その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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第22話『その幼馴染達は撮影する』

カシャッ カシャッ

 

「ポーズまで完璧です! そのまま少し横になってもらっていいですか?」

 

カシャッ カシャッ

 

「喜多川さんマジ凄い! こっちにも目線お願い!」

 

新菜の自室で始まった撮影会。

俺も新菜も思わずテンションが上がってしまい、スマホを向けてシャッターを切りまくった。

そんな俺達に海夢ちゃんは嫌な顔一つせずリクエストに応じてくれる。神対応が過ぎる!

 

「今の表情は雫たんが初めて主人公を――……! ああ、素晴らしいです……!」

 

隣でテンアゲな新菜がブツブツ言いながらシャッターを切り続ける。

そんな彼に俺はツッコむどころか内心で共感しまくっていた。

 

(実際に“ヌル女2”をプレイしたから、新菜がどのシーンの事言ってるのかよく分かる~! 同意しかない~!)

 

新菜の邪魔にならないよう気を付けながら、俺は寝そべってアングルを調整しつつまた一枚写真を撮影する。

 

「……よし! この位にしようか!」

 

そこから更に数分間撮影をした後、頃合いを見て切り上げを提案する。

 

「そうだね。喜多川さん、お疲れ様でしたっ」

 

「サンキューっ‼ 写真見せてっ‼」

 

「あ、俺が撮ったやつもライムで送っとくね」

 

「マジ? 助かる~!」

 

撮影を終えた海夢ちゃんは新菜からスマホを受け取り、画像を確認する。

その横で俺は宣言通り、自分が撮影した写真をライムで纏めて送信した。

 

「超良く撮れてんじゃん~♡♡♡ こっちのが全然いいね‼ 超アガるんだけどっ♡」

 

スワイプで写真を確認する度に嬉しそうに声を上げる海夢ちゃん。

写真の出来に満足なようで俺も新菜も一安心だ。

 

「アカ作ってそっこーネットに上げよ~♡」

 

「もう上げるんですか⁉」

 

「てかコスネーム考えてなかったわ。んー、どうしよー……ま、ま、まー……まんま『まりん』でいっか!」

 

「それホントに大丈夫⁉ ネットリテラシー的に‼」

 

新菜に続いて俺も海夢ちゃんにツッコミを入れる。

原作読んでるから知ってるけど行動力の化身すぎる。

てか、アカウントの名前はもうちょっと慎重になった方がいいと思うんだけど⁉

……でも、よく考えるとそれに関しては新菜も似たようなもんだったわ。二人とも、もうちょっと危機感持ってほしい。

 

「ヤバっ♡ 可愛すぎる~♡」

 

そんな事を考えている間に海夢ちゃんはツツキッターに新しいアカウントを作って投稿したようだ。

 

「喜多川さん、よかったらそのアカウントフォローしてもいい?」

 

「もち! あたしもフォロー返すし!」

 

俺の申し出に海夢ちゃんは笑顔で快諾してくれる。

それを受けて俺は新菜の方へ視線を向けた。

 

「ついでに新菜もフォローさせてもらったら?」

 

「えっ……⁉ ……い、いいのかな……?」

 

「待って、ごじょー君もツツキッターしてるの⁉ いいじゃん、繋がろうよ!」

 

俺の誘いに新菜は不安そうに海夢ちゃんを見るが、当の海夢ちゃんは意外そうな反応を見せつつも続けて快諾。

俺も新菜も海夢ちゃんとアカウントをフォローし合い、相互となった。

 

「こんな事言ったらアレだけど、ごじょー君がツツキッターしてるの意外かも~」

 

「全然呟いてないけどね。コイツ、いろんな雛人形店の公式アカウントばっかりフォローして情報収集してんの」

 

「守優に情報を集める手段として有効だって教えてもらって……化粧をする前に見せた雛人形の写真もツツキッターで見つけたものなんです」

 

海夢ちゃんの言葉に俺が補足説明すると、当の本人は少し恥ずかしそうに苦笑しながら頭を搔いた。

彼が言う通り、新菜がいろんな情報を手に入れる手段の一つとして俺が数年前に勧めたのだ。

しかし、俺は新菜のガチ具合を舐めていた。一切呟くことなく、古今東西の雛人形関連のアカウントばかりフォローし、彼のアカウントは雛人形オンリーの情報収集のツールと化している。

 

「なるほどね~、そう言われると凄く納得かも。てかアカウントの名前まんま本名じゃん。ウケる!」

 

説明に頷きつつ、フォローした新菜のアカウントを見て笑う海夢ちゃん。

俺からしてみれば君もどっこいどっこいだけどね?

 

「てか、前から言ってるけど本名はやめろって言ってるだろ。いい加減変えろよ」

 

「で、でもなんて名前にしたらいいか分からなくて……」

 

俺が苦言を呈すと新菜が苦い顔で言い訳する。

コイツ真面目だからなぁ。アカウントネームも真剣に考えて結局決めきれないみたいなパターンなんだろう。

 

「そういう月見里君は本名とは全然違うよね。秋月……みさと……?」

 

海夢ちゃんは次に俺のアカウントに興味を示す。

二人に教えたのは俺の副アカウント。主にコス界隈の情報を追う為のアカウントだ。

こちらのアカウントではジュジュ様を始め、姫野さんや都さん、旭さんのアカウントをフォロー済。日々栄養を摂取させて頂いている。

名前の由来に関しては割愛。*1

 

「今の世の中、どこから情報が結びついて身バレするか分からないからね。過剰なくらいで丁度いいんだよ」

 

「へ~」

 

俺の言葉に海夢ちゃんは気の抜けた返事をする。これ全然響いてないな。

まぁ、二人のネットリテラシーを高める講義はまた今度。

 

「とりあえず、試着もして写真も撮ったし、今日はこの位でいいんじゃない?」

 

「そうだね~。明日のイベント楽しみすぎるー!」

 

海夢ちゃんが再びピョンピョン飛び跳ねて明日への期待に胸を膨らませる。

そんな海夢ちゃんの反応に新菜は笑顔を浮かべながら言った。

 

「では、明日に向けて衣装を少し修正しますね。腕回りをもう少し動かしやすくした方がいいと思うので」

 

「え⁉ 明日に間に合うの⁉」

 

「一から作るわけではないので、たぶん大丈夫です。ただ、今と比べて少しマシになる程度ですが……すみません……」

 

驚愕する海夢ちゃんに対して新菜は申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。

素人の俺からしてみれば一日でそれをある程度改善できるだけ凄いと思うけど……

 

「いやいや、それだけでも十分だから! てか、ごじょー君マジで無理しないでね⁉」

 

「はい」

 

海夢ちゃんも俺と同意見のようで新菜が無理していないか気遣うが、当の本人はそこまで負担に思っていないようだ。

この感じだとたぶん大丈夫だろう。俺もそうだけど、新菜も昨日はガッツリ寝て休んだし。

 

「さてと、じゃあ喜多川さんには着替えてもらって、明日の予定詰めようか。それが終わったら早めの晩御飯ってことで」

 

「さんせー!」

 

「あ、あの……ちなみに明日って俺も行くんですか⁉」

 

俺の言葉に笑顔で手を挙げる海夢ちゃん。

対する新菜は明日の予定について話を詰めるという流れから何か察したのか不安な様子で海夢ちゃんの方を見る。

 

「当たり前じゃん! あたしつけま無理だし、ごじょー君がいないと顔作れないんだけど!」

 

「というか、ここまで来て本番見に行かないとかないだろ?」

 

海夢ちゃんと俺の言葉に新菜は気まずそうに目線を逸らす。

 

「守優は知ってると思うけど、あの……俺、私服……作務衣(これ)しか持ってなくて……」

 

あ~、そうだったわ~……

この子、俺が何回言っても服買わないんだよなぁ。

もう見慣れちゃったからすっかり忘れてた。

 

「……こういう事があるから最低限は買っとけって言っといたのに……」

 

「うっ……」

 

ボソリと俺が呟くと新菜は更に顔色を悪くしながら呻く。

 

「それだとなんでダメなの? ごじょー君って感じで全然いーじゃん。似合ってるし」

 

一方海夢ちゃんはあっけらかんとした様子だ。

こういう肯定的な目線で相手を見れるところも海夢ちゃんの魅力の一つだよね。

まぁ、それはそれとして、今後の事も考えて私服のバリエーションは増やしてもらいたいところではある。

 

「新菜の私服は今度喜多川さんと一緒に買いに行ってもらうとして――」

 

「えっ⁉」

 

「さっき言った通りの流れでよろしく。俺は先に下降りてるね~」

 

「オッケー」

 

「ちょっと、守優……! 今さっきなんて……⁉」

 

新菜がなんか焦ってるけど無視無視。

その後俺達は一階の居間で明日のイベント参加に向けて出発の時刻や準備する物品について打ち合わせを行った。

といってもその内容はザックリとしたもので、ものの数分で終了。

新菜が衣装を手直しするのを俺と海夢ちゃんで眺めたり、撮影した写真を三人でもう一度見直したりと、どちらかというとそちらがメインな時間だった。

その間海夢ちゃんは、

 

『ごじょー君やば! マジで職人じゃん!』

 

新菜の手際の良さに感嘆したり、

 

『はぁ~、この写真マジで雫たんすぎる……やば、またニヤけちゃうんだけどっ!』

 

写真の出来栄えに頬を緩ませたりしていた。

めっちゃ可愛かったし、こっちもニヤけてしまいそうになったのは内緒である。

そうしているうちに日も傾き、夕食に丁度良い時間となった。

 

「じゃあ俺、晩御飯の用意するね」

 

「わかった。手伝う事ある?」

 

台所に向かおうと立ち上がる俺に新菜が声を掛ける。

 

「大丈夫、下拵えは済ませてあるしそんなに時間かからないから。喜多川さんと一緒にゆっくりしてな」

 

実際昨日作ろうと準備してあったものを使うだけだし。

なので手伝いが不要である事を告げて台所へと向かった。

 

 

 

―――――☆―――――

 

 

 

月見里君が台所へ向かって数分後。

ジュワジュワ、パチパチと何かを揚げる音と一緒に良い匂いが漂ってきた。

 

「めっちゃいい匂い~! この匂いだけで美味しいの確定なんですけど!」

 

一気にお腹が減ってくるのを感じ、期待感が高まる。

 

「今日は唐揚げだって言ってました。守優の唐揚げは凄く美味しいんです。肉をタレに漬け込んで寝かしたり、二度揚げしたり、結構本格的で……」

 

「マジ⁉ お店レベルじゃん‼」

 

「はい。じいちゃんがいる時は脂っこいものを控えて作らないので、滅多に食べれません」

 

そう言ってごじょー君がにこりと微笑む。

その笑顔がまるで大好物の料理に期待する子供みたいで思わずこちらも笑ってしまった。

 

「あはっ」

 

「? 何かおかしかったですか?」

 

「ううん、何も。てか月見里君とホントに仲いいんだね。兄弟みたい」

 

最初は付き合ってるのかと思ったけど。

でも本当に違うみたいだし、そう言われてみればどちらかというと家族や兄弟という感じだ。

 

「実際に俺も守優もそんな感覚です。小学生の頃からの仲ですが、俺は雛人形一筋で周りにあまり馴染めなくて……そんな俺に守優は呆れる事なく付き合ってくれて、ずっと一緒にいてくれてるんです。本当、俺には勿体ない位いい奴なんです……」

 

「そうやって感謝してくれるのは嬉しいけど、その割には俺の誘いはほとんど断ってたよなぁ?」

 

いつの間にか料理を終えた月見里君がごじょー君の背後に立っていた。

両手で持つお盆の上にはご飯や味噌汁、サラダが三人分載っている。

 

「それは、あの頃は面相書きが楽しくて……」

 

「面相書きが楽しいのは今もだろ? お前との付き合いは長いけど、お前と一緒にどっか出かけた思い出なんて数えるくらいしかないぞ」

 

「うぅ……」

 

言い訳をして誤魔化そうとするごじょー君に対して、月見里君の鋭いツッコミが入る。

それを受けてごじょー君はたじたじといった様子だ。

 

「喜多川さん、コイツの引き篭もり直したいからどんどん引っ張って遊びに誘ってやってね」

 

「ちょっ、喜多川さんを巻き込むのは……! それに俺は引き篭もりじゃ――」

 

「オッケー、任しといて!」

 

「喜多川さん⁉」

 

食卓にそれぞれの食事を置きながら頼んでくる月見里君にあたしは親指を立てて返した。

ごじょー君はそのやり取りを見て、あたし達の顔を交互に見ながら慌てていた。ウケる。

そうしているうちに月見里君は台所に引っ込み、そしてすぐに戻ってきた。

その両手には山盛りの唐揚げが乗った大皿! うっわ、マジで美味しそう!

 

「はい、お待ち~」

 

ゴトリと重たい音を立てて大皿が置かれ、あたし達は誰が合図をする訳でもなく自然に食卓を囲む。

 

「衣装の完成おめでとう、そして明日のイベント楽しもうって事で……頂きます!」

 

「「頂きますっ」」

 

月見里君の音頭に合わせ、あたしとごじょー君は合掌してそれに続いた。

食前の挨拶を終え、あたし達は一斉に唐揚げへと箸を伸ばす。

 

「んっ! 衣ザクザク! うま~!」

 

二度揚げってこんなに変わるんだ⁉ 冷凍のやつとかとレベチじゃん‼

しかも、お肉にしっかり味ついててマジ美味いんだけど!

 

「いっぱいあるから遠慮せず食べてね。新菜も」

 

「うん、ありがとう」

 

微笑みながらあたしだけじゃなくごじょー君にも勧める月見里君。

その様子はさっきまで感じていた親友や兄弟というより、親子のようにも見えた。

月見里君ってその時々でだいぶ印象変わるな~。

そんな事を考えながら、あたしはまた一つ唐揚げを頬張った。うん、やっぱり美味しい!

 

 

「喜多川さん、余ったら持って帰れるように包んであげるから明日にでも食べて」

 

「マジ⁉ でもこんだけ美味しいと余るかわかんないかも‼」

 

「あははっ! 明日の事もあるから程々にね?」

 

 

唐揚げは残らなかった。

……ち、ちょっと、食べ過ぎたかな……?

 

 

 

 

.

*1
名前の守優を同じ読みの秋に変換し『月見里 秋』。それを並べ替え『秋月 見里⇒秋月 みさと』

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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