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わかまりがお家デートをしたであろう休日から数日後。
俺と新菜、そして海夢ちゃんは千葉県にある某ファミレスに来ていた。
安さに定評のあるイタリア料理のチェーン店だが、俺達がそこに来た目的は食事ではない。
「はっ、はじっ……初めまして……っ!」
「ホラ、また猫背になってるわよ」
「う、うん……っ」
「ごめんなさい、この子緊張してて……」
俺達の目的はジュジュ様、そしてもう一人……目の前の少女に会う為。
「いっ、いぬ……乾心寿です……っ! よろっ、よろしくお願いしますっ!」
(心寿ちゃんキター‼)
そう、美少女神レイヤーであるジュジュ様の妹にして、前の世界では海夢ちゃんやジュジュ様に並んで高い人気を誇っていた、色々大きなリアルJC・乾心寿ちゃんである。
俺達三人が乾姉妹と会う事になった理由はおよそ二日前に遡る。
学校を終えた俺はその日、珍しく五条家には寄らず自宅で過ごしていた。
その日の昼に新菜から三面図が出来た事、帰宅後にジュジュ様に連絡を取って通話で詳細を詰める予定である事を聞いていた。
「まだ話し合ったりしてんのかな。それとも、もう終わったりしてて……」
ピコンッ
「おっ」
自室のベッドに寝転びながら一人呟いていると、スマホの上部に新菜からグループトークに書き込みがあった事を伝える通知が表示される。
タップして開けば、やはり俺の記憶の通り新菜はジュジュ様と話を終えて心寿ちゃんにカメラについて教わる約束を取り付けた旨の説明があった。
今頃海夢ちゃんは新菜に通話を掛けて直接参加の希望を伝えているのかもしれない。
二人のやり取りを想像すると自然と笑みが零れるのを自覚しながら、俺は二人の邪魔にならないようメッセージだけ送っておいた。
乾さんの写真は妹さんが撮っているそうです。
ついでに妹さんにカメラを教えてもらえないかとお願いしているところです。
送信してすぐには既読はつかなかったが、数分後には既読が付き新菜から『わかった。喜多川さんも参加したいって言ってるし、合わせて乾さんに確認しておくね』と返事が届く。
その次の日には、ジュジュ様から許可を得た事、妹さんの事を考慮して集合場所は乾姉妹の家から近いファミレスになった事が知らされた。
そして今、俺はとうとう乾姉妹のご尊顔を目にする事が叶ったのである。
「「…………」」
隣に座る海夢ちゃんと新菜は、想像とはあまりにも違う心寿ちゃんの姿に言葉を失っていた。
俺は勿論心寿ちゃんがどんな姿か知っているのでそこに関する動揺はない。
(人見知り発動して緊張してるの可愛い~。不安そうに自分の髪の毛握ったり、こっちの様子窺うようにちょっとだけ目線向けてくるのにすぐ逸らしちゃうのもめっちゃいい)
ただ、この可愛さは想像以上でそれに対する動揺は拭えない。
一生懸命笑顔を張り付けているけど、気を抜いたらニヤけて気持ち悪い笑顔になりそうだ。
そんな顔晒して第一印象悪くするのだけは避けたい……!
「心寿ちゃん、初めまして。俺は月見里守優、よろしくね?」
「は、はいっ……よろしくお願いします……っ」
俺が笑顔で挨拶を返すと、心寿ちゃんはビクッと肩を跳ね上げて驚きつつも俺の挨拶を受け入れてくれた。
「ちゅ……中学生でそんなあんの⁉ ハンパないんだけど‼ 何センチあんの⁉」
「喜多川さ……っ‼」
海夢ちゃんが机に手を突き、前のめりになりながら尋ねる。
それに新菜は顔を赤くして小声でそれを止めようとしている。きっと原作の通りバストの事と勘違いしているのだろう。
「
「ひゃ、178センチです……」
「スッゴ~~っ、いいな~~!」
しかし質問の内容が身長の事だと分かると恥ずかしそうに縮こまっていた。
うんうん、新菜は悪くないぞ。主語がない海夢ちゃんのせいで勘違いしちゃったよな。
さて、海夢ちゃんのギャル特有の勢いに心寿ちゃんが押されているのでそろそろ助け舟を出そう。
「喜多川さん、落ち着いて。二人はまだ自己紹介もしてないでしょうが」
「やば、そうだった! ごめんね、心寿ちゃん。あたし、喜多川海夢。ヨロシクね!」
「申し遅れました。五条新菜です、よろしくお願いします」
「い、乾心寿です。よろしくお願いします……っ」
俺の言葉を受けてまだ名乗ってすらいない事に気付いた海夢ちゃんは着席し、しっかりと自己紹介をする。
それに新菜が続き、二人から挨拶を受けた心寿ちゃんは緊張のあまりか再度名乗って返している。そういうところも可愛いぞ。
「自己紹介もしましたし、とりあえずドリンクバーだけでも頼みませんか? あ、お二人の分は俺が出しますので」
「別にいいわよ、それくらい自分で出すから」
「まあまあ、今日は二人に色々教えてもらうので、そのお礼にという事で……」
「……わかったわ。お言葉に甘えさせてもらうわね」
俺が注文を提案すると共に乾姉妹にここは奢る事を伝えると、最初ジュジュ様は断ろうとするがこのセッティングの礼である事を伝えると少し間を置いた後に小さく笑って受け入れてくれた。
「えっ……い、いいのかな……?」
一方、心寿ちゃんは俺の様子を伺う様に恐る恐るといった表情でこちらを見てくる。
俺はそれに笑顔で頷いて返した。
「勿論。なんならデザートとかも頼んでいいからね」
「そ、そんなの悪いですよ……」
「いいからいいから。さっきジュジュさんにも言ったけど、今日は心寿ちゃんには色々教わるんだから」
初対面の人間だから仕方ないのかもしれないが、まだこちらに遠慮した様子を見せる心寿ちゃんに俺は笑顔のままそう言うと、心寿ちゃんもそれを受け入れてくれたのか、「……ありがとう、ございます」と小さく頭を下げた。
そうして俺達はドリンクバーを注文。飲み物を用意する間に軽い雑談を挟んで多少打ち解けたところで、海夢ちゃんが「心寿ちゃん、ジュジュサマの写真とかある⁉ もしよかったら見せて欲しいんだけどっ‼」と心寿ちゃんにねだった。
「はい、ちょっと待ってくださいね……っ」
言われるままにスマホを取り出した心寿ちゃんは、海夢ちゃんに見やすいように前に差し出した。
海夢ちゃんを挟むような形に座る俺と新菜も便乗して写真を拝見する。
「え、ヤバ……マジ、ヤバ……ヤバ……っ」
スワイプで次々流れてくるジュジュ様の写真。そのどれもが可愛さと美しさに溢れていた。
海夢ちゃんなんかあまりの尊さに顔を抑え、しかしガッツリ指を開いて写真をガン見してるし、ずっとヤバヤバ言ってる。
「これとかもお気に入りで……」
これまでジュジュ様を撮り続けてきた心寿ちゃん一押しのそれは確かに可愛さが際立っている。
これレタッチ使ってる? 使ってないとしたら天然でキラキラオーラとか出てるのかもしれない。
「~~っ、これ超可愛いーっ‼ マジで天使! ジュジュサマ激ヤバ~っ‼」
「喜多川さん、落ち着いて……っ」
「ホントに可愛いし、気持ちは分かるけどね」
両側から新菜と俺とで海夢ちゃんを落ち着かせる。
気持ちは分かるし、言ってる事には同意しかないんだけど、ここお店だからね?
騒がしい海夢ちゃんとは対照的に、ジュジュ様は落ち着き払った様子でゆっくりとコーヒーを飲んでいる。
「これ全部心寿ちゃんが撮ってるんだよね⁉」
「はい……っ」
「マジ凄いね! あたし心寿ちゃんの写真超好き!」
「あっ、ありがとうございます……っ」
笑顔で写真を褒める海夢ちゃんに心寿ちゃんも恥ずかしそうにしながら小さく笑みを浮かべた。
それを横目に見ていたジュジュ様はコーヒーカップをソーサーにゆっくりと置きながら言う。
「私は撮影を頼んだだけで、私のコスネームもアカウントもこの子が作ったのよ」
「ちょっと気になってたんだけど、お姉さんの名前と自分の名前から一文字ずつ取って『ジュジュ』にしたの?」
「は、はい……」
原作の頃から実は気になっていた名前の由来について俺が尋ねると、心寿ちゃんは控えめに頷く。
俺の知る限りでは名前の由来は登場しておらずただの考察でしかなかったが、どうやら当たっていたらしい。
「そうなんだ……いい名前だね。お姉さんと心寿ちゃん、二人だからこそ素敵な写真が撮れてるんだろうし、ピッタリだと思う」
「ホンそれ! てか月見里君の考え方良すぎ、マジエモいんですけど~!」
「あ、ありがとうございます……嬉しいです……っ」
俺の言葉に海夢ちゃんが激しく同意し、心寿ちゃんは嬉しそうに微笑む。
そんな様子を彼女の隣に座るジュジュ様も、海夢ちゃんの隣に座る新菜も温かい目で見つめていた。
「ちなみに、心寿さんはどうして乾さんのアカウントを作ろうと思ったんですか?」
ふと、『ジュジュ』という神レイヤーの誕生が心寿ちゃんによるものだった事を知った新菜が揃って心寿ちゃんへと尋ねる。海夢ちゃんも気になるようで、新菜に続いて心寿ちゃんへと視線を注いだ。
二人からの視線に晒された心寿ちゃんは再び背中を曲げて小さくなりながら、曖昧な笑みを浮かべながら語り始めた。
「えっと……お姉ちゃん、せっかくコスプレしして写真撮っても誰にも見せないから……『お姉ちゃんの可愛い写真を誰かに見て欲しい』って思って……お姉ちゃんにアカウント作っていいか相談したんです。そうしたらいっぱいいいねしてもらえて、たくさんの人がお姉ちゃんの事褒めてくれたんです……!」
心寿ちゃんは自身のスマホを操作してから俺達へと差し出す。
表示されているのはジュジュ様のツツキッターのアカウント。
フォロワー数は驚異の15万超え。コスプレ界隈では知らぬ者なしの神レイヤーだ。
……冷静に考えると、そんな人と今こうして一緒に居るって相当凄い事だよな?
あと、ジュジュ様の話をする時にちょっとテンション上がっちゃう心寿ちゃん可愛すぎ。
「けど、知らない人になんて返信すればいいのか分からなくて……全部無視しちゃって……」
「だから誰とも絡んでなかったんだ」
「結果論だけど、その対応で間違いないと思うよ。一律でそういう対応の方が炎上とかしないだろうし」
ジュジュ様のアカウントは本当にただコスプレの写真をアップしているだけだ。
日常的な投稿もないし、誰とも一切絡んでない。
その徹底的な姿勢がミステリアスな雰囲気として世間からは受け入れられているし、下手に炎上する事もない。
ネットリテラシー的にも良い対策ともいえる。
……ホント、二人には見習ってほしいなぁ。
「「? 何?」」
俺が横に視線を向けるとそれに気付いたわかまりの二人が揃って首を傾げる。
タイミング完璧じゃん、俺の推しカプが今日も可愛い。
「私は自己満足でやってるんだから、他人の評価なんてどうでもいいのよ」
「でもでもっ、『1万いいね』してもらえたり、フォロワーさんもたくさん増えたし、お姉ちゃんはやっぱり可愛いんだなって……私は、嬉しかったけどな……」
そうクールに言い切るジュジュ様に対して、心寿ちゃんの言葉にはどこか熱がこもっているのを感じる。
それだけ自分の大好きな姉を見て欲しい、知って欲しいという思いが強いのが聞いていた分かった。
その様子が微笑ましくて、俺はつい思ったままの言葉を口にしてしまう。
「心寿ちゃんは、お姉さんの事が好きなんだね」
「はいっ! 大好きですっ‼」
「……!」
その瞬間、彼女の全てが煌めいて見えた。
俺はふと、初めてイベントに参加した帰り道に電車の中で海夢ちゃんが言っていた言葉を思い出す。
『あたし、基本シュミだったりなんでもいーんだけど、好きな事して楽しんでる人めっちゃ好き。なんかキラキラしてるじゃん』
嗚呼、本当だ。本当に輝いている。
さっきまで恥ずかしそうに縮こまっていた子が、自分の姉が大好きなのだと宣言する時は溌溂としている。
背筋が伸び、不安げに泳いでいた瞳はキラキラと輝き真っ直ぐにこちらも見ている。
彼女の美しい輝きは今日見せてもらったジュジュ様の写真にも、雛人形の面相描きに取り組む新菜にも、キャラクターへの愛を語る海夢ちゃんにも負けないほどに強く、眩しかった。
「あー! ジュジュサマ嬉しそーっ!」
「……うっ、うるさいわね……っ!」
心寿ちゃんがどれだけ自分の事を好きなのか見せつけられたジュジュ様は照れ臭そうに視線を逸らす。
目敏く気付いた海夢ちゃんが
しかし、俺はそれに恥じる事は何もないと思う。
大切な家族に純粋な愛を向けて注ぎ、注がれる。それはとても尊い事なのだから。
だから俺は心寿ちゃんに言葉を贈る。
「心寿ちゃん。好きな事を好きって言うのは、人によっては難しい事だけど凄く素敵な事だから……その気持ち、大事にしてね」
「! ……はいっ!」
俺の言葉に、心寿ちゃんはまた輝くような笑顔を見せてくれた。
(奇麗だな)
自然と、心の中でそう思った。
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原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について
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内容的に違和感がなければ登場してほしい
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登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
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執筆者の自由にしたらいい
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原作準拠であまり出さないでほしい