ギャルゲースキルを手に入れた俺は殺される前に逃げ出した。 作:間違い計り
――王城の大広間。
石造りの重厚な扉がゆっくり開き、25人の俺たち学生が一列に並ぶ。
並ぶといっても軍隊のようにキッチリしたような感じでは無く更にお喋りもしていて、周りにいた騎士達は眉を顰めていた。
だが少し雑時間が過ぎていくとだんだん落ち着き、今は冷たい空気が満ちていた。
俺、高坂遊人もその中にいる。段々と心臓の鼓動が耳の奥で響く
俺たちが大広間に入った扉から新たな人物が現れた。
入ってきたのは銀色の鎧に赤いマントを羽織った壮年の男だった。
顔には大きな傷がありまさしく歴戦の戦士といった感じであり、その灰色の目には疲れが見てとれた。
そんな男が金属の足跡を響かせながら俺たちの前に立った。
「……まずは自己紹介をさせてもらおう。私は、王国第一騎士団長を務めるガルド・アレスターである。我々の無力さ故にお前たち異界の者を望まずこの地に呼んだ原因の人間である。」
ガルドはゆっくりと言葉を選ぶように、続けた。
「この世界の事情とはいえ、他の世界から勇者候補として若者を召喚した。
本来ならば、我らが背負うべき戦を、お前たちに押しつける形になっている。」
その場の空気がわずかに揺れた。
重苦しい沈黙の中、彼は深く頭を垂れた。
「――謝罪する。」
鎧の金属音が微かに鳴る。
壮年の男が、俺たちに対して頭を下げた。
「我らが無力なせいで、お前たちをこの戦に巻き込んだ。
だが同時に――この世界は、お前たちの力に“希望”を見た。
ゆえに、願い申し上げる。」
ガルドは顔を上げ、その灰色の瞳にほんのわずかな熱を宿す。
「この世界を救う為にどうか力を貸して頂きたい。」
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「我々と魔族の戦いが始まりおよそ5年たった。拮抗を続けながらどちらも攻めあぐねいていた。そんな中、特攻作戦が行われ魔王と我々の世界の勇者が一対一の戦いが始まり結果としてどちらも死んでしまった。これによりお互いの最高戦力が亡くなった事で停戦になると誰もが考えた。だがそうはならなかった。
魔王の死は、我々の勝利ではなかったのだ。魔王とは魔族にとってある種の楔だったのだ。暴力と支配により統制していた奴がいなくなったことで奴らは自由になった。」
ギギと金属と金属の摩擦のような音がして、そこに目を向けるとガルドの手を握る音だと分かった。
「魔族とは多種族の寄り合いのようなもの。それ故にお互いが気に食わないところもあったのだろう。魔王という楔と勇者という天敵がいなくなり結果として内ゲバが始まった。
我々人類は復興のためにその内ゲバに参加せず静観の構えをしていた。
これが失敗だったのだろう。結果として殺し合いが行われた事で次の魔王と呼べるものたちが多く現れてしまった。一狼、双幻、三妖、四天王、五芒星、六花、七天と他にもいるが、様々な魔王候補ともいううべき化け物たちが現れてしまった。幸いな事にお互いが牽制しているため、コイツらが一斉に攻めてくる事はなかったが、それでも人類に難敵と言えた。」
話すたびに灰色の目がどんどん濁って行くように感じた。
「勇者は死に英雄達では守るので精一杯。我々騎士団も教会も手を尽くしたが、状況改善の案を見出せなかった。
追い詰められた我々は最終手段を取ることにした。
それが、“勇者未満の勇者候補”を召喚し、多数の精鋭で魔王軍を殲滅する作戦だ。
勇者ではなくいずれ勇者になりうる素質を持つ物達を召喚すること。
これは召喚コストを大幅に削減し、戦力の確保を早める狙いがある。
諸君らは、その勇者候補として集められた。」
沈黙が支配する。
「――お前たちはまだ真の勇者ではない。
だが魔王軍を倒した暁には、報酬として二つの選択肢を与えよう。
一つは“元の世界への帰還”。帰還を選べば少ないながらも財宝を持たせよう。
もう一つは“この世界に残り、貴族として莫大な財産と地位を得ること”だ。」
部屋の隅で、誰かが声を漏らす。
「勇者未満……僕らは使い捨てってことか?」
顧問は微笑んだ。
「そうだ。だがそれでも命を懸ける価値はあるだろう。
なにより、お前たちの命運は自分たちの選択と努力次第だ。」
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俺は視線を落とす。
この世界に来てからずっと、ずっと思っていた。
(俺のスキルは“ギャルゲースキル”……戦闘にはほぼ無力。
だけど、この命令の意味ははっきりした。
俺たちはただの道具。
でも、まだ希望はある。選択肢が見えるなら、最悪を避けられるかもしれない。)
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――そうして、勇者未満の俺たちの訓練が始まるのだった。