その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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第66話『その転生者は装備する』

『おっぱいは装備できる』。

あまね君のパワーワードの真相を知る為、彼の案内で俺達が向かったのは大手のアニメグッズ専門店・アニメイトが展開しているコスプレグッズを専門とするお店・アコス。

マーリンシティの目と鼻の先にあるその店に入るとお目当てのものはすぐに見つかった。

 

「はいこれ、おっぱいNEOsister(ネオシスター)

 

「「「おお~」」」

 

思わず三人揃って感嘆の声を漏らす。

原作でその存在は知っていたが、実物は想像以上に色合いや肌感がリアルに近い。

 

「あの胸はこれだったんですね」

 

()っご! マジデカい!」

 

「よく見たらサイズとか肌色とかで色々種類があるんですね」

 

「どれも女性用だけどね。僕は着れちゃったけど」

 

そう言って笑いながら、あまね君は手に持ったおっぱいNEOsisterの有用性についての説明を続けた。

 

「二次元のキャラって物凄く胸が大きいでしょ? あれを再現するのに詰め物をするのが大変だったんだけど、これは付けるだけで済んじゃうから凄く楽になったよ」

 

「確かに雫たんの胸、ヌーブラだけじゃ無理だったな~。2枚も重ねたのに」

 

初めてコスイベに参加した時の事を海夢ちゃんが振り返る。

雫たんはエロゲーのキャラらしく豊満な胸の持ち主だ。

スタイル抜群な海夢ちゃんがヌーブラを重ねて使っても再現が出来なかったあの巨乳をこれ一つで解決出来るというのは画期的と言えるだろう。

それにしても、コスイベ初参加の時かぁ……

 

「そのせいで衣装が破れそうになって大変だったよね」

 

「そうそう。あの時はマジで焦った~」

 

「あはは……」

 

俺は事前に流れは知っていたし出来る限りの対策もしておいたので何ともなかったが、あの日のアクシデントを思い返さずにはいられない。

当の本人である海夢ちゃんは何でもないように大笑いし、その隣にいる新菜が若干頬を赤くして曖昧な笑みを浮かべている。

 

「あと、胸元の開いたキャラのコスしたいけど肌は出したくないって時にもいいよね」

 

「露出してるのに露出してない的な⁉」

 

「うん。例えばー……」

 

海夢ちゃんの言葉に頷いたあまね君がおっぱいNEOsisterを手に俺の方を見た(・・・・・・)

 

「みさと君、ちょっとごめんね」

 

「あ、はい」

 

てっきり新菜につけるのかと思っていた俺はされるがままにおっぱいを装備させられる。

あれかな、女性用だし原作みたいに新菜に付けるより体格が違い俺の方がいいと思ったのかな?

 

「……こんな風に!」

 

使い慣れているからか手際よく俺におっぱいを装備させたあまね君は何故か最後に俺のジャケットの前を閉じる。

……あの、これおっぱいNEOsisterと服の境目が隠れるから下手したら裸にジャケット着てるみたいになりません?

 

「ちょっ、月見里君めっちゃ巨乳なんですけど‼」

 

俺が内心でちょっと困惑してるのを他所に、海夢ちゃんが原作同様実際におっぱいNEOsisterを装備した姿に目を輝かせる。

そのまま海夢ちゃんは俺の目の前までやって来ると興奮気味に両手で胸を鷲掴み揉みしだいた。

 

「触っていい⁉ 何カップあんの⁉ G⁉」

 

「き、喜多川さん……! 声が大きいですよ……! それにそんなに激しく……‼」

 

テンションが高まるあまり俺の返事も待たずにもみもみと胸を揉み続ける海夢ちゃんに新菜が顔を真っ赤にして注意する。

正直新菜が胸も揉みしだかれて恥ずかしがる姿を見たかったが、こうして目の前で推し達が原作と違うやり取りをするのを見られたのでヨシ!

というわけで、俺もこの流れに乗って楽しむ事にする。

 

「いや~ん、喜多川さんのエッチ~!」

 

「アニメでよくあるやつだ!」

 

「ははははっ!」

 

俺がわざとらしく恥ずかしがれば、そのお約束な反応に海夢ちゃんが続き、俺達のやり取りにあまね君が笑う。

俺や海夢ちゃんは勿論、あまね君もこういう定番のやり取りには理解があるようなので三人でふざける事が出来るが、それを知らない新菜は終始顔を真っ赤にして居心地が悪そうにモジモジしていた。

 

「新菜……」

 

「な、なに……?」

 

そんな新菜に声を掛けると彼はドキリと肩を跳ねさせ、顔を赤くしたまま会話に応じる。

視線を逸らし、一瞬こちらを向いてはまた視線を逸らすという挙動不審な幼馴染を案じて、俺は一言言葉を掛けた。

 

 

大丈夫? おっぱい揉む?

 

揉まないよ⁉

 

 

新菜は顔を真っ赤にして声を上げた。ウケる。

ちなみに海夢ちゃんとあまね君も大爆笑してた。やったね。

 

 

 

 

―――――☆―――――

 

 

 

 

姫野さんに教えてもらったおっぱいNEOsisterを使った守優にからかわれた後、俺は近くのコーナーに姫野さんが着ている衣装が展示されているのに気付いた。

 

「姫野さんの着てる衣装だ……」

 

「ほんとだーっ、可愛い~♡」

 

「あまねさんが今着てる衣装ももしかして……?」

 

「うん、ここで買ったよ」

 

衣装に近付いてマジマジとその衣装を観察する喜多川さんの後ろで守優が姫野さんに尋ねると、彼は頷いて今着ている衣装は既製品である事を教えてくれた。

 

「そうなんですね! 俺、完成品が売ってる店初めてです!」

 

まだまだ経験が浅い未熟者ではあるが、これまで喜多川さんや乾さんの依頼で衣装を作り続けてきた者としては完成した衣装が売られているというのはある意味新鮮だ。

近くで衣装を観察すると、その出来の良さがよく分かり非常に勉強になる。

 

「雫たんの衣装って売ってないからあたしも来るの何気に初だなー」

 

「そっか、二人は自作してるから衣装買わないんだ」

 

俺の隣で一緒に既製品の衣装を眺めながら呟く喜多川さんの言葉に姫野さんが反応する。

そして、「自作してるなら3階にも行ってみる?」と俺達に提案をしてきた。

姫野さんの案内に続いて移動すると、そこにあったのは――

 

「けっ……化粧品だ……っ‼」

 

「これ全部コス用⁉」

 

「凄い数だなぁ……」

 

膨大な数の化粧品に俺だけでなく喜多川さんや守優も圧倒される。

これまで薬局で購入してきたものとはまるで違う、色一つとっても細かく分かれているそれらに俺は目を奪われた。

 

「見た事ない物がこんなにたくさん……‼」

 

「舞台用はこういうお店でないと中々見ないよね。プロ用でカバーが高くて汗にも強いんだよ。あと、写真になった時の発色が奇麗だよ」

 

「本当ですか⁉」

 

衣装と季節によっては汗をかく事は多いだろうし、なによりコスプレと撮影は切っても切れないものだ。メイクが崩れず写真写りも良くなるなら買わない手はない。

 

「俺買おう……! 試してみたい……!」

 

「買っちゃえ買っちゃえ!」

 

喜多川さんの言葉に後押しされた俺の手は次々と化粧品達に伸びていった。

12色のつけまつ毛に22色もあるメイクパレット。ペンシルは26色……とにかく色の種類が多く、メイクで細かい色使いが出来る事が分かる。

喜多川さんのメイクだけじゃなく、雛人形の面相描きにも転用が出来そうだ。

嗚呼、こんなお店があるなんてもっと早く知りたかったなぁ!

 

「思いのほか本気買いしててウケるんだけど」

 

「ホント雛人形バカだなぁ」

 

「あははっ」

 

喜多川さん達がなにか言っていたような気がするけど、それが気にならない程に俺は買い物を楽しんでいた。

 

「ごじょー君、あたしカラコン見てくるね~」

 

「ハイ!」

 

化粧品コーナーを満喫したところで喜多川さんはカラーコンタクトレンズのコーナーへと向かった。

化粧品でもこれだけの数だ、きっとあちらも相当な種類があるに違いない。

 

「あまねさん、奥には何が売ってるんですか?」

 

「奥はキャラウィッグの棚だよ。見に行く?」

 

「はい」

 

「あ、俺も行きます」

 

守優が奥の棚に興味を示し、姫野さんの案内でそちらに移動する事になった。

姫野さんの言葉の通り、そこには多種多様なウィッグが並べられている。

しかし、そのどれもが俺の想像とはまるで違う個性的なデザインだった。

 

「スワローテイルさんで俺がいつも買ってる物と雰囲気が違いますね……」

 

「キャラウィッグは一から作らなくてもいいように加工済みだからね。これとかもこのまま付けるだけなんだ」

 

「それ取り外せるんですか⁉」

 

パチンッと音を立てて姫野さんのウィッグからリボン状の髪だけ取り外される。

ウィッグは作り物だから出来ない事はないのだろうが、それ一つで完成されているイメージがあったために一部分だけ取り外せるというのは衝撃だ。

 

「僕器用じゃないから、ウィッグカットや衣装なんてとてもじゃないけど本当に全然作れないんだ」

 

取り外したパーツを再び取り付けながら、姫野さんは続ける。

 

「でも、こういう専門店のおかげで全部揃える事が出来るでしょ? ここに来ればやりたいと思った時にすぐコスプレが出来るんだ。自作出来ない人や時間が取れない人の味方になってくれるんだよね」

 

「確かにこうやって出来上がってる物があるのって、そのコスプレをしたい人にとって凄くありがたいですよね。個人的にコスプレってコスをするよりその準備が大変なイメージがあったんですけど、こういうグッズがあるとそのハードルが下がるような気がします」

 

「そうそう!」

 

守優の共感の言葉に姫野さんが嬉しそうに頷くのを見て、俺はふと喜多川さんの手伝いをするきっかけになった日を思い出した。

喜多川さんが雫たんの衣装を作るのに苦労していたように、誰もが衣装を作れるわけではない。

知識や技術の事もあれば、仕事や学業に忙しい人は準備に費やす時間が惜しい事もあるだろう。

それが仕方がない事だとは分かっているが、自分の好きなものを表現できるコスプレをそんな理由で諦めてしまうのは勿体ないと思う。

 

 

「誰でもコスプレが楽しめるって後押ししてくれてるみたいで、なんか嬉しいんだ」

 

「……ハイ!」

 

 

だから、姫野さんがこうしてコスプレを楽しんでいるのが自分の事のように嬉しく思えた。

視線を向ければ、守優も優しい眼差しで姫野さんの事を見つめている。きっと俺と同じ事を考えているのだろう。

彼は俺以上に他人の幸せを願って、それを喜べる人だから。

その後俺達は姫野さんに教えてもらいながら更に店内を見て回った。

 

(楽しいな)

 

喜多川さんが姫野さんに質問して、二人で笑い合っている。

姫野さんは俺達が知らない事をたくさん知っていて、だけど時には俺や喜多川さんが知っている事もあって。

そうやって情報を交換したり、教えてもらったりするこの時間が凄く楽しく感じられた。

 

(俺も色々試してみたい)

 

コスプレというものに携わるまで、俺の興味は雛人形だけだった。

だけど今は、もっと他の事にも挑戦してみたい。

そんな時、俺はふと一つのコーナーに目が留まった。

 

「これ、なんだろう……?」

 

何故目に留まったのかは分からない。

雛人形作りという仕事が身近になるからだろうか?

これまでのコスプレ界隈でも見た事がなかったからなのか?

理由は定かではないけれど……

 

 

「COSボード…………造形……?」

 

 

挑戦したいという小さな熱が、心のどこかに灯った気がした。

それが数か月後の未来に大きな変化をもたらす事を、俺はまだ知らない。

 

 

 

 

.

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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