キリの良いところで区切ったので、今回もちょっと短めです。
どうも、まさかの人物とエンカウントして内心ドキドキだった守優です。
まさか眼鏡を買いに入ったお店にアオイさんがいるとは思わなかったわ。アニメだけでの登場、それもちょい役だったけどなんか印象に残ってたんだよね。
ともあれ、無事に眼鏡を購入。心寿ちゃんにも眼鏡をプレゼントしたが、とても似合ってて可愛い。思わず顔がにやけてしまう。
(勢いでお揃いのやつ買っちゃったけど、喜んでくれてよかった~)
正直まだお付き合いもしていないのにお揃いとか攻め過ぎてキモいかもしれないが、心寿ちゃんに贈るのはこの眼鏡が良いと思ったのだ。
これは完全に俺の我儘だし、もしあの時に心寿ちゃんが他のものを選ぶなら勿論それを尊重するつもりだったが、心寿ちゃんはそれを受け入れてくれたし、しかも鏡やガラスに自身の姿が映る度に嬉しそうに笑みを浮かべている。本当に可愛い。
「……えへへ」
「そんなに気に入ってくれた?」
昼食を摂ろうと入った喫茶店で心寿ちゃんが窓に映る自分を見てまた笑った。
その姿があまりにも尊くてこちらも思わず笑みが零れてしまいながら話しかけると、心寿ちゃんは小さく肩を跳ねさせた後に顔を赤らめる。
「は、はい……守優さんとお揃いなのが、嬉しくて……」
「……そっか」
背中を丸めて小さくなりながらも、否定する事なく喜びを口にしてくれる心寿ちゃんに俺は思わず顔を抑えて天井を仰いだ。
あ~、マジでこの子可愛すぎて尊い。
なんでこんなに可愛い子が俺の事好きなんだろう。分からん。
「お待たせしました」
俺が心寿ちゃんの可愛さに悶えているところに予め注文していた料理を店員さんが運んでくる。
「すみません、ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
礼を言うと店員さんが笑顔で一礼し、その場を離れる。
さて、丁度お腹も空いていたし早速いただくとしよう。
「「いただきます」」
心寿ちゃんと示し合わせて食事前の挨拶をしてから食事を開始する。
俺が頼んだのはボロネーゼ。パスタの上にハンバーグが乗ったボリューミーな一品だ。
ちなみに心寿ちゃんが選んだのはカルボナーラ。卵の黄身が上に載っていて食べる直前に割るタイプのものであっちも凄く美味しそう。
「ん、うま~」
「美味しいですね」
互いに料理に舌鼓を打ち、自然と笑みが綻ぶ。
美味しい料理を親しい人と一緒に味わう。俺はこの時間が結構好きだ。
某孤独な人が、好きに独りで静かな食事をとるも悪くはないが、個人的には誰かと一緒に食べたい派です。
生前は就職して独り立ちしてからは寂しい食事が続いてたからなぁ。
(ハンバーグも美味しい~)
フォークとナイフで切り分けたハンバーグを頬張ればあまりの美味しさに思わず表情が緩む。
「ふふっ」
ふと、心寿ちゃんがこちらを見て笑う。
食事中だからか手で口元を隠して上品に笑う心寿ちゃんに俺はその笑顔の理由が分からず首を傾げた。
「心寿ちゃん、どうかした?」
「すみません。ただ、守優さんって美味しそうにご飯を食べるなって思って……」
「そうかな?」
「はい。それから凄く食べるのが奇麗だなって思います」
そう言って笑みを深める心寿ちゃん。
その言葉を素直に受け取りつつ、俺は振り返る。
「ありがとう。俺のおばあちゃんが
俺の今のばあちゃんはとても優しい人だが、同時に真面目で特に食事の所作についてはとても細やかな人なのだ。
ばあちゃん曰く、『食材や作ってくれた人への感謝や礼儀を欠かさぬ為にも食事は奇麗に食べなければいけない』という事らしい。
俺としてもその考え方には大いに賛成だったし、その話を聞いてから食事の所作にも気を付けるようにしている。
「素敵なおばあさんですね」
俺の話を静かに聞いてくれていた心寿ちゃんが柔らかく微笑む。
今の家族が俺は大好きなので、それを大好きな人が褒めてくれるのがたまらなく嬉しい。
「うん、自慢の家族だよ」
釣られて笑いながら、俺は
「ところでさ……」
「はい?」
「ハニートースト頼んでもいいかな?」
「えぇっ⁉」
思わず声を上げてしまった私の反応に守優さんが顔を赤くしながら「ごめんね、これホント美味しそうだったから……!」と頼んだのは食パンを一斤使い、その上にアイスやチョコレート、果物にホイップクリームとたっぷりデコレーションされた王道のハニートースト。
「わぁ、すげぇ~。めっちゃ美味しそう~」
目を輝かせてハニートーストを見つめる守優さん。
その姿がまるで子供のようで思わず笑ってしまったが、当の本人はそれに気付かずスマホでハニートーストの写真を撮影している。
たぶん今日の夜には彼のツツキッターでこのハニートーストの写真がアップされるのだろう。
「いただきます……ん~、美味しい~」
ナイフでトーストの一角を切り分け、アイスをそれに盛り付けて味わう守優さん。
本当に奇麗に、そして美味しそうに食べる守優さんを私は静かに見つめる。
いつもは分厚いレンズに隠された瞳が露わになった事で表情が分かりやすくなったその顔には今が幸せなのだというのがありありと表れていた。
(可愛い……♡)
いつも落ち着いていてクールなお姉ちゃんとは違う、感情がそのまま出てきているような守優さんの顔を眺めながら思う。
合わせの時に見せていたかっこよくて頼もしい姿とは違う、私の知らない新たな一面を見せてもらえた事が嬉しくて仕方ない。
(今日、デートに誘ってよかった……!)
守優さんの眼鏡を壊してしまった事は本当に申し訳なく思っているし反省もしているが、それが切欠でこんなに素敵な時間を過ごせるなんて夢のよう。
「あの席の二人カップルかな? お揃いの眼鏡しているの可愛い~」
「彼氏君の方イケメンっていうかめっちゃ奇麗な顔してない?」
「わかる~、いいな~」
遠くの席で二人の女性客の話し声が聞こえる。
たぶん、私達の事を言っているのだろう。
(か、カップルって……思われてる……!)
お姉さん達の会話に鼓動が早くなるのを感じた。
残念ながら現実はそうではないけれど、そう見間違われる程度には釣り合えているのだと嬉しくなる。
(どうしよう……! 顔、赤くなったりしてないかな……⁉)
「心寿ちゃん」
「は、はいっ」
窓を見てそれに映る自分の顔を見ようとしたところで守優さんに声を掛けられ、私は慌ててそちらを向いた。
「このハニートーストめっちゃ美味しいよ。心寿ちゃんもよかったら少しどう?」
どうやらハニートーストをお裾分けしたくて声を掛けてくれたみたい。
彼の優しさに触れて少し気持ちが落ち着いた私は、せっかくだからと頷く。
「はい、いただいてもいいですか?」
「勿論。ちょっと待ってね」
私の言葉に笑顔で頷いた守優さんが新しいナイフとフォークを手に取り、自分が食べていた場所とは反対側の部分を切り分け始めた。
トーストを切り分けて小皿へ移し、その上に器用にホイップクリームやアイス等を盛り付ける守優さんを眺めなつつ、心の内でポツリと呟く。
(カップルなら、こういう時……あ、あ、『あーん』ってするのかな……⁉)
“烈‼”では颯馬お兄ちゃんがやってたし……!
……その時の相手はミライちゃんだったけど。
「心寿ちゃん」
「あ、すみません。ありがとうございます」
女の子なら多くの人が憧れるであろうシチュエーションに想いを馳せるが、今の私には当てはまらないものだ。
再び守優さんに呼ばれた事もあり、私は意識を現実へと引き戻そうとして――
「はい、あーん」
「…………へぇ?」
明後日の方向に手放してしまった。
守優さんが切り分けてくれたトーストを更に一口大に切り、フォークに刺してこちらへと差し出している。
目の前で何が起きているのか分からず、私はパニックを通り越して頭の中が真っ白になってしまった。
「ほらほら、アイス零れちゃうから。口開けて」
笑顔で何か言っている守優さんの言葉に私の口がぽかりと開き、その隙間へと彼はトーストを放り込んだ。
反射的に咀嚼し、そして甘味が口の中に広がる。
「どう? 美味しいでしょう?」
そう尋ねてくる守優さんの笑顔は、どこか意地悪な笑顔で。
その表情から漸く、彼が私の事を揶揄っているのが理解できた。
「~~~~ッ、守優さん……!」
「あははっ」
顔が熱くなるのを感じながら、思わず彼の名を呼ぶ。
守優さんは私の声にしっかりと耳を傾けながら、それに応じる事なく笑っている。
図らずも、私はまた彼の新たな一面を見る事になった。
この甘さと彼の悪戯な笑みを、私はきっと忘れない。
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原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について
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内容的に違和感がなければ登場してほしい
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登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
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執筆者の自由にしたらいい
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原作準拠であまり出さないでほしい