その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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区切りを良くするために今回はちょっとだけ短めです。


第13話『その学生達はエロゲを語る(未遂)』

「お待たせーっ。なにげにカラコンも買っちった♡」

 

「荷物持ちますよ」

 

「サンキューっ♡」

 

俺がわかまりの尊さにしんどくなっている事など露知らず、海夢ちゃんは恙なくウィッグとカラコンを購入し、コス衣装の材料を揃えていく。

購入予定だった物をほとんど買い集め、残ったのはあと一つ。

 

「じゃあ、あとはー……」

 

「あ、ごめん。ちょっとだけいい?」

 

最後の買い物に向かう前にと、次の店へと向かおうとする二人を呼び止める。

 

「? どしたの?」

 

「提案なんだけど、せっかく池袋まで来たんだし買い物で終わりっていうのも勿体ないじゃん。よかったら帰りにどっか食べていかない?」

 

「それいいっ。あたしサンセー! ごじょー君は?」

 

「はい、いいと思います」

 

俺の提案に海夢ちゃんは元気よく手を挙げて賛同。

隣に立つ新菜も笑顔で頷いて了承した。

よし、この場を離れる口実ゲット(・・・・・・・・・・・・)

 

「それじゃ、一旦俺離脱してもいい? 晩御飯用意しなくていいって、家族に連絡したいし」

 

「確かに、俺もじいちゃんに電話しておかないと……」

 

「いいよ、ついでに俺が伝えとく。この時間ならまだ工房の方にいるだろうし、纏めて伝えた方が早いでしょ」

 

俺が代わりに連絡しておく事を伝えると新菜は「じゃあ、お言葉に甘えようかな」とすんなりとそれに応じた。

そんな俺達のやり取りを見て海夢ちゃんは小さく首を傾げる。

 

「なに? ごじょー君と月見里君の家族ってそんなに仲いーの?」

 

「あはは、確かに家族ぐるみの付き合いはあるかな。けど、今の時間一緒にいるっていうのは別の理由だよ」

 

「うちの『五条人形店』で守優の家族も働いているんです。特に彼のお爺ちゃんは『小道具師』といって、雛人形の冠や笏、屏風や雪洞(ぼんぼり)などを作る凄い職員さんで、俺のじいちゃんと何十年も一緒に仕事をこなしてきたベテランなんです」

 

俺に続き、新菜が五条家と月見里家の関係性について補足する。

彼の言う通り、月見里家の人間は何かしら新菜の店に関わっており、祖父は言うまでもなく両親も営業販売に携わっている。

ちなみに俺も事務方としてアルバイトしている。親世代の人達と比べてパソコンやインターネットにも明るいので、それを活かして最近は広報の手伝いも始めた。

 

「すっご! お雛様が持つって事はめっちゃ小さいじゃん! あんな小さいの作れるとか神!」

 

目を輝かせて興奮する海夢ちゃん。

そのテンションの高さから本音で言っているのが分かるし、心の底から他者をリスペクト出来るのは彼女の良いところだと思う。

 

「ありがと、今度じいちゃんに伝えとくよ。そんなわけだから、ちょっと電話してくるね。なんなら次のお店は二人で行ってきたら?」

 

「そうだね。次に行くお店もこのビルの中だし、あたし達で行っちゃおっか?」

 

「はい」

 

俺の提案を受け、二人だけで次の店に行く事が決定する。

自然な流れでわかまりの二人きりにする事ができるな、ヨシ!

 

「じゃあ、ビルの入り口前で待ち合わせってことで。また後でね」

 

「いってらー!」

 

海夢ちゃんに元気よく見送られ、俺は一時的に離脱する。

個人的に海夢ちゃんがガーターストッキングを履いた姿は漫画・アニメでもえちえちで最高だったが、あれをリアルで見ていいのは新菜だけだ。俺みたいな第三者にまでサービスしちゃう海夢ちゃんは解釈違いです!

俺のいないところで新菜を揶揄う小悪海夢ちゃんと、揶揄われてドキドキしちゃうピュア菜のやり取りを想像しつつ、俺は工房へと電話を掛ける。

 

『はい、五条人形店』

 

「あ、薫おじいちゃん。丁度よかった。今大丈夫?」

 

『お、おう。守優か。どうした、工房になんか電話してきて』

 

電話に出たのは薫おじいちゃん。おじいちゃんは電話の相手が俺だと分かると少しどもりながら会話に応じた。

おそらく今朝のやり取りを思い出しているのだろう。そう考えると俺も頬が熱くなるが、ここはお互いに大人の対応。あえてそこには触れずに本題へと入る。

 

「実は今、新菜と友達の三人で池袋まで来ててさ。色々買い物してるんだけど、ついでに晩御飯も食べて帰ろうと思って」

 

『そうかそうか! それで連絡してくれたのか、ありがとうよ。丁度お前んとこのやつらもいるし、じいちゃんから伝えといてやる』

 

おじいちゃんの声色から嬉しさが伝わってくる。

この前の電話の時もそうだけど、新菜に俺以外の友達がいる事にめっちゃ喜ぶなぁ。

でも、新菜の交友関係が広がって嬉しい気持ちは俺もよく分かるので水は差さない。

 

「ありがとう、助かる。お礼になんかお土産買って帰るね」

 

『んなモン買わなくていい。楽しんできな』

 

「うん、ありがとう。たぶんちょっと遅くなると思うから、それも合わせて伝えておいて」

 

『おう、じゃあな』

 

無事に薫おじいちゃんに要件を伝えて伝言を頼み、通話を終える。

同時にエレベーターが一階に到着。中から新菜と海夢ちゃんが出てきた。

 

「お疲れ~。買い物終わった?」

 

「おつー。めっちゃいい感じのやつあった!」

 

「それはよかった……新菜、どうした?」

 

「…………なんでもないっ」

 

顔を赤くしながら答える新菜を見て、海夢ちゃんはニヤニヤと笑みを浮かべている。

どうやら原作通り、新菜はちゃんとお礼(・・)を貰ったらしい。

俺はそれに気付かないフリをしながら、薫おじいちゃんとのやり取りを報告する。

 

「電話したら丁度おじいちゃんが出たから伝えといたよ。楽しんでこいってさ」

 

「わ、わかった。ありがとう、守優」

 

「よーしっ! 買い物も済んだし、ご飯食べに行こっ!」

 

海夢ちゃんの号令に俺達は揃って頷く。

日も沈みかけ、夕闇が広がりつつある。夕食には丁度良い時間だ。

さて、外食を提案したはいいが、どこに食べに行くか……俺は近くのお店にオススメがないか調べる為にスマホを取り出そうとするが、それよりも先に海夢ちゃんが案を出してきた。

 

「近くに美味しいラーメン屋さんがあるんだけどさ、そこに行かない?」

 

「ラーメンですか、いいですね」

 

「賛成~。新菜、お前今朝の約束覚えてるよな?」

 

「う、うん……」

 

海夢ちゃんの提案で一気にラーメンの口になってしまった。

彼女お勧めの店に行く事に気持ちが逸るのを感じながら、良いタイミングなので新菜に支払いを任せる事を暗に伝える。当然、俺に借りがある新菜に拒否権はない。

 

「なになに? 何の話?」

 

「聞いてよ喜多川さん、新菜がさ――」

 

「し、守優……! お願いだからその話は喜多川さんには……‼」

 

詳細を知ろうと会話に入ってくる海夢ちゃんを、新菜が慌てながら止めようとする。

結局、店に着く頃には海夢ちゃんのゴリ押しに新菜が負け、真相を教える事となり、二人揃って海夢ちゃんに爆笑された。

 

(あれ? これ俺もダメージ受けたやつじゃない?)

 

あと、海夢ちゃんお勧めのラーメンはめっちゃ美味しかったです。池袋に来たらまた来よう。

 

「あ、ここはあたしが奢るから」

 

食事を終え、店を出ようと席を立ったところで突然告げられた奢り宣言に俺と新菜は揃って待ったをかけた。

 

「そんなっ、払いますよ!」

 

「そうだよ、喜多川さん。ヘッドホン外した新菜に出させたらいいんだ」

 

「っ、もう……蒸し返さないでよ……!」

 

「あははっ! いーって、今日はあたしが奢るって決めてたしっ」

 

俺達のやり取りを笑いながら、海夢ちゃんが見せつけるように財布を取り出す。

そこまでさせて財布を引っ込めさせるのも失礼だと思い、俺と新菜は目配せをした後、揃って頭を下げた。

 

「「ご馳走になります」」

 

「どーいたしまして♡」

 

海夢ちゃんは可愛らしくウインクをしてから一足先に席を立ち、スムーズに会計を終える。

俺と新菜はそれを待ち、三人で店を出た。

 

「「「ご馳走様でした」」」

 

「あざしたーっ!」

 

店員の挨拶を背に受けながら店を出ると、丁度良い時間というのもあって未だに外には順番待ちの列が並んでいる。

もしかしたらかなり有名なお店なのかも。教えてくれた上にご馳走してくれた海夢ちゃんに感謝だ。

新菜は衣装を作ってあげる側という名目はあるが俺は完全にオマケだし、今度何かしらお礼しないと。

そんな事を考える俺の前では、新菜と海夢ちゃんが楽しそうに先程食べたラーメンについて語っている。

 

「そーだ。ごじょー君、“ヌル女”ってどこまでやった? 全クリ?」

 

「あ、いえ……俺、全然上手く出来なくて……」

 

「どの辺?」

 

あ、やば。

 

 

「朝礼の時に全校生徒の間で――」

 

「それ以上いけない」

 

 

俺はなんとか間一髪で新菜の台詞を阻止する。

この子本当に羞恥心のラインが時々おかしいな。海夢ちゃんもだけど新菜も気を付けて見てないと駄目なやつ。

 

「? どうしたの、守優?」

 

俺が止めた理由が分かっていないのか、新菜は勿論隣の海夢ちゃんまでキョトンとした顔をしている。チクショウ、可愛いな!

二人仲良く並んだキョトン顔をまた脳内に保存しながら、俺は幼い子供に諭すつもりで説明する。

 

「新菜、“ヌル女”はどんなゲーム?」

 

「はーい、神エロゲー!」

 

元気よく手を挙げて応える海夢ちゃん。

百点満点の回答だけど、俺は新菜に質問してるから。お口チャックしてなさい。

あと、店前に並んでたお客さん達引いてるからね。

 

「海夢ちゃんが言う通り、“ヌル女”って神ゲーだけどそういう(・・・・)ゲームだからさ。内容について語る時は場所考えような?」

 

「……あっ」

 

俺が言いたい事が伝わったのか、新菜はハッとした後に少しずつ顔が赤くなる。

そして最後には「……気を付ける」と蚊の鳴くような声で自省の意を示した。

 

「月見里君、気にしすぎっ。マジメかっ!」

 

あなたはもう少し恥じらいを持ちなさい。

俺の思いは伝わらなかったのか、海夢ちゃんは大爆笑していた。

 

 

 

 

.

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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