BA-SoC- 外伝『Hounds Den』   作:Soburero

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メリッサ2回目のお仕事。
今回はハウンズのメカニック「ルーシー」と一緒にお出かけです。
上手にお使い(破壊工作)出来るかな?


どうも。アザミのビジュが過去一ブッ刺さった投稿者です。
今、狂い火に目を焼かれた病人のポーズで固まってます。

投稿者知ってるんだ!!!
こういう子ほど昔の貞操観念の持ち主だから、ちょっと押すとチョロいんだ!!!
抱きしめただけで顔真っ赤にするんだ!!!
でも伴侶は絶対逃がさない執念深さもあるんだ!!!
一緒に布団に入ったら絶対朝まで放してくれないんだ!!!
投稿者には特別な知恵があるんだ!!!!!!!


EX.3.改造兵器破壊

 ウルトラハードな初仕事を終えてから数日。

 私はハウンズのアジトとなっている、古い倉庫で銃を整備していた。

 ソファに座り、机に適当な布を敷いて、プロブレム・ソルヴァーを分解する。

 フレームを固定しているピンを引き抜き、グリップと銃身の境目で上下に分離。

 中からボルトを引き抜いて、軽く磨いて煤と古いグリスを落とす。

 銃身はクリーナーとブラシを突っ込んで、ゴシゴシ擦る。銃口から落ちる滴は煤で真っ黒。

 一通り磨き終えたら、グリスを薄く塗って元に戻す。フレームにピンを挿すのを忘れずに。

 戻した後、チャージングハンドルを何度か引いてみるが、何やらボルトが引っ掛かる。

 分解する前の滑らかさが無くなってしまった。

 

 「どうしたの?動きが渋い?」

 

 首を傾げて唸っていると、作業机で自作のドローンを整備していたルーシーさんが、私の隣に座ってきた。

 戻し方を間違えてしまったかも。そう伝えてライフルを手渡す。

 先輩はハンドルをガシャガシャと何度か引くと、すぐ私に返し、グリス缶を持ち上げた。

 

 「これ、グリスが足りてないんだよ。もっとベッタリ塗らないと。銃は意外と、油を食べるんだ。」

 

 アドバイスに従い、もう一度分解してボルトを引き出す。

 今度は倍くらいの量のグリスをベッタリと。

 手がべたべたするのは必要経費。あとでしっかり洗えばいい。

 グリス向けの石鹸の位置を思い出しながら作業していると、先輩が私の真横まで近づいてきた。

 

 「……ちょっと覗いてていい?MCXの中身見る機会なんて、中々ないからさ。」

 

 思わぬ提案だったが、断る理由も無いため了承する。

 ルーシーさんの黒の左目と黄色の右目が、子供の様にキラキラ輝いていた。

 

 「やった!ありがと!」

 

 触ってもいいと伝えつつ、アッパーフレームにボルトを戻す。

 そのままボルトを指で引いて、動きを確かめてみると、まだ感触が少し硬い。

 これはグリスが馴染めば変わるだろうと信じ、上下のフレームを組み戻す。

 先輩はその間も、へーだのほーだの小さく声を出しながら、お互いの頬をくっつける位の距離でライフルを見つめていた。

 私の緊張が伝わったのか、ピンを戻した辺りでルーシーさんは顔を離した。

 

 「ゴメン、近かったよね?嫌だったかな?」

 

 そんな事は無いと伝えたが、恋人のような距離感にドキドキしてしまった事も事実。

 この人、顔立ちが可愛い寄りの癖に、雰囲気は所謂ヅカ系なのが質が悪い。

 その顔で何人の女を落として来たのか聞いてみたい。

 返答中に目をそらしていたのが良くなかったか、ルーシーさんは急ににやにやと笑い出し、私の頬を掴んで無理矢理目を合わせてきた。

 

 「ん~?まさか、この目が怖いのか~?だからドキドキしてるのか~?」

 「おら!こっちを見ろ~!もっとドキドキしろ~!」

 

 私の瞳に映るのは、黄色い蛇の目と真っ黒な人の目。

 はんだと汗の匂いの奥から、女性らしい甘い香りがふわりと漂ってくる。

 このままじっと見つめていたら、メデューサの様に石にされてしまいそう。

 未だべたべたの指で顔をグリスまみれにするぞと脅迫したら、先輩は私をようやく放してくれた。

 

 「アッハハハ!ゴメンゴメン!からかいすぎちゃったね!」

 「それじゃあ、許してくれる?」

 

 綺麗な顔と良い匂いのせいで、心臓はバクバクと激しく暴れている。

 だというのに、また私の目をじっと見つめて来るから、心臓がずっと落ち着かない。

 色々とズルいと思う所はあるが、怒る要素は微塵も無いので、抵抗せずに謝罪を受け取る。

 

 「うん、ありがと。」

 「ところで、ホントに怖くなかったの?僕の蛇の目。」

 

 先輩がそう言いながら指差した先には、縦筋が入った黄色の蛇の目。

 生まれつきこうだったので、子供の頃から色んな思いをしてきたらしい。

 最初に見た時は驚いたけど、蛇の目だってチャームポイント。

 何の気なしにそう伝えれば、キョトンとした顔で目をパチクリさせるルーシーさん。

 試練の時からやられっぱなしだったので、やっと反撃出来てちょっと気分がいい。

 

 「……前々から思ってたけど、メリッサって結構肝が据わってるよね。こんな部隊に招かれるくらいには。」

 「でも良い事だよ。傭兵稼業はそのくらいの気概がなくっちゃね。」

 

 『ルーシー、メリッサ、あなた達に仕事が入りました。』

 

 「ハイハーイ!ちょっと待ってて!」

 

 なんて褒められたところで、エアさんからの呼び出しが入った。

 先輩が共用のタブレットを取りに立ち上がる。

 私は流しで粉せっけんを握り、ゴシゴシ擦ってグリスを落とす。

 砂で擦ってるみたいで結構痛いが、こうでもしないとグリスは落ちない。

 タオルで水気をふき取り、ソファに戻ろうと振り返ると、タブレットを片手に手招きするルーシーさん。

 今度は私から隣に座り、先輩と顔を並べてタブレットを見つめた。

 

 「OK。じゃあエア、ブリーフィングお願い。」

 

 『今回の依頼主は、ミレニアムサイエンススクール、セミナー。』

 『内容は、パワーローダーをベースにした、改造兵器の破壊です。』

 『目標は、同型機の足を連結して4脚に変更されており、それに合わせて、火砲と装甲が増設されています。』

 

 画面に映ったのは、動物よりも蜘蛛に近い印象を受けるシルエットの、4つ足のパワーローダー。

 上半身の正面に装甲を張り付けてるのか、少し出っ張ってるせいでずんぐりむっくりに見える。

 ただ、火力はだいぶバカにならない。両腕がリボルバーカノンになってる上、両肩に多連装ロケットポッドが付いている。

 固定砲台みたいな代物だけど、歩兵とか装甲車相手なら十分すぎる位だ。

 

 「あ~、このカスタムかぁ……。最近流行ってるよねぇ。」

 「でも、この程度なら普通C&Cの案件だよね。僕たちを雇う理由って何だろ?」

 

 『このカスタム機を製造している工場ですが、ミレニアムと技術提携契約を結んでいました。』

 『しかし、セミナーが工場の技術漏洩を指摘し、監査を行ったところ、武力による攻撃を受けています。』

 『現在、セミナーとC&Cによって漏洩範囲の特定が行われています。それ以外に人員を割くことが出来ないため、私達に引き受けてもらいたい、との事でした。』

 

 工場の規模自体はそう大きくない。警備員の数もそれなりだろう。

 ただ、監査に攻撃したって所が気になる。

 ミレニアムから受け取った技術を横流ししてた事ならとっくにバレてる。抵抗したって余罪が増えるだけ。

 じゃあ何を隠そうとしてた?

 思考がそこに引っ掛かるけど、考える事は後回し。今はブリーフィングに集中する。

 

 「てことは、この工場の粛清も兼ねて、兵器を壊してきて欲しいって事か。エア、依頼主は他に何か言ってた?」

 

 『それだけです。追加報酬の話もありませんでした。』

 『今回の依頼は、兵器の破壊のみが目的です。戦闘は極力回避し、迅速に目的を達成することをお勧めします。』

 

 「それじゃあ、道具を色々持っていかないとね。メリッサ、手伝って。」

 

 立ち上がった先輩に付いていき、物置から色々と道具を手渡された。

 それを持てるだけ持ち、先輩の真っ赤なスポーツカーのトランクに運び込む。

 物の準備が済んだら、人の準備の時間。新調した防弾ベストを羽織ったら、グローブやニーパッドで体を覆っていく。

 これまた新しく買ったプラスチック製のマガジンをポーチに差し込み、ベルトにグレネードを添えて準備完了。

 私はMCX、先輩はSCAR-Lを握って、車のシートに体を預けた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 問題の工場から少し離れた場所で車を止めた先輩は、自作ドローンを飛ばして工場を覗いていた。

 私はその間、シートに座ったまま周辺を警戒。

 正面入り口に、カメラを構えたクロノスが何人か。撮影を止めさせようとする2人の警備員が見える。

 中には武装した警備員がもっといるはず。

 工場の周りはコンクリの壁で囲まれている。高さは2mくらいしかないから、2人で協力すれば簡単に乗り越えられるはず。

 爆薬で壁を吹っ飛ばす案もあるけど、今回はパス。手持ちの爆薬が、パワーローダーを壊す分しかない。

 

 「やっぱり裏から回るしか無さそうだね。エア、監視カメラはどう?」

 

 『今ハッキングが終わりました。これであなた達が記録に残る事は無いでしょう。』

 

 監視カメラだっていくつも付いてる。壁の外まで見張れるようになってるんだから、よっぽど何かを警戒してるみたい。

 前にも技術を盗もうとする奴が居たのか、それとも監査チームみたいな人達を寄せ付けたくなかったのか。

 取り合えず、私達がカメラに映らなくなったってだけでも上々。

 メインアームとサイドアーム、両方チャンバーに弾を送っている事を確認して、警備が薄くなるであろう夜まで待つ。

 

 「ナイス。それじゃ、仕事を始めようか。」

 

 そう思ってたのだが、ルーシーさんは今やる気だ。

 夜まで待った方が良いのでは。そう聞いてみるが、先輩の表情は変わらない。

 自分のSCAR-Lのチャンバーとマガジンを確認しながら、今仕掛けるべき理由をスラスラと語る。

 

 「昼も夜も大して変わらないよ。あいつら、監査チームに手を上げちゃってるからね。相当ピリピリしてるはず。」

 「だからって、傭兵が白昼堂々裏口から入ってくる、なんて普通考えないでしょ。そこを狙うのさ。」

 

 ウインク混じりにそう答えた先輩は、理由は分からないけれど、とても様になっていた。

 こっちが恥ずかしくなる位のキザな動きのはずなのに。やっぱり美人ってズルい。

 先輩の美貌を羨ましく思いつつ、話の内容自体は極真っ当なので、銃を抱えてGOサイン。

 

 「よし。じゃっ、行こうか。ハシゴ忘れないでね。」

 

 路肩に止まってるスポーツカーから降りて、真っ直ぐトランクに向かう。

 道具が積み込まれたトランクから、折り畳みのハシゴと爆薬を抱え、背中にしまう。

 ルーシーさんもバールが伸びたリュックを背負い、爆薬を懐にしまった。

 ではこれより、改造パワーローダー破壊作戦、開始。

 

 この辺りは工業団地。出勤時間なんてとっくに過ぎてるから、人や車が通る事は少ない。

 先輩と一緒に道路を渡って、工場の壁に沿って進む。

 壁の角に差し掛かったところで一旦停止。先輩が角の先を確かめてる間、私は後ろを見張る。

 良いよ、の合図に従って、工場同士の敷地の隙間を通る。

 人1人がやっと通れる隙間は手入れされてないのか、雑草が生え放題。踏みしめるたびにザクザクと音が鳴る。

 先輩がハシゴを架けてと指示した場所は、作業場の建屋の影。

 建屋と壁の間は監視カメラがあるだけで、人が通る事は滅多にない、はず。

 ハシゴを取り出し、持ち手を引っ張って倍以上の長さまで展開。L字になっている先端を、壁のてっぺんに引っ掛ける。

 

 「待ってて。先に上がる。」

 

 先輩はハンドガンを右手に握ってから、ハシゴに足をかける。

 ハシゴを上り切る間は周辺を警戒。こんな隙間に人が来るとは思えないけど、念のため。

 カンカンとハシゴを叩く音が聞こえたので、私もライフルを下ろしてハシゴに足をかける。

 既に先輩は壁の中に入ってる。先輩の警戒心を信じて、私も壁の中まで一気に進む。

 再び先輩を先頭に、建屋の壁沿いに歩く。

 建屋の角でまた止まり、先輩は上腕の内側に付けている端末を確認。私は先輩の背中を守る。

 コンクリの壁から反射してくる、金属がぶつかる音や、フォークリフトの駆動音。

 ドローンは今も私達の頭上にいる。音で気付かれそうと思っていたが、ドローン自体が静かな上に、工場の騒音のおかげで聞こえてない。

 

 「ここからは隠れられない。一気に終わらせるよ。爆薬は?」

 

 私の肩を叩いた先輩は、腹を括れと促してきた。

 それもそのはず。この工場、パワーローダーを通すために、中央の道路がかなり広く作られてる。

 目的のパワーローダーがある組み立て場は、その道路を挟んで反対側。

 そこまで視界を遮ってくれる物なんて、ある訳がない。スピード勝負を仕掛けるしかないのだ。

 忘れずに持ってきていた爆薬を掲げ、行けますと無言の意志表示。

 

 「OK。じゃ、3で行くよ。」

 「1、2の、さんッ!」

 

 合図で2人一斉に走り出し、組み立て場まで全力疾走。

 建屋の陰から出た時、太陽の光が目に差し込む。

 一瞬だけ視界が白で塗りつぶされた後、紺色のつなぎを着た、この工場の社員達と目が合った。

 

 「お、おい!誰だありゃ!?」

 

 「警報鳴らせ!!侵入者だ!!」

 

 追いかけられたらたまらない。走るペースを落とし、わざと狙いを外して、社員の頭の上を掠めるように射撃する。

 先輩もセミオートで威嚇射撃を数発。同時にドローンが高度を落として、取り付けられた機銃から帯電ペレットを吐き出す。

 フォークリフトに乗ってる人には、周りのアスファルトを狙って連射。バチバチと大きく音を立てて、言外に逃げろと指示。

 つなぎを着ている人が全員正面入り口から逃げ出そうとする中、スーツを着込んでライフルを抱えた奴らがこっちに近づいてきた。

 こいつらが警備員だ。後ろに誰も居ない奴の胴を狙って4発バーストしてダウン。

 2人目を狙おうとした時、何かが耳を掠めた感覚と、タァンと鼓膜を叩く衝撃波。

 こっちが先に撃った以上、警備員は当然撃ち返してくる。私達の後ろには壁しかないから、あいつらからすれば凄く撃ちやすい。

 流石に遮蔽に入らないとマズい。マガジンに残った弾を警備員達の足元に向けてばら撒き、後は先輩のドローンに任せて組み立て場に急ぐ。

 先輩も1人倒した後、すぐ組み立て場に走り出した。私は組み立て場の角に滑り込み、先輩は角から少し奥に隠れる。

 こっちに来てる警備員は4人。訓練は受けてるはずだから、立ち回りは慎重に。

 壁から少し離れて、膝を立てて体を低く。角に押し付けたライフルを軸に、体を左に倒して狙いを定める。

 ドローンが上から帯電ペレットを撃ち込んで2人ダウン。残りの1人を私が、もう1人は私の後ろに立っている先輩が仕留める。

 これで、今の所全員。他にも警備員がいるはずだけど、こっちに来てる感じはない。

 社員の避難誘導と本社への状況報告でもしてるんだろう。

 先輩が私の肩を叩いた。その場から立ち上がり、一緒にドアまで駆け寄る。

 先輩はリュックに括り付けていたバールを取り出すと、先端をドアノブの横に突き刺し、取っ手を思いっきり引っ張る。

 するとバゴンッと大きな音して、鍵が掛かっていたはずのドアを解放。

 警備の増援が来る前に、急いで組み立て場の中に入る。

 

 「よし、見つけた!メリッサ、足の根元に仕掛けて!僕は背中に!」

 

 中に入ってすぐ目に映る、ブリーフィングに出ていたずんぐりむっくりな4脚ロボ。

 こいつが破壊目標だ。こいつに爆薬を仕掛けて、爆破したら、さっさと逃げる。

 先輩は階段付きの足場を引きずって、背中にぶつける勢いで近づけている。

 私も懐から爆薬を取り出し、裏側にある強力両面テープの保護紙を剥がす。

 それを胴体の真下、足の根元の中央部分にベタっと貼り付け。

 制御部の電源を入れて、安全ピンを抜く。これで起爆準備はOK。

 

 『警備会社から即応部隊が派遣されました。到着まで3分です。』

 

 「分かった!メリッサ!そいつらが来る前に逃げるよ!」

 

 準備できたと大声で伝えようと、機体の足元から離れた瞬間、メチャクチャ強い違和感。

 検査場のゲートから聞こえた、バチンと何かが切れる音。それがジャラッと落ちる音。

 今すぐ隠れないとマズい。

 そこから降りて。大声で叫んだ途端、ゲートを突き破り地面やパワーローダーを滅茶苦茶に叩く、無数の銃弾。

 身を屈めながら、急いで柱に駆け込み身を隠す。先輩も足場から飛び降り、柱が刺さっているコンクリの基礎に背中を押し付ける。

 銃弾の雨が止むまで、その場でじっと待つ。

 弾幕の厚さからして、5人以上はいる。ここはグレネードの出番。

 ベルトからグレネードを取り出すと、先輩も同じ考えだったのか、ソフトボール位の大きさの何かを握っていた。

 弾幕が止み、正面のゲートがガラガラと開け放たれる。

 逆光の中立っていたのは、4人の警備員。そして、紺色のつなぎを着た、ちょっと歳を食ってる犬型の人。

 警備員は普通のライフルだけど、つなぎのオジサンが両手に持ってたのは、結構なサイズのマシンガン。

 流石は製造業。マシンガンを片手で持って撃ちまくるなんて、普通の筋力じゃまず無理だ。

 

 「オイ小娘共!!!俺らの商品をぶっ壊そうたァ良い度胸だ!!!」

 「面ァ見せやがれ!!!ハチの巣にしてやらァ!!!」

 

 オジサンがそう叫んだ瞬間、5人の一斉射撃で分厚い弾幕が展開される。

 鉄骨の柱がガンガン叩かれ、凄い量の火花が飛び散っている。

 グレネードを投げて一掃、なんて事すら許してくれそうにない。

 

 「ヤバいね、工場長がお怒りだよ……!この弾幕じゃ、顔を見せたくても見せられないってのにね!」

 

 先輩が手に持っていたボールの電源を入れると、それを地面に転がせる。

 すると、ボールの両端がグルグルと回り、勝手にオジサンたちの元へ走り出した。

 地面に転がった部品や箱を綺麗に避けながら、ボールはオジサンたちの足元へたどり着く。

 健気に転がってきた謎のボールにあっけに取られたのか、オジサンたちは私達を撃つのを止めて、足元に来たボールを眺める。

 そのボールの表面がガシャッと開き、空気を引き裂くような音と共に、電撃をまき散らすまでは。

 電撃をモロに喰らったオジサンたちは、ブルブルと体を震わせながら、銃を落として地面に倒れる。

 あのボール、ルーシー先輩お手製の自走地雷なのだ。今回は電撃地雷を持ち込んだみたい。

 仕事を終え、母親の元に帰ってきた自走地雷を、先輩は優しく受け止め、リュックの中へと戻した。

 

 「今の内!逃げるよ!」

 

 これ以上長居する理由なんてない。三十六計何とやらだ。

 柱の陰から飛び出し、開いているゲートの横に張り付く。

 隙間から見えた、こっちに走り寄ってる警備員2人を狙い撃ち、レッドカードを突き付ける。

 反対側は先輩が確認。誰もいないと合図が出たので、一緒に正面ゲートへ走り出す。

 当然結構な数の警備員が集まってるけど、強行突破する。他に道がない。

 社員の姿はもう見えないので、精度は気にせず走りながら乱射。

 先輩もフルオートに切り替えて弾幕を張る。ドローンも上から射撃支援。

 警備員も私達に撃ち返してくるが、身を低くしながら走れば、意外と当たらない。

 この走り方、メチャクチャ疲れるのはご愛敬。

 出口まであと50m。そこでドローンが私達の目の前に降りてきた。

 

 「捕まって!早く!」

 

 叫びながらドローンの取っ手を掴んだ先輩に倣い、左手で取っ手を固く握る。

 するとプロペラの音が一気に大きくなり、体に吹き付ける風が強くなる。

 体はふわりと浮き上がり、左腕が重力に引っ張られる体に悲鳴を上げる。

 ドローンは私達を浮き上がらせ、警備員の壁を簡単に飛び越えさせてくれた。

 そのままゲートも飛び越えて、一気に道路の上までたどり着く。

 左手を離して、着地と同時に受け身を取る。先輩もほぼ同じタイミングで飛び降り、羽を畳んだドローンを抱えて車まで走る。

 頭を下げて、後ろから飛んでくる銃弾を何とかかわしながら、ドアを開けて助手席に飛び込む。

 運転席に飛び乗った先輩は、ドローンを後部座席に放り投げるとエンジンをかけ、ベルトも付けずに急加速。

 ボディを銃弾がガンガン叩くが、距離が遠くなるにつれて、頻度がドンドン落ちていく。

 

 「はい、メリッサ!美味しい所はあげる!」

 

 手渡された、爆薬の起爆スイッチ。電源を入れて、レバーのロックを外し、両手で包んで思いっきり握る。

 体をひねって離れていく工場を見ると、組み立て場の屋根を吹き飛ばす大きな火柱が上がっていた。

 遅れて衝撃波が車を揺らし、しばらくビリビリと反響する。

 

 『目標兵器の破壊を確認。ミッション完了です。』

 

 「よしッ!上手く行った!お疲れ、メリッサ!」

 

 先輩が差し出した左の拳に、私の右の拳を軽く打ち付ける。

 ハラハラしたけど、意外と何とかなるもんだ。

 シートに体を預け、ため息を吐いた時、サイドミラーに映る青いランプ。

 警備会社の即応部隊が到着したようだ。

 あいつらを見てふと思ったのは、私達は警備会社に追跡されるんじゃないか、という事。

 追跡を振り切るために、ミレニアムから出た方が良いのでは。

 そう提案してみるが、エアが私の不安に答えてくれた。

 

 『追跡は無さそうです。警備会社との契約には、そこまで入ってないのでしょう。』

 

 「それなら、このまま飛ばせば逃げられそうだね。」

 「良い動きだったよ、メリッサ!流石だね!」

 

 満面の笑みで私を褒めてくれるルーシーさん。

 目一杯働いた後に先輩からの誉め言葉は、よく沁みる。涙がちょちょぎれそうだ。

 一端の傭兵に近づいて来たんじゃないかと考えた瞬間、私のお腹の虫が大声で鳴いた。

 それはもう、エンジンを思いっきり吹かしている車の中で、ハッキリ聞こえる位の大きな音で。

 特に謝る事でもないはずなのに、気恥ずかしくてつい謝ってしまう。

 

 「僕もお腹すいて来たな……。それじゃあ、ラーメンでも食べに行く?」

 

 仕事終わりのラーメン。最高に沁みる1杯じゃないか。

 私はそのアイデアに同意し、スマホを取り出して近くの美味しいラーメン屋さんを検索する。

 検索結果に出てきた画像を見ていると、どれもこれも美味しそうで、それだけでまたお腹がすいてくる。

 何ラーメンが食べたいか先輩に聞いてみると、昔通っていた店があるという。

 醤油ラーメンにネギをたっぷり散らすのがお勧めなのだとか。

 これ以上検索で空腹を煽られる事に耐えられなかった私は、二つ返事で了承。

 先輩は追跡を警戒し、念のため大きく遠回りしながら、ラーメン屋に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 『レイヴン、例の兵器についてだけど。』

 

 『奴らに渡すよう言われていたんだろう?リオ。』

 

 『その通りよ。工場の上層部が、まとめて脅迫を受けていたの。従うしかなかったようね。』

 『監査チームを攻撃したのも、奴らの指示。協力を悟らせないためだったそうよ。』

 

 『そうして工場に全てを押し付け、自分たちは素知らぬ顔、か。奴らの程度が知れるな。』

 

 『でも手段をためらわない残虐性がある。放っておくのは危険よ。』

 

 『分かってる。そろそろ連邦生徒会も動きだすはずだ。』

 『無論、あいつもな。』




順調に猟犬としての経験を積んでいるメリッサ。
投稿者としても、これからも前向きに頑張って貰いたいもんです。
だってこれくらいのハードワークがずっと続くんだもの。

次回
暴力的引き抜き
地獄行き特急券、100%割引中

次回も気長にお待ちくださいませ……。

――――――――――――――――――――――――――――――――

岡本アミ
 コールサイン:「ルーシー」

独立傭兵部隊、ハウンズの2番手

彼女はレイヴン最初の弟子であり、
ミレニアムのリサイクル部門の一員だった

ジャンクヤードで燻っていた所をレイヴンにすくい上げられ、
経験と実践を血と共に注ぎ込まれた末、
新たな猟犬へと生まれ変わった

彼女の黄色い蛇の目は、僅かだが電磁波や赤外線を見る力を有している

固有武器
 AR:「スクラッパー」

猟犬の1人、アミの獲物

スクラップから組み上げられた、
相手をスクラップにするために使われる銃
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