古い蔵で牛柄ビキニを見つけたあの日以来
蹉跎桜は毎晩こっそりと稽古場に通っていた。
目的は
牛柄ビキニを“ちゃんと着こなせるようになること”。
「……こんな格好でなければいけない理由はちゃんとあると思いますから……慣れれば、きっと……大丈夫、のはずです……」
誰にも見られない時間帯を選び、静かに道着を脱ぐ。
牛柄のビキニ、角と耳のカチューシャ、アームカバー、ニーハイソックス。
目を瞑り集中する、呪力が体内に循環し始める
(……見た目を恥ずかしがってはダメです…………)
しなやかな脚、引き締まった腹部、ハミ出る胸元
自分で自分を見るたび、体温が跳ね上がるが
それでも桜は、頑張って動こうとする
軽く構えを取り、型を一つ……踏み出す
ビュッと素早く拳が出る
「体が軽い…まるで綿のよう…」
シュッと脚を上げるとまるで鞭の様にしなやかで金棒の様に重い打撃で空にパァンと衝撃音が鳴る
「そして…この力……」
桜は踏み込み、流れる様に様々な型をやる
動きは滑らかであり、突きや蹴りなどもインパクトの瞬間の体重移動や拳の握りなどもスムーズにいく
毎日牛柄ビキニを着ている事で体が慣れているが
動くたびに、胸とお尻が揺れる
溢れでそうになり、つい手で押さえようとしてしまう
「これでは戦闘で支障が出てしまう」
牛柄ビキニは体に張り付いているみたいにズレないが桜は気になってしまっている
(気にせず…気にせず……)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!蹉跎鉄拳制裁流㊙超殺奥義・爆逆桜打地獄極楽百万憶烈拳んぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「続いて!蹉跎鉄拳制裁流マルカツ滅殺奥義・万華繚乱血深泥三昧脚ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
桜はいつも以上に早く動けている
しかし
「はぁ…はぁ…」
いつもより消耗が激しく膝に手をつき前屈みになり、腕で胸が寄り意図せずセクシーポーズになっている
「今日はここが限界ですね…」
桜は息を整え、拳を握り
「加布羅を倒す為…耐えるのです!これも試練なのです」と、何度も自分に言い聞かせる。
もう一度、構え。
もう一度、突き、蹴り
(この力で加布羅を…)
桜の頭に志鶴と加布羅に立ち向かうビジョンが浮かぶ
志鶴と…
他の陰陽師達と…
牛柄ビキニの自分と…
「やっぱり恥ずかしいです……っ!!」
赤くなった顔を胸を覆い、その場にしゃがみ込む桜
数分後、床に座ったまま、桜はぼそりと呟いた
「……なんで、こんなに動きやすくて、力まで引き出せる狩衣なのに……見た目だけが、こうも……」
「……先代の方々、ほんとうにこれを堂々と着て戦っていたんですか……?それならその様な文献が残ってるはず…」
桜の脳内に子供の頃、膳所美玖が鬼の形相であの古い蔵にあった何かの文献を燃やしているのを思い出す
「まさか…美玖様が…」
桜は立ち上がり道着を着る
「今日はこれくらいにしましょう」
桜はその日の稽古を終えた
次の日、牛柄ビキニがあった蔵を探すと何かの文献が入ってたであろう空の箱を見つけ桜は先祖に謝り再び稽古を開始する
彼女は強くなりたかった
明日か、明後日か、一年後か、婆娑羅の襲撃で命が失われないように
婆娑羅と戦えるように牛柄ビキニは桜にその力を与える物
羞恥に顔を赤らめながらも、加布羅を倒す力を得るために努力を続ける