多くの方に読んで頂き、そして高評価や感想を頂けてて本当に嬉しいです。
拙い文章ではありますが、これからも楽しく執筆させて頂こうかと思います。よろしくお願いします!
心寿ちゃんが如何にジュジュ様の事が好きなのかを知った後、今回の本題であるカメラについて心寿ちゃんに教えてもらう事になった。
「カメラはお父さんの一眼レフを借りてます」
ゴトッ、と重厚感のある音を立ててテーブルに置かれた一眼レフカメラ。
海夢ちゃんが目を輝かせ、食い入るようにカメラを眺める。
「カッコいい~! お父さん、カメラマンさんなの?」
「いえ、カメラが趣味なんです」
「鳥や風景を撮るのが好きなのよ」
心寿ちゃんの言葉に隣に座るジュジュ様が補足する。
二人のお父さんは
それを聞いた海夢ちゃんは「カッコイイ~、大人~っ!」とジュジュ様達のお父さんを褒めていた。
「これはレンズ交換しなくていいカメラなので便利です」
心寿ちゃんがカメラを起動させると、ウィーンと駆動音を立てながらレンズ部分が伸縮する。
男の子ってこういうギミック好きだよね。
俺? うん、大好きさ!
「レンズって交換するものなんですか?」
「はい、好みに合わせて変えられます。レンズを変えると同じようにとっても違いがあって面白いですよ」
新菜の質問に心寿ちゃんは「魚眼レンズだとこんな風に……」とネットで見つけた別のコスプレイヤーの写真を見せながら説明する。
普通の写真と比べると直線が歪曲したその写真は特徴的で、レンズの違いが如実に表れていた。
分かりやすくレンズ交換による表現の幅の広さを教えられた新菜、そして隣に座る海夢ちゃんは二人揃って「へー」と感嘆の声を漏らす。
そんな二人の反応を他所に、次に俺が心寿ちゃんへと質問を投げかけた。
「やっぱりスマホで撮影するのとは結構違うのかな? 最近のスマホは高性能で奇麗に写真が撮れたりするけど」
「はい。確かに最近はスマホでも高画質のものがありますけど、一眼レフの方が更に画質が良いと思います。なにより、出来る表現が多いです」
実は俺はスマホの性能はカメラ機能で選んでいるのだが(勿論理由はこの『着せ恋』の世界を堪能し、記録に残すためである)、やはり一眼レフカメラには劣るようだ。
心寿ちゃんは「例えば……」と今度はカメラを操作し、メモリに記録されているジュジュ様の写真を俺達に見せてくれる。
「花を背景に撮る場合、背景をぼかしてレイヤーさんを引き立てる事が出来たり、手前にある花をぼかして優しい雰囲気の写真が撮れたり……シャッタースピードを操作すれば散る花びらをブレずに写す事も出来ます」
説明しながら次々表示されるジュジュ様の写真は確かに心寿ちゃんの言う通り、同じキャラクターのコスプレ写真なのにそれぞれの写り方がまるで違っていた。
確かにこれは画質がいいだけでは無理な表現だ。お見事。
「いいな~! まじ楽しそ~!」
「はいっ!」
海夢ちゃんは自分が想像するよりもずっとカメラの表現方法の奥深さを知り、既にそれを楽しむ心寿ちゃんを笑顔で見つめる。
それに同じく笑顔で返す心寿ちゃんを見ていると、本当にジュジュ様を撮影する事が楽しいのだというのが伝わってきた。
心寿ちゃんがカメラに保存されている写真を眺める。
「イメージ通りに撮れたり、ふとしたいい表情が撮れると本当に嬉しくて……もっと上手に、もっともっと可愛く撮りたいってなります」
きっとそこには大好きな姉の写真が沢山記録されているのだろう。
カメラを見つめる心寿ちゃんの瞳はとても優しいもので、その後に華やいだ笑顔を浮かべる。
「しかも撮るのがジュジュサマってゆーね‼ アガるよねー!」
「はいっ!」
ジュジュ様のファンである海夢ちゃんは心寿ちゃんに強く共感し、ジュジュ様を撮影するのがどれだけ楽しいのかを語り合う。
自分の目の前で行われる褒め殺しにジュジュ様は恥ずかしさと気まずさに目線を逸らし、赤く染まった頬を隠すようにカップに口を付けていた。
「てゆーか――」
それに気付かないまま、海夢ちゃんはふと心寿ちゃんに純粋な疑問を投げかける。
「心寿ちゃんはコスしないの?」
その言葉に、心寿ちゃんの表情から笑顔が消えた。
「人がコスしてんの見るとさー、やりたくならない? 超可愛いし、楽しそーじゃん? 『自分も!』みたいな♡」
恐らく喜多川さん自身がそうなのだろう。
雫たんをはじめとする、数いるキャラクターに対する愛があるのは勿論だが、きっと他の人がコスプレをしている写真を見た事で『自分もしたい』という気持ちが高まったのかもしれない。
俺自身はコスプレをするつもりはないが、コスプレイベントで他の参加者が楽しそうにしていたのを見た身としては、そうなるであろう気持ちは何となく理解出来た。
「……私……」
「心寿もしたかったの?」
先程まで明るい笑顔でカメラでの撮影による表現の奥深さ、それらを活用して乾さんの写真を撮る事の楽しさを語っていた妹さんはその表情を一変させた。
黙り込んでしまった妹さんの様子を伺う様に乾さんが尋ねると、妹さんは表情が抜け落ちたような顔を乾さんに向けてその顔を見つめる。
「…………ううん……ないですっ……! したくならないです! お、お姉ちゃんを撮るのが好きなので……私はしません……」
乾さんを数秒見つめた妹さんはゆっくりと首を横に振ると、苦笑いを浮かべながら自分にコスプレをするという意思がない事を示した。
「そっちかー!」
「はい……!」
妹さんの言葉に喜多川さんは納得した様子で頷く。
乾さんも特に気にした様子はなく、少し残念そうな笑顔を浮かべて妹さんを見つめるに留まった。
しかし、俺は妹さんの言葉を素直に受け入れる事が出来なかった。
彼女の表情に小さな違和感を感じたからだ。
そこで俺はふと、喜多川さんの右隣に座る親友へと視線を向ける。
「…………」
その表情を見て、俺はこの違和感が勘違いでない事を確信した。何故なら――
(守優の目が、笑ってない……)
口元では絶えず笑みを浮かべている。彼の厚い眼鏡のレンズに隠された目を見なければ、喜多川さんと同じように笑顔を浮かべているように見えるだろう。
でも、俺はその目がどんなものか知っている。
まるで心を見透かすような、隠している本当の思いを見抜く瞳。
あの目に俺は何度強がりや嘘を暴かれ、そしてそれに救われただろう。
親友が、そんな目で妹さんの事を見つめている。そこから導き出される答えは一つしかない。
(きっと妹さんは本音を隠している……それはたぶん、乾さんの前だから……)
乾さんはコスプレに対してとても真剣な人だ。
それを考えると尻込みして本音を隠してしまうのも分からぬ話ではないと思う。
一番近くで乾さんの事を見てきた妹さんなら猶更だ。
(なんとかしてあげられないかな……)
今のところ、俺には何をどうしてあげればいいのか思いつかない。
けど、守優ならきっと何か……
「ねえ、心寿ちゃん。カメラちょっと触ってもいい?」
「どうぞ」
そんな事を考えているうちに話題は妹さんが持ってきたカメラへと移っていた。
妹さんの許可を得て、喜多川さんがカメラを持ち上げて構える。
二人が「試しに撮ってみてもいいかな?」「大丈夫ですよ」と短いやり取りをすると、喜多川さんは嬉しそうにカメラを向けてシャッターを切り始めた。
「カメラいいな~! あたしもキレーな背景ボケ撮りたいな~!」
妹さんや守優、俺や乾さんと次々写真を撮りながら喜多川さんは羨ましそうに声を上げる。
突然の撮影にビックリしてしまって、俺だけ何だか変な顔になってしまった……正直、ちょっと恥ずかしい……!
「お金貯めて絶対買おー」
カメラを手に力強く決意する喜多川さん。
そこで俺は一眼レフカメラというものがどの位お金が必要なのか気になり、スマホで検索した。
「一眼レフカメラっていくら位なんですかね……あ、あった……え?」
18万越え……?
「えぇ……っ⁉」
こっちは約30万……⁉
「えっ⁉ ええっ⁉」
77万⁉ こっちは100万超えてる‼
「しかもレンズ別売り⁉」
「ぎゃはははは‼ 声デカっ‼」
喜多川さんが隣で大笑いしているけど、それが気にならないほど俺は値段に圧倒されていた。
妹さんにカメラの性能の凄さを教えてもらったからある程度高額であるのは予想していたけど、こんなに高いなんて……!
「レンズ以外に三脚やストロボなんかも揃えるともっとするわよ」
「えええ……‼」
「ごじょー君、ドン引きじゃん」
カメラだけで数十万以上、そこにレンズやそれ以外の機材……いったい、どれだけお金がかかるんだろう。
そこでふと、喜多川さんや守優と共に訪れたコスプレイベントに参加していた人達の事を思い出す。
「この前のイベントで皆さんが持っていたものがこんなに高価なものだったなんて……」
「ヤバいよね~」
「ある意味コスプレするよりお金かかる趣味だよな、カメラって。でも少しでもいい写真を撮りたいって思う気持ちとか、その為にお金かけちゃうっていう気持ちはなんとなく分かるかも」
「確かに! いい写真撮れたらそれだけでアガりそう!」
カメラの高額さに圧倒される一方で守優の言葉にも納得できる部分がある。
俺が雫たんの衣装を作った際に生地に拘ったように、撮影が好きな人達はより良い一枚を撮る為にカメラにお金を掛けるのだろう。
……とはいえ、その為に数十万を注ぎ込むというのは中々だ。俺には真似できそうにない。
「まあ、お金が貯まるまではスマホで撮るって感じかなー」
「俺も~。貯金はしてきた方だけど、高額の買い物だからしっかり吟味しつつもう少し貯めときたいかも」
(喜多川さんも守優も買うのを躊躇うとかないんだ……)
当たり前のように購入前提で話をする友人達。
楽しそうに笑い合う二人に俺は少し置いてけぼりにされているのを感じた。
「カメラはピンキリだから、無理しすぎないものを選ぶのね」
「はーい」
ゆくゆくはカメラを買う事を決定した二人に乾さんはコーヒーを飲みながらアドバイスをする。
確かに乾さんが言う通り、カメラはどれも高額だが値段の差が大きい。高額なものほど性能が良いのは間違いないだろうが、求めるクオリティによってはオーバースペックになる可能性も十分考えられる話だ。
それを十分理解しているのか、後で後悔しないようにと助言をする乾さんに対して喜多川さんが笑顔で手を挙げながら了解の意を示す。
一方、守優は何か思いついたようで妹さんの方へと体を傾けた。
「心寿ちゃん、もしもの時は相談してもいいかな? カメラマンの先輩として、選ぶ基準とかの参考になって欲しいんだけど」
「は、はいっ。私でよければ……っ」
「ありがとう。助かるよ」
どうやらカメラを購入する際に妹さんの知恵を借りたいらしい。
有識者の視点でアドバイスをもらうのは買い物で失敗しない為にも有効だろう。
守優にお願いされた妹さんは一瞬戸惑う様子を見せつつも頷いて守優の相談に応じる事に了承し、自身の願いが聞き入れられた守優は笑顔で妹さんに礼を言った。
そんな二人のやり取りを俺や喜多川さん、そして乾さんとで眺めていると「そういえば」と乾さんは何かを思い出したように声を上げる。
「私達、週末にロケハンに行くんだけどあなた達も行く? スタジオを借りるのは初めてだから、一応下見をしておいた方がいいと思って」
ロケハンって確か、事前に現場の下見をする事だっけ?
高額なスタジオ代を払う以上当日は時間を無駄に出来ないだろうし、どんな雰囲気なのか事前にチェックするのは確かに重要だ。
「行く行く! 絶対行きたいんですけど‼ 行きます‼」
「左に同じく。よかったら参加させてください」
「是非よろしくお願いします」
元気よく挙手をする喜多川さん。隣では守優も控えめに手を挙げながら同行を希望する。
勿論俺もスタジオでの撮影がどんなものなのか気になるので、ロケハンに参加したい旨を伝えた。
「わかったわ。じゃあ、週末に新三郷駅で待ち合わせね」
「はーい!」
「ジュジュさん。今回はどんなスタジオを借りる予定なんですか?」
守優が乾さんに尋ねる。
そういえば、以前うちに来た時にはスタジオを借りるという話自体はしていたものの、どんな場所を借りるのかについては全く聞いていなかったな。
彼の質問でスタジオの詳細についての説明がまだだった事に気付いたようで、乾さんは「そういえば、まだ言ってなかったわね」と一言置いた後に今回利用するスタジオについて語る。
「今回借りるのは――廃病院スタジオよ」
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原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について
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内容的に違和感がなければ登場してほしい
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登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
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執筆者の自由にしたらいい
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原作準拠であまり出さないでほしい