BA-SoC- 外伝『Hounds Den』 作:Soburero
色々あって傭兵になろうと決めた普通(キヴォトス基準)の女子高生。
どこが良いかを漁っていたら、たまたま居た先輩ハウンズに目を付けられ、試練を受ける事に。
血反吐を吐きながら何とか試験をクリアした彼女に、首輪と共に新たな名前、「メリッサ」が与えられたのだった。
つー訳で、ほぼ衝突事故と同じノリで猟犬になっちゃったメリッサのお話が始まります。
大丈夫大丈夫!死にはしないよ!
死ぬほどキツイかもしれねぇがな!!!!!
ブラックマーケットの外れ。人通りも少ない寂れた場所にポツンと立っている、古い倉庫。
その中に居るのは、キヴォトス最強と名高い傭兵部隊、ハウンズの面々。
私は今そんな人たちに囲まれ、赤目で強面のリーダーの前に立っている。
彼女は後ろの机から、タグが1枚付いたボールチェーンを握り、それをそのまま私に差し出した。
「これが、お前のドッグタグ。猟犬である事を示す首輪だ。無くすなよ。」
「この日をもって、お前は猟犬“メリッサ”だ。」
『ハウンズにようこそ、メリッサ。歓迎します。』
私はドッグタグを受け取り、それを自分の首に下げた。
タグを見つめれば、自分の本名と血液型、そして、猟犬の名前“MELISSA”が刻まれていた。
地獄のような試練を乗り越え、私はついに、猟犬になった。このタグが、その証。
目頭がジンと熱くなり、心臓もキュウと縮む。それを落ち着かせるように、タグを心臓の前で固く握った。
幸福に浸っていると、私の横からメンバーの1人、エルマーさんが抱き着いてきた。
「おっしゃ!やったなルーキー!」
ゲヘナ出身のエルマーさん。本名は、
オレンジ色の髪がトレードマークな、ショットガン使いの切り込み隊長。
ハウンズの台所番でもあり、特にチリコンカンが絶品。
「改めて、これからよろしく、メリッサ。」
私の肩を優しく叩くのは、
黒い左目と黄色い右目のコントラストが素敵な、ミレニアム出身のメカニック。
この人が使うガジェットのほとんどが、スクラップからの自作だから、とんでもない腕前だ。
「大変なのはこれからよ。覚悟しときなさい!」
勝気で少し身長が小さい先輩が、
何と元々ティーパーティーだった人で、トリニティの中の色々に疲れて猟犬になったとか。
彼女を怒らせると盾で思いっきりブン殴られると、よくたんこぶを作られてたエルマーさんから脅されてた。
「無事に認められて良かった。よろしくね、メリッサ。」
私を後ろからすっぽり抱きしめて来るのが、
凄腕のスナイパー兼隠密のスペシャリスト。口数が少ない分、顔と身振りに感情が出る人。
今は無きアリウス分校出身で、リーダーに憧れて傭兵になったんだとか。
「お前達、そこまでだ。メリッサ、お前には新しい銃が必要だ。見繕うぞ。」
そして、私の正面にいるのが、ハウンズのリーダー、渡鳥クロハさん。
数年前にキヴォトスに来てから、最強の傭兵の名を欲しいままにした、生きる伝説。
灰色の髪に真っ赤な目で威圧感たっぷりだけど、未熟な私を鍛え直してくれた優しい人でもある。
ただ、リーダーの素っ頓狂にも思える発言に、私は首を傾げるしかなかった。
私はリーダーから与えられた試練を、自分の銃と一緒に突破してきた。
背中に回していた傷だらけのM4を取り出し、既に銃を持っている事を伝えると、リーダーは少しだけ目を細めた。
「確かに、そのオンボロで戦い抜いた事は見事だが、お前はプロになったんだ。プロの仕事には、プロの道具がいる。」
「付いてこい。馴染みの店がある。」
キョトンとする私を放って外に出ようとするリーダー。
先輩達に目線を向ければ、早く行けと言うようにニヤニヤしながら手を振っていたので、ドアを開けて待っていたリーダーに駆け寄った。
リーダーに連れられて、ここ数日で見慣れたブラックマーケットを歩く。
リーダーは口数が多くないし、いつも仏頂面で、何を話していいのか分からない。
銃の話題でも振ろうと思った瞬間、横にいるリーダーが私の目を見降ろした。
「お前の戦い方、キヴォトスでは余り見ない。誰から教わった?」
聞かれると思っていなかった質問に狼狽してしまうが、PMC勤務の父親から、と答えた。
出張で家を空けがちだったお父さんだけど、その分、家にいる時はいろんな事を教えてくれた。
銃の使い方に整備の仕方、手榴弾からは走って距離を取る事、美味しいレーションメーカーも。
「そうか。良い教官を持ったようだな。基礎が出来ている。」
「だが、それだけでのし上がれるほど、この稼業は甘くない。あらゆる技術と戦術を学べ。学んだ技が、いつかお前の命を救ってくれるかもしれん。」
釘は刺されたけど、私とお父さんが一緒に褒められたみたいで、ちょっとジーンとしてしまう。
ただ、リーダーは誰から教わったのか聞いてみると、経験だ、としか答えてくれなかった。
普通だったら隠してると思うんだけど、この人の場合はきっと本当。経験からしか教われなかった人なんだろう。
なんて、余計な事を考えてたのがバレたのか、ちょっと睨まれてしまった。
お互いそれ以上は話さず、先輩達もお世話になっているという、古い銃砲店に向かった。
「いらっしゃい。新入りか?」
「そうだ。新しい銃がいる。一通り持ってきてくれ。」
ドアを通った先に居たのは、小太りの店主。私を一瞥するや否や、店の奥に潜ってしまった。
リーダーはそんな店主を気にせず、私を連れて射撃場に入る。
ドアを開けた瞬間に鼻をくすぐる、硝煙の臭い。打ちっ放しのコンクリートに染みついた、銃の臭い。
間仕切りが立てられた机の向こうには、弾痕がビッシリ空いた緩衝材が敷き詰められている。
射撃場なんていつ振りだろうか。最後に銃砲店に通った日を思い出そうとしていると、店主がガラガラとガンラックを引きずって、射撃場に入ってきた。
ガンラックには、つい昨日まで素人だった私にも、質が良いと分かる銃がズラリと並んでいる。
何とそのガンラックが、私の目の前に運ばれた。
「この中から選べ。まずは好きなだけ試すんだ。」
この中から、という事は、今目の前にある銃のどれかが、私の新しい相棒になるという事。
本当に良いのかと、リーダーと店長を交互に見つめるも、2人は静かに頷くだけ。
店長に促されるままに、私は背中のM4をガンラックの空いた場所に置き、左端のライフルを手に取った。
手に取ったのは、シグザウエル製のライフル、MCX。
高性能な最新モデルで、今キヴォトス中の銃砲店で売り切れてる高級品。
M4のマガジンがそのまま使える親切設計って事もあって、同級生の間でも話題沸騰。
私にとって、スマホの中にしかないはずの銃。まさか、これを握れる日が来るなんて思いもしなかった。
憧れの品に見とれていると、いつの間に置いたのか、弾薬が机の上にたっぷり。
本当の本当に、好きなだけ試し撃ちしていいのだろう。
1日中撃ちまくりたい衝動に駆られるけれど、流石に怒られるはずなので、自分の中に1時間のタイムリミットを作る。
リーダーのお言葉に甘えて、好きなだけ撃ちまくってから、相棒を決めよう。
早速マガジンに5.56mm弾を30発突っ込み、銃本体に差し込んで、底を叩いて確実にロック。
ピストルグリップの上にあるチャージングハンドルを引いて、チャンバーに初弾を送り込む。
銃口を上に向けて、足を軽く開き、セーフティを切る。
銃口を射撃場の奥に向けて、ストックを肩にしっかり引き付け、前後のアイアンサイトをピッタリ合わせる。
そして、呼吸を整え、引き金を引く。
瞬間、薬莢に詰まった火薬が肩を叩いて、銃口から茶色の弾頭が吐き出された。
そのまま単発で何発か、残りの弾薬をフルオートで全部吐き出す。
人差し指でマガジンを落として、ハンドルを何度も引いてチャンバーの空を確認。
この銃、凄い。かなり適当に乱射したのに、銃口が全然持ち上がらない。
何より、初めて使う銃なのに、とてもよく手に馴染む。銃の方が、自分を選べと言っているみたい。
これが良いと言いたくなってしまったけど、他の銃がまだ残ってる。
MCXを元の位置に置いて、隣のショットガンを持ち上げた。
モスバーグ社のポンプアクションショットガン、M500。
外の軍隊でも採用されてる、なんて噂で、実際、キヴォトスでもよく見かける銃。
ただ、私が今持ってるこれは店主がガッツリ改造済み。
ピストルグリップと伸縮ストック、バレルも多少切り詰めてある接近戦仕様。
まずはチャンバーに1発だけ送って射撃。ライフルの何倍も強い反動が肩を突き飛ばす。
次に弾を目いっぱい詰めて、2発、3発と乱射。
つい興奮して少し乱暴に使ってしまっているのに、この銃はそれをしっかり受け止めてくれる。
ただ、私の体格だとポンプアクションはちょっと厳しい。
お金が溜まったら、お父さんへのプレゼントにしよう。
次はCZ社って言う所の、サソリの名前が付いたサブマシンガン、Scorpion Evo 3。
持った瞬間から分かるその軽さ。使ってるうちに疲れずに済みそう。
9mm弾をマガジンに詰めて、ハンドガードの上に付いたハンドルを引く。
お母さんの銃を触らせてもらった時を思い出して、少し懐かしくなった。
肩に引き付けて引き金を引くと、軽い銃声と反動が返ってくる。
ただ、この銃はフルオートが本懐。
1度引き金を引けば、ビームを撃ってると錯覚する位の凄い速度で、容量30発のマガジンを空にした。
これは大容量のマガジンと相性が良さそう。
今度はマシンガン、IMIのネゲヴ。
小さく軽いって触れ込みらしいけど、マシンガンらしく結構重い。
まずチャージングハンドルを引いて、カバーを空けてベルトで繋がった弾を乗せて、カバーを閉じてようやく装填完了。
ちょっとまごついたけど、店主に教えてもらいながら、何とか準備できた。
バイポッドを広げて、いきなりフルオートでばら撒いてみる。
勝手な想像でばら撒きにしか使えない銃って思ってたけど、ちゃんと狙った所に弾が飛んでくれる。感触としては悪くない。
ただ、やっぱり重たくて持ち上げて撃つのは大変だし、弾の準備も時間が掛かりそう。
リーダーはよく片手で使えるな、と感心してしまう。
最後はマガジンがグリップの後ろに付いた、ブルパップ式のライフル。
デザートテックのMDR。それをスナイパーライフルとして使えるようにしたカスタム。
マガジンを挿さずに構えてみると、当然普通のライフルと感覚が違う。
グリップが普通のライフルより前に出てるから、腕を伸ばさないといけない。
7.62mm弾を装填して、適当に撃ってみると、銃声が耳元で爆発した。耳栓が欲しくなる。
続けて1発目の弾痕を狙って撃ってみると、ちょっと右側へ綺麗に着弾。
精度自体は凄く良いから、狙いを間違えなければ確実に当たる。狙撃に詳しくない私でもそう思える、凄い銃だ。
これで、ガンラックにあった銃を全部試し終わった。
色々と試したうえで、やっぱり私はMCXに心を惹かれていた。
今まで使っていたM4と同じ使い勝手なのがありがたい。それに、同級生にも自慢できそうだ。
MCXを握り、これが良いと伝えると、リーダーはそうかと一言。
店主は孫を見る目つきでニヤニヤしながら、何度も頷いていた。
それでやっと自分が浮かれている事に気づいた私は、意識して表情を引き締めようとするが、自分の手の中にある憧れを見て、またつい頬が緩んでしまう。
「店主、サイドアームは?」
「後ろに並べておいた。こっちもご自由に。」
「聞いていたな。試してから選べ。」
後ろを振り返れば、店長が大きなケースを開けていた。
そのケースの中に詰められていたのは、4丁の拳銃。
拳銃まで選ばせてくれるなんて、何と太っ腹なリーダーだろうか。
未だ収まらない興奮のまま、まずは見慣れた1丁から手に取った。
グロック19。個人的に、グロックはキヴォトスで1番売れてる銃だと思ってる。
早速9mm弾を装填して、スライドを引いて発射。
トリガーを引けば、すぐに弾が出る。この手軽さがグロックの魅力。
ただこのグロックは、普通の奴と撃った感覚が違う。スライドの動きが滑らかな気がする。
それを店長に伝えてみれば、何とも満足そうにうなずいた。
曰く、軍用グレードの強化スライドを使ってるから、頑丈かつ滑らかに動く上質な銃に仕上がってる、と。
次はH&KのHK45。弾は9mm弾より少し大きい、.45ACP。
店長は45口径の銃がお気に入りみたいで、迷ったらこれにしろって推してきた。
実際に撃ってみれば、銃自体は凄く使いやすいし、よく当たる。ただ、グロックと比べて反動がキツイ。
マガジン1つを撃ち切った所で、手が少し痺れてきた。
その分威力は確か。半年くらい前に、自分で喰らったから分かる。頭に1発掠っただけで、痛みでしばらく動けなかった。
45口径はサプレッサーとの相性が良いなんて話だし、必要になったら自分で買おう。
1つ飛ばしてリボルバー。S&WのM686。
早速握ってシリンダーをスイングアウト、しようとしたけど、親指がラッチに届かない。
結局左手でロックを外して、シリンダー右手の人差し指で押しだす。
弾は.357マグナム。薬莢が9mm弾と比べて長い。つまり、その長さ分火薬がたっぷり詰まってるから、強力で反動も強いって事。
レンコンの穴に6発装填して、腕をしっかり伸ばして、重たい引き金を引く。
撃った瞬間、銃口からものすごい火花が飛び散り、火薬が私の手を肩ごと弾き飛ばそうとした。
リーダーから、肘で反動を逃がす、とコツを教わりながら撃ち続けたけど、ちょっと私には使いこなせそうにない。
最後に避けてた大物、デザートイーグル。
さっきのリボルバーより大きい弾、.44マグナム弾を使う、拳銃界の怪獣。
おもむろに握ればずっしりと重い。グロックの倍は重い。
グリップをしっかり握ってるはずなのに、指が回り切らない。大きい弾を使うから当然なんだけど。
嫌な予感がひしひしとするので、マガジンには1発だけ装填。
後ろ側しか動かないスライドを引いて、両手でしっかり構えて、引き金を引く。
爆発音と同時に襲い掛かる、背骨まで響くような強烈な反動。そこまでは予想してた。
余りにも強い反動で、大口を開けたデザートイーグルが、私に食い付きかけたのだ。
強力な拳銃は、使い手に噛みつこうとする。そうお父さんはぼやいてたけど、こういう事なのかと初めて納得した。
私はマガジンを抜いてスライドを戻し、怪獣を檻の中へそっと戻した。
こうして全部試し終わった後に思うのは、やっぱり使いやすい銃が1番。
手に取ったのは、グロック19。シンプルで、使いやすい、よく当たる銃。
カスタムパーツも豊富だから、サイドアームにするならピッタリだ。
あと、私はスライドを引く時に、前側を握る癖がある。これはそこに溝が刻まれてるのも、個人的にキュンと来たポイント。
これにする、と2人に伝えれば、店主は拳銃が入ったケースを持ち上げ、入れ替わるように一回り小さいケースを机に置いた。
「サイトも付けろ。命中率が変わる。」
ケースの中にあったのは、ライフル用の照準器。
そこにある全部が、安物のレプリカなんかじゃない、本物の軍用グレード品。きっと、今までの銃もそうだったんだ。
余りに太っ腹すぎて少し怖くなってきた私だが、厚意を受け取らないのも失礼だろう。
中に入ってたのは、筒型のレッドドットサイト、余り見ない四角い形のホロサイト、スタンダードな見た目の4倍スコープの3つ。
ドットサイトの感触は、可もなく不可もなく、と言った感じ。サイトの違いまで分かる人生は送って無いから、仕方ない。
ただ、サイトを銃に乗せるマウントを付け替える事で、高さや角度を変えられるから、これを選んで損はないと店主の談。
ホロサイトはドットサイトと比べて、レティクルを覗き込んだ時に周りが見やすい。
過酷な試験をクリアしてるから、多少落とそうが叩こうが問題なく使える、信頼性抜群の一品、なんだとか。
スコープは当然、遠くが見やすくなる。ついさっきまで散々撃ちまくった痕がくっきり見える。
しかもこのスコープ、等倍サイトとしても使える代物。これ1つあれば、どんな距離でも戦えそう。
サイトは少し悩んだけど、ホロサイトを選んだ。
そもそもキヴォトスだと、スナイパーライフルを使わない限り、スコープが欲しくなる程の遠距離で戦う事はそうそうない。
なので普段は拡大無しのサイトで、必要な時にマグニファイアを使う程度で十分なのだ。
早速MCXに取りつけて、射撃場で構えてみる。
明るい射撃場の中でも、赤丸に囲まれた点がクッキリ見える。これならどこでも使っていけるだろう。
「それでいいな。今回は奢ってやるが、次新しい銃やパーツが欲しくなったら、自分の稼ぎで買え。」
「そういえば、銃に名前を付ける風習があったな。お前はそれに、どんな名前を付ける?」
私の後ろから、何の気なしに声を掛けてきたリーダー。
半分冗談だと思っていた奢るという話だが、本当にリーダーが奢ってくれるようだ。
これは入隊祝いだと自分を納得させつつ、頭をひねって考えてみる。
これだけ良い物なんだし、ちょっと捻ったオシャレな名前にしてみたい。
でも、それが思い浮かぶような頭を持ち合わせてる訳でもない。
ああでもないこうでもないと、延々頭をこねくり回すも、結論は出ず。
参考までにと、リーダーの銃の名前を聞いてみるも、神妙な顔で首を傾げられてしまった。
「俺か?これには無いな。殴りつけたり、吹き飛ばされたり、何度も交換しているからな。何丁目かも覚えてない。」
「まあ、今すぐ付けろとは言わん。ルーシー達と話しながら、ゆっくり考えると良い。」
そんな言葉を掛けられたが、やっぱり仮でも名前は付けておきたい。
これは理屈じゃなく、感情。つまりなんとなくだ。
それから20秒くらいウンウン唸っていたが、この銃に似合う名前が思いつかない。
結局私は、前のM4の名前を、そのまま使う事にした。
「プロブレム・ソルヴァー、問題を削ぎ落す、か……。意外と、過激な名前を付けるんだな、メリッサ。」
過激。私が付けた名前が、リーダーから見て、過激。
想像だにしていなかった感想が、想像だにしない人物から放たれた事で、しばらく思考が止まってしまう。
その間にお会計を済ませていたのか、リーダーが私の肩を叩いて店から連れ出そうとする。
いつの間にかレジの前まで戻っていた店主を見れば、毎度どうもと手を振るばかり。
そんな店主の目の前には、紙の帯で留められた札束が1つ。
釣りは要らねぇという事なのか、はたまた別のモノで返してもらう、いわば逆ツケなのだろうか。
キヴォトストップティアの傭兵仕草は、分からないことだらけ。
混乱する私をドアの所で待っていたリーダーに、大人しくついていく事にした。
ちなみに前のM4は、下取りに出したことになっていた。
そうするつもりではあったけれど、せめて一言言って欲しい、そう思う今日この頃。
その後も色々な店をハシゴし、リーダーは私に仕事道具を次々と買い与えた。
防弾ベストにマガジンポーチ、ライフル用のスリングに、グロックに合うホルスター。
グローブとニーパッド、鉄板入りのブーツ、サバイバルナイフまで。
私は傭兵になったんじゃなくて、SRTに入ったんじゃないかと錯覚する位の充実っぷり。
いよいよ明日死ぬのでは、リーダーは私を丸々太らせて食べるつもりなんじゃないかと思ってしまう。
混乱が最高潮に達しようとしていた時、リーダーが誰かと会話を始めた。
声は一切出さず、その表情が少しだけ変わっている。多分、オペレーターのエアと話してるんだ。
エアはAIで、元々レイヴンのパートナーだった。私が彼女について知っている事はそれくらい。
話が済んだのか、隣に並んで歩いている私に、リーダーは真剣な表情を向けてきた。
「早速だが、お前の猟犬としての初仕事だ。メリッサ、俺と来い。」
何と入隊初日から初仕事。これも洗礼なのだろうか。
それを直接リーダーに聞こうとしたら、上から響くバラバラという破裂音。
そして、太陽から吹き付けられる強烈な風。
リーダーが個人的に持っている、移動拠点の輸送ヘリ、ストーカー。
それは正面の空き地に器用に着地。後ろ側のハッチが、私達を迎えるようにゆっくりと開いた。
乗れ、と私に短く指示して、中にさっさと乗り込んだリーダー。
私は訳も分からぬまま、パイロットが居ないヘリコプターに乗り込んだ。
その後さっき聞けなかった事を聞いてみると、入隊初日から仕事が割り振られるのは、私が初めてらしい。
私は早々に、この部隊でやっていけるのか、不安になるのだった。
どうして銃を選ぶだけでこんなに文字数が増えるんですかね???
わたしゃ不思議でしょうがないですよ。
ちなみに、メリッサの台詞がありませんが、意図的にこうしております。
ゲームでたまにいる、「音声ないけど喋ってる主人公」をやってみたかったのです。
彼女は普通に話しておりますのであしからず。
次回
初仕事
初体験は盛大に
次回も気長にお待ちくださいませ……。