その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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最近リアルが少しだけバタバタして更新スピードが落ちてしまいましたが、皆様のお陰でモチベーションは維持出来ております。これからも執筆頑張りますので、楽しんで頂けると幸いです!


第24話『その転生者は見られてる』

「脱げそうって、どの辺りが駄目そうですか……?」

 

海夢ちゃんのスタイルに合わせて作った衣装であるにも関わらず予想外の展開となった事に、新菜が心配しながら詳細を尋ねる。

新菜の質問に対して、海夢ちゃんは未だに息が整いきらぬまま答えた。

 

「き……昨日の夜……撮ってもらった写真見てたんだけど……『雫たんもっと胸デカくない?』って思って……それで今日、ヌーブラを二枚重ねて盛ってきたら……」

 

「……まさか……っ」

 

海夢ちゃんの回答に、新菜の顔が青ざめる。

 

「胸のトコ破れそう」

 

「あっ、当たり前ですよ‼」

 

うわぁ、胸のとこミシミシ、ブチブチ言ってるわ。二枚重ねって凄い。

新菜が心配そうに慌てる横で俺はそんな事を考えながらチラリと視線をある方向へと移す。

視線の先にはサングラスと黒いマスクで顔を隠し、植え込みに隠れるようにこちらの様子を伺う一人の少女(・・・・・)

 

(ジュジュ様いた~!)

 

そう、超人気コスプレイヤー『ジュジュ』こと、乾紗寿叶ちゃんである。

俺は瓶底眼鏡越しに見ている為、向こうが俺の視線に気付く様子はない。

それにしても、顔が全然見えないのに美少女オーラが凄い。顔は隠しても美少女はオーラでわかりまするぞ。

流石は美男美女ばかりの『着せ恋』においてその可愛さに周囲が驚愕するだけの事はある。

 

「喜多川さんのサイズに合わせて作ってあるんですから、ヌーブラを入れる余裕なんてありませんし……! それにあの大きさはゲームのキャラなんですから……‼」

 

新菜の言葉を聞いた瞬間、ジュジュ様がピクリと反応したのが分かった。

これで海夢ちゃんが着ている衣装が新菜の作品である事が彼女に伝わっただろう。

今回の胸を盛る一件はジュジュ様にそれを知ってもらう為にも必要だったので、俺はあえてスルーした。

 

(そもそも、ヌーブラ重ねて盛るとか普通想定しないしな)

 

そんな事を考えながら、俺は鞄から保冷ポーチを取り出し、タオルとスポーツドリンクを取り出す。

タオルは水で濡らした後に冷蔵庫で冷やしておいたものだ。

 

「喜多川さん、汗ヤバいし顔も赤いよ。とりあえずこれで冷やして。後、水分もしっかりね」

 

「あ、ありがとう……はぁ~♡ 生き返る~♡」

 

俺の渡した濡れタオルを首元に当てながら海夢ちゃんは息を吐く。

その間に俺はスポーツドリンクの蓋を開けて手渡し、海夢ちゃんはそれを一気に(あお)った。

 

「っ、ぷは……おいしっ。サンキュー月見里君……ウィッグの中ムレムレだし、衣装の中熱くて鬼ヤバだったからマジ助かった……!」

 

「……‼ すみませんっ、俺のせいです‼ 俺が厚い生地を選んだから……‼」

 

熱さに顔を赤くする海夢ちゃんとは対照的に新菜の顔が青ざめる。

恐らく生地選びでの見落としに気付いたのだろう。

実は先のヌーブラ云々と同様、この点についても俺は気付いてはいた。

しかし、この一件は新菜が今後生地を選んでいく上で必要な気付きとなる可能性が高い。

そのため俺は制作時点では何も言わず、すぐに対処できるようカバーする方向に動く事にしたのだ。

 

「とりあえず建物の中に移動して休憩しよう。喜多川さん、とりあえずこれ貼って」

 

「サンキュー」

 

俺が用意した冷却シートを額に貼りながら、海夢ちゃんが笑顔を浮かべる。

濡れタオルとスポーツドリンクのお陰で原作と比べてだいぶマシのようだが、それでも顔はまだ赤い。もう少し休憩が必要だろう。

 

「新菜、俺の鞄持って喜多川さんと行ってくれるか? 大体の物は入れてあるから」

 

「それはいいけど、守優はどうするの?」

 

新菜は俺が差し出した鞄を受け取りながら尋ねる。

 

「さっきまで喜多川さんの撮影してた人に一言事情伝えてくる。何かあったらまた連絡してくれ」

 

「わかった」

 

「ごめんね、月見里君。よろしく~……」

 

新菜達が屋内へと向かっていくのを見送り、俺は早速辺りを探す。

あまり場を離れていなかったのか、目的の人物はすぐに見つかった。

 

「あの、すみません」

 

「はい?」

 

俺が呼び止めた茶髪のセミショートに糸目の女性・伊藤涼香さんが不思議そうにこちらへと向く。

 

「俺、さっき撮影してくれていた黒江雫コスの女の子の友達なんですけど……」

 

「この子です」と俺はスマホで昨日撮影した雫たんコスの海夢ちゃんの写真を見せながら簡単に自身の素性を伝える。

スマホの画面を見た涼香さんは「ああ、さっきの!」と納得したようで、笑顔を浮かべて会話に応じてくれた。

 

「撮影の途中だったと思うんですけど、ちょっと暑さにやられちゃったみたいで……」

 

「ええっ⁉ 大丈夫なんですか⁉」

 

「はい、今はマーリンシティの中で休憩してます。急な事でしたからお姉さんに何も言わずに離れてしまったので、彼女の代わりに事情を伝えるついでに一言謝っておこうと思って……こっちの都合で打ち切ってしまってすみません」

 

事情を知って驚愕する涼香さんに頭を下げる。

 

「そんな……! 謝る必要ないですよ、頭を上げてください……!」

 

謝罪する俺に涼香さんは手を振って慌てながら返す。

こちらを責めるどころか気遣うような様子を見せてくれる涼香さん。その態度から彼女の人の良さが窺えた。

 

「すみません、ありがとうございます。もしよければ、ツツキッターのアカウントを教えてもらえませんか? 友人の体調が元に戻って撮影が続けられそうならお伝えしますので……」

 

「うーん……わかりました。撮影は無理しなくていいので、体調が良くなったかどうかだけでもまた教えてもらえると助かります」

 

お言葉に甘えて頭を上げつつ提案すると、涼香さんは数秒悩んだ後にそれに応じてくれた。

互いのツツキッターのアカウントを教え、相互フォローになった事を確認。

流れで涼香さんのアカウントの画像一覧を見れば、素晴らしい写真の数々。それを見て俺は思わず感嘆の声を上げた。

 

「写真撮るのお上手なんですね……! 俺が撮ってきたのと全然違う……!」

 

「ありがとうございます。これまでいろんな人の写真を撮ってきたので、その積み重ねですね~」

 

写真を褒められて嬉しいのか、涼香さんが頬に手を当ててうふふと微笑む。

うーん、凄い擬態だ。ヤバい大人三人組の一人なのに全くそれを感じさせない。

 

(まぁ、初対面の人にそう簡単に正体は見せないか)

 

オタクは時に職場や友人、場合によっては家族にさえその正体を隠す生き物だ。

そう簡単に見破られては生き残る事は出来ない。

正直、涼香さんのやべぇ一面を見てみたいところではあるが、無理矢理どうこうする程でもないので、またの機会のお楽しみにしておこう。

 

「ん?」

 

そんな事を考えていると、ライムでの着信が届く。

相手は新菜。俺は涼香さんに「すみません、友人からです」と一言断りを入れてから電話に応じる。

 

「もしもし、新菜? 喜多川さんの様子はどう?」

 

『え、えっと……守優が色々用意してくれてたから、大丈夫そう……』

 

「?」

 

何故かぎこちない様子で返答する新菜に俺は少し首を傾げながら、特に追求せず納得する。

 

「まぁ、良くなってるならいいや。それで、何かあった? もしかしてトラブル?」

 

『ううん、トラブルはないよ。守優が用意してくれてた裁縫セットで衣装の補強も出来そう……ただ、ミシンとは違うから一時的なものだし、喜多川さんの体調も心配だから今日はもう切り上げて帰ろうって話になって……』

 

「マジか。まぁ、無理は出来ないよな」

 

彼が言っている事は尤もだ。事前の準備のお陰ですぐに対応出来たが、それでも海夢ちゃん本人も衣装も万全の状態とは言い難い。

 

『もしもし、月見里君?』

 

そんな事を考えていると、突然電話の向こうから海夢ちゃんの声が聞こえた。

 

「喜多川さん? 新菜から聞いたけど、体調は大丈夫?」

 

『月見里君の準備とごじょー君の神対応のお陰でね~、マジありがと。それでさ、さっきあたしの事撮影してくれてたオネーサンと話できた?』

 

どうやら電話を代わった理由は涼香さんのようだ。

俺は視線を涼香さんに向けながら、現状を伝える。

 

「うん、さっき喜多川さんの事情を伝えてたところ。お姉さん、喜多川さんの事心配してくれてる」

 

『マジ? 嬉しい~。あのさ、帰る前にもう一回だけ広場に戻ろうと思ってるんだよね。撮影ハンパになっちゃったし、オネーサンの撮影だけは最後まで受けようと思って……」

 

「なるほどね。わかった、お姉さんに伝えておくよ。無理しないでね」

 

『ヨロ~』

 

ピロン、という音と共に通話が切れたのを確認すると、俺は涼香さんへと向き直って会話の内容を伝えた。

 

「友人はもう大丈夫みたいです。ただ、体調の事を考えて今日はもう帰ろうという事になって……」

 

「…………」

 

「……お姉さん?」

 

何故か涼香さんが笑顔のまま固まっている。

というか、俺の事見てる……?

 

「なにこの子最初大人びた感じで凄く丁寧に話してたのに友達と話す時年相応って感じで砕けた口調で話すの可愛いというか偶然横顔見えたけどめっちゃ美人でえっちとりあえず都ちゃん達に後で話そ」

 

(oh……)

 

彼女の素を拝めてしまった。

まさか俺が新菜達と通話している姿が刺さるとは……この転生者の守優の目をもってしても見抜く事が出来なかった。

でも、涼香さんの素の一面を垣間見る事が出来たのでOKです!

 

「あの……?」

 

「……あ、ああ! ごめんなさいっ。それで、お友達がどうかされました?」

 

内心を隠しつつもう一度声を掛けると、涼香さんは数秒間を置いてから再起動し、慌てながら会話に応じた。

 

「友人が帰る前にお姉さんとの写真をやり切りたいそうなんです。中途半端になったのが申し訳ないらしくて……」

 

「えっ、大丈夫なんですか⁉ 無理はしない方が……」

 

「さっき会話した様子だと短時間の撮影くらいなら大丈夫そうです」

 

「……わかりました。じゃあ、お言葉に甘えて。でも無理はしてほしくないので、一枚だけにしますね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ある意味海夢ちゃんのわがままに付き合う形になるが、涼香さんは海夢ちゃんを気遣いつつそれを受け入れてくれる事になった。

そして、日陰で海夢ちゃん達を待つこと十数分。

 

「カメラのオネーサン! お待たせしちゃってすみませんでした! 月見里君もありがと!」

 

すっかり元気になった様子の海夢ちゃんが笑顔で駆け寄ってくる。

俺達の前までやってきた海夢ちゃんは涼香さんに深々と頭を下げた後、俺に笑顔で礼を言う。

 

「いえいえ~、もう大丈夫なんですか?」

 

「はいっ。念の為この後帰るんですけど、大丈夫ですっ!」

 

涼香さんにガッツポーズをしながら海夢ちゃんが返す。

本人の様子を見て涼香さんも安心したのか「よかった~」と笑みを零した。

 

「さっきこちらのお友達と話したんですけど、一枚だけ撮影させてもらいますね。日陰の方で撮りましょうか?」

 

「ハイっ」

 

涼香さんと海夢ちゃんのやり取りを見つつ、俺は邪魔にならないようその場を離れる。

そしてそのまま新菜の隣へ。親友の表情は不安な様子がありありと見て取れた。

 

「鞄もらうぞ。てか、顔ヤバ。大丈夫?」

 

「俺は大丈夫だけど、喜多川さんの衣装が……糸もつかな……っ」

 

どうやら補強した衣装が気になるようだ。

まぁ、原作では何もなかったから心配ないけど、最悪の場合衣装が破けて大惨事だもんな。

 

「そういえば、熱中症対策してたのも流石だけど、よく裁縫セットも用意してたね」

 

思い出したように俺の方へと向きながら新菜が言う。

まぁ、普通はそんな物まで用意しようと思わないよな。原作知識(チート)万歳。

 

「ふと思いついてさ。そんな嵩張るものでもないし、鞄の中に突っ込んどいた。役に立っただろ?」

 

「うん、助かった。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

俺が笑顔を向けると、新菜も柔らかい笑みで返す。

若菜に笑顔でお礼言われるのめっちゃ好き。てか推しの笑顔が好き。

推しの笑顔ならなんでも出来るわ。これからもオジサンが力になるからね。

そんな事を考えているうちに涼香さんと海夢ちゃんはポーズなどの打ち合わせを終えたようだ。

海夢ちゃんが位置に着き、涼香さんが声をかけながらカメラを構える。

 

「目線お願いします」

 

 

そこに突然一陣の風が吹き、喜多川さんのスカートを巻き上げた。

 

 

「な゛ぁッ⁉」

 

新菜が顔を赤くしながら、驚愕の声を漏らす。

 

「あぁっ⁉」

 

涼香さんも突然の事に声を上げながら、反射的にシャッターを切っていた。

 

(わかってたけど、太股に正の字ってやっぱりエッチ過ぎるよな)

 

そして俺は内心で腕を組み、その破壊力を再確認した。

あまりにも突然の事に一同が固まる。

 

「……ヤッバ!」

 

「あ、あの、大丈夫です‼ 今のは消しますのでっ」

 

海夢ちゃんの言葉に涼香さんが慌てながらカメラを操作する。

その様子に海夢ちゃんはウィッグの毛先を触りながら、安堵の表情を浮かべた。

 

「ですよねっ! あたし、全然カメラ見てなかった(・・・・・・・・・・・)から……」

 

「「えぇ⁉」」

 

海夢ちゃん、問題はそこじゃないよ。

涼香さん新菜も彼女の反応は予想外だった様子で驚きの声を上げる。

しかし、そんな様子に気付いていないのか海夢ちゃんは「ワンチャン撮り直しアリですか⁉」と食い気味に涼香さんへ撮影を依頼する。

 

(((そっちなんだ……)))

 

俺と新菜、そして涼香さんの心が一つになった瞬間だった。

 

 

 

 

.

 

 

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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