その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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更新が遅くなって申し訳ありません。
内容が長くなってしまったので、切り分けたいと思います。なので今回はちょっと短めです。
続きは今夜中にアップします。


第67話『そのコスプレイヤー達は撮影する』

「撮りますよー」

 

カシャッ

 

アコスでの散策・買い物を終えた俺達はマーリンシティへと戻り、撮影が許可された区画に移動した。

今は海夢ちゃんとあまね君のツーショットを新菜が撮影している。

 

「チェキ再現嬉しみ~♡♡」

 

新菜からスマホを受け取った海夢ちゃんがその写真の出来栄えに頬を緩ませる。

写真の内容は海夢ちゃんだけが片手でハートの半分を作っており、あまね君はそれを無視して笑顔でピースサインをしている。

一方だけが愛を向けた片想いのように見える構図なのに、どこか不思議な味わいのある一枚になっていた。

 

「あたし、すばるんがファンサほぼ塩なのマジ好きなんですよ‼ マネージャーに一途で男絡みいらん的な!」

 

「おっとり顔なのに割と気が強いいいよね~」

 

原作を再現したそのポーズに二人は大満足なようで、楽しそうに写真を見つめながらすばるんの良さを語っている。

一方まだまだそういった方面の知識が浅い新菜は「塩……?」と困惑気味に呟いていた。

ちなみに俺もそういうすばるんが大好きだけど、一番の押しは北斗ちゃんです。笑顔で中指立てられたい。

 

「何かされたら絶対やり返しますもんね――あぅっ」

 

ピリッと小さい音を立てて海夢ちゃんの目元のテーピングが僅かに剥がれる。

あまね君との撮影や会話が楽しすぎてニヤケっぱなしだったせいでテーピングが耐えられなかったようだ。

 

「ヤバッ‼ テーピング剥がれたんだけど‼ ニヤけすぎた……‼」

 

「えぇ~っ⁉ 直すのでじっとしててください……‼」

 

「り‼」

 

剥がれたテーピングを新菜が慌てて直す。

 

「……ふふっ」

 

新菜と海夢ちゃんが慌ただしく、しかしどこか楽しそうしながらテーピングを直す二人をあまね君が静かに見つめた後に柔らかく微笑んだ。

俺は静かに彼の隣に立ち、声を掛ける。

 

「二人の事が気になりますか?」

 

「……うん」

 

俺の言葉にあまね君は視線をそのままに小さく頷く。

彼の表情は穏やかで、しかしその瞳の奥にはどこか寂しさを感じさせた。

 

「僕はこれまで一人でコスプレをして、ああやって一緒に楽しめる人がいなかったから……だから、いいなぁって思って……」

 

その羨望の眼差しの向こうで戯れる新菜達を見て、俺はなるほどと心の中で頷く。

あまね君は今回のイベントが初の参加だと言っていたし、誰かと共にコスプレを楽しむという経験がなかったのだろう。

SNS上では少しずつ知名度を上げており、中には交流している人物もいるのだろうがそれはあくまでネットの中でのものだ。

新菜達のように準備や撮影を共有できる人がいる喜びをあまね君は知らない。

 

 

「じゃあ、これから楽しんでいけばいいですよ」

 

 

だが、そんな勿体ないのは今日までだ。

 

「え?」

 

「次にどんなコスプレするか話して、必要なら一緒に準備して……撮影やイベントの参加だって、誘って一緒に楽しんじゃえばいいんです」

 

「……いいのかな?」

 

「せっかくお友達になれたんです。共通して好きなものがあるなら、遠慮せずに一緒に楽しんじゃいましょうよ」

 

あまね君の躊躇うように零れた言葉に俺は笑って返す。

彼の表情には俺の言葉を嬉しく思う一方で『それに甘えていいのだろうか?』というような遠慮や困惑が窺えた。

確かに今日あったばかり、しかも年下が相手では気を遣ってしまうのも仕方ない。

だが、この短い時間だけでもあまね君がコスプレを楽しんでいるのは十分伝わったし、わかまりや乾姉妹との交流で人と関わる事で生まれる楽しさを知った身としてはあまね君にもそれを知ってもらいたい。

 

「勿論人には相性があるし、人付き合いなんて誰かに強制されてするものじゃないですけど……でも俺はあまねさんともっと仲良くなりたいし、俺の大好きな友達とも仲良くなって欲しいです」

 

「…………」

 

俺の言葉に対するあまね君の返答はないが、今はそれでいい。

どう考えて行動するかはあまね君の自由。

俺の考えはあくまで個人的なもので、原作を知っているとはいえその流れに沿う為に強要するような事は出来ないのだから。

 

(まぁ、でも……たぶん大丈夫かな……)

 

新菜達を見つめるあまね君の瞳がどこまでも優しく、そして輝いているのが見えた。

 

「あのー、お写真一緒に良いですか?」

 

あまね君と二人で海夢ちゃんのテーピングの修正が終わるのを待っていると、突然声を掛けられる。

思わず揃ってそちらに視線を向けると、相手は二人組の女性だった。

 

西蓮寺(さいれんじ)(はるか)(いちじく)星波(せな)だ‼ 総選挙2位と3位と5位が揃ってる‼ 超豪華じゃん‼」

 

俺やあまね君より先に反応する海夢ちゃんには流石という他ない。

それはそれとして、海夢ちゃんの言葉には同意しかないしマジで目の保養。三人ともめっちゃ可愛い。

 

「すばるんコス、とっても似合ってて可愛いです!」

 

「撮影お願いします!」

 

薄紫のショートヘアと色違いの一房の髪が特徴的な西蓮寺悠、黄緑色のゆるふわなロングヘアが特徴的な九星波。多種多様な美少女が登場する『コスラバ』の中でもトップレベルの人気を誇る二人のコスプレをした女性レイヤー達があまね君のクオリティを褒めつつ撮影を依頼する。

 

「ありがとうございます。でも、僕……男で女装なんです。お二人に混ざっても問題ないですか?」

 

「「おっ……⁉」」

 

女性レイヤー達からの高い評価にあまね君が笑顔で一礼しつつ、男である自分が撮影に入ってもよいのか尋ねる。

あまね君の可憐さとコスのクオリティに彼が男性であるなど考えもしていなかったのだろう。二人組の女性は目を見開いて数秒固まり、

 

 

推せる‼

 

ありがとうございます‼

 

 

新たな推しの存在に出会えた事に感謝した。

 

「えっえ……え⁉ ホントに⁉ 全然わかりませんでした……え⁉ えぇっ⁉」

 

「すみません、近くで見ていいですか⁉ 凄い……可愛いって事しか分からない……‼ 感動……っっっ‼」

 

その可愛さに驚愕する二人が興奮しながらあまね君を褒めちぎる。

あまね君はその賛辞の嵐に照れるのを通り越して困惑気味だ。

 

「めっちゃ分かりみ」

 

「わかるマーン」

 

(わかるマン……?)

 

あまね君は可愛いという認識を共有できた俺と海夢ちゃんが笑顔で三人の様子を見守る。

一方新菜は俺の隣で首を傾げていた。おい、あまね君は可愛いだろ! 分かれ!

俺の念が届いたのか新菜は冷や汗をかきながら「よ、よろしければ撮りましょうか……っ?」と逃げるように『コスラバ』コスの三人の撮影を申し出て対応にあたった。

 

「……いかがでしょうか? 確認お願いします」

 

「ン゙ッッ♡ 最高です……‼♡」

 

「ありがとうございます‼ 作務衣コスのお兄さん‼」

 

撮影を行った新菜からスマホを受け取ると悠コスをした女性がその写真の尊さに声を漏らし、星波コスの女性が新菜の私服をコスプレと勘違いしつつも礼を言う。

それに新菜がコスプレではなく私服である事を告げると「私服⁉ エモい‼」と奇異の目で見る事なく、その良さを褒めた。

俺の隣では海夢ちゃんがだらしない笑顔で新菜達のやり取りを見守っている。きっと内心で「日常パートめっちゃすこ~♡ コスイベに感謝~♡」なんて考えているに違いない。

個人的には海夢ちゃんの心の声に同意しかないが、新菜の私服が自然に受け入れられているところも好きだったりする。

 

「俺も撮影お願いしていいですか? 出来れば皆さんと一緒に撮りたいんですが……」

 

それはそれとして、微課金勢ながら『コスラバ』プレイヤーである俺としてはこのチャンスを逃すわけにはいかないのであまね君を含めた三人に撮影を依頼した。

俺の依頼にあまね君は笑顔で頷いて了承しつつ、悠コスと星波コスの二人にも確認を取ろうと視線を向ける。

 

「うん、僕は大丈夫。お二人は――」

 

「美人……‼」

 

「しかも俺っ娘……‼」

 

二人は俺を見て固まっていた。

どうやらまた女性だと勘違いされているらしい。最近こういうの多いな。

まぁ、素材がいいし今日はおしゃれ眼鏡だし、なによりあまね君にメイクしてもらってるからね。

 

「すみません、俺も男なんです。色々あってそちらのすばるんレイヤーさんにメイクしてもらっただけで……」

 

「こっちも⁉ 推せる‼」

 

「ありがとございます‼」

 

勘違いさせたままなのもアレなので訂正すると、俺まで推される事に。なんでさ。

とりあえず、三人から了承を貰えた俺はこの後滅茶苦茶一緒に撮影してもらった。

 

 

 

 

.

原作に登場しないキャラクター(主人公の身内や乾家両親、アオイさん等)の登場・オリジナル設定について

  • 内容的に違和感がなければ登場してほしい
  • 登場するのはいいが必要最低限にしてほしい
  • 執筆者の自由にしたらいい
  • 原作準拠であまり出さないでほしい
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