「……今日はここ、ですか」
静かな午後。蹉跎家・西の古蔵。
そこに丸メガネで肩にかかるボブカットでスタイルが良い女性、蹉跎家当主の「蹉跎桜」がいた
彼女は使われなくなった物置のようなその蔵を時折、桜が一人で整理しに訪れるていた
丸メガネを外し、布でそっと拭いながら、桜はふぅと息を吐いた。
「古文書などの整理や管理も、立派な当主の務めですし……」
だが、その日彼女の目は、ひときわ古びた木箱に引き寄せられる。
『蹉跎家女当主以外 開封厳禁』
漆黒の墨で書かれた文字に、桜は一瞬たじろぐ。
「女当主以外開封厳禁……いったい何が入っているんでしょう……」
緊張した面持ちで、そっと箱を開ける。
中には、整然と畳まれた奇妙な衣装と、一枚の手紙が入っていた。
衣装取ってみると、目を疑うようなものだった。
それは…
牛柄のビキニ
牛角と耳付きのカチューシャ
牛柄のアームカバー
牛柄のニーハイソックス
牛の蹄を模した牛柄の靴
「こ、これは……っ」
思わず頬が熱を帯びる。
添えられた手紙を開封する桜
『この狩衣は“牛装狩衣(ぎゅうそうかりぎぬ)”と呼ばれる。
代々、蹉跎家の女当主にのみ継承される呪装である
見た目に惑わされるべからず。これは嗎家と協力して作り出された呪力を数倍にも増幅させられる狩衣。
一度その身につければ、力の虜になるだろう。
だが、それは力と共に失う物も大きく、背負うべき“重さ”でもある。覚悟なき者に、この衣装は耐えられない。』
桜は、牛柄の布地を両手で持ち上げ、深く息を吸い込んだ。
「……その“覚悟”……私に、あるかどうか……」
その夜。
桜は一人、薄暗い自室で蔵で見つけた“狩衣”と向き合っていた。
「とりあえず着てみますか」
牛柄ビキニに袖を通すが彼女の胸やお尻には合っておらず、ハミ出している
「ち、小さい……」
その後耳と角のカチューシャ、アームカバー、ニーハイソックスすべてを身に纏う。
羞恥心に押し潰されそうになりながらも、鏡を見つめる。
「……これが、私の姿……っ」
そのときだった。
突如、衣装が光を放ち、彼女の身体を包み込むでいく。
まるで呪具そのものが、魂と同化するように――
「え?な、なに……!? 」
呪力がまるで身体を駆け巡る感覚。
心の奥底から、熱が湧き上がるような高揚感。
霊脈が目覚め、五感が研ぎ澄まされる。
「これが……“牛装狩衣”の力……」
まるで体が綿になったように軽く、纒神呪のように呪力が溢れている
「見た目は凄くあれですが、凄い…力が……溢れる…!」
桜は軽く拳を突き出し素振りをするがヒュッ!と音と共にスピードが格段に違って見えた
試しに蹴りも出すが同じように格段に違って思えた
「これがあれば加布羅に…」
と言いかけ、鏡に自分の姿が映る
「…………」
桜は無言で牛柄ビキニを脱ぎ、箱にしまった
翌朝。
布団の上で目を覚ました桜は、疲労感と体の痛みに気づいた。
「……身体が……重い、です……」
確かに、呪力は高まった。
だが同時に、それは日常にまで影響を及ぼす負担を伴う。
「やはり……これは軽い気持ちで扱って良いものでは……」
しかし彼女の中には、確かに刻まれていた。
「……私が背負うべきものならば……受け入れます。
この"狩衣"も、"背負うべき重さ"も……すべて」
その日から、桜の戦いは“もう一つの姿”と共に始まった。