その転生者は見届ける   作:街中@鈍感力

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第73話『そのオタクギャルは意地悪する』

五条新菜

五条新菜

明日俺の家に

来てもらってもいいですか?

五条新菜

土曜なのにすみません

行く行く♥♥♥♥♥♥

♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥

既読

全然ヨユーだし~♥♥♥

既読

 

 

 

ごじょー君から突然ライムが送られてきたのが、“こちカン”とバニーの良さを布教しつつありしゃのコス衣装をお願いしてから一週間ほど経ったある日の夜。

 

「はっ⁉ えっ⁉ なんで⁉ 行くけど‼♡♡♡♡」

 

あまりにも突然、しかも何気に初のお誘いにあたしは秒で返信。

その後は興奮のあまり中々寝付けず、“こちカン”をまた一から見直した。

そんなこんなで朝を迎えてごじょー君のお家にお邪魔したあたしは――

 

「あーね……」

 

部屋の隅に体育座りのように座り込むごじょー君とペロンとめくれて崩れたバニースーツを眺めていた。

 

「昨日のって、衣装の事だったんだ……」

 

「そうです……」

 

自分が家に招かれた理由を察しながら呟くと、ごじょー君が覇気のない声で肯定する。

これまで見た事がない落ち込みっぷりは正直心配だが、正直あたしとしては好きピとのおうちデートを期待していたわけで……

 

「なーんだ、あたし完全にお――……っ、な、なんでもないから!」

 

(おうちデートに誘われたのかと思って超ぉ~~ウッキウキで来ちゃってバカかよ……恥っず~~)

 

「?」

 

思わず口をついて出そうになった言葉を飲み込んで誤魔化す。

どうやらごじょー君は何の事か分からない様子で小さく首を傾げるだけだった。

 

「他は問題なく終わってるんですが……肝心のスーツがこの有り様で……サイズも喜多川さんに合わせて作ったはずなのに、どうしてもずり落ちてしまうんです……」

 

内心で胸を撫で下ろしているあたしをよそにごじょー君が自分のスマホを取り出すと、ありしゃのバニースーツがめくれているお色気ギャグシーンが写った画面と目の前の衣装を何度も見比べる。

アニメの中でそうなっているようにバニースーツがめくれてしまうのは仕方ないが、ただ着るだけでこうなってしまっては流石に衣装として成立しないだろう。

 

「どうしてこうなってしまうのか本当に分からないし、俺一人で解決出来なくて……裏地もアニメで見た通りに作ってみたんです。なのに……っ、全然分からない……っ」

 

「ごじょー君、一旦落ち着こ?」

 

その言葉を最後に彼は頭を抱えて蹲ってしまった。

なんだかんだ言ってこれまで問題なく衣装を作ってきたごじょー君がここまで衣装制作に悩む姿があまりにも珍しく、あたしはごじょー君に声を掛けながら何か力になれないだろうかと思考を巡らせる。唸れ、あたしのバニー愛!

 

「そうだ、バニーって肩を透明のストラップで留めてるのあるじゃん?」

 

「え、そうなんですか?」

 

「うん」

 

まず思い浮かんだのはストラップを肩にかけ、水着のように着る方法。

これならば前がめくれて落ちる心配はまずない。

 

「……ですが、アニメではめくれているので、ストラップは使ってないのでは……」

 

「確かに」

 

実際にスーツを摘まんで引っ張って見せてみるが、ごじょー君の言う通りでアニメを観た限りではストラップは使われていない。

自分で言っておいてなんだが、ありしゃの衣装からかけ離れ過ぎているのは少々いただけない。

さらにごじょー君曰く「その方法だと横からのシルエットがアニメ通りにならない」との事。

彼が説明しながら衣装を背後から摘まむと、それだけでボディラインがハッキリと分かり見る者の印象が大きく変わるのが実感出来た。

 

「バニースーツは社交場にも相応しい正装なので、だらしないのはちょっと……」

 

「分かる。そっちが正解って感じ」

 

真っ先に思いついた策が没になり、あたし達は再び「うーん……」と頭を捻る。

他にも何か方法はあるはず! 唸れ、あたしのバニー愛part2‼

あたしは頭の中の引き出しを片っ端から開けまくり、バニーとは違うジャンルから解決の糸口を掴む事に成功した。

 

「あっ! 読モの撮影の時に聞いたんだけどー、体のラインが衣装で隠れちゃう時にクリップで摘まむってスタイリストさんが言ってた! クリップどーよっ⁉」

 

初めてその話を聞いた時は「そこまですんの⁉ ヤバ‼」なんて騒いだのを思い出しつつ、あたしはごじょー君の反応を窺う。

 

 

「……………………はい……」

 

顔 全然納得してないじゃん

 

 

まるで苦痛に耐えるような渋い顔で言葉を絞り出すように返事をするごじょー君に思わずツッコむ。

前から思ってたけど、ごじょー君てホント顔に出るよね。正直すぎて嘘つけないタイプ。

あたしの反応から自分の本音がバレていると悟ったのか、ごじょー君は溜息と共に言葉を吐き出した。

 

「出来る限りそういう方法に頼らず忠実に再現したいんですよねー……けど、今回は難しいんですかね……」

 

そのまま「ストレッチサテンじゃ無理なのかな……」なんて続けるごじょー君。

そんな彼のこだわる姿勢が、あたしはちょっと嬉しかった。

あたしが提案したストラップもクリップも、気をつければいくらでも撮影に誤魔化しが利く。

だけどそうしないのは衣装を出来る限り忠実に再現したいからであり、それは同時に原作やアニメへのリスペクトがあるから。

大好きなキャラクターだからコスプレしたいというあたし。

その為にリスペクトの精神を持って衣装を作るごじょー君。

自惚れかもしれない。勘違いかもしれない。だけどあたしはそう思ったし、それが嬉しくて仕方なかった。

 

「あたしもそっち派だけど、衣装の形と生地の相性で無理なパターンぽいよね。とりあえず、ストラップ試してみない?」

 

「ですね……」

 

ごじょー君のこだわりがあたしの『好き』を大事にしてくれている事に繋がっているのが分かる。

胸の奥が温かくなるのを感じつつ提案すれば、ごじょー君も現状手詰まりなのを自覚している為か頷いてそれを了承した。

彼から同意を得られたところで早速お試し!

 

「あたし的に、燕尾服のボタンで留めたらいい感じになると思うんだけどー……ヤバ♡ 可愛い~♡ 流石ごじょー君、安定~~♡」

 

既に完成している燕尾服を利用してボタンで留めてみれば、アニメで見たありしゃのバニー姿がしっかり再現されていた。えっ、マジでこれで良くない⁉

とりあえず、今のところこの方法が一番違和感なくコスプレに臨めそうだ。

 

 

「――って事で、ストラップ買いに行こーぜ。今から

 

今から⁉

 

あたし、思い立ったらソッコー動く人だから! ホラ! 行こ‼

 

「……ハイ……」

 

 

あたしの提案が意外だったのか、ごじょー君は少し困惑した様子を見せる。

だけど、あたしからしてみればやりたい事が分かってるのに、それを実行するのを我慢するなんて勿体ない以外の何物でもない。

それに、あたし気付いちゃったんだよね。

 

(好きピとおうちデート出来ないなら、買い物デートしちゃえばいいじゃん!)

 

この発想に自力で到達しちゃうとかあたしヤバくない⁉ 天才かよ‼

自分の発想がマジで神過ぎて、心の内での高笑いが止まらない。

 

あ、そうだ。喜多川さん、よかったら守優も呼んでいいですか? 今回も色々アドバイスとか貰ってたので……

 

あたしの中での高笑いが止まった。

 

「……」

 

「……喜多川さん?」

 

「あー、うん。いいよ、呼んじゃって……」

 

「? はい……」

 

思わず固まってしまったあたしの様子を窺いながら、ごじょー君はスマホを操作し始める。

恐らくライムか何かで月見里君に連絡を取っているのだろう。

 

(確かに今回も月見里君に協力してもらってたんだろうけどさ~……!)

 

ごじょー君に悪気がないのは分かっている。

分かっているからこそ、この心のうちのモヤモヤが行き場を失っているのを感じた。

 

(折角ごじょー君と二人きりで買い物デート行けるかと思ったのに~!)

 

自分の思惑が失敗に終わった事に内心で悶えつつ、ごじょー君と共に居間で待つこと十分。

ガラガラと玄関の戸が開く音と共に「お邪魔しまーす」と聞き慣れた友人の声が聞こえた。

 

「新菜ー、来たぞー。お前が急に買い物に誘うなんて、珍し、ぃ……」

 

「やっほー、月見里君」

 

勝手知ったるというような気安さで居間へとやってきた月見里君が固まった。

あ、今日はいつもの瓶底眼鏡だ。

 

「? ? ? ?」

 

月見里君は無言で何度もあたしとごじょー君を見つめる。

その様子から察するに彼にとってあたしがいるのは予想外で、つまりごじょー君は今から向かう買い物にあたしがいる事を伝え忘れたのだろう。

 

「急にごめん。今から喜多川さんと衣装に使うストラップを買いに行く事になってさ。守優にも一緒に来て欲しくて――」

 

「喜多川さんがいるのに?」

 

「……え?」

 

「喜多川さんと二人で買い物に行くのに、わざわざ俺を誘ったのか?」

 

ごじょー君が突然の誘いを詫びつつ事情を説明しようとすると、それを遮るように月見里君が尋ねる。

その声色は普段よりもずっと低い。

直接向けられているわけでもないのに、あたしまで寒気を覚えるほどだった。

 

「う、うん……っ」

 

月見里君から放たれる凍えるような圧を真正面から受け、ごじょー君は体を強張らせながらゆっくりと頷いた。

ごじょー君の返答を受け、月見里君がゆっくりと彼に近付いていく。

一歩、また一歩と歩み寄っていく姿は夏休み最終日に観た『怨電』に負けない不気味さと迫力がある。

 

「新菜、お前……」

 

「しゅ、守優……?」

 

ごじょー君が正座している事で身長の高さが逆転し、月見里君がごじょー君を覗き込むように見下ろす。

そして、ゆっくりと両手をごじょー君の顔へと近付け――

 

 

お前! お前! お前!」(何度もごじょー君にチョップをする月見里君)

 

「あ、ああ~~!」

 

お前! お前! お前!」(何度もごじょー君を指で突きまくる月見里君)

 

「うわ、わあ~!」

 

 

ごじょー君に対してよく分からない連続攻撃を仕掛けた。

鬼気迫る圧を放ちながら攻撃を繰り出す月見里君に対し、ごじょー君は情けない声を上げながらそれを受ける事しか出来ない。

一方が激怒し、一方が理不尽な攻撃に晒されている。なのに二人のやり取りは見ているこちらの笑いを誘ってくる。

 

「……ぷっ、あはは! あははは!」

 

「き、喜多川さん……! 笑ってないで助けて……!」

 

お腹を抱えて笑うあたしに、ごじょー君は頭を抱えて身を守りながら助けを求めてくる。

その間に月見里君は突く箇所を左右の横腹に変えたようで、それに反応するごじょー君が右へ左へと体をよじる姿がまた面白い。

好きピに助けを求められているんだから、本当は助けるべきなんだろうけど……

 

(前に月見里君のお説教されるの見捨てられちゃったしー、おうちデートも買い物デートも出来なくなっちゃったしー……いっか☆)

 

今回はちょっぴり意地悪する事にした。

 

 

「月見里君、もっとやっちゃえー!」

 

「喜多川さん⁉」

 

「お前! お前! お前ー!」

 

 

いつもは美味しいご飯を皆で食べる居間に、あたし達三人の騒ぎ声が響いた。

 

 

 

 

.

主人公のイメージCVについて

  • 決めてほしい(誰にするかは執筆者に一任)
  • 決めてほしい(誰にするかはアンケートで)
  • 決めても決めなくてもどちらでもいい
  • 決めない方がいい
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