その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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多くの方に読んで頂けるのが嬉しくて、つい筆が進んでしまいました!これからも執筆頑張ります‼


第12話『その転生者は同行する』

新菜と海夢ちゃんの(わだかま)りが解け、二人がちゃんと友情を結んだ瞬間を目の当たりに出来て感無量……までは良かった。

その後に二人が材料買いに行くのを見送ろうとしたら、何故か俺も同行する事になった。

二人にあそこまで言われちゃったら断れないじゃん⁉

でも、わかまりの初デートを邪魔しちゃってる気がしてつらい……‼

 

「コスプレ専用コーナーなんてあるんですね」

 

「そっ。今はけっこーみんなコスするしね。ハロウィンとかっ」

 

「なるほど……守優、大丈夫?」

 

ダイジョウブ……

 

(全然大丈夫じゃなさそう……‼)

 

なんとか返事をするが、新菜は全然納得してなさそうだ。

駄目だ、このままでは本当に邪魔してしまう。

こうなったらついてきてしまったものは仕方ないと割り切って、今の時間を楽しむとしよう。

 

「ふぅ……はぁ……よしっ、大丈夫!」

 

「無理しないようにね? そうだ、喜多川さん。これなんですが……」

 

気持ちを切り替えて返せば新菜はそれ以上は何も言わず、鞄から一枚の紙を取り出し海夢ちゃんへと手渡した。

原作では2ページ活用して描かれた圧巻の黒江雫ちゃんの三面図である。

 

「必要な物が結構あって……布、レース、リボン、バラの造花、靴、ウィッグ、ファスナー、カラーコンタクトレンズ、ガーターストッキング、あとは――」

 

「ちょっ、ちょっと待った! これごじょー君が描いたの⁉ マジ凄いんだけど‼」

 

「でしょ? 新菜は小さい頃から絵がホント上手でさ。しかも観察力も凄いんだよ」

 

小学校の頃には新菜が描いた絵が何度か入賞した事もあったなぁ。

事細かにメモと絵が描きこまれた三面図に圧倒される海夢ちゃんの横で俺は思い出に耽る。

当の本人はこれでも不十分なのか、納得のいかない様子でブツブツと彼の中での問題点を呟いていた。

 

「それで相談なんですが、スカートがかなり広がってるじゃないですか? 見栄えを良くする為にボリュームのあるパニエを中に履いた方がいいと思うんです。既製品を買うしかないんですが……」

 

「うん、買お買おっ」

 

「それと靴はデザインが独特で、これも専門店で買った方がいいと思います。ゴシックロリータですよね?」

 

「オッケー、探しとく!」

 

二人は身を寄せて三面図を覗き込みながら衣装についての相談を進めていく。

俺が三面図を覗く(てい)で正面から二人の様子を伺うが、俺に気付かない程の集中ぶりだ。

 

(いいぞ~、俺の事は気にせず語り合ってくれ~)

 

俺が特等席でわかまりのやり取りを眺めていると、三面図を見ているうちにある事に気付いた海夢ちゃんが図面から顔を上げて新菜へと向き直る。

 

「ってゆーか、首輪は?」

 

「あ、あれって自作出来るんですかね……」

 

「V系ショップならあるかも! これも探しとくね!」

 

「よっ、よろしくお願いします……」

 

首輪で何を想像したのか頬を赤らめながら、新菜は首輪も含めて海夢ちゃんに準備を託す。

本来ならそれで問題ないとは思うが、念のため俺はお節介を焼いて会話に参加した。

 

「喜多川さん、購入する前に一回写真とかで新菜に確認取ってあげた方がいいかも。靴とか首輪とかも含めてのコス衣装だから、やっぱりデザイン感の共有しとかないとね」

 

「確かにっ。よさげなの見つけたら一回画像送るね、ごじょー君」

 

「わかりました」

 

たぶん大丈夫だとは思うが、後で分かるように海夢ちゃんはちょっと大雑把なところがあるから、防げるトラブルは未然に防いでおかないとな。

そんなやり取りをしつつ、俺達が次に向かったのは布地のコーナー。素材からデザインまで様々な生地が並べられており、コスプレに興味がなくても自然と目を引かれる。

俺達はその中から雫ちゃんのコス衣装に合う生地を探して回った。

 

「これよさげじゃん! どう?」

 

「……」

 

新菜は海夢ちゃんが見つけた黒い生地に触れて、その質感を確かめる。

そして無言で別の区画に移動すると、そこに置いてある先程とは違う黒い布にも触れて同様に確認した。

 

「……うん。こっちの方がいいと思います」

 

「えっ、なんで? なんか違いあんの?」

 

自分の選んだ物と新菜が選んだ物との違いが分からず、海夢ちゃんが新菜に尋ねる。

 

「『ヌルヌル女学園』はお嬢様学校ですから、それなりの制服を着てるはずですよね? 雫たんの設定に合わせて、光沢のある物より少し厚く重い印象の生地にした方がいいかと……」

 

「なるほどね~」

 

やはりただの資料ではなく、実際にプレイして世界観に触れた事は新菜にとって大きな糧になったようだ。ヘッドホンを貸した甲斐があるというものである……使ってもらえなかったけど。

新菜の説明に得心が行った海夢ちゃんは「じゃ、これにしよっ」と気持ちがいい程の即決具合で生地の購入を決める。

 

「こっちの生地がいいのはわかったけど、値段とか大丈夫? さっきの倍はするけど……」

 

「……そうだっ、俺今日買い物するつもりじゃなかったんで、手持ちがあまりないんですが……っ」

 

質感も大事だが、予算の範囲内で納める事もまた重要。

それを失念していた新菜は慌てるが、対する海夢ちゃんは余裕の表情だ。

 

「大丈夫大丈夫ー、おろしてきてるって♡」

 

彼女が取り出したのは銀行の封筒。

僅かに厚みのあるそれに、今回の衣装に対する海夢ちゃんの意気込みを見た気がした。

海夢ちゃんはそれを笑顔で新菜へと差し出す。

 

「好きに使っちゃってくださーい」

 

「えぇっ⁉ す、好きにって……いけませんよ、お金をそんな……っ!」

 

「いーのいーの。てか、コスの為にバイトで貯めたんだし、逆に使ってくんなきゃ意味ないんだけど」

 

「……分かりました。お預かりしますっ」

 

まさかの大金に新菜は慌てるが、そのお金の意味と海夢ちゃんの想いを汲み取ったのか、逡巡しつつも最終的にはそれを受け取った。

新菜が受け取ってくれた事に海夢ちゃんは満足気に笑うと「よーし、どんどん行くよー!」と元気よく歩き出し、俺と新菜がそれに続く。

そうしてメインの布地に加えて別のものを数点、そしてレースにリボン、ファスナーにバラの造花と順調に材料を買い集めていった。

 

「とりあえずこんな感じかー。月見里君、荷物持ってくれてありがとっ」

 

「守優にばっかり持たせてごめん。代わろうか?」

 

最初のデパートで粗方購入を終えた俺達は次の店へと向かうべく、店の外へと出ていた。

二人に労われる通り、俺は彼らが購入した荷物を持って移動している。

新菜が俺を気遣い荷物持ちを代わろうとするが、俺は首を横に振って断った。

 

「別に重たいものでもないし大丈夫だって。それに、手で触れて材料の質感とか確かめないといけなかったんだから、片手とはいえ塞がってると困るだろ? もししんどくなったらその時に言うからさ」

 

「……わかった。ありがとう」

 

俺の言葉に新菜が微笑んで礼を言う。

むしろ礼を言うのはこっちなんだよなぁ。

こんな間近でわかまりの放課後デートを見れるのだ、荷物持ちくらい喜んでするわ。

 

「おしっ、次っ! スワローテイル行こっ」

 

海夢ちゃんが指差したのは俺達の前に聳え立つ大型ビル。

俺と新菜は海夢ちゃんの案内に従い、中に入りエレベーターへと乗り込む。

 

「このビルの四階にあるお店なんだけどね、入った瞬間マジビビるよ! ハンパないから!」

 

テンション高く俺達を案内する海夢ちゃんについていけば、確かに彼女の言葉も納得の光景が広がっていた。

色鮮やかなウィッグが並び、その艶やかな髪が店の照明で煌めいている。

 

「凄い……っ、これは圧巻ですね……!」

 

「ホントに……喜多川さんの言う通りだ……」

 

「でしょーっ⁉ この店内アガるよね‼ あたし、スワロー見んの超好きなんだよね~」

 

新菜や俺の反応を見て、自分の『好き』を共有できた海夢ちゃんが嬉しそうに笑う。

確かに彼女の言う通り、これはアガる。ヤバいな、元々そこまで欲があったわけじゃないけど、ちょっと興味持ちそう。

新菜の反応はどうなのかと視線を横に向ければ、彼も目を輝かせて展示されたウィッグを眺めていた。

 

「ねぇねぇ、二人とも! これじゃん? 黒のミディアム」

 

海夢ちゃんに呼ばれ、黒の系統に纏められたコーナーへと移動する。

黒色と一口に言ってもその濃淡で雰囲気はかなり異なる。しかし、そのどれもが雫ちゃんの髪とはどこか違うように感じた。

若菜も同じ事を感じたようで、少しずれた位置の棚に置いてあるウィッグへと手を伸ばす。

 

「喜多川さん、これ(・・)にしましょう」

 

「うん、俺もそっちの方がいいと思う」

 

「え? ってそれ、紫なんだけど……」

 

若菜と俺が選んだウィッグは海夢ちゃんが選んだそれと比べると紫がかった色をしている。

まさかの選択に驚いたのか、海夢ちゃんはそれを選んだ理由が知りたい様子で新菜の顔を見つめた。

 

「雫たんのイメージカラーって紫ですよね? なので一見黒に見えて艶が紫の方が雫たんらしいと思うんですが……」

 

「…………だ、だよね!」

 

新菜の説明を受けて納得すると共に、それに比べて自分が如何に大雑把なのか理解してしまった海夢ちゃんは顔を赤くしながら同意する。

ともかく、紫がかった黒色のウィッグという方向で纏まったが、それだけでも中々の種類である。

 

「こっちのディープバイオレットとかどう?」

 

「うん。隣のブラックバイオレットよりも雫たんの髪に近いと思う。それから、雫たんは前下がりのボブだからこのミディアムだと長さが足りないんだよね……ロングを切って使った方がそれっぽくなりそう。喜多川さん、どうですか?」

 

「いいと思うっ。ロング買って、サロンでカットしてもらうね!」

 

「いいですね、プロの方でしたら問題ないと思います」

 

とんとん拍子でウィッグ選びが進んでいく。

二人の仲を邪魔したいわけではないが、こうやって一緒に同じ時間を過ごせる事は俺にとってとても尊いものだ。

新菜や海夢ちゃんには本当に感謝しかない。

 

「買うの決まったなら、俺ちょっと他のも見てきていい? せっかくだし見て回りたいからさ」

 

「いいよ、いってらっしゃい」

 

「いってら~」

 

ちょっと供給過多でしんどいので、俺は二人と距離を取る。しかし、目を離す事はしない。

わかまりの過剰摂取で倒れる事になっても、俺は二人の尊い時間は見届ける。

心の内で決意を固めつつ俺は彼らから少し離れた棚で商品を眺めるフリをしていると、海夢ちゃんは購入を決めたウィッグを見つめながら口を開く。

 

「ほんとはさー、ごじょー君が無理なら一人で来るつもりだったんだよね。でもさっきの店でもここでも、あたし完全に違うのばっか選んでるし、れーせーにヤバいじゃん?」

 

海夢ちゃんは新菜へと視線を向け、それに返すように新菜も海夢ちゃんの顔を見つめる。

 

 

「ごじょー君がいてくれてマジよかった。サンキュッ」

 

 

はぁ~~~~。(クソデカため息)

尊すぎる。マジで無理。

人生二週目だから耐えられたけど、一週目だったら耐えられなかった。

海夢ちゃんのあの笑顔も、『役に立ててたんだ』って分かって嬉しそうに微笑んでる新菜も最高。

 

(この二人の幸せは俺が守護(まも)らねばならぬ)

 

俺は決意を新たにしながら何食わぬ顔で二人の許へと戻っていった。

でも、尊すぎてしんどかったから新菜に荷物持ちは代わってもらった。新菜ごめん。

 

 

 

 

.

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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