その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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第35話『その転生者は応援する』

週末のロケハンを終え、休み明けから始まったテスト期間。

俺は前世でそれなりに勉強していた事や普段から予習復習をしている事もあり、危なげなく試験を終えた。

 

「月見里、お疲れー」

 

「あ、古賀。お疲れ~」

 

一息ついていると古賀が労いの言葉を掛けてくる。

俺もそれに返しながら古賀の方を見ると後ろには村上や柏木、森田の姿もあった。

 

「村上達もお疲れ~。森田、テストどうだった?」

 

「数学は間違いなく死んだ!」

 

俺の言葉に森田はキメ顔&グッドサインで返してきた。

なんて奴だ、もう死を受け入れている。

 

「カッコつけて言う台詞かよ」

 

「てか、お前二学期はマジで頑張らねぇと親にどやされっぞ」

 

開き直る森田に村上と柏木が冷静にツッコミを入れる。

しかし、無敵状態の森田にはまるで響いていない。本当に大丈夫なのだろうか?

まぁ、もしもの時は来期のテスト勉強見てやるか。

 

「それで、なんか用事?」

 

「やっと期末テストも終わったし『皆で飯でも行かね?』ってなってさ。月見里もどうよ?」

 

古賀に要件を尋ねると、どうやらテストが終わった事を祝して昼食で打ち上げをしようという事らしい。

今日は特に用事もなく断る理由もないので俺は喜んで頷いて返す。

 

「行く行く!」

 

「よっしゃ。そうだ、五条も誘って――」

 

俺とよく行動を共にしている新菜にも声を掛けようと、古賀が新菜の方に視線を向ける。

しかし、どうやら海夢ちゃんの方が少し早かったようだ。

 

「ごじょー君! 海行こーぜ! 今から!」

 

「……へ?」

 

突然の誘いに新菜は呆気に取られている。

とりあえず、原作通り二人きりで海に行くようなのでこちらとしては一安心。

新菜の人生初の海は海夢ちゃんと一緒じゃないとね!

そんな事を考えていると新菜が、そしてそれに続いて海夢ちゃんが俺の方を見てくる。

二人の視線から俺も一緒に誘おうとしている気配を察知したので、笑顔で手を振り返して暗に自分は見送る側に回る事を示した。

俺の反応を見てこちらの意図を理解してくれたのだろう。海夢ちゃんは新菜の手を引き、新菜が突然の接触に顔を赤くしながら引っ張られていく。

 

「……五条誘うのは無理そうだな」

 

「てか最近、喜多川と一緒にいる事多いよな。前のアレは解決したのか?」

 

慌ただしく教室を出ていく二人を見送り、古賀は新菜を誘うのを早々に諦めた。

村上は新菜と海夢ちゃんが以前気まずい状態だった事を気にかけてくれていたようで、詳細を知るであろう俺へと尋ねる。

 

「ああ、あの後ちゃんと解決したよ。お騒がせしてごめん」

 

「別にいいって。見た感じいい方向で片付いたみたいだし」

 

マスクで口元を隠している村上の表情は窺いにくいが、新菜達の関係が修復された事に安堵しているように見えた。

一方、事の詳細を知らない柏木と森田は軽く首を傾げている。

 

「五条と喜多川ってなんかあったのか?」

 

「確かに中間の前くらいに五条が喜多川の事避けてるっぽい日があったような……」

 

柏木はあの時の様子を覚えていたようだが、森田は全く気付いていなかったのか二人がすれ違いを起こしていた事すら知らないようだった。

既に解決した問題をわざわざ蒸し返す必要もないので、俺は些細な行き違いがあった事、既に解決済みなので心配はいらない事を簡単に説明する。

 

「てかお腹減ったからさ、早くなんか食べに行こうよ」

 

「そうだな。適当に近くのファミレスでいいか」

 

「「「「賛成ー」」」」

 

俺の催促に古賀が打ち上げ先を選ぶ。

俺を含め古賀以外の四人が賛成し、満場一致でファミレスで決定した。

そうして男子高校生五人組で最寄りのファミレスへと直行。

各々が好きな物を適当に注文し、数分後にはテーブルいっぱいに料理が並んだ。

 

「そんじゃ、期末テストお疲れってことで。乾杯」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

古賀の音頭でコップを鳴らし、それを皮切りに打ち上げという名の昼食が始まる。

 

「月見里、そのポテト俺も食っていい?」

 

「いいよー、食べな食べな」

 

俺が注文した大皿のポテトに森田が手を伸ばす。

森田に続き、柏木が皿に手を伸ばしてポテトを摘まみながらテーブルを眺める。

 

「てかめっちゃ注文するじゃん。そんな頼んで食いきれんのかよ?」

 

「元々皆でシェアするつもりで頼んだから」

 

ポテトや唐揚げ、サラダ等皆で分け合う前提で注文したものもある。

他のメンバーそれぞれ自分が食べるものだけを注文しているようだが、こういうのは皆で分け合うからこそ美味しいというのが俺の考えだ。

勿論、俺だけで食べるつもりで注文したものもあるが――

 

 

「俺だけで食べるつもりのやつなんてオムライスとカットステーキとハンバーグ位だし」

 

「それを平気な顔して一人で完食しようとしてるお前が怖えよ」

 

「あ、もし余ったらそれも俺が責任持って処理するから心配しなくていいぞ」

 

「俺が心配してんのはお前の胃の方なんだわ」

 

 

打てば響くような小気味いいテンポで突っ込んでくれる柏木に思わず笑顔が零れる。

こういうふざけたやり取り出来るのって楽しいよな。

ちなみにもしもの時に全部食べ切るつもりなのは本気だ。ストップ、フードロス。

 

「前から思ってたけど、月見里ってマジでよく食うよな」

 

「それ俺も思ってたわ。食った栄養どこ行っとんだ」

 

村上がカレーを、古賀がパスタをそれぞれ食べながら俺の方を見てくる。

 

「勿論この腕の筋肉に」

 

「全然ねー」

 

俺が袖を捲って力こぶを作って見せると古賀が鼻で笑ってくる。なにわろてんねん。

これでもれっきとした男なんだからちょっとはあるし。この中で一番ヒョロいだけだし。

内心で俺が不満を漏らしていると「そういえば」と古賀が何かを思い出したようで再び俺へと視線を向けてきた。

 

「月見里、眼鏡替えた? 先週のとちょっと違うだろ」

 

「よく気付いたな。これ、一つ前の眼鏡。一番新しいのはレンズが壊れちゃってさ(・・・・・・・・・・・)

 

だからちょっと度が合ってなくて見にくいんだよね。

俺が眼鏡を外しながら言うと、何故か四人が急に静かになった。

突然の様子に訝りつつ、眼鏡を掛け直せば全員がぽかんとした顔を浮かべている。

 

「「「「…………」」」」

 

「え、何? 怖いんだけど……」

 

「いや、何気に月見里の素顔見るの初めてだったけど、お前そんな顔だったんだな……」

 

村上が呆然としたまま俺の顔を見つめている。

確かに、皆の前で素顔晒したのは初めてだったかも。

 

「月見里、お前眼鏡変えないんか? 勿体ないぞ」

 

「そうかな? でも、この瓶底みたいなのに慣れちゃってるからなぁ」

 

イケメンで結構モテるタイプの古賀がそう言ってくれるという事は、本当に眼鏡を変えれば化けるのだろう。まぁ、俺は顔がいいからね!

しかし、先程古賀に言った通り、こういう分厚い眼鏡に慣れてしまっているので、よほどの事がない限りは今のスタイルを変えるつもりはない。

そんな事を考えながら視線を移すと、森田が何度か俺と柏木の顔を見比べているのに気付く。

 

「…………なんだよ」

 

柏木もそれに気付いたのか、森田を不審な目つきで見つめていた。

森田は慰めるような優しい笑顔を浮かべながら柏木の肩に手を置く。

 

「……元気出せ、四季。眼鏡キャラは月見里に完全に取られたかもしれないけど、お前には他にいいところが沢山あるって俺は知ってるから」

 

「いい度胸だな健星、表出ろ」

 

いったいどういう流れでその思考に行きついたのかは不明だが、森田は柏木をフォローしようとして見事に彼の逆鱗に触れたらしい。

二人が並んで座っていた事もあり、そのまま柏木は森田の首に腕を回し、チョークスリーパーへと移行する。

「ギブ! ギブ!」と森田が声を上げるが、柏木は聞く耳を持たずに森田の首を絞めあげた。

だが、二人の表情はどちらも口元が笑っているし、俺達や他の客の迷惑にならない程度に留めているので、ただじゃれているのか容易に察せられた。なので俺や古賀達もそれを止める事はしない。

 

(こういう風にバカやるのも楽しいし、ちょっと新鮮~)

 

新菜は真面目だし、海夢ちゃんは女の子だから男同士のようなやり取りをするのはちょっと難しい。

二人との交流に不満は一切ないし、二人だからこそできる交流もあるのでそれはよいのだが、やはりこういうおふざけは楽しいものだ。

 

(今頃、新菜と海夢ちゃんは二人で海を楽しんでるんだろうなぁ)

 

俺は今頃青春しているであろう二人の事を考えつつ、自身のスマホを操作する。

ライム起動して海夢ちゃんとの個人トークを開くと、俺が少し前に送ったコメントに既読が付いていた。

 

(ま、一応念の為にな……)

 

これを読んでくれているなら、海夢ちゃんも気兼ねなくやれるだろう。

今回のように二人だけで楽しんでもらって俺はその場にいない、という場面はこれから何度でもあるだろう。

それに一抹の寂しさはあるし、この目で直接見守れない事を無念に感じる事もあるはずだ。

 

(でも、推しカプが幸せならオッケーです!)

 

 

 

―――――☆―――――

 

 

 

「あたしと色んなとこ行こーよ! も、もーすぐ夏休みじゃん!」 

 

ごじょー君は小さい頃から雛人形や面相描きに没頭していて、行った事のない場所が沢山ある事を知った。

そして初めての海に感動するごじょー君の顔を見た時、あたしは『この人のこんな顔がもっと見たい』って思った。

 

「あたしっ、めっちゃ誘うし! だからあたしと……ふっ、二人で……!」

 

だからつい、言ってしまった。

月見里君も誘って三人で、じゃない。

ごじょー君とあたしの、二人だけで。

 

「いいんですか⁉ よろしくお願いします……! 嬉しいです……っ」

 

あたしの言葉にごじょー君は言葉の通り、ただただ嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「……あたし、何か喉乾いたなー……お茶飲んでくる……」

 

「ハイ」

 

その場にいる事が耐えられなくて、あたしは砂浜に置いた荷物へと歩いていく。

完全にごじょー君から背を向けたところで、あたしは思わず自分の顔を手で覆った。

 

(勢いで二人でとか言って……はぁ~~~~っ⁉ ヤバヤバのヤバ‼ 必死過ぎて草‼)

 

冷静に考えれば攻め過ぎじゃない⁉

普段三人一緒に遊んでるのに、二人きりでとか意識してるのバレバレじゃん⁉

 

(待ってけど夏休みめっちゃ会える♡♡♡♡ え、無理なんだけど♡♡ ヤバみ♡♡ てか顔赤いのバレてたら恥っず‼ 恥ず恥ず恥ず恥ずっ‼)

 

でもあの感じだと、ごじょー君はたぶん気付いてない。そういうところも好き♡♡♡

はぁ~、好き過ぎてしんどっ‼

とりあえず、一旦落ち着く為にあたしはお茶を手に取ろうとしてその横に置いてある自分のスマホへと視線が向いた。

あたしはスマホを手に取り、ライムを起動する。開いた月見里君との個人トークだ。

 

 

月見里守優

月見里守優

新菜とのデート楽しんでる?

月見里守優

前にも言ったと思うけど、新菜の事どんどん連れ回してやってね!

俺の事は気にしなくていいから!

月見里守優

応援してる!

 

 

 

『応援してる』。この言葉があったから、あたしは今ごじょー君にあんな風に誘えたのかもしれない。

月見里君はあたしがごじょー君に惹かれているのに気付いている。そして、あたしの事を応援してくれている。

それがなんだかとても心強く感じられた。

正直、月見里君に対してちょっぴり負い目を感じていたけど、当の本人がこうして応援してくれているのだ! 何も怖い事なんてない!

 

(これからもっと誘おっ!)

 

思わずグッと拳に力を込めながら、ごじょー君の方を見た。

今の季節には珍しい晴天から降り注ぐ陽光が、波打つ水平線で煌めいている。

その光に照らされるごじょー君を見て、ふと先日ロケハンで心寿ちゃんに教えてもらった撮影テクを思い出す。

 

『逆光オススメです』

 

スマホカメラをごじょー君に向けて、シャッターを押した。

カシャッとシャター音が鳴る。

 

「……あー、マジだ。めっちゃいいじゃん……」

 

煌めく水面に照らされるごじょー君の微笑みがスマホに保存される。

彼の笑顔は本当に奇麗で、あたしは思わずもっと撮りたくなってしまい、連射モードで撮影した。

カシャカシャカシャッ、と連続でシャッターが切られていくと同時に、ごじょー君が不意にバランスを崩して後ろに倒れ込む。

 

「ちょっ、ごじょー君大丈夫⁉ 何してんの⁉」

 

「も、もっと深くまで行こうとしたらワカメで滑ってしまって……」

 

ごじょー君は慌てて立ち上がりつつ、滑った原因であるワカメを持ち上げてこちらに見せてくる。

ワカメを持ち上げながら困ったような顔でこちらも見るごじょー君の姿が面白くて、あたしは思わず吹き出した。

 

「あははははっ‼ びしょびしょなんだけど‼」

 

「あ~、帰りどうしよう……」

 

予備の着替えなんか持ってきているはずもないごじょー君が困ったように自分の服の濡れ具合を確認する。

あたしはそれに笑いながら駆け寄った。

こういうハプニングも、過ぎればきっと楽しい思い出になる。

明るくて楽しくて幸せな思い出を、もっと彼と作っていきたい。

彼の親友も、そう願ってくれていると思うから。

 

 

 

 

.

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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