらない事を考えていると目覚まし時計が鳴り響く。

そろそろ動かないと学校に遅刻するので、二度寝をしたい欲に抗い、もぞもぞと動き出す。

まずは洗面台に向かい、顔を洗ってから鏡を見る。

 

「本当に、そっくりだよなぁ…」

 

そこに映っていたのは、前世で慣れ親しんだいつもの顔ではなく、【家庭教師教師ヒットマンREBORN!】の主人公、【沢田綱吉】に瓜二つな顔があった。

唯一違う点は、髪の色。

ツナは茶髪だけど、俺は黒髪。それ以外はマジでそっくり。

転生の時に、沢田綱吉が使う大空の炎という言い回しに違和感があったが、こういう事だったんだなと納得する。

 

そして現在の俺は、恐れ多い事に、身体や血がほとんど沢田綱吉と同じで出来ているのだと確信している。

なぜなら【ブラッドオブボンゴレ】と呼ばれる、【超直感】の能力まで持ってしまっているのだ。

 

初めて超直感が発動した時は、とても驚いた。

幼い頃、俺はよく同年代の子供たちにとある理由でいじめられていた。

しかし、その時は突然やってきた。

近所の公園でいつものようにガキ大将に喧嘩を売られ、一方的に殴られそうになった時、超直感のお陰で避けれたのだ。

前世で全く運動が出来なかった、この俺がだ。

 

それから数年後。

フレイムから地球の彩南にやってきてから、超直感がさらに覚醒する。

身近な人間にも、この超直感が発動するようになったのだ。

この力を役に立てたいと考え、小学生の時期からあらゆる格闘技を学び始める。

そして中学生になった段階で、【ボンゴレプリーモ】ジョットを見習い、町を守る自警団を立ち上げた。

今はまだ1人だけど、いつか仲間を増やしたい。

名前は【あさり組】で、コードネームは【V】。

ほぼボンゴレファミリーのパクリだが、個人的にとても気にいっている。

 

最初は、彩南町にいる素行不良者たちの騒ぎを無力化するだけの仕事だった。

それも仕方ない。

なぜならここは、現代社会に似せて作られたラブコメ漫画の世界。

騒動なんて、そんな簡単に起きやしない。

 

だが、原作開始が近づいてくるにあたり、仕事が日に日に増えていく。町に宇宙人が増えてきた。

宇宙人からしたら地球の法律など知らないし、関係ない。悪事を働くやつがどんどん増えてくる。

超直感が発動する度に現場に向かい、取り押さえる。

そんな日々を繰り返していくうちに、あさり組とVの名は彩南町にジョジョに浸透していき、今では感謝をされる様になってきた。

ちなみに格好は、黒のマフィアスーツに顔全体を覆い隠すシンプルな仮面。

初めは助けても変質者扱いされるだけだった。かなしい…。

 

一度だけとんでもなくヤバい奴と遭遇してしまい、死にそうになった事もあった。

でも、自警活動はやめなかった。ってか、やめれなかった。

だってこれぐらいのことでしか、この世界で主人公っぽいこと出来ないんだもの。

 

リビングにあるキッチンで、簡単な朝食を作り食べる。

食器たちを片付けたら、次は学校への準備。

両親はフレイムにいるので、去年から一人暮らしの状態。

元々、地球には俺と母親しか移住していなかった。父親はフレイムに残り、地元で働き続けている。

その父親が体調管理を怠り、倒れてしまったので母親だけフレイムに戻っていた。

なので、父親は家光でもないし、母親はママンでもない。

それでも前世の両親と同様に、俺を愛してくれているのはわかっている。

 

「よし、忘れ物ないよな」

 

身支度を整え、忘れ物がないかチェックする。

教科書や筆箱、財布、複数の匣と仮面が入っている鞄の中身を確認し、大切なリングをネックレスにして首にかける。

鍵を閉めて、いざ学校へ。

高校までの移動手段は徒歩。

いつもはのんびりと歩いているが、今日は思考を止めない。

 

なぜなら1ヶ月程前、とうとう彩南高校に【赤毛のメア】こと、黒咲芽亜の姿が確認された。

つまり、もうすぐ無印編からダークネスの世界線に切り替わる。

そして俺の現状は、とても微妙なのだ。

 

ToLOVEる(無印編)で、リト達メインキャラクターは1-Aクラスに在籍していた。

でも俺が配属されたクラスは、1-B。

唯一、ヒロインの1人である古手川唯と一緒のクラスだったが、他のメインキャラたちとは殆ど絡みがなかった。

 

正直、驚いた。

同じ学校で同じ学年なのに、クラスが違うだけで一年間、ほぼリトたちと喋った事がない。

さらにここだけの話、俺は西蓮寺春菜と同じ小学校に通っていた。

けど、そこでも西蓮寺と同じクラスになれた回数は0。

中学校は住んでいる地域の関係で、別々の学校に進学し、俺が通う中学に原作キャラは1人もいなかった。

あの神様的な方は俺をこの世界に転生させて、何をさせたかったんだろうと本気で思った。

ぶっちゃけ今も思っている。

 

進級して、古手川も俺も2-Aに配属された。

メインキャラが集結した空間で生活出来るのは嬉しいが、現状、彼らとは挨拶や多少の世間話をする程度の間柄。

ナナやモモなどの年下組に至っては、Vの姿の時に会った事はあるがまともに会話した事すらない。

なので当然、とらぶるくえすとや無印最終巻のプールにも誘われはしなかった。

 

 

べ、べつに、誘われなくて寂しいとか思ってないんだからねっ!←再び大嘘

 

脳内で朝のツンデレを天丼する。

後は、伝説の殺し屋【金色の闇】の名を持つヤミだが、これが意外と仲が良い。

まぁ、他が酷すぎるのもあるが…。

図書室でちょいちょい見かける様になり、ちょっとしたことで挨拶をする関係になった。

休日の出掛け先で、たい焼きを食べているところにばったり出会したり、学校の廊下ですれ違ったり、最近ではヤミから声を掛けてくれる時もある。

 

「朝利吉綱は、結城リトと違って変な事をしないので安心できます」

 

これを言われた時は、滅茶苦茶嬉しかったね!

ってか変な事って絶対にえっちぃことですよね。

この世界でもリトさんのラッキースケベは健在のようです、はい。

 

さすがリトさん!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ。そこにシビれる!あこがれるゥ!

 

ともかく、結論を言わせてもらうと、俺は古手川とヤミぐらいしか関わりがない。

つーか、朝利吉綱の姿ではなく、あさり組のVとしての方が、圧倒的に原作キャラと関わっている。

 

今日から頑張ってメインキャラたちと仲良くなろう!そう意気込んでいると、視線の先に彩南高校の校舎が見えてきた。

下駄箱で靴を履き替えると、階段方面で複数人の声がこちらまで聞こえてくる。

 

「へへー。あたし達、今日からこの学校に転入するんだ!」

 

「お姉様達を驚かせようと思って、秘密で準備していたんです」

 

(っ、!モモたちが転入する。それは、今日からダークネスの世界線なるという事。これからは、気を引き締めていかねば。俺の目的のためにも)

 

階段の踊り場で、楽しそうに話すモモとナナ。

2人は彩南高校の制服を着ており、とても似合っている。

それに驚いた様子のララに、赤い顔でセリーヌを抱っこしている古手川。

大量のノートを持っていて、頭に大きなタンコブを作っていたリトたちの姿がそこにあった。

この光景は知っている。ダークネス編の記念すべき第1話でのシーン。

リトさんにタンコブがあるということは、ついさっきラッキースケベがあったはずだ。

もう少し早く登校していれば、現場で見れたかもしれないのに…。という残念な気持ちが心の中に生まれる。

 

気持ちを切り替えて、先に俺から皆んなに挨拶をしようと考える。

けれども、あまりにも楽しそうな雰囲気と、まだ面識のないモモとナナの存在。

色々と考えた結果、今回は挨拶をせず、横を通り抜ける選択に急遽変更する。

 

前世では、両手で数えられるくらいしか学校に行けていない。

だから友達なんていないし、家族以外には人見知りでもあった。

ついさっきまで頑張ろうと意気込んでいたのに、いきなりのチャンスを棒に振る。

意志薄弱すぎるだろ、俺……。

 

まるで空気に溶け込んだかのように気配を消して、彼らの横を通り過ぎる。

すると、後ろから声がかけられた。

 

「おはよ、朝利」

 

「おはよう、朝利くん」

 

「アサリー、おっはよー!」

 

リト、古手川、ララの順番で挨拶をされる。

……嬉しかった。

そこまで仲が良いわけではないのに、漫画の主人公たちが俺を認識し、あまつさえ声をかけてくれる。

そんな状況に、涙が出そうになる。

でも、それをぐっと堪え、背後に振り返った。

 

「…おはよう、3人とも。ララは今日も元気だね」

 

声は震えてなかっただろうか。挙動は普通だっただろうか。

自分では平静を装えていたと思うが、他人からはどう見えているかはわからない。

変な人間だと思われていたら、ちょっとショックだ。

 

「そういえば朝利は、この三人とは初対面だよな。紹介するよ。ツインテールの子が、ナナ・アスタ・デビルーク。隣の子が、モモ・ベリア・デビルーク。古手川が抱っこしている子供が、セリーヌっていうんだ。モモとナナは、ララの双子の妹だよ」

 

「ご紹介に預かりました、モモ・ベリア・デビルークです。気軽にモモと呼んで下さい」

 

「ナナ・アスタ・デビルークだ!よろしくな。私もナナでいいぜ!」

 

「まーう、まーう♪」

 

「リトたちとクラスメイトの朝利吉綱です。よろしく、モモ、ナナ、セリーヌ」

 

ナナとセリーヌは純粋な笑顔で挨拶をしてくれた。

モモも綺麗な笑顔だったけど、その裏で何かを品定めしている表情にも見える。

 

「妹たちとセリーヌちゃんをよろしくね、アサリ♪私の妹だからデビルーク星の第二・第三王妃になるんだけど、アサリはどっちがお姉ちゃんだかわかる?」

 

ニコニコなララが無邪気に問題を出してきた。

 

「ナナが第二王妃で、モモが第三王妃だろ?」

 

「せいか〜いっ♪」

 

楽しそうに拍手しながら答えてくれるララ。

「ごめん、知ってるんだ」とは言えず、ちょっとした罪悪感がある。

 

「オマエ、わかってるじゃないか!そうだよな、私の方が姉に見えるよなー♪モモは私たちの妹にしか見えないよなー♪」

 

「ぐっ…。ちょっと、朝利さん。どうしてそう思ったんですか?理由を教えてくださいっ」

 

ナナが嬉しそうに胸を張り、モモを煽る。

ほんの一瞬だけモモの本性が現れるが、すぐに元に戻る。

しかし、不機嫌そうな表情でこちらに詰め寄ってきた。

頬を少し膨らませながら喋る姿に、圧倒的なあざとさを感じる。うん、可愛い。

はてさて、どう答えるべきか…。

 

「うーん、何となく…モモの方が末っ子の雰囲気を感じたからかな」

 

その答えにあまり納得していない様子で「そうですか…」と下がっていくモモ。

もしかしたらナナの好感度を上げて、モモも好感度を落としてしまったかもしれない。

まぁ、彼女たちは皆んなリトに惚れてるから、好感度を気にしても何の意味もないんだが。

 

「そろそろ、朝のHRが始まる時間よ。遅刻になる前に、早く教室に向かいましょう」

 

今までずっと静観していた古手川が口を開き、各々が返事をする。

 

「それではお姉様方、また放課後に」

 

モモはそう言い残し、柔和な笑みを浮かべてから、ナナと職員室の方へ。

リトとララは古手川からセリーヌを引き取り、階段を降りて保健室へと向かう。

そうなると階段の踊り場には、俺と古手川の2人だけが残っている。

彼女の方に目をやると、こちらに手を差し伸べている姿がそこにあった。

 

(あぁ、いつものか)

 

Yシャツのボタンを一つ外し、首にかけているネックレスを古手川に渡す。

 

「大切なモノだから、なくさないでくれよ?」

 

「一年以上同じやりとりをして、なくしていないでしょ。まず、そんなに大切なモノなら、学校に持ってこないっ!風紀違反です!!」

 

右手を腰に当て、左手の人差し指をビシッとこちらに向け、決め台詞のように言い放つ古手川。

 

これは、俺と古手川の朝のルーティン。

一年生の時に、古手川と一緒のクラスで初めて彼女にリング付きのネックレスがバレた時はもう大変だった。

古手川はクラス委員の立場として、風紀違反だから指輪を預かる、放課後になったら返却する、とうるさかった。

けれど自警団の仕事には、リングは必要不可欠なモノ。

さらに、世界に一つしかない大切な指輪だから、なくされたら困るという理由で絶対に渡さなかった。

しかしその翌日から、古手川に付き纏われるようになる。

何をするにしてもネックレスの事を、毎日しつこく言われ続けていた。

最終的には俺が折れ、彼女に預かってもらうようになり今に至る。

ここでのやり取りで多少、古手川とも仲良くなったと思う。

 

「それじゃ、私は風紀委員室にこれを保管してくるから。あなたは先に教室に向かいなさい」

 

長髪の黒髪を靡かせ、古手川は階段を登っていく。

彼女の後ろ姿を見ていると、次第にすらっと伸びる美脚に目線が吸い寄せられていく。

 

俺は常々思っている。

彩南高校のスカートは防御力が低すぎると、丈が短過ぎると。

少し風が吹けば、ヒラヒラと捲れそうになるのは凄く目に毒だ。

校長が変態だから、そういう仕様になっているのかもしれないが…。

とにかく色々な事において耐久性がない、最弱のスカートだと思っている。

 

俺は踊り場、朝のHRに遅刻しないために足早で階段を登る古手川、ヒラヒラするスカート。

この条件が揃えば、もう言うことはないだろう。

 

(薄い水色か…、ありがとうございます!)

 

 

◼️

 

 

放課後。

学校の中庭にあるベンチに独りで座り、紅く染まりつつある空を眺めながら黄昏ていた。

ここにいる理由は、ただ一つ。

原作通りに行けば、誰かさんに操られた猿山たちにヤミとリトがこの場所で襲われるからだ。

その時が来るまでただじっと待つ。

すると、綺麗な金色の髪を持った美少女が視界の端に現れた。

 

「朝利吉綱、隣よろしいですか?」

 

「こんにちは、ヤミ。はい、どうぞ」

 

声をかけてくれたのは、もちろんヤミ。

左手に本、右手にたい焼きの袋を持ってそこに立っていた。

彼女のために横に移動してスペースを確保すると、ヤミは少し間を空けて隣に座る。

 

「…たい焼き、一ついりますか?」

 

「いいの?それじゃあ、ありがたく頂戴するよ」

 

差し出されたたい焼きを受け取ると、彼女はそのまま読書をはじめる。

邪魔にならないよう、静かにたい焼きを食す。

一つも会話がない静かな時間が流れるが、不思議と嫌な雰囲気にはならない。

むしろ変に気を使わなくていいので、気楽にさえ思えてくる。

すると、

 

「ヤーーミさん♫」

 

和かな笑みをしたモモが登場する。

隣に座る俺の存在に気づき、彼女は一度だけ目を大きく見開く。

だが、すぐに切り替え、ヤミへと意識を向けていた。

 

「あなたは…、モモ・ベリア・デビルーク…。私に何か用ですか?」

 

「ふふっ。せっかく転入してきた事だし、同じ宇宙人同士、お友達になりたいと思いまして♡」

 

「友達…、私とですか?」 

 

「はい♡」

 

すぐ隣で、原作にあったような会話を繰り広げていた。

つーか俺、気まずいんだけど……。

ここから立ち去るわけにもいかないし。モモさんから変なプレッシャーを感じる……。

 

「…別に友達募集はしていません。友達なら、美柑がいるので間に合ってます」

 

ヤミの答えに、モモの顔がピシッと固まる。

美少女は固まった顔でも美少女なんだな、世の中って不条理。

そんな事を考えていると、ヤミが続けて口を開いた。

 

「友達…ではありませんが、友達…みたいな関係性の人間も、隣にいるので」

 

「えっ!?」

 

「っ、!」

 

ベンチに寄りかかり、上を向いて目頭を抑える。

それはもちろん、今にも溢れ落ちそうな涙を、ヤミに見せないためだ。

こんなに嬉しいことはない。

さっきからモモさんに、(何でお前みたいなのが大丈夫で、この私がダメなんだ!)みたいな感じのジト目で見られているが、気にしない。

 

今度、ヤミを遊びに誘ってみようかな。

たい焼き屋とかのスイーツショップ巡りなら、ついてきてくれるかもしれない。

でも距離感間違えたら、今の関係性が壊れそうだし。

今はまだ現状維持の方が良いかもしれない。

でも、これからもっとなかよk「うわわわ、よせっ‼︎」誰だよ、うるさいな。

人がせっかく良い気分で、ヤミとの親睦を深める計画を考えているのに。

 

「リトさん、どうしました?」

 

「モモ!」

 

先程の大声はリトのものだった。

危ないところだった。

妄想にふけて、重要なポイントを逃すところだった。

 

校舎の方から次々と男子生徒が現れ、こちらに向かってゆっくり歩いてくる。

やはり何者かに操られており、目は白目で、口からは涎が垂れている。

……うん、ちょっとキモいな。

 

「み…見つけたァ…、金色の闇…!!」

「オレらとォォ、遊ぼうぜェエェ!!!」

 

モモが即座にリトを守る態勢に入った。さすが、モモさん。判断が早い。

なら俺は、こうするべきだろう。

ヤミを標的にして殴りかかろうとする猿山に対し、彼女の前に壁役として立つ。

 

「ぐっ!」

 

「朝利吉綱!」

 

猿山の攻撃を両手で防御する。

まぁまぁ痛い。

地球人の腕力で、宇宙人の肉体にそれなりのダメージ。

たぶんだけど、こいつらの脳のリミッターは少し外れていると思う。たぶんだけど。

 

俺の行動に驚いているヤミに対し、すかさず声をかけた。

 

「ヤミ!俺は猿山一人で限界だ。後は何とかしてくれ!」

 

本当は猿山を拘束し、次の生徒を相手にする事も可能だがそれはしない。

まだ自警団関連の事はリトたちにバレたくないのだ、迂闊なことは出来ない。

ヤミも素早く相手の攻撃を回避し続けるが、数には勝てず、男子生徒たちに捕まってしまう。

 

「ヤミ‼︎…………あの、いま助けに…」

 

「見ないでください!」

 

あっ。

今、リトさんラッキースケベしたわ。

絶対、そうだわ。くっそ!めっちゃ振り向きたいっ。

 

猿山を抑えるために、俺はヤミに背をむけている。

だから揉みくちゃにされて、色々見えてしまっているヤミを見れないのだ、ちくせう。

ってか猿山。お前、意識あるだろ?

なんか急に鼻の下伸びはじめたし、めちゃくちゃ力弱くなってるし。

おい、ずりぃぞ。場所、入れ替われや。

 

「えっちぃのは、キライです」

 

そんな中、聞こえてきたのはヤミの名言。

それと同時に猿山の顎を軽めに殴り、気絶させる。

許せ、猿山。これで最後だ。

リトたちの方もモモが植物を使い、無力化に成功していた。

一件落着したと思い、安心するモモとリト。

しかし、ここでも原作通りに、気絶している猿山の口だけがいきなり動き始める。

 

「やはり…、誰一人息の根を止めていないか…。地球で牙を抜かれたと言う情報は、本当だったらしいな」

 

「……、…何者ですか」

 

ヤミがそう呟く。

果たして、なにシスさんなんだろうなぁ。

 

「本当の君を知る者だよ。目を覚ませ金色の闇…、 地球は君のいるべき場所じゃない…‼︎」

 

その言葉を聞いたヤミは、息を呑んだままその場で静止する。

 

「そう…、君の本質は闇。殺戮以外に生きる価値のない存在。地球人と仲良くできるはずがない。甘い夢など…もう終わらせるべきだ。結城リトは…すぐ側にいるのだから………」

 

そして、猿山は喋らなくなってしまった。

数秒間、暗い雰囲気のまま時が流れる。

空気を変えるため、ヤミのフォローに回ろうと考える。

しかし、闇は唐突に動き出し、リトの前で立ち止まった。

 

「…結城リト」

 

「……え、な、なに?」

 

「えっちぃのはキライです」

 

ヤミは自身の髪を拳に変身させて、リトに一発、良いのをかました。

正直、めっちゃ痛そう。モモも口をあんぐりと開けて絶句してるし…。

 

「な、なんで、俺だけ……」

 

腫れた顔でリトはヤミに問う。

 

「朝利吉綱は猿山ケンイチの相手をしており、私を見ていないからです。では、私はこれで」

 

そう言うと、ヤミはどこかへ去っていく。

もし仮に、猿山との戦闘中にヤミを見ていたら、俺もぶん殴られていたかもしれないと思うと背筋がヒヤッとする。

 

その後、猿山たちを近くのベンチに寝かせて、その場は解散となった。

 

翌日。

猿山とクラスの男子たちが、「昨日の放課後に、なんか凄く良いものを見れた気がするんだっ。なのに、全然思い出せないっ!」と教室で叫んでいた。

やはりラッキースケベは、リトさんのみに許されているみたいだ。

いいなぁ………

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